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NPE 期(1994 年~2004 年)

2.5. 市 1. 行政部

3.5.1. NPE 期(1994 年~2004 年)

(1)歳入 この時期の歳入を費目別に表3.6. に示した。1994年のLPP施行以降、歳入

の合計は増加の一途を辿り、1999年に2700万ボリビアーノとピークを示し、翌2000 年から2001年にかけて半減したのち、2002年から2004年に再び増加傾向がみられる。

各年度ともに歳入のなかで共同参画税の占める割合が最多を示し、2000年以降の減少 は、第2章でふれた全国レベルの傾向とも一致している。その背景にはバンセル政権下 での地方分権化政策の変更による影響が考えられるが、全国レベルと比較すると減少割 合は顕著ではない。

一方、歳入に占める割合が最小値を示しているのは、独自財源である。2001年までは 主としてこれら2 つの財源で占めているが、2002年度以降は重債務貧困国(Heavily Indebted Poor Countries、以下HIPC)および社会投資基金(Fondo de Inversión Social: FIS)が 加わり、歳入は一気に2倍近くにまで増加がみられている。HIPCとは債務危機に直面 している後発発展途上国を指し、IMFと世界銀行によって、債務救済の対象国とし て 41カ国が認定されている。ボリビアは世銀、IMFによるHIPCイニシアティブの適用を 受けた最初の国々のひとつで、HIPIC資金については、国民対話法(Ley No. 2235 Dialogo

Nacional)に規定されている。一方、FISは、NPEにおける資本化に伴う収益により設立

された基金で、教育、医療、社会サービス分野に特化したプログラムに予算配分がおこ なわれている。

表3.6-(1)LPP事業における歳入の内訳(1994年~2004年)

1994 1995 1996 1997 1998 1999

共同参画税 1,665,397 97 6,500,389 99 7,862,427 57 10,992,686 94 13,102,532 82 15,990,756 58

独自財源 43,671 3 91,023 1 214,952 2 425,000 4 475,000 3 400,000 1

その他 9,953 1 0 0 5,635,786 41 260,000 2 2,332,350 15 11,001,972 40

合計 1,719,021 100 6,591,412 100 13,713,165 100 11,677,686 100 15,909,882 100 27,392,728 100 出所:POA1994~1999年を基に筆者作成。

単位;ボリビアーノ(為替レートUS$=6.9)

表3.6-(2)LPP事業における歳入の内訳(1994年~2004年)

2000 2001 2002 2003 2004

共同参画税 14,693,927 92 12,792,672 80 12,281,429 40 12,167,361 39 14,818,664 57

独自財源 588,800 4 500,000 3 500,000 2 597,751 2 603,682 2

HIPCII 0 0 5,767,689 19 8,848,850 28 6,653,760 26

FPS 0 0 8,070,683 26 9,874,387 31 3,706,838 14

FIS-MAR 0 0 2,169,491 7 0 0

前期繰越金 0 0 1768138 6 0 0

その他 687,515 4 2,678,560 17 42,665 0 0 0

合計 15,970,242 100 15,971,232 100 30,600,095 100 31,488,349 100 25,782,944 100 出所:POA2000~2004年を基に筆者作成。

単位;ボリビアーノ(為替レートUS$=6.9)

(2) 予算配分と実施事業

アチャカチ市ではLPPの施行以降、ボリビア初の地方選挙がおこなわれた1995年12 月までの間に、中央広場、教育、医療、環境保全、上下水道、電化などの公共事業が市 街地を中心に実施された。しかし一方で、市の管轄内でもより遠方の共同体では、こう した事業は手薄になっていた(Blanes 2000: 53)。ブラネスによるこの報告から、すでに 20年近い月日が経過しているが、彼の指摘どおり、都市偏向型の公共事業と農村部の 周縁化が起きているのだろうか。ここではまず、LPPが制定された1994年から1996年 までの3年間における公共事業の実施状況を辿り、問題の所在について検討する。

アチャカチ市街地を通る幹線道路沿いに、鉄筋コンクリート造りの集合市場がある

(写真3.9.)。この市場は、多くの住民が集う市の中心部という立地条件の良さにもかか

わらず、長年使われている気配はなく、施設の老朽化も随所にみられている。LPP施行 の2 年 後 に あ た る 1996 年 の POA を 参 照 す る と 、 こ の 施 設 は 「 大 衆 市 場(Mercado

Popular)」と呼ばれ、同年に建設が開始され、1999年までの4年間で総額85万ボリビア

ーノの予算が計上されている。大衆市場は、1階の道路に面した箇所は日用雑貨を販売 する売店、1階と2階の屋内はガスコンロの使用が認められている食堂、3階は事務所 と倉庫という間取りになっている。

大衆市場が計画、実施された背景について、当時を知るある職員に尋ねると、かつて 社会問題となっていた所有者不明の「労働者の家(Casa de Obreros)」と呼ばれる廃屋の 存在があげられた。これが衛生面や治安維持上好ましくないことから、アチャカチの住 民会から「廃屋の解体と近代的な集合市場の建設案」が、市当局へ提出されている。これ をうけて市議会での事業案承認の後、建設に至っている。ただ、計画立案の過程で、利

用者の登録や規則の策定などの手続きを当局が採らなかったため、施設の完成後は責任 者が曖昧なまま、提案者みずからが現れて利用することもなかった54

商人は2008年現在、中央広場周辺で商いをおこなう場合、市当局に場所代として年 間12ボリビアーノを支払っているが55、もしこの市場を利用する場合、月々20ボリビ アーノ56を納めなければならない。これは商人にとって負担増加につながりかねない。

ただ、大衆市場の不人気は使用料だけの問題に留まらず、建物内の寒さや暗さなど利用 上のデメリットも、露店商や市職員から聞かれている57。2015年現在、市当局は無料で の使用を認めているが、それでも利用はキオスクの12店舗に留まっている58

一方、アチャカチの中央広場周辺では、ボリビア国内の異なる標高、気候を持つ地域 からの様々な農産物が販売されている。アチャカチで栽培されるジャガイモやソラマメ 以外の野菜や果物は、主としてラパス県ユンガス地方やラレカハ郡ソラタ(Sorata)から 運ばれ、様々な地区から来た農民の交流の場にもなっており、上述の大衆市場とは対照 的な光景が見られる59(写真3.10)。この事業は上述のPDMに記された「公共サービスは 社会的、文化的に適切であるべき」、といった視点が計画段階において十分に検討され てこなかったことが窺える。

このようにアチャカチ市内を少し見渡しても、LPPの施行後間もない頃に建設された 公共事業が、十分に利用されていない実態に遭遇する。こうした問題はアチャカチ市に よる公共事業が、農民の文化や習慣を十分に尊重せず、完成後の利用計画を策定しない まま実施に至ったことに起因している。

では、この時期に実施された事業はその他どのようなものが含まれ、どの地域にどれ くらいの予算が計上されていたのだろうか。

1994年(LPP元年)における事業内訳

第1章でふれたLPPの施行後2年目の市制分離運動とは、市内のチュア・コカニ(Chua Cocani)、ソンカチ(Soncachi)、チュア・ビサラヤ(Chua Visalaya)、ハンコ・アマヤ(Janko

Amaya)、カラケ、ワタハタ(Huatajata)、ウァリナ(Huarina)の計7地区における覇権闘争

である。実際、これらの地区への資源配分は、どのようなものであったかを、以下で確 認してゆく。

表3.7.は、LPPが施行された1994年下半期の事業内容と予算額を都市と農村部別に

54 ギジェルモ・サラス(Guillermo Salas)氏への筆者による聞き取り(201525日)。

55 レオノラ・ママニ氏( Leonora Mamani)への筆者による聞き取り(200839日)。

56 市場を利用する商人への筆者による聞き取り(200837日)。

57 レオノラ・ママニ氏(Leonora Leonora )およびベイマル・パス・ベントゥーラ氏(Baymar Paz Ventura)への筆 者による聞き取り(201525日)。

58 ギジェルモ・サラス(Guillermo Salas)氏への筆者による聞き取り(201525日)。

59 レオノラ・ママニ氏(Leonora Mamani)への筆者による聞き取り(2008 日)。

示したものである。表が示すとおり、総事業予算の9割近くを都市部の事業に充てられ ている。なかでも基礎衛生に最も多くの予算が配分され、これは総予算額の約3割にあ たる。一方、農村部では総予算の約1割に留まり、そのなかでアチャカチ地区は5割を しめている。上述の7地区のなかで事業が実施されているのはウァタハタとカラケ(表 中に太文字で表示)の2地区にとどまり、残りの5地区は事業対象外である。これらの 事業のなかで最も多く予算が配分されたのは、アヒヤタ(Ajllata)の地区庁舎で、残りは 学校修復と集会場の建設に充てられている。

表3.7. アチャカチ市における事業別予算配分(1994年)

①都市部 事業内容 額(Bs.) 比率(%)

アチャカチ市街地 市庁舎建設(第2フェーズ) 15,521 2.22 基礎衛生(調査) 201,729 28.90

電化 47,000 6.73

農民集会場 68,594 9.83 市営劇場修復 68,792 9.86 多目的運動場 33,913 4.86 トイレ(70) 51,187 7.33 大衆参加の集会場 63,648 9.12 簡易トイレ"A" 31,915 4.57 簡易トイレ "B" 31,915 4.57 中高等学校の教室 6,756 0.97

小 計 620,969 88.97

②農村部

アチャカチ地区 共同体名

アチャカチ ハプラヤ・バハ 多目的運動場 4,574 0.66 アチャカチ パブラヤ・アルタ 多目的運動場 4,574 0.66 アチャカチ チヒピナ・チコ 学校修復 9,039 1.30 アチャカチ チヒピナ・グランデ 学校修復 6,856 0.98

アチャカチ ベレン トイレ 1,815 0.26

アチャカチ ビジャ・リペ 多目的運動場 3,253 0.47 アチャカチ パクチャニ グランデ 学校修復 1,103 0.16 アチャカチ パクチャニ チコ 学校修復 8,314 1.19

③その他の地区 共同体名 小計 39,527 5.66

アヒヤタ・グラン

デ アヒヤタ カントン庁舎 26,362 3.78

ウァタハタ タハラ 集会場 7,089 1.02

カラケ カラケ 学校修復 3,990 0.57

小 計 37,441 5.36

合 計 697,938 100.00

出所:Balance General Participacoin Popular Gestion 1994(Julio-Diciembre) を基に筆者作成。単位;ボリビアーノ(為替レートUS$=6.9)

1995年の予算配分状況

ブラネスは、アチャカチを地理的な特徴を基に、1.アチャカチ、2. ワリサタ、3. チ チカカ湖、4. サンチアゴ・デ・ワタ―カラケ、と大きく4つのセクターに分類したうえ で、1996年度における都市と農村部における資源配分の格差と政治・社会運動との関

連性について考察している。1996年の予算配分では市街地および周辺共同体へ一極に 集中し、その他のセクターへの配分が手薄になっていることから、LPPが規定する全共 同体の利益に則した事業実施に反する、と指摘している。こうしたなか第1章でふれた

とおり、3.チチカカ湖セクターでは新たな市創設による市制分離の気運が高まっている。

同セクターのなかでもチュア・コカニ地区が当初、リーダー的役割を担っていたが、そ れぞれの地区は市の中心に選ばれることが繁栄と生活改善の証と考え、「市庁 所在地」

の選定を巡り地区間で主導権争いに発展している。たとえばウァタハタ地区は、ホテル やレクリエーション施設などが完備されていることを声高にアピールする一方、立候補 するだけの勢力のない地区は、利益誘導やアクセス条件などを考慮のうえ、より近隣の 地区を市庁所在地として推薦する側にまわっている(Blanes 2000: 33)。ウァタハタ地区 は、チチカカ湖畔の自然豊かな土地柄にくわえ、ラパス市を結ぶ幹線道路から比較的近 いことから、漁業祭をはじめとする各種行事には多くの住民や観光客が集る。

この報告の前年にあたる1995年度の予算配分を上述の4セクターと地区別に示した のが、表3.8. である。ワリサタ地区は事業の対象外であり、3セクターのみが事業対象 となっている。先に述べた1994年度における公共事業は、都市部および4地区のみで 実施されているが、その翌年には11地区にまで事業対象が拡大していることがわかる。

予算配分が最も多いセクターは、アチャカチの都市部とアチャカチ地区(共同体)で総 額の約7割に相当し、この時点ではまだ都市部に資源が偏向している。

その他、配分額の多い地区を順に示すと、サンチアゴ・デ・ワタの約1割、ウァリナ

4.5%、ウァタハタ3.3%、チュア・コカニ2.3%、ハンコ・アマヤ2.3%、チュア・ビサラ

ヤ1.6%、カラケ0.7%、コパンカラ0.7%、ソンカチ0.09%と続いている。上述の市制分

離運動に着手した7地区は5%未満に集中している。

ここで、資源配分の公平性を大まかに把握するため、各地区の予算額を人口で割った 値を同表の右端に示した。人口数は1992年国勢調査のデータを用いたが、アチャカチ の都市部と同地区(共同体)の内訳が不明なため、やむを得ずこの2地域は合計数を示し た。

予算額において最多を示したのはアチャカチ地区の都市部と農村部の合計約550ボ リビアーノで、平均150ボリビアーノの4倍弱にあたり、2番目に多いサンチアゴ・デ・

ワタの110ボリビアーノのちょうど5倍に相当する。

一方、1人あたりの予算配分の少ない地区を順に示すと、ソンカチ15ボリビアーノ、

カラケ22ボリビアーノ、コパンカラ32ボリビアーノ、アヒヤタ・グランデ34ボリビ アーノ、ウァリナ36ボリビアーノ、チュア・ビサラヤ40ボリビアーノ、ウァタハタ 46ボリビアーノ、ハンコ・アマヤ71ボリビアーノ、チュア・コカニ77ボリビアーノの

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