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3.3 これまでの知見のまとめ
明らかになったこと
まず,聴覚フィードバックに関連する発話中の現象としてロンバード効果があり,周囲 の環境に即した音声のモニタリングが行なわれることが分かった.また,知覚–生成間の 相互作用に着目するための手法として,音声の時間情報に着目した遅延聴覚フィードバッ ク(DAF)と,F0やスペクトル情報などのパラメータに着目した変形聴覚フィードバッ ク(TAF)があることが分かった.
次に,歌声を対象とした聴覚フィードバックの関連研究のアプローチの一つ目として,
聴覚フィードバックの変形が歌声のF0に与える影響が調査されていることが分かった.
これらの検討から,次のことが明らかとなっていることが分かった.
• 聴覚フィードバックにより,ターゲット信号のF0と歌声のF0の間の食い違いを補 償する.
• F0の周期的変動を付与したTAFの下では,生成音声のF0にも変動成分が見られる.
歌声を対象とした聴覚フィードバックの関連研究のもう一つのアプローチとして,雑音 呈示により気導の聴覚フィードバックをマスキングした際の歌声への影響も調査されてい ることが分かった.これらの検討から,次のことが明らかとなっていることが分かった.
• アカペラ歌唱では,雑音呈示時に非呈示時よりも目標からのF0逸脱が大きくなる.
• ターゲット信号に音程を合わせる課題では,雑音呈示時に非呈示時よりもピッチマッ チングの精度が向上する傾向がある.
上記の知見から,聴覚フィードバックが歌声のF0変化に対して重要な役割を果たして いることが予想される.一方,歌唱時には聴覚フィードバックのみに依存してはおらず,
話者内部に存在する手がかりにも依存していることが予想される.
課題点
これまでは外部からの音声呈示によって,変形したフィードバック音声を気導音声とし て知覚させる,もしくは気導の聴覚フィードバックを遮断する方法が行なわれている.こ れらの方法は,歌唱における気導の聴覚フィードバックの性質や役割について調査するこ とを前提としている.一方で,歌唱者自身が生成した歌声を自然に知覚するプロセスにお いて,気導音声と骨導音声の両方が存在する.骨導による聴覚フィードバックが,歌声特 有の音響的特徴を伴う歌声生成にどのように寄与しているのかは,依然として未解明であ る.知覚・生成間の相互作用に対して,気導・骨導の聴覚フィードバックがどのように関
キングするための雑音の存在が生成音声にどのように影響しているのかについては,注意 して検討すべき項目であると考えられる.
次章では,骨導の聴覚フィードバックの経路とその特徴について述べ,既存知見からの 考察を図る.