3P NETWORK
(住民・官民連携局)
(水再生(施設)局)
DEEP TUNNEL SEWERAGE SYSTEM
(大深度トンネル下水道局)
WATER RECLAMATION(NETWORK)
(水再生(ネットワーク)局)
3 現状
(1) 上水道 ア 水源
シンガポールは年間降水量が 2400mm に達する多雨地域にあるものの、国土が狭小 であり、最も標高の高いブキティマ高地でも 163m しかないほど地形が平坦である。
そのため山地や森林による保水機能に乏しく、水源として利用可能な河川もない。
国内水源だけでは必要量を賄えないため、詳細データは公表されていないが、国内需 要の 50%程度が隣国マレーシアのジョホール州から購入する水に頼っているとされて いる。
ジョホール州からの原水の供給は、1961 年と 62 年に締結された協定に基づいており、
それぞれ 2011 年、2061 年までの有効期間が設定されている。1961 年協定の失効期限が 近づいているため、シンガポールは安定水源の確保を国家の最重要課題のひとつと位置 づけ、水源を分散化しつつ国内自給率を高め、安定的な水源の確保を目指している。
イ 現状
現在、上水道は離島も含む全土に供給されており、普及率は 100%である。
水源は、国内とマレーシアのジョホール州にある 19 の貯水池である。PUB は水源から 取水した原水を国内 6 カ所、ジョホール州内 3 カ所の合計 9 カ所の浄水場で浄化し、15
カ所の給水場と約 5343km に及ぶ配水管ネットワークを通じて各顧客に配水している。
シンガポールの水道水は世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドラインを満たし、
蛇口から直接飲用に供することができる。
(2)下水道 ア 現状
シンガポールの下水道システムは、汚水と雨水の流れを分離する分流式を採用してい る。汚水は地下水路で処理施設に運ばれ、雨水は排水路から川や貯水池に流れ込んでい る。
下水道の普及率は 100%に達している。
下水道施設を所管するのは、2001 年 4 月に(旧)環境省の内部局からPUBに移管さ れた下水道局である。同年 10 月には下水道局から水再生局が独立し、4で述べる高度処 理再生水、ニューウォーター部門を担っている。
イ 大深度トンネル下水道システム計画(DTSS)
政府は、既存の下水道施設にかわって、21 世紀における下水処理を担う新たなシステ ムとなる、大深度トンネル下水道システム(Deep Tunnel Sewerage System;DTSS) 計画を進めている。この計画は、現存の処理施設が占める土地とその周辺地帯の有効活 用(処理施設を現在の 6 カ所から 2 カ所に集約する)、ジョホール海峡への放水路の撤 去による同海峡の水質改善、処理施設の集約による処理能力の向上と経費削減を目的と しており、完成まで 20 年を要する長期大型プロジェクトである。
DTSSでは、地下 50m に建設する総延長 80km、直径 6.5m の南北 2 本の大深度トンネ ル下水道と、これにつながる総延長 170km の小規模な下水路によって、汚水をチャンギ とトゥアスの 2 つの水再処理施設へと運ぶ。下水処理施設で処理された水は、深海放水 パイプラインによってシンガポール海峡に放水される。
図表3-4-2 「下水道設備の普及状況」 (出所:公共事業庁Website)
ウ 工業用水
1966 年に建設されたジュロン工業用水場では、ウル・パンダン下水処理場で処理され た下水を再処理し、ジュロン及びトゥアスの工業地帯に供給している。
処理の終わった工業用水は地下水路でジャラン・ブローとジュロンの貯水施設に運ば れ、総延長 130km 以上の地下給水管で工業地帯に給水される。ジャラン・ブローには総
1970 年 1980 年 1990 年 2000 年 人口(千人) (非永住外国人を除く) 2,074 2,292 2,705 3,218 人口に対する下水道普及率(%) 51 75 99 100 下水ポンプ数 44 118 134 133 下水道総距離(km) 720 1,470 2,250 2,879 下水処理能力(㎥/日) 238,000 473,000 960,000 1,320,500
容量 4 万 2700 ㎥の 4 つの貯水槽が、ジュロンには総容量 3 万 5000 ㎥の 3 つの貯水槽が 設置されている。
4 主な政策・取組み等
(1)安定水源の確保に向けた取組み ア マレーシアとの水供給協定
シンガポールの上水道の大きな特徴は、国内水源だけでは不足する原水の一部をマレ ーシアのジョホール州から買っていることである。マレーシアのジョホール州からの原 水の取水は、1961 年に締結されたテブラウ川・スクダイ川を水源とする「The Tebrau and Scudai Rivers Water Agreement」と、1962 年に締結されたジョホール川を水源とする
「The Johor River Water Agreement」に基づいており、それぞれ 2011 年、2061 年ま での有効期間が設定されている。
これらの協定では、シンガポールは 1 日当たりそれぞれ 8600 万ガロン(1 ガロン≒4.5 ℓ )、2 億 5000 万ガロンの原水を 1000 ガロン当たり 0.03 リンギ(マレーシアの通貨単 位。1 リンギ≒27 円)で輸入することができるとされており、このうち 12%については 浄水加工した水をジョホール州が 1000 ガロン当たり 0.5 リンギで購入する権利を有す ることとなっている。
シンガポールの浄水場は国内に 6 つ、ジョホール州に 3 つある。ジョホール州への上 水の再販は、ジョホール州内の浄水場で浄水加工した水をシンガポールへ送水する過程 で、各戸に配水する仕組みとなっており、シンガポールから再度送り返す手間を省く効 率的な配水方法となっている。
シンガポールとジョホールを結ぶジョホール海峡には 6 本の送水管があり、橋上に 3 本、橋下に 1 本、海底に 2 本が設置され、シンガポールに向けて送水している。
シンガポールは、1993 年にジョホール川上流に 3 億 600 万S$をかけてダムを完成さ せるなど、近年も数次にわたって投資を行っている。
イ 新たな水源開発
1992 年にはインドネシアとの間でビンタン島とスマトラ島における水源開発と原水 の供給についての協定を締結した。しかし、この計画の実現には送水管敷設等のインフ ラ整備や船舶輸送にかかる膨大な費用が必要であり、給水単価が相当高額になることが 見込まれるため、協定締結から 10 年を過ぎた現在も実現可能性の検討が続いている。
ウ 海水淡水化
科学技術の発展による処理コストの低下を背景として、海水淡水化プラントが 2005 年下半期の稼動を目指して建設中である。シンガポールの西に位置するジュロン工業団 地に隣接するトゥアス地区に位置する。
海水の淡水化においては、PUB自身が工場を所有するのではなく、民間企業が自己資 本で処理場を建設・運営し、造水した水をPUBに売る、BOO(Build-Own-Operate) という形態がとられる。PUBは 1 日当たり 13 万 6000㎥の水を海水淡水化プラント事業 者から購入する予定である。
(2)水の循環・再利用
ア 市街地における雨水の集水
PUBは市街地における降雨も貴重な水資源であるとして、環境・水資源省や公団住宅
(HDB住宅)の建設を所管する住宅開発庁(HDB)とも協力し、排水だけではなく集 水と利用を念頭においた集排水設備の整備を進めている。
東部にあるニュータウン地区のHDB住宅には、建物の屋上に降った雨水を周辺に配 された排水溝を通して集水し、周辺の 9 つの集水池に溜めてから貯水池に送水するシス テムが整備されている。とりわけ新たに建築されるHDB住宅ではこうした集排水施設 の整備が進められており、市街地での雨水集水は今後拡大されていく計画である。こう した取組みにより、集水地域の国土に占める割合は現在の国土の 2 分の 1 から、将来的 には住宅地や都心部をも含み、国土の 3 分の 2 にまで拡大する予定である。
イ ニューウォーター(NEWater)
更に、PUBは環境・水資源省と共同で、下水を高度処理し、再利用する計画を進めて おり、2003 年 2 月から原水としての実用化が始まっている。ニューウォーター
(NEWater)と名づけられたこの水は、下水処理場で通常の処理が終了した水に、更に 3 段階の浄化処理を施し、飲用可能な水準まで高度処理した再利用水である。
PUBと(旧)環境省の共同プロジェクトとしてニューウォーター開発研究が始まった のは 1998 年のことである。研究の主な目的は再利用水の原水としての利用可能性の検 討であった。2000 年 5 月には、1 日当たり産水能力 1 万㎥のパイロット施設がベドック 下水処理施設の下流に建設され、2 年間にわたって実証研究が行われた。
PUBは、ニューウォーターの処理コストは、海水淡水化費用の約半分であるとしてい る。マレーシアとの水源の問題に関する交渉が難航する中、2002 年 7 月、再利用水の利 用について 2 年間にわたって調査を続けてきた専門家委員会から、ニューウォーターは 米国と世界保健機関(WHO)の飲料水水質基準を満たしているという報告がされた。
政府は 2003 年 2 月からニューウォーターを貯水池に放水し、原水としての利用を開始 することを発表した。放水されるニューウォーターの全消費量に対する割合は当初は 1%未満であるが、政府はマレーシアとの協定のひとつの期限が切れる 2011 年までにこ の割合を 2.5%に上げるとしている。
ニューウォーターは、貯水池への放水により雨水等と混合され、通常の浄化処理を経 てから給水される。これは計画的間接飲用化と呼ばれる方法で、米国の各地で 20 年以 上の実績があり、貯水池の水と混合することで心理的な抵抗感を軽減するとともに、処 理過程で失われたミネラル分を添加できるという利点がある。