3.2 遠隔 MR による共同作業支援モデル
4.2.3 WYSIWIS の実現と指示者視点の制約
本システムにおいては,指示者と作業者が作業者空間をWYSIWISのビューで共有し てシームレスなインタラクションが可能である,というメリットはあるが,指示者の視点 に関しては大きな制約がある.すなわち,指示者が見ている映像は作業者視点のものなの で,指示者が自らの意思で視点を移動することができないという点である.
このことにより,作業者の視点移動により映像が変化すると,ポインタ位置も作業者空 間内で移動してしまう.これらの変化に合わせて指示者が,ポインタ位置を修正しながら 作業者空間をポインティングできるかという問題がある.また,揺れる映像を見つづけて いると「映像酔い」が起こることが良く知られており[54],常時作業者視点を強制される 本システムで,映像酔いが発生しないかという問題も考えられる.
4.3 1 空間を利用した非対称型遠隔 MR の構成要件
4.3.1 ビデオシースルー HMD
MRシステムの構築にあたってキーデバイスとなるのがHMDである2.5.1で述べたよう に,HMDには光学シースルータイプとビデオシースルータイプとに分類されるが,本研 究ではキヤノン社製のビデオシースルーHMDであるVH2002を用いた [87].VH2002は,
両目用の2台のNTSCカメラとVGA液晶ディスプレイを搭載しており,本体重量は約 400gである.この外観を図4.4 (1)に示す.突起の部分には磁気センサであるFastrak°R レ シーバが配置されている.
図 4.4: ビデオシースルーHMD: VH2002
このHMDの大きな特徴は,図4.4 (2)に示す非常にコンパクトな光学系を用いて,ユー ザに視差のない映像を提供している点である.視差がないということはユーザにとって は,HMDの視野範囲に裸眼視と同じ状態の映像が見えているということで,このことは 現実世界と仮想の世界が違和感なく統合されるための必要条件である.
以上の条件を満足するために,2枚のプリズムが組み込まれている.外界側のプリズム は全反射三角プリズムで,外界からの光線はこのプリズムで2回反射して撮像光学系に入 射し,ビデオカメラのCCDで受光される.CCDからの電気信号は,NTSCに変換され て,コンピュータに入力される.
このビデオ信号にコンピュータで生成された仮想画像が重畳されて,図 4.4 (2)の上部 にある表示素子(液晶表示装置)に表示される.表示された映像から出た光線は,自由曲 面プリズムにより2度反射されて,外界からの入力光線と同じ入射角でユーザの眼球に届 くようになっている.このような構成で,以下の仕様が実現されている.
4.3.2 ハードウェア構成
HMDとスタイラスには磁気センサであるFastrakのレシーバが装着されており,位置・
姿勢の6自由度の値が取得できる.MR Platform(MRP)[98]の機能により,センサか らの出力値をもとに,仮想物体のCGの描画位置を決定する処理が行なわれる.HMD位 置・姿勢については,磁気センサ出力値をもとに,さらにマーカにより補正される.
表 4.1: VH2002の仕様 視野角 水平51度,垂直37
解像度 VGA(640x480XRGB)
焦点距離 -0.5D(2m)
レリーフ 20cm(眼鏡装着した状態で使用可)
瞳径 12mm
指示者および作業者用PCには,それぞれビデオキャプチャボードが2台搭載されており,
HMDの左右のカメラからのビデオ出力がこのボードでキャプチャされ,CGと合成されて HMDに表示される.PCの仕様は,CPU:Pentium4 3.4GHz(作業者用PC),Pentium4 2.4GHz(指示者用PC),RAM:1GB,グラフィックスボード:nVIDIA GeForce4,OS:
Red Hat Linux9である
図 4.5: ハードウェアとソフトウェア構成