適正な甲状腺ホルモンの投与量とは,体のすべての組 織において甲状腺ホルモンの濃度が正常になる量とい うことであろう.
組織中の甲状腺ホルモン濃度が正常であるかどうかを 正確に判定できる指標は、下垂体からのTSH分泌のみ なので
血中TSH値が正常範囲に入る服用量を適正補充量とし
ている。
潜在性甲状腺機能低下症の頻度、すなわち
FT4
は基準値内 であるが、TSH
が高値のものは約 20% である
潜在性甲状腺機能亢進症の頻度、すなわち
FT4
は基準値内 であるが、TSH
が低値のものは約 20% である
骨量が減少する可能性(閉経後の女 性では特に注意)
心房細動の発症率が上がる(60歳以 上では2.8倍になる)
動脈硬化がすすむ可能性がある
(虚血性心疾患の頻度が上がる)
TSHを正常範囲にコントロールすることが大事である しかし、心疾患を持つもの、後期高齢者では、TSHを 少し高めにコントロールする( TSH 5-7μU/mlを目標)
甲状腺
T4 T3 ( 活性型)
血 中
末梢組織 T 4 T 3 100% 20%
80%
甲状腺が健常な場合、血液中の
T3
の80%
は末梢組織でT4
から作ら れたものであるが、20
%は甲状腺から分泌されたものですこの分が不足する可 能性がある
補うべきか?
T4
製剤だけで治療をすると甲状腺から分泌されている
T3
の分(20%
)が不足する可能性がある組織中の T4, T3 濃度を調べてみると
J Clin Endocrinol Metab 90: 4946–4954, 2005
T4
で治療1.6μg/100 g bwt/day
T4+T3
で治療(1:0.2)0.90μg/100 g bwt/day 0.20μg/100 g bwt/day
T4 T3 TSH T4 T3 TSH
血中 ⇑ 正常 正常 正常 正常 正常
脳 ⇑ ⇑ 正常 正常
下垂体 ⇑ ⇑ 正常 正常
肝 ⇑ 正常 正常 正常
腎 ⇑ 正常 正常 正常
肺 ⇑ ⇓ 正常 正常
心 正常 ⇓ 正常 正常
筋肉 ⇑ ⇑ 正常 正常
T4
だけで治療した場合は、すべての組織を正常にすることはできないT3
も投与すると全て正常にすることができる(J Clin Endocrinol Metab 90: 4946–4954, 2005)
Smith Bunevicius Walsh Sawka Clyde Siegmund Saravanan
Escobar-Morreale Appelhof
T4/T3量 可変 可変 可変 可変 可変 可変 可変 固定 可変
デザイン 交差 交差 交差 平行 平行 交差 平行 交差 平行 患者数 87 33 101 39 44 23 573 26 130 結果の
判定
甲状腺機能、QOL, Mood, Psycho
利点 なし あり なし なし なし なし なし なし なし 不快感 あり なし - - - あり なし あり あり 患者の
選択
T4 T4 +
T3 同じ - - - - T4 +
T3 T4 + T3 T4, T3併用治療は、最初 QOL, Mood, Psychoに効果があると報告されたが、
その後の研究ではそれは確認されなかった。
今のところは、併用治療のほうが良いとは言えない。
併用治療に明らかな利点があることが証明 されるまでは、
L-T4
単独が薬剤選択となる。同じ量を飲んでいるのに不足することがある
何故か?
患者自身の甲状腺ホルモン分泌能の変化に よってこのような状況が生じる可能性もあるが 多いのは、・・・
食後に薬をのんでいる場合、特に野菜ジュースや青汁などと 一緒に飲んでいることが多い
このような患者を見たら、
何時薬を飲んでいるかを聞いてください
食後に飲んでいるとしたら、繊維性のものを多くとっていな いか、他の薬と一緒に飲んでいないか聞いてください
T4製剤以外にどんな薬を飲んでいるかを聞くことが大事 そして、
空腹時に薬をのむように指導してください(起床時か眠前)
甲状腺ホルモンの必要量に影響を与える状況、補助食品、
薬剤について説明します
甲状腺ホルモンの必要量に影響を与える状況及び補助食品
甲状腺ホルモンの 必要量
状況・補助食品
減少 高齢者
男性ホルモン治療
増加 妊娠
吸収不良をおこす消化管疾患 小腸粘膜疾患
腸が短い(小腸腸バイパス術)
胃酸分泌低下(慢性胃炎など)
胃切除後
吸収を抑制するもの
高食物繊維食品(野菜ジュース、ダイエット食品など)
コーヒー
甲状腺ホルモンの必要量に影響を与える薬剤
甲状腺ホルモン
の必要量 薬剤
増加 1)吸収を抑制する薬物
高脂血症治療薬
・コレスチラミン・コレスチミド(クエストラン・コレバイン)
貧血治療薬
・鉄剤(フェログラデュメット、スローフィー、テツクールS)
胃薬
・アルミニウム含有制酸剤:スクラルファートなど
(アルサルミン、マーロックス、コランチル、SM酸、キャベジン)など
・亜鉛含有制酸剤:ポラプレジンク(プロマック)
・プロトンポンプ阻害薬 腸疾患治療薬
・ポリカルボフィルカルシウム(コロネル)
骨粗鬆症治療薬
・グルコン酸カルシウム(カルチコール)
・ラロキシフェン(エビスタ)
腎疾患治療薬
・沈降炭酸カルシウム(カルタンなど)
・活性炭
・塩酸セベラマー(レナジェル、フォスブロック)
・ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート)
抗菌薬
・シプロフロキサシン(シプロキサン) 赤字は商品名
甲状腺ホルモンの必要量 薬剤
増加 2)代謝を促進する薬物
抗けいれん薬
・フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)
・カルバマゼピン(テグレトール)
・フェノバルビタール(フェノバール)
抗結核薬
・リファンピシン(リマクタン、リファジン)
3)T4
→
T3への代謝を減少させる薬物抗不整脈薬
・アミオダロン(アンカロン)
4)甲状腺ホルモン結合蛋白を増加させる薬物
女性ホルモン剤
・エストロゲン(卵胞ホルモン)
選択的エストロゲンモジュレーター
・抗悪性腫瘍薬:タモキシフェン(ノルバデックス、タスオミン)
フルオロウラシル(5-FU)
・骨粗鬆症治療薬:ラロキシフェン(エビスタ)
機序不明
セルトラリン(ジェイゾロフト)
脱ヨード酵素の合成障害 セレニウム欠乏
肝硬変
赤字は商品名
甲状腺ホルモンの必要量に影響を与える薬剤、他
甲状腺ホルモンの必要量に影響を与える状況、補助食品及び薬剤
高食物繊維食品: 野菜ジュース、青汁、ダイエット食品など コーヒー
骨粗鬆症治療薬;ラロキシフェン
胃薬: アルサルミン、マーロックス、キャベジン、プロマックなど 貧血治療薬: フェロ・グラデュメットやフェロミアなどの鉄剤
甲状腺機能低下症で
• 75μg/
日で甲状腺機能は正常にコントロールされていた患者•
平成24年3月から100μg/日(起床時)に増量されているのにTSHが 上昇してきた、ということで当院受診•
受診時、TSH
値は、さらに上昇していた?青汁
3-4
ヶ月前から薬を 飲んで20分くらいして 青汁をのむようになった(nmol/L)平均値* ピーク値
(nmol/L) ピークに達 する時間
(分)
AUC (nmol/L・4
hours)
水で飲む 36.3±16.7 51.8±11.9 130±41 8696±1590 コーヒーで飲む 23.0±12.7
P<0.0001
36.0±8.8
P<0.05
180±38
P<0.05
5592±1452
P<0.05
水で飲んだあと
1
時間後にコー ヒーを飲む36.2±16.1 NS
52.0±8.5 NS
125±44 NS
8622±1481 NS
Altered Intestinal Absorption of L-Thyroxine Caused by Coffee THYROID Volume 18, Number 3, 2008
コーヒーは、イタリアンスタイル(エスプレッソ)
*30, 60, 120, 180, 240分後の⊿T4の平均値
L-T4
(200μg
)錠剤を水で飲んだとき、コーヒーで飲んだ後の 血中T4
濃度の上昇(⊿T4
)を見ますとプロトンポンプインヒビター( PPI )
慢性胃炎、胃切除後
患者 数
TSHμU/ml FT4
ng/ml
L-T4
投与量 P値μg/日 μg/kg/
日
平均 増加 量%
対照患者
(胃疾患なし)
135 0.12
±0.05 1.48
±0.26
100
(86-100)
1.53
(1.40-1.62)
-HP
(+)非萎縮性胃炎
53 0.11
±0.04 1.53
±0.22
125
(112-125)
1.87
(1.78-2.03)
22
<0.001萎縮性胃炎 60 0.11
±0.06 1.50
±0.24
125
(113-150)
1.95
(1.81-2.2)