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第 3 章 結果と考察

3.5 N * 相らせん軸の方向決定へラビングの影響

加熱過程では3つのセルともN*相からBP IIIへの相転移で吸光度比の減少が見られ たことから、ラビングの有無に関係なく、相転移により垂直方向に立ち上がる NLC分 子が増加したことが分かった。これに対し冷却過程では、BP IからN*相への相転移で、

ラビング無および1回のセルでは、ラビング30回のセルで見られた吸光度比の減少が 観察されず、垂直方向に立ち上がるNLC 分子はほとんどなかったと考えられる。これ より、冷却後のN*相で垂直方向の配向にBP Iの格子構造以外に、平面配向膜基板の場 合はラビング操作による配向膜の状態も影響を与えていることが示唆された。

また冷却過程におけるBP IからN*相への相転移による面内での分子配向をCN伸縮 振動の吸光度比を利用して考察した。これはCN伸縮振動において最も大きい吸光度と

図 3.18 相転移によるラビング回数の異なるセルの CN/CH

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吸光度比 の変化

スペクトル

大きいほどNLC分子は特定の方向に配向し、1に近いとNLC分子は等方的つまり基板 面内において分子は特定方向に配向していないことを示している。こちらに関しても、

ラビング30回のセルにおけるCN伸縮振動の吸光度比は1.42で、NLC分子はラビング 方向に対し130度方向に配向した結果と比較すると、ラビング1回および無のセルでは 吸光度比はそれぞれ1.09と1.01であったことから、NLC分子は特定方向に配向してい ないことが分かった。このことはBPが発現する同じN*LCであっても、平面配向膜の 場合ラビングの状態によってまったく異なる分子配向変化が相転移によって起こるこ とが明らかになった。

これらの解析結果より、加熱過程では、平面配向膜基板の状態に関係なくNLC分子 の垂直方向の立ち上がり変化および面内分子配向変化に与える影響がないことを結論 づけられた。しかし冷却過程では、ラビングが弱いまたはラビング操作を行わない配向 膜基板で作成したセルでは、冷却後に特定方向に傾く N*相のらせん軸が発現しないこ とが分かった。これはBP Iの格子構造が崩壊するときに1方向にしっかりとラビング された配向膜基板のアンカリング力が作用し、相転移後N*相中のNLC分子の配向方向 が決定されていると考えられ、らせん軸の傾き方向決定にBP Iの格子だけでなくラビ ング操作による配向膜基板からのアンカリング力による影響していることが示唆され た。これよりラビングする方向を変更することにより、N*相のらせん軸の傾き方向を制 御できることが可能であると考える。

7 wt%N*LC(Mixture-1)のように同じ相配列を示すにも関わらず、異なる配向膜状態

の平面配向セルにおいて冷却過程でのみ分子配向変化に違いが出てくる理由としては、

NLC 分子の二重ねじれ形成やエネルギー的に不安定な転傾発生が、ラビングされた配 向膜とそうでないものとで、異なる相互作用を引き起こすためと考えられる。例えば、

しっかりとラビングされていないセル内では転傾を発生しやすいため、BP Iの格子構造

で発生した転傾が、相転移後の N*相にも発生したため分子配向変化に影響を及ぼした のではないかと示唆される。