主 題
症 例 検 討 1
症 例 検 討 2
一 般 演 題 1
主 題 1
主 題 教 育 研 修 講 演
初期胚ライブセルイメージングを始めよう。
近畿大学 生物理工学部 山縣 一夫
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、2010年時点で不妊に悩み、実際に何らかの治療を受け ている夫婦は6組に1組にのぼる。一方で、生殖補助医療技術が進歩しているにも関わらずその成功率は 20%前後であり、むしろ近年は減少傾向にある (日本産科婦人科学会「倫理委員会・登録・調査小委員会 報告」)。その主たる原因として、母体の高齢化や外的環境ストレスによる胚の質の低下が想定されてい る。つまり、妊娠率を向上させるためには胚の質を維持・改善する必要があるが、そのためにもまずは質 の実体を科学的知見によって理解し、正確に評価する手立てが重要になるであろう。
現在、評価基準として呼吸活性や遺伝子発現、エピジェネティクス、活性酸素産生、染色体正常性など が挙げられ、それらと発生率の関係が議論されている。特に染色体異常に関しては、不妊患者の8から9割 の胚において異数性や染色体モザイシズム (注:1つの胚であるにもかかわらず、染色体の構成が割球間で 異なること) があることが最近になって報告されており、その原因解明は喫緊の課題である。これら胚の 質を表すと考えられるさまざまな因子は、発生段階で時々刻々変化するものであり、かつ染色体モザイシ ズムからもわかる通り、必ずしもすべての割球で等価であるとは言えない。つまり、より正確に質を評価 しそれを理解するためには、ある瞬間、ある部分を切り取るような手法ではなく、継時的にかつ胚全体を 観察する必要がある。また、これら現象がどのように相互に関係しながら胚の質を制御しているのかにつ いて明らかにするためにも、現象を数値として表し (定量化)、それらの相関関係を記載することが重要で あると考えている。以上から我々は、胚にダメージを与えずにさまざまな現象を3次元的に継時観察でき るライブセルイメージング技術を開発し、胚の評価につなげることを目的として研究を行っている。
本教育講演では、これまで行ってきた蛍光プローブの開発、顕微鏡システムの改良、各種イメージング 用部材の改良など、初期胚ライブセルイメージングに関わる技術開発やノウハウに関して改めてレビュー する。加えて、最近取り組んでいるヒト胚の高解像イメージング (日本産科婦人科学会への登録、所属機 関の倫理審査を経て、患者へのインフォームドコンセントを得て実施) の進捗に関して報告したい。これ らを通じて、今後新規にライブセルイメージングを始められたい方の一助となれば幸いである。
❑ 略歴
平成12年 博士(農学)(筑波大学)取得
平成12年 日本学術振興会特別研究員(筑波大学応用生物化学系)
平成13年 日本学術振興会特別研究員(大阪大学遺伝情報実験センター)
平成15年 筑波大学生命環境科学研究科 講師
平成19年 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 研究員 平成23年 大阪大学微生物病研究所 特任准教授
平成27年 近畿大学生物理工学部 准教授
教育講演 1
主 題
症 例 検 討 1
症 例 検 討 2
一 般 演 題 1
主 題 1
主 題 教 育 研 修 講 演
加齢に伴う卵巣機能低下が及ぼす卵成熟への影響
-分⼦内分泌学的解析-
広島大学大学院生物圏科学研究科 生殖内分泌学 島田 昌之
卵巣機能は,出生から性成熟,加齢に伴い大きく変化することから,その経時的変化をとらえることで 雌妊孕性を理解できると考えている.特に,加齢に伴う卵巣機能の低下は不妊症や家畜の繁殖障害を引き 起こすことから,その原因を理解し,改善させる方法を考案する必要がある.しかし,モデル動物の作製 に長期間を要する(妊孕性低下までの長期間の飼育が必要) ことから基礎研究の進展も不十分であり,臨床 研究では既に妊孕性が低下したという結果を見ているため,それに至った原因はわからない.このような 問題点を克服するブレークスルーが当該領域の発展に求められている.マウスは,妊孕性が生存期間を通 して維持されるため,卵巣の加齢化を研究するモデルには適さないと考えられている.しかし,1年齢以 降の加齢マウスでは,発情周期の延長といった妊孕性低下過程を観察することができる.我々は,短期間 でこの妊孕性低下過程を観察できるモデルを得るため,これまで作製した遺伝子改変マウスの交配試験結 果を再検証した.その結果,Nrg1flox/flox;Cyp19a1Creマウスは卵巣予備能 (総卵胞残数) が同月齢の野生 型マウスと変わらないが,6ヶ月齢で発情周期の延長に伴う妊孕性低下が認められることを見いだした.こ のマウスをモデルとした研究を行うことで,以下の知見を得た.
•月齢に伴い高エストロゲン+高アンドロゲンによる高LH+低FSH環境となる.
•この内分泌環境の破綻により,二次卵胞で卵胞発育が停止する.
•この内分泌環境の破綻は,卵胞外の卵巣皮質に出現するLH依存性ステロイドホルモン産生細胞に 起因する.
•このLH依存性細胞は,退行黄体あるいは退行卵胞の卵胞膜由来である.
すなわち,1) 加齢に伴い総排卵数 (黄体形成総数) と総退行卵胞数が増加し,2) それにより退行過程で死 滅しない卵胞膜由来細胞が卵巣皮質に蓄積する.3) それら蓄積細胞がLH依存的にエストロゲンとアンド ロゲンを合成・分泌し,4) 卵胞発達に依存しない下垂体へのフィードバックループが誤誘導される.これ ら1)〜4) が,加齢による卵巣機能低下の主因であると考えられた.上記仮説を支持する結果として,繰り 返しの卵巣刺激 (過剰排卵処理) が3ヶ月齢野生型マウスの妊孕性を著しく低下させ,繰り返しの卵巣刺激 マウスや1年齢以上の野生型マウスに長期間のGnRH antagonist投与を行うと,LH依存性ステロイド産 生細胞のアポトーシスが誘導され,卵巣機能が正常化し (若返り),妊孕性が完全に回復することも明らか となった.以上の結果から,加齢に伴う妊孕性低下は,ステロイド産生細胞の卵巣皮質における蓄積に起 因するゴナドトロピン分泌異常である可能性が示された.40代女性の高エストロジェン (規定値) 症例は採 卵キャンセル率が高いことから,本仮説はマウスのみならずヒトや他の動物種にも当てはまると想定で き,GnRH agonistやantagonistの長期間投与という治療法の有効性を示唆している.
❑ 略歴
1998年 広島大学大学院生物圏科学研究科博士課程前期修了 修士(農学)
1999年 広島大学生物生産学部 助手
2003年 山口大学連合大学院獣医学研究科 博士(獣医学)修得
2004〜2005年 アメリカ合衆国Baylor College of Medicine 客員研究員 2005年 日本畜産学会 奨励賞
2006年 広島大学大学院生物圏科学研究科 助教授
2007年 広島大学大学院生物圏科学研究科 准教授
2010年 (財)農学会 農学進歩賞,広島大学学長表彰
教育講演 2
主 題
症 例 検 討 1
症 例 検 討 2
一 般 演 題 1
主 題 1
主 題 教 育 研 修 講 演
着床前遺伝子診断の新たな解析技術がもたらす 重篤な疾患への福音
慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室
○佐藤 卓、末岡 浩
着床前遺伝子診断 (PGD) は,体外受精で発生した胚の遺伝的状態を診断する技術である.単一遺伝子 病のためのPGDが,欧米では既に確立した医療サービスと見なされる一方で,わが国では,固有の生命倫 理観に基づき多くの配慮の上で実施されている.近年,その社会的認知度は高まり,クライエント数と対 象疾患は増加・多様化している.慶應義塾大学病院を来訪するクライエント家系の遺伝病は,現在まで 25種以上に及び,うち60組以上のカップルに160周期 (採卵企図周期) を超えるPGDが実施され,30例以 上の妊娠が確認されている.
PGDの技術的問題の多くは標的細胞の稀少性に起因し,その技術開発とは,単一細胞解析の挑戦と換言 できる.従来から2段階PCR法を基本技術に採用し,変異の直接解析により移植胚を決定してきたが,そ の実施上で直面した様々な問題を克服しながら,診断精度の向上がなされてきた.導入の当初はX連鎖性 疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィーへの対応が中心であったが,近年は福山型筋ジストロフィー や脊髄性筋萎縮症等の劣性遺伝病の例が増加し,特に複合ヘテロ接合体で発症する事例では,複数遺伝子 の同時解析が要求される.またトリプレットリピート病の代表である筋緊張性ジストロフィーの事例で は,伸長したCTGリピート数を直接PCR解析することがしばしば困難であり,この際,変異近傍の複数の 遺伝子多型の情報に基づく家系内連鎖解析の併用が,検査の高い安全域と精度を保つ上で効果的である.
このような多遺伝子座の解析に先立って,全ゲノム増幅法 (WGA) を導入し,その最適化を検討してきた.
現在は,簡便な操作で高いDNA複製能をもつ非PCRベース技術のWGAであるmultiple displacement amplification法により実用されている.
またWGA技術がもたらす副次的な効果の検証に注目する人々も少なくない.転座等の染色体構造異常 に起因する流産予防のためのPGDが実施されると同時に,染色体異数性の検出を目的とする着床前染色体 スクリーニング (PGS) も,科学的有用性の検証が必要であるとの議論がなされつつある.この染色体診断 のための技術は,マイクロアレイ法が一般的になりつつあり,WGAにはPCRベースの技術が広く用いら れており,PGDの目的や使用する解析プラットフォームに応じて,異なる原理をもつWGAが使い分けら れている.次世代シーケンサ (NGS) もまた新たな選択肢として,発展的に応用が議論されている.一方 で,新しい技術の導入が生まれてくる児にいかなる影響をもたらすかについて,十分な配慮が必要となる.
さらに最重要と考えられるのが,PGDを求めるクライエントに対する関与や助成であり,この課題につい ての議論を進めたい.
❑ 略歴
平成14年 岩手医科大学医学部卒業
平成14年 慶應義塾大学医学部初期臨床研修医開始(産婦人科学教室)
平成18年 慶應義塾大学医学部 助手 平成22年 東京歯科大学市川総合病院 助教 平成23年 慶應義塾大学医学部 助教 現在に至る
【主な免許・資格】日本産科婦人科学会
【専門医・指導医】日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医、日本生殖医学会 生殖医療専門医
教育講演 3
主 題
症 例 検 討 1
症 例 検 討 2
一 般 演 題 1
主 題 1
主 題 教 育 研 修 講 演
雌性生殖器における精子サバイバル術
1明治大学農学部 生命科学科、2桐蔭横浜大学 先端医用工学センター、
3東京大学大学院 理学系研究科、4国立成育医療研究センター 細胞医療研究部
○河野 菜摘子1、康 宇鎭1、吉田 薫2、吉田 学3、宮戸 健二4
多くの動物において、精子は卵に受精するために非常に特化した形態・機能を有しており、精子形成が 完了した時点で遺伝子の転写および翻訳は行われていないと考えられている。一方、精子とともに雌生殖 器へ運ばれる精漿には、精子の運動能や受精能を制御し、受精効率を高める働きがあると古くから考えら れてきたが、実際に体内で観察を行うのは困難であった。今回、精嚢から分泌される精漿タンパク質 Seminal Vesicle Secretion 2 (SVS2) に着目し解析を行うことで見えてきた、精漿タンパク質および子宮 の役割について報告する。
SVS2を欠損させた雄マウスは、野生型の雄と同様にIVFでは高い受精率を示したが、自然交配では産仔 がほとんど得られなかった。その原因の一つとして、マウス交尾特有である腟栓の形成不全が考えられた が、腟栓の代替物としてシリコンを用いて人工授精を行ったところ、精子は子宮内に留まるものの、SVS2 非存在下では依然として受精率が極めて低い結果となった。一方、同様のシリコンを用いた実験において、
SVS2存在下では精子は高い受精能を示したことから、SVS2は体内受精に必須な因子であることが明らか
になった。
さらに精子のミトコンドリアがDsRed、先体がGFPの蛍光を持つ遺伝子改変マウス (RBGS002) を用い て解析したところ、野生型の雄マウスの場合、子宮内精子の約9割がGFPの蛍光を有していたのに対し、
SVS2欠損マウスの場合では約3割と有意に低下している様子が観察された。電子顕微鏡を用いて精子細胞 膜の状態を調べたところ、SVS2非存在下では精子は子宮内で細胞膜が破壊され、死滅していることが明 らかとなった。回収した子宮内液を体外で精子に添加したところ、有意に精子の生存性が低下し、精子が 凝集する様子が観察された。これらの結果から、子宮内には精子を死滅させる液性因子が存在すること、
また精漿中のSVS2はその因子から精子を保護する作用があることが明らかになった。
以上のことから、子宮内では細菌と同様に精子は異物として認識されると考えられ、精子は生体防御系 からの攻撃に対象になること、さらに、その攻撃から精子を守るために精漿成分のSVS2が重要な役割を果 たしていると考えられた。この子宮内における攻撃と防御のバランスが、競合的な精子選抜 (Competitive Sperm Selection) を引き起こし、選ばれた精子が卵管内で待つ卵と受精可能となる仕組みが存在すること が予想される。近年、SVS2は精子細胞膜コレステロールを高いレベルで維持することが報告されたこと から (Araki et al., 2014)、精子選抜の基準の1つに細胞膜コレステロールも含まれる可能性がある。ヒト ではSVS2の相同遺伝子であるSemenogelin-I, IIが同様の機能を持つと期待されるため、不妊原因の一つ として解析を進めたいと考えている。
❑ 略歴
2003年3月 広島大学大学院生物圏科学研究科生物生産学専攻博士課程前期 卒業
2007年3月 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻博士課程 卒業
2007年4月〜2009年3月 筑波大学大学院生命環境科学研究科 ポスドク
2009年4月〜2015年3月 国立成育医療研究センター生殖・細胞医療研究部 ポスドク
2015年4月〜現在 明治大学農学部生命科学科 専任講師