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花粉化石含有状況1
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試料Nn20(漸移層)
スギ属
コナラ亜属
トチノキ属
ツリガネニンジン属 ーホタルブクロ属 ーヒナギキョウ属
マツ属(権総管東亜属)
サワグルミ鳳ークルミ属
アカガシ亙属 ニレ鳳ーケヤキ属
シナノキ鵬 ソパ属
‑・・・・・・圃‑ ヨモギ属
キク亜科
花粉化石含有状況2
‑68‑
第8章 自然科学分析
モチノキ属 カエデ属
マメ科 アリノトウグサ科
タンポポ亙科
スケールパーはすべて0.01mm
井後草里遺跡における植物珪酸体分析
株式会社古環境研究所
1 .はじめに
植物珪酸体は、植物の細胞内に珪酸 (SiO2)が蓄積したもので、植物が枯れたあともガラス質 の徴化石(プラント ・オパール)となって土壌中に半永久的に残っている。植物珪酸体分析は、こ の徴化石を遺跡土壌などから検出して同定・定量する方法であり、イネをはじめとするイネ科栽培 植物の同定および古植生・古環境の推定などに応用されている(杉山.2000)。
2.試料
分析試料は、第
7
トレンチの土層断面から採取された計1 6
点である。試料採取箇所を分析結果の 柱状図に示す。3.分析法
植物珪酸体の抽出と定量は、ガラスピーズ法(藤原.
1 9 7 6 )
を用いて、次の手順で行った。1 )試料を105t:で24時間乾燥(絶乾)
2)試料約 19に対し直径約40μmのガラスピーズを約0.02g添加 (O.1mgの精度で、秤量) 3)電気炉灰化法 (550t:. 6時間)による脱有機物処理
4)超音波水中照射 (300W. 42KHz' 10分間)による分散 5)沈底法による20μm以下の微粒子除去
6)封入剤(オイキット)中に分散してプレパラート作成 7)検鏡・計数
同定は、 400倍の偏光顕微鏡下で、おもにイネ科植物の機動細胞に由来する植物珪酸体を対象と して行った。計数は、ガラスビーズ個数が400以上になるまで行った。これはほぼプレパラート l 枚分の精査に相当する。試料19あたりのガラスピーズ個数に、計数された植物珪酸体とガラスビー ズ個数の比率をかけて、試料19中の植物珪酸体個数を求めた。
また、おもな分類群についてはこの値に試料の仮比重(1.0と仮定)と各植物の換算係数(機動 細胞珪酸体l個あたりの植物体乾重)をかけて、単位面積で層厚 1cmあたりの植物体生産量を算 出した。これにより、各植物の繁茂状況や植物間の占有割合などを具体的にとらえることができる (杉山.20∞)。タケ亜科については、植物体生産量の推定値から各分類群の比率およびメダケ率(メ ダケ属とササ属の比率)を求めた。
4.分析結果 ( 1 )分類群
検出された植物珪酸体の分類群は以下のとおりである。これらの分類群について定量を行い、そ の結果を表lおよび図lに示した。主要な分類群について顕微鏡写真を示す。
〔イネ科〕
イネ、キピ族型、ススキ属型(おもにススキ属)、ウシクサ族
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(チガヤ属など)〔イネ科ータケ亜科〕
メダケ節型(メダケ属メダケ節・リュウキュウチク節、ヤダケ属)、ネザサ節型(おもにメダケ
‑69‑
第8章 自然科学分析
属ネザサ節)、チマキザサ節型(ササ属チマキザサ節・チシマザサ節など)、ミヤコザサ節型(ササ 属ミヤコザサ節など)、未分類等
〔イネ科ーその他〕
表皮毛起源、棒状珪酸体(おもに結合組織細胞由来)、未分類等
〔樹木〕
その他
(2 )植物珪酸体の検出状況
下位の5層(試料2‑0‑10‑6)では、チマキザサ節型やミヤコザサ節型が比較的多く検出され、キ ピ族型、メダケ節型、ネザサ節型なども認められた。 4層(試料14‑12‑24‑22)では、チマキザサ 節型やミヤコザサ節型が増加し、同層上部ではネザサ節型も増加している。また、ススキ属型やウ シクサ族Aが出現し、多くの試料で樹木(その他)が検出された。樹木は一般に植物珪酸体の生産 量が低いことから、少量が検出された場合でもかなり過大に評価する必要がある(杉山, 1999)。 なお、すべての樹種で植物珪酸体が形成されるわけではなく、落葉樹では形成されないものも多い
(近藤・佐瀬、 1986)
。
3層(試料30‑28‑50・48)から2層下部(試料55‑53)にかけては、ネザサ節型が大幅に増加し、
チマキザサ節型やミヤコザサ節型は減少している。 2層上部(試料57・55)から l層(試料61‑59、 65‑63)にかけては、チマキザサ節型が大幅に増加し、ネザサ節型は減少している。また、 1層上部(試 料65‑63)ではイネが検出された。イネの密度は2,1∞個/gと比較的低い値であり、稲作跡の検証や 探査を行う場合の判断基準としている5,∞0個/gを下回っている。なお、陸稲栽培の場合は、連作 障害や地力の低下を避けるために輪作を行ったり休閑期間をおく必要があるため、イネの植物珪酸 体密度は水田跡と比較しでかなり低くなり1,∞0‑2,
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泊個/g程度である場合が多い(杉山, 20∞)。おもな分類群の推定生産量によると、 5層から4層にかけてはチマキザサ節型、 3層から2層下 部にかけてはネザサ節型、 2層上部から l層にかけてはチマキザサ節型が優勢となっている。
5.植物珪酸体分析から推定される植生と環境
下位の5層から縄文時代早期遺物包含層の4層にかけては、ササ属(チマキザサ節やミヤコザサ 節)などの笹類を主体としたイネ科植生であったと考えられ、部分的にキピ族、ススキ属、ウシク サ族、メダケ属(メダケ節やネザサ節)なども見られたと推定される。また、遺跡周辺には何らか の樹木が分布していたと考えられる。
タケ亜科のうち、メダケ属は温暖、ササ属は寒冷な気候の指標とされており、メダケ率(両者の 推定生産量の比率)の変遷は、地球規模の氷期ー間氷期サイクルの変動と一致することが知られて いる(杉山, 2∞1. 2010)。また、ササ属のうちチマキザサ節やチシマザサ節は積雪に対する適応 性が高く日本海側の寒冷地などに広く分布しており、ミヤコザサ節は太平洋側の積雪の少ない比較 的乾燥したところに分布している(室井, 1960,鈴木, 1996) 0 5層から4層にかけてはチマキザ サ節型が優勢であることから、当時は冷涼で比較的積雪(降水量)の多い気候環境であったと推定
される。
ササ属は常緑であり、雪の中でも緑を保っていることから、大半の植物が落葉または枯死する秋 から冬にかけてはシカ類などの草食動物の重要な食物となっている(高槻, 1992)。遺跡周辺にこ れらのササ類が豊富に存在したことは、当時の動物相を考える上でも重要と考えられる。
縄文時代後期遺物包含層の3層(黒ボク土層)の堆積当時は、メダケ属(おもにネザサ節)を主 体として、ササ属、ススキ属、ウシクサ族、キピ族なども見られるイネ科植生であったと考えられ
‑70ー
る。このようなササ属からメダケ属への植生変化は、完新世における気候温暖化の影響を示してい ると考えられる。
その後、2層上部から l層(現表土)にかけては、ササ属(おもにチマキザサ節)が再び増加し、
メダケ属(おもにネザサ節)は減少している。このような植生変化から、気候の冷涼化および多雪 化の影響が示唆される。また、 l層上部(現表土)では、調査地点もしくはその近辺で稲作が行わ れていたと考えられる。遺跡の立地や周辺の植生などから、ここで行われた稲作は畑作の系統(陸 稲)であったと推定される。
文献
近藤錬三・佐瀬隆 (1986)植物珪酸体,その特性と応用.第四紀研究, 25, p.31‑63.
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s .
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藤原宏志(1976)プラント・オパール分析法の基礎的研究(1卜数種イネ科栽培植物の珪酸体標本と定量分析法一.考古学と自然科学,9,p.l5‑29 室井縛 (1960)竹笹の生態を中心とした分布.富士竹類植物園報告, 5, p.103‑121
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井後草里遺跡第7トレンチ南壁における植物珪酸体分析結果図1第8章 自然科学分析
井後草里遺跡の植物珪酸体(プラント・オパール)
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