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ドキュメント内   博士論文   (3.07MB) (ページ 33-43)

2. ApOPSS の酵素触媒反応における F225 の役割

2.3. Results

2.3.1. X線結晶構造解析

図2.6に野生型の結晶を示した。野生型の結晶は0.1 M Na HEPES buffer, pH 7.5, 27% (v/v) 2-propanol, 10-12% (v/v) PEG 4000, 12 mM TCEP-HCl、23°C、

約2週間の条件で得られた。結晶の形はテトラゴナルバイピラミッドであった。

結晶の最長部を計測すると、小さいもので0.05 mm、大きいもので0.4 mmの ものが得られた。大きさの平均は約0.2 mmであった。

このような結晶から得られた野生型-AA 複合体と野生型-L-システイン複合体 の最終精密化後のデータを表2.1に示した。図2.7 (p.33)に示した電子密度マッ

プはAAとL-システインを覆っていた。ApOPSSの残基も同様であった。その

ため、目的の構造が得られたと判断した。

2.3.2. 反応間の構造比較

野生型 free、野生型-AA 複合体、野生型-L-システイン複合体の全体構造の重

ね合わせを行ったところ、残基のCを基準にしたRMSDsは0.26~0.36 Åであ った。他のOASS/OPSSに見られるような顕著な構造変化は見られなかった。

次に残基レベルでの活性部位の構造比較を図2.8 A (p.34)に示した。一番側鎖 に動きがみられたのはR297であった。R297は活性中心よりもポケットの出入 り口に近い。この残基は OPS を活性部位に誘導する残基として知られている [66], [76]。R297に次いで動きの大きい残基はF225であった。図2.8 B (p.34) に F225 の動きを示した。1 次基質が入り中間体ができた時の RMSD (野生型 freeと野生型-AA複合体間)は、F225の方がR297よりも大きかった。そこで、

F225残基の役割の推定を試みた。

32 表 2.1. 回折データと最終構造の精密化データ。

a 括弧は最外殻分解能での値である。

l

Data collection Wt ApOPSS-AA comolex Wt ApOPSS-cysteine complex Wavelength (Å)

Space group

Unit-cell parameters (Å) a = b

c

Resolution range (Å)

Total No. of observed reflections No. of unique reflections Average I/s(I)

Rmerge

Completeness (%) Refinement

No. of atoms Protein PLP MPD AA Cysteine Water

Resolution used in refinement (Å) Rwork/Rfree

Wilson B factor (Å2) RMSD, bond distances (Å) RMSD, bond angles (°) Mean overall B factor (Å2) Average B factors (Å2) AA

Cysteine

Number of residues in Ramachandran plot Most favoured regions (%)

Allowed regions (%) Outlier region (%) PDB code

0.9 P43212

74.151 275.961

50.0-2.15 (2.20-2.14)a 428145

43787 59.8 (19.4)a 0.071 97.8 (95.8)a

5920 ----16 42 ----349 32.9-2.14 0.148/0.216 18

0.024 2.0 20

11.8

----96.5 2.8 0.7 5B3A

0.9 P43212

74.135 275.812

50.0-2.15 (2.21-2.15)a 546227

43621 17.0 (4.7)a 0.101 93.5 (93.8)a

5929 15 8 ----14 268 49.1-2.15 0.180/0.246 28

0.024 2.1 37

----46.5

97.4 2.4 0.2 5B36

33

図 2.6. 得られた野生型の結晶。1 つのドロップに得られた結晶であり、この大きさであ ると 2 l ドロップ中に 5 個程度形成された。

図 2.7. 精密化後の複合体と Fo-Fcオミットマップ。(A)AA と(B)PLP と L-システイン のオミットマップ(構造が入っていないときの電子密度マップ)を 3 sレベルで表示した。こ のオミットマップに精密化後の立体構造を重ね合わせた図である。AA と PLP とL-システ インを Ball & Stick 表示した。原子の色は、赤:O、緑:C、青:N、黄色:S、橙:P で ある。図は Pymol で作成した。

(A) (B)

AA

PLP

Cysteine

34

図 2.8. 側鎖の RMSD と各構造における F225 の位置の違い。 (A) 野生型 free、野生 型-AA 複合体、野生型-L-システイン複合体の側鎖位置の RMSD の比較である。(B)各構 造を重ね合わせ、F225 を表示した。野生型 free:緑、野生型-AA 複合体:青、野生型-L -システイン複合体:ピンクで色分けした。スティックでは PLP と F225 を示した。Surface 表示のモデルは ApOPSS、黒丸は活性ポケットの入り口を示す。図は MOE で作成した。

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

RMSD (Å)

free ApOPSS & ApOPSS_AA complex

ApOPSS_AA complex & ApOPSS_cysteine complex

(A)

(B)

PLP

F225

35

2.3.3. L-システイン合成の活性測定

ApOPSSのF225の役割を確認するためにF225A変異体を作製した。野生型

とF225A変異体の活性を図2.9と表2.2に示した。結果として、OPS との親和 性の差はほとんどなく、kcat/Kmは4.8倍の差であった。一方、OASとの親和性 の差もほとんどないが、kcat/Kmは50倍の差であった。

2.3.4. KAA測定

AA形成度を表すKAAの結果を図2.10 (p.37)と表2.2 (p.38)に示した。KAAの 値が小さいほどAAの形成度が高い。F225AのAA形成度は、OPSを基質とし たとき野生型の12 倍低下し、OAS を基質としたときには 27倍低下していた。

L-システインの合成活性と同様にF225のAlaへの変異はOASからのAA形成 に大きく影響した。

2.3.5. AAの安定性

図2.11 (p.38)にAA のピーク減少時間の測定結果を示した。同じ基質濃度で

OPSを加えたとき、F225A変異体は野生型よりもAA消失に要する時間が5倍 程度速かった。

2.3.6. ピルビン酸測定

時間経過に伴う吸光度変化から得られる1次反応速度は、野生型が4.8×10-5 sec-1、F225A変異体が8.5×10-5 sec-1であった。AAの分解速度は1.8倍F225A 変異体のほうが速かった。

また、酵素とOPS濃度を2.3.5と同じにし、NADHの消費量を算出した。酵 素とOPSを5分インキュベーションしたときのNADH消費量は、野生型では 0.101 mM、F225A変異体では0.939 mMであった。野生型とOPSを20分間 インキュベーションしたときのNADH消費量は、0.958 mMであった。

2.3.7. 1次基質とのドッキングシミュレーション

OPS/OASのドッキングシミュレーションの結果を図2.12 (p.39)に示した。野 生型ではどちらも脱離基が溶媒側(活性部位の入り口方向)に向いていた。一方、

F225A変異体では脱離基がF225のフェニル基が存在した部分に位置していた。

2.3.8. 立体構造の活性部位の表面表示

野生型とF225A変異体の活性部位における分子表面を図2.13 (p.40)に示した。

野生型よりもF225A変異体のほうが活性部位のポケットの広がりが大きかった。

36

図 2.9. 野生型と F225A 変異体の基質濃度と比活性の関係。丸が野生型、三角が F225A 変異体である。プロットは 3 回測定中の平均値であり、エラーバーはその標準偏差である。

1 U は 1 分間に 1 mol のL-システインを生成する ApOPSS の量である。野生型にお いて、(A)は Na2S を 4 mM に固定し OPS 濃度を 30-120 mM の範囲で比活性を算出し、

(B)は OPS を 80 mM に固定し Na2S 濃度を 1-6 mM の範囲で比活性を算出した。F225A 変異体において、(A)は Na2S を 4 mM に固定し OPS 濃度を 20-120 mM の範囲で比活 性を算出し、(B)は OPS を 80 mM に固定し Na2S 濃度を 0.5-6 mM の範囲で比活性を 算出した。

0 200 400 600 800 1000

0 20 40 60 80 100 120 140

比活性(U/mg)

OPS (mM)

0 200 400 600 800

0 2 4 6 8

比活性(U/mg)

Na2S (mM)

(A)

(B)

37 図 2.10. AA の形成度測定の結果

使用酵素と 1 次基質は、(A)野生型、OPS、(B)野生型、OAS、(C)F225A 変異体、OPS、

(D)F225A 変異体、OAS である。横軸が基質濃度(M)、縦軸が 470 nm の吸光度であ る。

A470A470

A470A470

OPS (M)

OPS (M)

OAS (M)

OAS (M)

(A) (B)

(C) (D)

38 表 2.2. 野生型と F225A 変異体の活性比較。

括弧内の値は、それぞれ 3 回の測定から算出された平均値の標準偏差である。

a 決定されなかった項目である。

KAAの値が小さいほど中間体の形成度が高い。

野生型 F225A

変異体 野生型 F225A

変異体 OPS

sulfhydrylation reaction

OAS

sulfhydrylation reaction Toward OPS and

OAS Km (mM) kcat (sec-1) kcat/Km

(103·M-1·sec-1)

57 (9.2) 630 (44)

11

65 (5.3) 150 (6.0)

2.3

11 (2.1) 38 (2.6)

3.5

37 (9.3) 2.6 (0.29)

0.07

Toward Na2S Km(mM) kcat(sec-1) kcat/Km

(103·M-1·sec-1)

3.8 (0.59) 730 (63)

190

1.6 (0.14) 130 (4.2)

81

0.39 (0.096) 33 (1.3)

85

a

a

a

Apparent KAA(M) 12 (0.24) 140 (11) 55 (1.8) 1500 (520)

l

図 2.11. AA のピーク減少時間測定の結果。黒の線と灰色の線は、それぞれ野生型と OPS、

F225A 変異体と OPS の測定結果である。

時間(分) A470

39

図 2.12. ApOPSS と 1 次基質とのドッキングシミュレーション

(A)野生型-OPS、(B)F225A 変異体-OPS、(C) 野生型-OAS、(D) F225A 変異体-OAS のドッキング結果である。赤は O 原子、青は N 原子、灰色は C 原子、ピンクは P 原子、

黄色は ApOPSS の分子表面を示す。両方向の矢印は活性ポケットの出入り口を示してい る。図は MOE で作成した。

(B) (A)

PLP PLP

K127 K127

F225 F225A

OPS OPS

(D) (C)

PLP PLP

K127 K127

F225 F225A

OAS OAS

40

図 2.13. 活性部位の分子表面。(A)野生型、(B)F225A 変異体の分子表面を灰色で示し た。AA と F225 をスティックで示した。この図は野生型-AA 複合体 (PDB ID: 5B3A) を用いており、MOE により作成した。

(A) (B)

F225 F225A

AA AA

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