担 当 部 A-SMGC_PT
担 当 者 ○二瓶 子朗,宮崎 裕己,蔭山 康太,古賀 禎,青山 久枝,小松原 健史 研究期間 平成16年度〜平成20年度
3.研究の成果
平成16年度は,A-SMGC全体システムの検討と基本設 計を行い,主要機能を模擬するテストツールを製作した。
また,監視機能については,統合型監視センサ用インター フェイス装置を製作して複数の監視センサを使った連接試 験を実施した。平成16年度に実施した具体的な研究内容は 以下の通りである。
3.1 主要機能を模擬するテストツールの製作
⑴ 経路設定機能模擬テストツール
航空(管制対象)機の推奨経路を生成するアルゴリズム の検討を目的として同機能のテストツールを製作した。本 テストツールは,将来的には管制機能模擬テストツールと 連接し,同テストツールより経路計算に必要とされる各種 情報を受け取るとともに,同テストツールに対して推奨経 路の情報提供を行う予定である。
現時点では,テストツールでは推奨経路計算機能に加え て,シミュレーション実施機能を有し,テストツール単独 での動作を可能としており,推奨経路の計算結果の検討を 可能としている。
推奨経路計算機能では,空港面の各誘導路をエッジ,誘 導路の交差点などをノードとしてモデル化し,スポットか ら滑走路進入点(出発機),および滑走路離脱点からスポッ ト(到着機)までの経路計算を行う。現時点では,単純な 最短経路に基づいて推奨経路の計算が行われる。
本テストツールでは,各エッジへの異なる重み付けの付 与や,交差点での方向転換への仮想的な距離の付与を可能 としたデータ構造を用いることで,空間的な経路長以外の 通過困難度などの要素を考慮した経路計算を可能としてい る。また,同データ構造では,次の移動を禁止する交差点 の指定なども可能であり,通過困難度や,次の移動が禁止 された交差点の指定などは,経路計算時に考慮される。
シミュレーション実施機能においては,推奨経路計算機 能により計算された経路に基づいて航空機の運航を模擬す る機能を実現した。シミュレーション実施中,出発機は予 め定められた定義ファイルに記述された移動開始予定時刻 に基づいて空港面内の移動を開始する。同様に,到着機は,
着陸予定時刻に基づいて滑走路に到達し,滑走路離脱後に 空港面内の移動を開始する。なお,連続する到着機の着陸 予定時刻が定められた時間間隔値を満たしていない場合に はシミュレーション実施時の着陸時刻は間隔値を満たすよ うに変更される。
シミュレーション実施中の航空機の近接を回避するた め,エッジのグループとしての登録を可能とするデータ構 造を用いた。また,シミュレーション実施中,任意の航空
機が通過予定であるエッジ・グループを他の航空機が通過 中には,当該航空機はエッジ・グループの入り口で待機を 行う機能を実装した。この結果として,シミュレーション 実施中の航空機の接近回避を可能とした。
また,シミュレーション結果として,各航空機の使用経路,
出発機の移動開始,滑走路到達時刻,到着機の滑走路離脱 時刻,スポット到達時刻を記録する機能を実装したため,
空港面内の移動時間に基づいたアルゴリズムの効率性など の検討が可能である。
実運用における空港面での経路決定においては,空間的 な経路長に加えて,他の航空機との兼ね合いによる誘導路 の割り当てや,出発機の予定飛行経路,機種性能などの各 種条件を勘案する必要があると考える。
今後,実運用における使用経路決定手法などについて調 査を進めるとともに,テストツールの拡張により,実運用 における各種の条件を考慮した推奨経路生成の実現を目指 す。
⑵ 管制機能模擬テストツール
A-SMGCSの一つの機能として管制業務に有効な情報 を提供することを目的とする管制機能について,今年度 は管制現場の業務実態調査をはじめとし,管制機能を検証 できるA-SMGCS管制機能模擬テストツールの製作を行っ た。
本テストツールは,空港を離着陸する航空機及び滑走路 内に進入する可能性のある移動体(車両等)に関して,空 港面におけるその挙動を模擬し,A-SMGCSの動作と共に 管制官に対して表示等出力画面のイメージにより情報提供 する方法,並びに管制官による入力等操作方法を検討する 目的で製作した実験装置である。
まず管制機能の本質的な要素,つまり管制官の管制業務 支援に必要な情報を検討するため,管制現場においての調 査を行った。A-SMGCSを活用できる場所として東京空港 事務所での飛行場管制業務,当該官署の飛行場レイアウト による特性,通常時における管制運用状況について等の調 査をして必要とされる情報の抽出・検討を行った。
管制機能模擬テストツールは,A-SMGCSの模擬機能と 移動体等の模擬部分であるシナリオ作成機能を有してい る。A-SMGCSの模擬機能としては,A-SMGCSの主要機 能とされる空港面の移動体(航空機,車両等)の表示と共 に,滑走路等誤進入,異常接近予測などの警告機能も表示 対象とした。また,将来的には,航空機に対するスポット と滑走路間の推奨誘導経路についてもA-SMGCSの機能の 一つとして表示対象とした。
シナリオ作成機能では,各シナリオにおいて使用滑走路,
灯火,A-SMGCSの運用状況が設定できると共に,航空機
においてはタグ付け及びスポットから離陸・着陸直前の特 定地点間の模擬を可能とした。車両においてもタグ付けを 可能としている。
本テストツールは,表示することだけを目的とせず,そ の出力方法を画面のイメージにより検討可能としている。
管制塔(VFR室)に設置する想定で,画面や出力情報の レイアウト,配色,文字サイズなどが主とした検討項目と なっている。特に移動体自体の表示方法や警告表示につい ては,管制官が事故を回避するためにも瞬時に該当場所と 対象移動体に気付けることを大前提に評価を行う。
また,管制官による入力等に対しての操作性についても 検討の対象としている。これは飛行場管制業務が管制塔か ら空港面を見渡す目視の業務であること,つまり画面ばか り注視していることができないので,操作のために手惑う ようでは実用価値が低いと判断される。
入力に対するレスポンスについても表示と共に時間的な 面が重要視される。従って,見るために操作を必要とする 情報と常時画面上に表示出力されていてほとんど操作を必 要としないで見ることができる情報との切り分けも大事な 観点と思われる。
今後は,画面表示における評価,操作性における評価を 十分行うと共に,推奨経路生成機能との連接,統合型監視 センサーとの連接に伴う情報表示を実運用に近い形で行っ ていきたい。
3.2 統合型監視センサ用インターフェイス装置
統合型監視センサは,複数の監視センサのデータを融合 し,信頼性の高い監視データを出力する装置である。ある 監視センサからのデータが欠落した場合でも,他のセンサ によりデータの補完を行い,信頼性の高い監視を継続する。
平成16年度は,統合型監視センサのうち,ASDE,SSR モードS,車両監視システムの3つのセンサ用インター フェイス部を中心に製作した。図1は,統合型監視センサ の構成図を示す。統合型監視センサは,ローカル処理部と 統合処理部に大別され,今年度は図1の太線で囲まれた部 分を製作した。
ローカル処理部では,センサ毎に各種処理を行う。基準 時刻追加処理では,入力データに対して基準時刻を付与す る。基準時刻は,NTP(Network Time Protocol)を用いて,
GPS時計によるタイムサーバから取得する。これにより高 精度な時刻をデータに付与する。続いて,座標変換処理で は,ASDE,モードSの極座標(ρ-θ)をWGS84座標系
に変換する。これにより,システムで共通の座標系が利用 できる。データ変換処理では,全ての監視センサに共通の フォーマットにデータを変換する。共通フォーマットとし ては,EUROCONTROLで提案されたASTERIX10と互換 性を持つフォーマットを採用した。このような共通フォー マット化により,新たなセンサの追加が容易にできる。
データ変換後は,統合処理部での相関・追尾処理に移る。
相関処理では,センサ間データの相関の有無を判定する。
さらに,相関がありと判定されると複数のデータを1つの データとして追尾し,最適な位置を出力する。
今年度は,センサ間のデータ相関処理の検証をするため,
相関処理のみを製作した。
平成17年には,追尾処理・最適出力処理を追加する。
相関処理後は,出力メッセージ処理に移る。本処理では,
相関・追尾処理からデータをASTERIX11と互換性のある フォーマットに変換し,上位装置に出力する。
平成17年3月には,試作した統合型監視センサ用イ ンターフェイス装置を使用した実験を行った。AVPS,
ASDE,SSRの各センサの出力に対して,基準時刻追加処 理,座標変換処理,データ変換処理が正常に動作すること を確認した。
図2は,3つの監視センサ間のデータ相関処理の検証例 を示す。
また,図3は,3つの監視データについて,AVPSを主 センサ,ASDEをサブ1,SSRをサブ2としてオフライ ンで選択処理した場合の補完処理出力例を示す。同図は,
AVPSが欠落した場合でも,他のセンサで補完されること を示す。
4.考察等
今年度実施したA-SMGC全体システムの検討と基本設 計を基に,次年度から近い将来実現可能な技術水準を前提 とした具体的なシステム開発に着手する。
このうち,特に監視機能については,これまでの技術の 蓄積を生かして統合型監視センサ用インターフェイス装置 を試作し基礎実験を行った。その結果,各センサの出力デー タに対する基準時刻追加処理,座標変換処理,データ変換 処理が正常に行われることを確認するなど,統合型監視セ ンサの開発に向けた基礎データを収集することができた。
今後はマルチラテレーションとの連接,複数のセンサ追尾 機能の追加等を行って統合型監視センサの早期開発を目指 す。