第 3 章 シミュレーションの実行と考察 20
3.2 シミュレーションの実行内容と結果
3.2.4 NPC 配置の自動生成手法としての有効性の検証と結果
ゲームにおけるNPC配置では、一定領域内に存在するNPC種類は複数である事が一般的であ る。そのため、NPC配置の自動生成手法としての有効性の検証では複数種の肉食動物を設定し検 証を行った。また、種類ごとに間隔を空けて初期配置をすることで生物が自由に活動できるよう にした。初期位置から離れた場所に領域を生成しやすくすることで、自由に活動できたとしても 初期位置に近い位置で領域を生成することを確かめた。
NPC配置の自動生成手法としての有効性の検証におけるマップは、森を広く取り山や湖を無作 為に設定した。図3.6はNPC配置の自動生成手法としての有効性の検証で使用したマップの画 像である。
図3.6 自動生成手法としての有効性の検証のマップ
NPC配置の自動生成手法としての有効性の検証ではパラメータに違いを出さず複数の種類の肉 食動物によるNPC分布を行う。生物オブジェクトのパラメータは既存のゲームにおけるNPC配 置再現の検証で使用した設定をそのまま使用する。
生物のパラメータは既存のゲームにおけるNPC配置再現の検証と同じものを使用するが、生 物ごとの活動できる地形について肉食動物は全て同じ地域を活動することとした。表3.3は各生 物の活動できる地形をまとめたものである。
表3.3 自動生成手法としての有効性の検証の活動可能地形 生物名称 山 森 湖
植物 可能 可能 不可 草食動物 可能 可能 不可 肉食動物 不可 可能 不可
肉食動物についてNPC配置の自動生成手法としての有効性の検証では 5種類を設定し、各肉 食動物ごとに3体ずつ配置した。また、植物と草食動物は既存のゲームにおけるNPC配置再現
の検証同様に植物400個と草食動物200体をランダムに配置した。肉食動物の配置については間 隔をあけ、中心には肉食動物を配置しないようにした。また、肉食動物の配置の間隔については 無作為に行った。図3.7はNPC配置の自動生成手法としての有効性の検証の各生物を配置した 画像である。
図3.7 自動生成手法としての有効性の検証の初期配置
NPC配置の自動生成手法としての有効性の検証も既存のゲームにおけるNPC配置再現の検証 と同様に2回シミュレーションを行った。その結果、既存のゲームにおけるNPC配置再現の検 証の結果と比べて1回目と2回目の結果に変化があることを確認した。シミュレーションの1回 目の結果は肉食動物Aと肉食動物Cが肉食動物Eをマップ左端に追いやる形で縄張りを形成し ていた。しかし、2 回目では逆に肉食動物Eが肉食動物A を縄張りを右端に追いやる形で縄張 りを形成していた。1回目と 2回目の結果の違いから、肉食動物を間隔をあけて配置することで NPC分布の結果が大きく変わってくることが確認できる。しかし、2回の検証で領域の大きさが
大きく変化する生物はいたが初期位置から離れた場所に活動領域を生成した生物はいなかった。
図3.8はNPC配置の自動生成手法としての有効性の検証のシミュレーション結果をまとめたも のである。
図3.8 自動生成手法としての有効性の検証の結果
3.3 考察
本研究では食物連鎖による生態系シミュレーションに縄張りの機能を加えたシミュレーション を行い生物の配置を生成した。その結果、本手法により食物連鎖や縄張りなど特定の要素が必要 なゲームにおいて、生物同士の関係性からなる配置を生成することができることが分かった。ま た、NPCの配置を自動生成する手法として有効性があることが分かった。
既存のゲームにおけるNPC配置再現の検証では、徳田のモンスターハンターワールドのモン スターの配置を参考に本手法で生物の配置を生成を行った。同条件で2回の検証を行った結果、2 回とも基となったモンスターの配置図と同様の形に生物の領域を生成した。このことから、食物
連鎖や縄張りによりゲームにおける架空の生物の関係から生物の配置を生成できることが分かっ た。また、徳田のモンスターハンターワールドでは肉食動物のモンスターは互いに敵対関係にあ ることから、本手法は敵対する生物同士の配置を生成することもできると考える。
NPC配置の自動生成手法としての有効性の検証では、5種類の肉食動物を種類ごとに間隔を空 けて配置し初期配置から離れずに生物の配置を生成できるかを検証した。結果として、初期配置 から離れた位置に生物の領域を生成する生物はいなかったが、領域の形状は実行ごとに大きく変 化していた。本手法において初期位置から離れた位置に領域を生成しなかったことからNPCの 配置における自動生成の手法として有効であることが分かった。
本手法では生態系を再現するために最低限要素による食物連鎖と疑似的に縄張りの機能を追加 することによってNPC分布を生成した。本手法における生物の行動や食物連鎖などは現実の生 態系の一部を参考にしたものであり、他に様々な生物的な要素を加えることで本手法とは違う結 果を得ることができると考える。村上ら[19]の羽虫の群衆についての行動制御の研究や、西村ら [20]の捕食関係によって生物の行動を決定する手法など生物の行動をデジタルで表現する研究は 多い。群衆などの様々な生物の行動制御や生態を表現する研究と組み合わせることで、本研究で はできなかったような生物の関係性や行動によるNPCを生成することができると考える。
第 4 章
まとめ
本研究は生態系シミュレーションを用いることで、ゲームにおける架空の生物による生態系を 再現したNPC分布を自動生成することを目的としその手法を提案した。生態系を再現したNPC 分布を生成するため、本研究では現実の生態系における縄張りをNPC分布と見なした。縄張り を形成する生物において、オオカミは他の群れのオオカミに襲われることを恐れ他の縄張りに侵 入しない習性があることから、本研究におけるNPC分布に利用した。
本手法では植物、草食動物、肉食動物の3種類の生物による食物連鎖を基とした生態系シミュ レーションを作成し、肉食動物に縄張りを形成する機能を与えることでNPC分布を生成した。ま た、生物には寿命や空腹など様々なパラメータを与え、捕食や回避などを与えることで現実の生 物らしい振る舞いを再現した。
本手法を2種類のパターンでシミュレーションを行いその考察を行った。その結果、本手法に よるNPC分布では設定により創発的な分布や、詳細に設定することで特定の生態系を再現した 分布を生成することも可能である分かった。そのため本手法はNPC分布の手法としては、様々 な分布を生成できることから有用であることを確認した。
今後の展望としては、本手法における生物に群衆行動や縄張りの情報などを取り入れることで、
本研究の目的である架空の生物による生態系のNPC分布をより現実に近い形で再現できるので
はないかと推測した。
謝辞
本論文を執筆するために、夜遅くまで対応していただいた渡辺先生、阿部先生に深く感謝いた します。そして、研究に協力していただいた研究室の皆様、中間発表で意見を下さった方々にも 深く感謝いたします。
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