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PFF(Preparing Future Faculty)プログラムで教えられるルーブリック評価

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3.2.  PFF(Preparing Future Faculty)プログラムで教えられるルーブリック評価

アメリカの大学院博士課程で学ぶ院生の多くは、将来大学で教える研究者になるために「将来 の大学教員養成(Preparing Future Faculty、以下PFF)プログラム」と呼ばれるプログラムを履 修し、修得することが求められている。そのプログラムには、TA(Teaching Assinstant)のため の研修と連続して、ルーブリック評価の研修や教育実習の履修、ティーチング・ポートフォリオ の作成などを求められることが多い(林・沖・松村、2012 )。

ルーブリック評価は、大学教員にとって①評価時間の短縮、②グレーディングの一貫性と公平 性の確保、③他者とのコミュニケーションの促進、④自身の教育活動へのフィードバック、⑤授

表 1 批判的思考(Critical Thinking)の VALUE Rubric

最高レベル 中間レベル 標準レベル

4 3 2 1

1.課題の説明 批判的に考察されるべき 論点や問題が明確に記述 されているとともに包括 的に表現され、十分に理 解するために必要なすべ ての関連情報を伝達して いる

批判的に考察されるべき 論点や問題が記述、表現 さ れ、 理 解 が 不 作 為 に よって損なわれない程度 に明らかにされている。

批判的に考察されるべき 論点や問題が述べられて いるが、表現については 2、3 の 未 定 義 の 用 語 や 未検討の曖昧な語句、未 定の境界、未知の背景が 残っている。

批判的に考察されるべき 論点や問題が、明快な説 明や叙述抜きで述べられ ている。

2.根拠資料

―自らの見解 や結論を裏付 けるために情 報を調べ用い ているか

情報が包括的な分析や統 合に発展させるに十分な 解釈/評価を備えた出所 から得られている。

専門家の見解が徹底的に 批判・検証されている。

情報が整合的な分析や統 合に発展させるに十分な 解釈/評価を備えた出所 から得られている。

専門家の見解が比較的よ く批判検証されている。

情報がある程度解釈/評 価できる出所から得られ ているが、整合的な分析 や統合に発展させるには 不十分である。

専門家の見解がほとんど 無批判に受け入れられて いる。

情報がまったく解釈/評 価できない出所から得ら れている。

専門家の見解が無批判に 受け入れられている。

3.文脈の影響 と仮定

整合性、体系性において 完璧に自分および他者の 推論を分析し、自らの立 ち 位 置(position) を 説 明する際、文脈との関連 を 注 意 深 く 評 価 し て い る。

自らの立ち位置(position)

を説明する際、自分およ び他者の推論と他のいく つかの関連する文脈を識 別している。

2、3 の 推 論 に 批 判 的 検 証を加えている。

自らの立ち位置(position)

を述べる際、いくつかの 関連する文脈を識別して いる。

自分より他者の推論を優 遇したり、またその逆に なるところが見られる。

(時として単なる主張を 推論として扱うことがあ るが)新たな推論を提示 しようとしている。

自らの立ち位置(position)

を 述 べ る 際、2、3 の 文 脈を識別しようとしてい る。

4.学生の立ち 位 置( 展 望、

論点/仮説)

具 体 的 な 立 ち 位 置( 展 望、論点/仮説)が独創 的であり、課題の複雑性 が 十 分 に 説 明 さ れ て い る。

立ち位置(展望、論点/

仮説)の限界が認識され ている。

他者の見解が、自らの立 ち位置(展望、論点/仮 説)に統合されている。

具 体 的 な 立 ち 位 置( 展 望、論点/仮説)によっ て課題の複雑性が十分に 説明されている。

他者の見解が、自らの立 ち位置(展望、論点/仮 説)に包含され認識され ている。

具 体 的 な 立 ち 位 置( 展 望、論点/仮説)によっ て課題の異なる側面が認 識されている。

具 体 的 な 立 ち 位 置( 展 望、論点/仮説)が述べ られてはいるが、単純化 されすぎ、自明である。

5.結論と関連 す る 成 果( 導 き出されたこ とと含意する もの)

結論と関連する成果(導 き出されたことと含意す る も の ) が 論 理 的 で あ り、学生に周知された評 価情報と、根拠を示す能 力や、正しい順番で議論 を進める展望が反映され ている。

結論が対立する見解を含 む一連の情報に論理的に 結びつけられている。

関連する成果(導き出さ れ た こ と と 含 意 す る も の)が明快に識別されて いる。

結論が情報に論理的に結 びつけられている(なぜ ならば情報とは直接的な 結論に適合するように選 択されるため)

2、3 の関連する成果(導 き出されたことと含意す るもの)は明快に識別さ れている。

結論が議論されたいくつ かの情報にちぐはぐに結 びつけられ、関連する成 果(導き出されたことと 含意するもの)が過度に 単純化されている。

業改善への貢献、⑥学生の学習状況の把握に有効とされ、全米でルーブリックに関するもっとも 有名な本として紹介される ”Introduction to Rubrics” の表紙においても「(ルーブリックは)成績 評価の時間を節約し、効果的なフィードバックを行い、学生の学びを促進する評価ツール」だと 書かれている。

また、ルーブリックは学生にとっても①どう評価されているかの明確化、②授業への関与(参 画)の促進、③公平性に対する認識の促進、④批判的な思考の支援があるとされ、さらにカリ キュラム自体にとっても、①プログラムの改善につながり、②非常勤講師やライティング・セン ター等との協働作業や共通理解を促し、③学部・学科を横断し、一貫性を保ち、大学の教育目標 とリンクするために有効だとされている(Dannelle D. Stevens & Antonia J. Levi Dannelle D、2004、

pp.17-28 )。

表 2 はアメリカで標準的に用いられるルーブリック・テンプレートであるが、左縦軸に評価指 標として「到達目標もしくはパフォーマンス」が書かれ、上横軸には評価基準として「初級

(Beginning)」「発展(Developing)」「達成(Accomplished)」「模範(Exemplary)」と、評価指標 を満たした場合の「特徴の記述(Description of indentifiable performance characteristics)」が書か れている。

評価指標には、ある授業の総括的評価に用いる場合には授業の到達目標が書かれるほか、レ ポートやプレゼンテーションの形成的評価や採点の際にはそのための観点がパフォーマンスとし て記述されると考えればよい。

一方、レポートやプレゼンテーションなど授業内における個々のパフォーマンスの形成的評価 や採点にルーブリックが活用される場合には、ルーブリックの事前提示や結果のフィードバック がライティング・センター等、他機関との協働学習支援や、学生への振り返りに欠かせない存在 となっている。

表 2 Rubric Template(Huba & Freed, 2000 )

1.Beginning 2.Developing 3.Accomplished 4.Exemplary 1. Stated Objective

or Performance Description of identifiable performance characteristics reflecting a failure

level of performance

Description of identifiable performance characteristics

reflecting development and movement toward

mastery of performance

Description of identifiable performance characteristics reflecting mastery

of performance

Description of identifiable performance characteristics

reflecting the highest level of

performance

2. Stated Objective or Performance

図 2、図 3 はFilm Presentationの活動に関するルーブリックで事後に学生にフィードバックさ れたものの例である(Dannelle D. Stevens & Antonia J. Levi Dannelle D、2004、p.80、p.77 )。一 人一人の学生や一つのグループに対して、評価指標と評価基準に照らした特徴の記述に囲みが記 入されたり、チェックボックスにチェックが入れられたりして、その個人やグループがどのよう な点で優れていたか、あるいは問題があったかが一目瞭然となるよう配慮されている。とくに図 2 において「プレゼンテーションが所定の時間内/外に終わった(The presentation ran over or

under time limit)」について、「時間外(over)」に丸がつけてあるなど、極めて親切なフィードバッ

クが行われている例であろう。

図 2 学生個人(あるいはグループ)へのフィードバック例 1

図 3 学生個人(あるいはグループ)へのフィードバック例 2(チェックボックス式)

4.日本の高等教育における導入の手順

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