図 2 4-NP12 の従来法(左)と GC-MS/MS 法(右)のクロマトグラム
環境水中の LAS 分析における操作ブランク低減化の検討
荻野賢治
Consideration on Reduction of Reference Blank in LAS Analysis of Environmental Water Kenji OGINO
1.はじめに
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(
LAS)は、
界面活性剤の一種であり、業務用および家庭用洗剤、繊維 染色加工の際の分散剤等に用いられるが
1)、水生生物の生 育に支障を及ぼすおそれがあるとして、
2013年から新た に水生生物保全項目として環境基準値が設定された項目 である。
LAS
分析における操作ブランク値が高値となることは 多くの分析機関から報告されており
2)、当センターで
LAS分析を実施したところ、操作ブランク値が高い傾向がみら れた。この原因としては、固相抽出操作に用いる分析機材 に洗剤由来の
LASが付着残存し、汚染している可能性が 考えられた。
そこで本研究では、固相抽出操作におけるコンタミネー ション低減化方法(以下、 「固相抽出法」という。 )を検討 した。さらに根本的な対策として、固相抽出操作を行わず に水試料を分析機器に直接導入する方法(以下、「直打ち 試験法」という。)についても検討したのでそれらの結果 を報告する。
2.実験方法
高速液体クロマトグラフは
Nexera、タンデム質量分析
計は
LCMS8050(ともに島津製作所製)を用いた。機器分
析条件を表1に、モニターイオンを表
2に示す。表
2にお ける
C10-LASとはアルキル基の炭素数が
10の
LASを示 しており、本検討では内部標準物質(
I.S.)として
C8-LASを用いた。
2.1 固相抽出法
固相抽出法の前処理フローを図
1に示す。操作に用いた 分析機材は温水(
40℃程度) 、アセトン、メタノールの順 に洗浄したものを使用した。温水は冷水に比べて
LASの 溶解性が高いため
3)、効率的に洗い落とすことができると 考えて洗浄溶媒として選定し、洗浄用に簡便かつ大量に洗 浄に使うことができる一般的な給湯器の温水を使用した。
試料は超純水を用いて、機材をメタノールのみで洗浄し た操作ブランク試験を併行して行い、温水洗浄の効果を確 認した。また既知濃度試料を測定することにより、固相抽 出法の信頼性を確認した。
2.2 直打ち試験法
直打ち試験法の前処理フローを図
2に示す。2.1で示 した固相抽出法で用いた既知濃度試料と同一の試料を測 定することにより、直打ち試験法の信頼性を評価し、さら に固相抽出法の結果と比較した。
表 1 機器分析条件
カラム Shim-pack
XR-Phenyl/3.0 μm/2.0 × 100 mm注入量
10μ
L(直打ち) ・
1μ
L(固相抽出)
流速
0.3 mL/minカラム温度
40℃
移動相
A 0.1%ギ酸・
50 mMギ酸アンモニウム 移動相
Bアセトニトリル
グラジエント条件
時間(分)
0 2.50 2.51 6.50 6.51A
(
%)
40 20 0 0 40B
(
%)
60 80 100 100 60イオン化モード
ESI negative表 2 モニターイオン
Q1
(
m/z)
Q3(
m/z)
CE(
V)
C8-LAS
(
I.S.)
269 183 35 C10-LAS 297 183 32 C11-LAS 311 183 34 C12-LAS 325 183 36 C13-LAS 339 183 37 C14-LAS 353 183 40ノート
図 1 前処理フロー
(固相抽出法)
コンディショニング
分取
超純水
200 mLまたは 既知濃度試料
200 mL固相通水
脱水 溶出
濃縮
定容
LC-MS/MS
測定
分取
LC-MS/MS
測定
InertSep C18-ENV 500 mgメタノール 10 mL 超純水
10 mL図 2 前処理フロー
(直打ち試験法)
流速
20 mL/min吸引・窒素ガス吹き付け
2 minメタノール
5 mL窒素ガスで
0.3 mLまで
I.S. 1 mg/L 50
μ
Lアセトニトリル
/超純水
(65/35) 1 mL既知濃度試料
950μ
L I.S. 1 mg/L 50μ
L付表
12に示される定量下限値
0.1μ
g/Lを下回った。こ れは温水に溶けやすい
LASの特性により、高温かつ多量 の温水が分析機材に付着していた
LASを溶解除去したた めと考えられ、温水による機材の洗浄が効果的であること が示された。
既知濃度試料試験の結果を表
4に示す。なお測定値を設 定値で除した値を信頼度として記載した。計
LASの信頼 度は
94%となり、固相抽出法は信頼度の高い分析法であ ることが確認できた。しかしながら
C14-LASの信頼度は
70%と他の同族体と比べて低く、これは
C14-LASは疎水 性が高いため、抽出操作に用いたガラス器具等に付着した ことによると考えられる。
表 3 操作ブランク試験結果
表 4 既知濃度試料試験結果(固相抽出法)
4.まとめ
固相抽出法は、使用機材の温水洗浄により告示定量下限 値以下まで操作ブランク値を低減化することに成功した。
また、直打ち試験法は、固相抽出法と同等の結果が得られ ることを確認した。この方法は前処理操作による煩雑な操 作を省くことができ、コンタミネーションの低減化も図ら れることから有効であると考えられた。
参考文献
1)
環境省:化学物質ファクトシート
2011年版(
2012)
2)環境省:平成
25年度環境測定分析統一精度管理調査結 果(本編)
,110(
2014)
3)
佐々木麻紀子他:洗濯用洗剤の性質について
,東京家政 学院大学紀要
,52,33-38(
2012)
4)
環境省:環境省告示
30号
,13(
2013)
LAS濃度(μ
g/L)
C10 C11 C12 C13 C14
計
n=1 0.001 0.008 0.012 0.010 <0.0002 0.031 n=2 0.001 0.008 0.013 0.010 <0.0002 0.032 n=3 0.001 0.008 0.009 0.008 <0.0002 0.026 n=4 0.001 0.006 0.009 0.007 <0.0002 0.022平均
0.001 0.007 0.011 0.009 <0.0002 0.027 RSD 16% 15% 20% 18% - 18%LAS
濃度(μg/L)
n=3 C10 C11 C12 C13 C14
計 既知試料 設定値
0.65 1.8 1.7 0.85 0.40 5.4測定値
0.68 1.7 1.6 0.76 0.28 5.1固相抽出
信頼度
105% 95% 95% 89% 70% 94%LAS
濃度(μ
g/L)
n=3 C10 C11 C12 C13 C14
計 既知試料 設定値
0.65 1.8 1.7 0.85 0.40 5.4測定値
0.63 1.8 1.5 0.76 0.32 5.0直打ち
信頼度
97% 100% 88% 89% 80% 93%福井県における飛来物質の分布に関する実態調査
高岡 大・谷口佳文・福島綾子・吉川昌範・酒井忠彰・坪内 彰
*1・三浦 麻
*2Actual condition survey of the trans-border matter in Fukui
Dai TAKAOKA, Yoshifumi TANIGUCHI, Ayako FUKUSHIMA, Masanori YOSHIKAWA, Tadaaki SAKAI, Akira TSUBOUCHI, Asa MIURA
1.はじめに
近年、微小粒子状物質(
PM2.5)や黄砂などがアジア大 陸方面から飛来する越境汚染が深刻な環境問題となって おり、こうした飛来物質による人の呼吸器や循環器などへ の健康影響も懸念されている。
PM2.5
については、平成
21年
9月に環境基準が設定さ れ、福井県内でも平成
22年
4月から測定を開始し、現在、
県内
9地点で常時監視を実施している。
また、気象庁の黄砂観測結果
1)によると、平成
17年か ら平成
26年の
10年間に、福井で黄砂の飛来が
49日観測 されている。
そこで本研究では、黄砂など福井県内に飛来する浮遊物 質の分布状況等を明らかにするための調査を行い、各調査 日の濃度分布における影響について検討した。
2.方法
2.1 試料採取 2.1.2 採取装置
大気中を浮遊する物質の採取法としては、粒径
10μm以 下の浮遊粒子状物質(以下「
SPM」という。 )を自動測定 機(
SPM計)で採取する方法や、大気中の全浮遊物質(以 下「
TSP」という。)をハイボリュームサンプラーで採取 する方法が用いられているが、本研究では低コストで可搬 性に優れた簡易採取装置を作成し、
TSPを捕集した
2)。
簡易採取装置の構成等は表
1および図
1のとおりである。
表 1 簡易採取装置の構成等
構 成 メ ー カ ー 型 式 等 吸引ポンプ
A.P.BUCKINC The BUCK
I.H.PUNPTM
流量調整部
積算流量計 ㈱シナガワ
MODEL DC-2(乾 式 ガスメータ) ホルダー 柴田科学㈱
φ47mmオープンフェース型 捕 集 部
フィルター
PallCorporation PTFE
(
φ47mm孔径
2μm)
図 1 簡易採取装置
2.1.2 TSP 調査地点
当センターでは、大気汚染防止法に基づき従来から
SPM濃度の常時監視を実施しており、市等の測定局も含 め県内
26地点(
H25.4.1時点)で測定している。この既 存の観測点に加え、本研究では嶺北地方を対象に、主に
SPM濃度を観測していないエリアを補完するために越前 海岸から大野までを東西に結ぶ方向に
TSPの調査地点を 選定した。
なお、
TSP濃度と
SPM濃度の相関関係を把握するため、
SPM
濃度を測定している常時監視測定局の福井局と大野 局には
TSP濃度を観測するための簡易採取装置を設置し た。
TSP調査地点の詳細は図
2のとおりである。
2.1.3 調査日
調査日は、九州大学の大気浮遊粒子状物質および黄砂の 汚染状況をシミュレートする”
SPRINTARS”
3)や九州大 学 / 国 立 環 境 研 究 所 の 化 学 天 気 予 報 シ ス テ ム
“
CFORS”
4)気象庁の黄砂予測
5)などを活用して、エアロ ゾルや黄砂が福井県内に飛来する可能性の高い日を選定 した(表
2) 。
採取時間は、環境省「微小粒子状物質(
PM2.5)の成分 分析ガイドライン
6)」に準拠し、朝
10時から翌日
10時ま での
24時間とした。
なお、調査日における天候および降水量は表
2のとおり である。
表 2 調査日の気象状況
10