第 5 章 評価実験
5.5 RTT 公平な輻輳制御方式
5.5.3 実験結果
5.5.3.2 TCP Reno との RTT 公平性
HRF TCPは同一プロトコル間でのRTT公平性を持つことは確認された.ここでは競合
フローに他の輻輳制御方式が存在している場合のRTT公平性を評価する.実験トポロジに おいてSender1からReciever1へHRF TCPのフローを,Sender2からReciever2へTCP Renoのフローを送信する.HRF TCPにかかる遅延時間を40msと固定し,TCP Renoに かかる遅延時間を10msから120msまで10ms刻みで設定し競合時のスループットを測定 する.
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 Delay of Com peting flow [m s]
Throughput[Mbps]
TCP-Reno
HRF TCP(Without Proposal)
図5.11.:HRF TCP(提案手法なし)とTCP Renoが競合した場合のスループット(実装
環境)
図5.11.より競合するTCP Renoにかかる遅延時間が大きくなるほどHRF TCPが占有する
スループットの割合が大きくなることがわかる.これはHRF TCP では輻輳ウィンドウの 制御に用いるパラメータとして競合するフローの推定RTTが必要であり,現在は40msと 固定値で設定されているためである.そのため実際のTCP Renoのフローにかかる遅延時 間が 40ms より大きい場合に TCP Reno が十分なスループットを得られない.逆に TCP Renoにかかる遅延時間が40msより小さい場合は,HRF TCPがスループットを獲得する のに不利な状態となる.ただし図6において競合するTCP Renoにかかる遅延時間が10ms のときでもHRF TCPが比較的スループットを獲得できているのは,HRF TCPのパケット ロス時の輻輳ウィンドウの減少幅がTCP Renoに比べ小さいためと考えられる.
以上よりHRF TCPと競合するフローの推定RTTのパラメータ設定の必要性が確認され
た.次に競合するフローの推定 RTT のパラメータを理想的な値に手動で設定した場合に,
HRF TCPとTCP Renoのフローを競合させスループットを測定する.実験方法は前項と同
様である.
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 Delay of Com peting flow [m s]
Throughput[Mbps]
TCP-Reno
HRF TCP(Ideal Parameter by manual)
図5.12 HRF TCP(パラメータを理想値に手動設定)とTCP Renoが競合した場合のスル
ープット(実装環境)
図5.11, 5.12よりHRF TCPにおいて競合するフローの推定RTTのパラメータを理想的
な値に設定することで,帯域割り当ての公平性が改善できていることがわかる.ここでHRF TCPと競合するTCP Renoとの間で同一のスループットが得られていないのは,HRF TCP のパケットロス時の輻輳ウィンドウの減少幅がTCP Renoより小さく帯域を占有しやすい ためである.
以上より他の輻輳制御手法と競合した際に RTT 公平性を確保するためには,HRF TCP は競合するフローの推定RTTをパラメータとして適切に設定する必要があることが確認さ れた.ここではHRF TCPに提案手法を加え,競合するフローの推定RTTのパラメータを 動的に変化させた場合の測定を行う.実験方法は前項と同様である.
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 Delay of Com peting flow [m s]
Throughput[Mbps]
TCP-Reno
HRF TCP(With Proposal)
図5.13 HRF TCP(提案手法あり)とTCP Renoが競合した場合のスループット(実装環 境)
図 5.13より競合するTCP Renoにかかる遅延時間が変化したときでもTCP Renoの獲得 するスループットは比較的公平になっている.これは提案手法により競合するフローの RTTの推定が行われ,その結果がHRF TCPのパラメータとして反映できているためであ る.