第三章 結果
1. VGLUT1v のグルタミン酸輸送活性
Sf9細胞に発現させ、精製したVGLUT1vタンパク質が果たして機能を保持し ているかどうかを検証するため、F-ATPase を組み込んだ再構成リポソームを用
いてVGLUT1vによるグルタミン酸輸送活性測定を行なった。
ATPの添加により、再構成リポソームはグルタミン酸を取り込んだ(図6)。
一方で、ATPを添加しない場合はこの輸送は大きく減じた。さらに、VGLUT1v が存在しないリポソームにATPを添加しても、グルタミン酸の取り込みは観察 されなかった。従って、VGLUT1vタンパク質と F-ATPase を共に再構成したリ ポソームは、ATP依存的にグルタミン酸輸送を行うと結論した。
次に、グルタミン酸輸送に対するグルタミン酸濃度依存性を検証した(図7)。
VGLUT1vによるグルタミン酸取り込み活性は、ミカエリス・メンテン型を示し、
グルタミン酸濃度に依存して増大した。Lineweaver-Burk プロットすると、グル タミン酸に対するKmは1.4 mM、Vmaxは83 nmol/min/mg proteinであった(表2)。
ATP を添加しない場合においても、グルタミン酸取り込み活性はグルタミン酸 濃度に従ってミカエリス・メンテン型で増大していた。この結果は、F-ATPaseの 能動輸送による駆動力の供給がない状態でも、グルタミン酸の取り込み活性が あることを示しており、VGLUT1vの促進拡散(輸送体を介し、極性分子の輸送 を促進する)による活性が反映されたものであると考えられる。なお、同様の活 性は解析が進んでいるVGLUT2においても観察されている(Juge et al., 2006)。
さらに図 8 において、VGLUT1v によるグルタミン酸取り込み活性に対する Evans blueの効果を示した。Evans blueはVGLUTsの強力な阻害剤として知られ ている(Thompson et al., 2005)。低濃度(1 µM)の添加でVGLUT1vによるグル タミン酸輸送をほぼ完全に抑制した。
以上の結果から、VGLUT1v には他の VGLUTs と同様のグルタミン酸取り込 み活性があると結論した。
図 6 VGLUT1v によるグルタミン酸輸送のタイムコース
左図: F-ATPase 及び VGLUT1v を組み込んだ再構成リポソームにおけるグルタミン酸輸送 を模式的に示した。右図: VGLUT1v と F-ATPase を含む再構成リポソームのグルタミン酸 輸送のタイムコース。ATP (2 mM)存在下(●)、あるいは非存在下(○)におけるグ ルタミン酸取り込み活性を測定した(1 分、5 分、10 分)。VGLUT1v をリポソームに再 構成していないサンプルを用いて同様に輸送活性を行なった(▲)。値は平均値 標準誤 差。n=3。
図 7 VGLUT1v によるグルタミン酸輸送の濃度依存性
ATP の添加(●; +ATP)、不添加(○; -ATP)時のグルタミン酸輸送活性を測定した
(1 分)。それぞれ 0.1、0.2、0.5、1、2、5 mM のグルタミン酸濃度で測定した。
Lineweaver-Burk プロットを図内に示した。
表 2 VGLUT1v の速度論的解析
図 8 Evans blue によるグルタミン酸輸送の阻害効果
VGLUTs の阻害剤である Evans blue(1 µM)を反応液に添加し、1 分インキュベートし た後グルタミン酸輸送活性を測定した(5 分)。n=3。値は平均値 標準誤差。Studentʼs t test により有意差を検定した。**P < 0.01。
図7から得られた VGLUT1v の速度論的パラメーター(Km、Vmax)を示した。VGLUT1、
VGLUT2、VGLUT3 に対するパラメーターについても記載した(Juge et al., 2006;
2010)。