第 3 章 曲面と面積分 32
B.5 Jordan の曲線定理
初等的な数学において、Jordan の曲線定理 (Jordan curve theorem) の占める位置はどう もしっくり来ないと感じている。「常識である」という空気もある一方で、講義で証明される ことが実質的になく、岩波数学辞典に書かれている形の定理 (後述) の証明を探すのも結構面 倒である。一方で「要らない」という人もいる (複素関数論で有名なアールフォースの教科書 の中でそう断言されている)。
Jordan の曲線定理 (岩波数学辞典からの引用)
¶ ³
平面 R2 内の任意の Jordan 閉曲線C は、R2 を内と外の二つの領域に分ける。詳しく言 えば、R2\C はちょうど二つの領域Ω1, Ω2 の直和:
R2\C= Ω1∪Ω2, Ω1∩Ω2 =∅
となり、C は Ω1, Ω2 の共通の境界、Ωi の一方は有界、他方は非有界、となる。なおこの とき p を C の任意の一点とすれば、p を端点とする Jordan 曲線で、p 以外の部分は Ωi
に含まれるものが存在する (i= 1,2)。
µ ´
比較的入手が容易な本で、証明まで述べられている希少な本として 一樂 重雄、「位相幾何学」、朝倉書店(1993) を推薦しておく。
(工事計画: 岩波数学辞典p.534 から正確に引用すること)
上の定理で有界な方の領域を Jordan閉曲線 C で囲まれる領域とよぶ。
領域Ω が Jordan 領域であるとは、Jordan 閉曲線 C が存在して、Ω が C で囲まれる領 域となることをいう。
Jordan領域は単連結領域であるが逆は真でない (有名な反例がある)。
Jordan領域でない単連結領域について、領域内部の点とは結べないような境界上の点が存
在することがある(これも有名な反例がある)。
Jordan領域は面積確定であるとは限らない。
Riemannの写像定理により、Jordan 領域は円盤領域と同相である。またCarath´eodory の 定理により、Jordan 領域の閉包は閉円盤と同相である。
Jordanの曲線定理の高次元版の紹介も。
付 録 C 単連結領域におけるポテンシャル の存在
ベクトル場 f がポテンシャルを持つための必要条件
(C.1) ∂fi
∂xj = ∂fj
∂xi in Ω (i, j = 1,2, . . . , n) が単連結領域では十分条件になることの正しい証明を与える。
ここの議論は小松[6]の第2章5節を参考にした。なお、杉浦[9]には少し違った証明が載っ
ている(折れ線上の線積分を持ち出す)。もっとも C.1 で証明する「球におけるポテンシャル
の存在」がキーとなるのは同じで、本質的には同じ証明と言えるのかも知れない。暇があった ら、その証明も収録しようと考えている。
C.1 ステップ 1: 球におけるポテンシャルの存在
まず球領域では(C.1) がポテンシャル存在のための十分条件であることを示す。
二通りの証明を与える。
C.1.1 証明 1: 区間の「辺」からなる折線に沿う線積分と積分定理を利用
球の中心と xを結ぶ曲線 Cx に対して F(x) :=
Z
Cx f ·dr
とおく。ただし Cx を a と x を頂点とするRn の閉区間( Yn
j=1
[aj, bj]の形の集合) の「辺」を 結んでできる折線に限定する。そう限定しても折線の取り方は複数あるが、その選び方によら ずに線積分の値が定まることが、積分定理 (2次元の場合は区間におけるGreen の定理)から 容易に証明できる1。
gradF =f の証明は、本文中の定理 2.3.1 の証明と同様である。
ゆえに球においては、(C.1) はポテンシャルが存在するための十分条件である。
(上の証明のあらすじは小松[6]に載っていたもので、そこでは 2次元限定の話だったので、
積分路としても選択肢が二つしかなく、積分定理とは言っても長方形上の Green の定理でほ
1積分定理を持ち出すのは大げさのようだが、何と言っても区間バージョンなのでFubiniの定理によって自 明に近い。
ぼ自明であるので、簡単明瞭であるが、多次元になると少し面倒に感じられる。そこで別証明 を以下に示す。ぎょうぎょうしい計算だが、多次元になってもすっきりしている点は気持ちが よいと思う。)
C.1.2 証明 2: 球の中心と結んだ線分に沿う線積分を利用
やはり
F(x) :=
Z
Cx f ·dr とおくが、Cx としては、
ϕ(t) :=a+t(x−a) (t ∈[0,1]) を用いる。すると
F(x) = Z 1
0
f(a+t(x−a))·(x−a)dt= XN
j=1
(xj −aj) Z 1
0
fj(a+t(x−a))dt.
積分記号下の微分と条件 (C.1) を用いると
∂F
∂xk(x) = XN
j=1
δjk
Z 1
0
fj(a+t(x−a))dy+ XN
j=1
(xj−aj) Z 1
0
∂fj
∂xk(a+t(x−a))·t dt
= Z 1
0
fk(a+t(x−a))dt+ XN
j=1
(xj−aj) Z 1
0
∂fk
∂xj(a+t(x−a))·t dt.
この右辺第2項を合成関数の微分法と部分積分で変形すると 右辺第2項 =
Z 1
0
d
dt(fk(a+t(x−a)))·t dt
= [fk(a+t(x−a))·t]10− Z 1
0
fk(a+t(x−a))dt
= fk(x)− Z 1
0
fk(a+t(x−a))dt.
ゆえに ∂F
∂xk(x) = fk(x).