除去率[%]
(5)-5 混合ガスの分離性能評価
次に、実用化に則した評価として流通系での吸着性能評価を行った。実用化に則した混合 ガス組成としてトルエン/ホルムアルデヒド=100ppm/1ppm で評価できる系を構築した。評価系 を図Ⅲ.2.1.4-12に示す。
排 気
入口濃度
出口濃度
サンプル ホルムアル デメータ
図Ⅲ.2.1.4-12 混合ガス流通系吸着性能評価装置図
実 際 の 評 価 で は 、 カ ラ ム に ハ ニ カ ム サ ン プ ル を 詰 め 、 ト ル エ ン/ホ ル ム ア ル デ ヒ ド
(100ppm/1ppm)の混合ガス(25℃、50%RH)をフローしながらガス濃度を計測した。具体的には、
サンプル通過前のホルムアルデヒド濃度に対し、通過後のガス濃度を測ることで除去率を算 出することができる。
トルエン濃度 100ppm/ホルムアルデヒド濃度 1ppm を含む空気(25℃、50%RH)を使用し、空 間 速 度 100,000hr-1 条 件 で、ハニカムのホルムアルデヒド除 去 性 能 を測 定 した。結 果 を図
Ⅲ.2.1.4-13 に示す。PCP単体でも薬剤添着炭の約3 倍の吸着性能であり、さらに、薬剤添着 PCPは薬剤添着炭の約5 倍の吸着性能を示した。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 5 10 15
5wt%A添着TYB-3 薬剤添着炭
TYB-3
除去率[%]
吸着量[mg/g]
図Ⅲ.2.1.4-13 ハニカム性能評価(混合ガス)
(6) 知的財産取得、論文、外部発表状況 特許、論文、外部発表等の件数(内訳)
区分
年度
特許出願 商標登録 論文 その他外部発表
国内 外国 PCT※ 出願
国内 査読 付き
その 他
学会発表・
講演
新聞・雑誌 等への掲載
その他
H21FY 0件 0件 0件 0 件 0 件 0件 0件 0件 0件
H22FY 1件 0件 0件 2 件 0 件 0件 0件 0件 0件
H23FY 5件 0件 0件 0 件 0 件 0件 0件 0件 0件
H24FY 2件 0件 1件 0 件 0 件 0件 1件 0件 0件
H25FY 7件 0件 0件 0 件 1 件 0件 0件 0件 0件
H26FY 2件 0件 0件 0 件 0 件 0件 1件 0件 0件
(※Patent Cooperation Treaty :特許協力条約)
(7) まとめと成果の意義 (7)-1 まとめ
以下の成果を達成し、計画通りに研究開発を進捗することができた。また、表Ⅲ.2.1.4-1 に 最終目標の達成状況をまとめた。
・ 機能性官能基含有PCPを検討し、薬剤添着炭よりも高いホルムアルデヒド分離性能 を示すPCPを7種見出した。そのうち3種は、耐久性にも優れることが明らかとなり、
成した。
・ トルエン/ホルムアルデヒド混合ガス分離性能評価により、薬剤添着炭よりもホルム アルデヒドを選択的に分離できることを確認できた。ハニカムでも同様の性能であり、
成形性にも問題ないことを確認した。
・ キログラムスケールでのスケールアップ合成に成功した。
・ コストダウン検討とハニカムでの性能把握により、性能×コストは、薬剤添着炭に十 分差をつけられることが明らかとなった。
表Ⅲ.2.1.4-1 成果のまとめ
開発項目 目標 成果 達成度
PCPによる微
量ガス分離材
の開発
空間速度100,000hr
-1、初期濃 度1ppmの条件において、アル デヒド類分離性能を90%以上保 持した状態で分離できる量が
10mg/g以上目標性能を満たす
PCPを見出した
◎
耐久性試験(80℃、95%RH、
24h)において、アルデヒド類分
離性能を90%以上保持
目標性能を満たす
PCPを見出した
◎
◎大幅達成、○達成、△達成見込み、☓未達
(7)-2 成果の意義
得られた成果の意義は以下である。
・世界初もしくは世界最高レベルの技術
ホルムアルデヒド除去 PCP の開発は世界初。さらに、PCP に薬剤を添着することで、
世界最高レベルの吸着材を提供できる可能性を見出した。
・汎用性
アセトアルデヒドなどのアルデヒド類をはじめ、他の微量ガス分離材へも展開が可能。
・競合技術に対する優位性
競合技術よりもコストパフォーマンスに優れている。
Ⅲ.2.2 回収CO2ガスによるグリーンプロセス基盤技術開発
Ⅲ.2.2.1 PCP複合触媒の開発/PCP複合触媒基盤技術の開発 <京都大学>
(1) 背景と目的
本項目では、次世代グリーン・サスティナブル・ケミストリー(GSC)技術開発の基盤技術となり得る、多 くの基盤技術の開発に総合的に取り組むことを主眼としており、総合モデルとしてPCPで吸着・分離した 副生ガスであるCO2から、シュウ酸、ギ酸、メタノール等の含酸素化合物を高効率に合成するPCP複合 触媒の基盤技術の研究開発を行うことを目的とする。さらに、CO2を原料とした化学プロセスに関する試 設計を行うことを目的とする(図Ⅲ.2.2.1-1)。
(2) 最終目標
平成23年度の中間評価の達成を踏まえ、最終目標(平成25年度)を以下のように設定した。
CO2の化学変換をモデル反応としてPCP複合触媒の検討を行い、
1) CO2からの選択率(電流効率)が80%以上で、シュウ酸、ギ酸等の含酸素化合物を効率的に生産する
PCP複合触媒を開発する。
さらに、
2) CO2を原料とした化学プロセスに関する試設計を行う。
上記の最終目標は、電気化学的なCO2還元によるギ酸生成の選択率84.5%が最高値 (Chem. Comm.
1987, 131.)であるため、それを踏まえて設定した。また、活性金属種からなるPCP複合触媒を用いること で、CO2から基礎化学品へ転換する有用な触媒を開発するため設定した。
(3) 研究開発成果
(3)-1 液相法によるPCP複合触媒の開発
図Ⅲ.2.2.1-1 CO2から含酸素化合物を高効率に合成するPCP複合触媒の研究開発
PCP と触媒との複合化手法を検討し、PCP/分子複合触媒や PCP/活性金属種複合触媒を作製した。得 られた複合体の構造を調べるため、粉末X線回折(XRD)測定および透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行っ た。また、特定のサンプルについては高角散乱環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF STEM)を用 いたエネルギー分散型X線分光(EDX)測定を行い、PCPと触媒の複合状態を詳細に調べた。PCPの多 孔性について調べるため、窒素吸脱着等温曲線測定を行った。PCP/活性金属種複合触媒の二酸化炭 素還元反応については固定床流通式反応装置を用いて評価を行った
②電極反応触媒PCP複合体として用いるPCPの選定
有機溶媒中では二酸化炭素は-2.0 Vより負側の電位で1電子還元を受け、一酸化炭素を生成する。
その際、不対スピンは中心炭素に多く存在するため、炭素-炭素のカップリング反応でシュウ酸が生成 する。一方、分子錯体を触媒として用いた場合、pH=7.0で-1.0 V付近下での定電位電解により、CO2から 含酸素化合物に変換することができる (図Ⅲ.2.2.1-2)。
そこで、複合化に用いる候補PCPとして-1.0 Vでも分解しない電気化学的安定性の高いPCPの選定 を行った。電気化学測定前後での PCP の構造変化の有無を確認できたことから、該手法により電気化 学的安定性を評価できることが明らかとなった。そこで、数種のPCPについて評価を行い、候補となる電 気化学的安定性の高いPCPを数種類抽出した。
CO2還元による含酸素化合物生成は溶液のCO2濃度に比例する。溶液中に溶存するCO2の濃度を高く し、より高効率にCO2変換を行うPCP複合体を開発するため、pHが異なる溶液中での電気化学的安定 性についても検討した。H3PO4、NaOHのバッファー溶液を用いて水溶液をpH=4もしくは5に調整した電 解液を用いて、同様な測定手法を行い、抽出された PCP は酸性溶液中でも電気化学的安定性を保持し ていることを確認した。
③ 分子触媒との複合化によるPCP複合体の触媒分散状態
分子触媒の一種である Co3S2クラスター触媒(以下、分子触媒と略す)は、液相系における高効率な CO2還元反応用触媒として知られており、CO2を吸着・分離可能な PCP と複合化させることで、CO2を原 料とした還元反応の更なる高効率化が期待できる。このため、分子触媒と、CO2の吸着・分離が可能な PCPの一種であるPCP-1を複合化して得られたPCP複合体の触媒分散状態について透過型電子顕微 鏡を用いて調べた。なお分子触媒を用いたCO2還元反応の詳細については、次章Ⅲ2.2.2に記載した。
構造解析には高分解能 TEM 観察および高角散乱環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF 図Ⅲ.2.2.1-2 CO2から含酸素化合物へ変換する分子触媒
STEM-EDX)を用いたエネルギー分散型X線分光測定を行った。試料の調製として、分子触媒とPCPを アセトニトリル中で溶解させ、超音波により均一に分散させた溶液を TEM グリットに滴下した。図
Ⅲ.2.2.1-3より、PCPの構成元素と触媒の構成元素の両元素は局所的にそれぞれ独立して集まって存在 しているのではなく、全体にわたって両元素が均一に分布していることがわかった。
これらの結果により、得られた複合体ではPCPに分子触媒が均一に分散していることが明らかとなっ た。このPCP複合体の粉末X線回折測定から、分子触媒に由来する回折ピークが非常に弱いことがわ かった。PCP のみと比較して、複合体の N2吸着量に大きな差が見られないことから、分子触媒は PCP 表面に存在しており、PCPの細孔は保持されていることが示唆された。
そこで、分子触媒がPCPの表面に存在するのか、PCPの細孔内部に存在しているのか検討するため、
TEMを用いた三次元トモグラフィー測定を行った。試料を回転させながらTEM像を撮影し、再構築を行っ た結果、数層の触媒分子のレイヤーがPCPの表面に存在していることが明らかとなった。この結果は多 孔性材料と分子触媒の複合状態を三次元的に解析し、解明した初めての例である(図Ⅲ.2.2.1-4)。
この分子触媒はPCP表面に薄い層として均一に担持されていることから、高効率にCO2を還元する有 能な複合触媒となりうることが期待される。また、この複合体は PCP と触媒の相乗効果を十分に発揮で きる構造を有していると考えられる。実際、このPCP複合体の触媒評価を行ったところCO 変換率95%と
図Ⅲ.2.2.1-4 PCP複合触媒のHAADF-STEMイメージ(左)、三次元トモグラフィー解析(中)および PCPと分子触媒の分散状態のイメージ(右)
図Ⅲ.2.2.1-3 PCP複合触媒のHAADF-STEMイメージおよびSTEM-EDXスペクトル