Outer Heater
Drift Heater -156.76m
坑道中心
±0m
90.0m
99.39m
図3.2-3 YMP-DSTにおける解析領域
(a) 温度分布 (b) 水の飽和度分布
(c) pH分布
図3.2-4 YMP-DSTにおける熱-水-化学連成挙動解析結果(試験開始4年後)
℃
0 25 50 75 100 125 150 175 200
0 180 360 540 720 900 1080 1260 1440
Simulated Observed*
Temperature (o C)
Days since Heater Activation
0 25 50 75 100 125 150 175 200
0 180 360 540 720 900 1080 1260 1440
Simulated Observed*
Temperature (o C)
Days since Heater Activation
図3.2-5 YMP-DSTにおける熱-水-化学連成挙動解析結果(温度分布実測値との比較)
(iv) 熱-水-応力-化学連成挙動解析結果
(a) 塩の蓄積を対象とした熱-水-応力-化学連成挙動解析
オーバーパックの腐食で問題になっている塩の蓄積について,プロトタイプの熱-水-応力 -化学連成挙動解析コードを用いて解析評価を行った(Ito et al.,2003)。解析に用いた体系・
条件は,ベントナイト-ケイ砂混合体,乾燥密度1,600kg m-3,高さ0.1m,単位断面積の角 柱とし,上面80℃,下面100℃として20℃の温度差を与え,低温側である上面から塩(NaCl
0.07wt%)を浸潤させた場合の 1 次元カラム試験を想定した温度勾配下における緩衝材浸潤
時の塩の蓄積に関する数値解析を行った(図3.2-6)。
重力(図のz 軸)方向の塩の濃度分布を図 3.2-7 に,ベントナイト-ケイ砂混合体中の水 分の実流速分布を図3.2-8に,ベントナイト-ケイ砂混合体の体積含水率分布を図3.2-9に,
温度分布を図3.2-10に示す。ベントナイト-ケイ砂混合体の上面からの浸潤により,体積含 水率は徐々に上面から下面に向けて上昇している。NaCl濃度も体積含水率と同様に下面に向 かって時間とともに上昇しており,z 軸に対して凹な濃度分布が得られた。これは,緩衝材 浸潤時の物質移行において,移流的な挙動よりも拡散的な挙動が卓越しているためと考えら れる。また,下面からの熱により,下面から上面へ向けて水分移動(水蒸気による移動)が 発生し下部の体積含水率が減少している。これに伴って下部の NaCl 濃度は,初期値よりも 僅かに上昇(濃縮)する結果が得られているが,浸潤水濃度に比べればその絶対値は小さい ものであった。また,浸潤水濃度を越えるような局所的な濃度上昇などは認められず,本解 析の結果では塩の蓄積は顕著ではないことが示された。
解析モデル
・ベントナイト-ケイ砂混合体 乾燥密度 1,600[kg/m3]
・高さ:0.1[m] (z=0.0~0.1[m])
・重力(z)軸方向分割数:20 解析モデル
・ベントナイト-ケイ砂混合体 乾燥密度 1,600 kg m-3
・高さ:0.1m (z = 0.0~0.1m)
・重力(z)軸方向分割数 :20
・上面80℃,下面100℃固定
解析モデル
・ベントナイト-ケイ砂混合体 乾燥密度 1,600[kg/m3]
・高さ:0.1[m] (z=0.0~0.1[m])
・重力(z)軸方向分割数:20 解析モデル
・ベントナイト-ケイ砂混合体 乾燥密度 1,600 kg m-3
・高さ:0.1m (z = 0.0~0.1m)
・重力(z)軸方向分割数 :20
・上面80℃,下面100℃固定
図3.2-6 塩の蓄積を対象とした熱-水-応力-化学連成挙動解析
Borehole 60-3 Borehole 76-3
0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 0.00
0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10
initial 1.7 [day]
3.3 [day]
5 [day]
10 [day]
15 [day]
20 [day]
NaCl濃度 [wt%]
z軸 [m] 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10
0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09
0.10 initial 1.7 [day]
3.3 [day]
5 [day]
10 [day]
15 [day]
20 [day]
NaCl濃度 [wt%]
z軸[m] -5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0
0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10
initial 1.7 [day]
3.3 [day]
5 [day]
10 [day]
15 [day]
20 [day]
液状水の実流速 [10-8 m s-1]
z軸 [m]
図3.2-7 NaCl濃度分布(右:拡大図) 図3.2-8 実流速分布
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40
0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10
initial 1.7 [day]
3.3 [day]
5 [day]
10 [day]
15 [day]
20 [day]
液状水の体積含水率 [-]
z軸 [m] 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.140.00
0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09
0.10 initial 1.7 [day]
3.3 [day]
5 [day]
10 [day]
15 [day]
20 [day]
液状水の体積含水率 [-]
z軸[m] 80.0 85.0 90.0 95.0 100.0
0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10
1.7 [day]
3.3 [day]
5 [day]
10 [day]
15 [day]
20 [day]
温度 [℃]
z軸 [m]
図3.2-9 体積含水率分布(右:拡大図) 図3.2-10 温度分布
(b) 第 2 次取りまとめ仕様における熱-水-化学連成挙動
現実的な地質環境への適用のため,第 2 次取りまとめで検討した処分孔竪置き方式(図 3.2-11)における熱-水-化学連成挙動を解析した(図 3.2-12)(石原ほか,2003;伊藤ほか,
2004c)。ガラス固化体の発熱量は時間の経過と共に減少するため,ニアフィールドの温度は,
人工バリア定置後1,000年の時点でほぼ定常に至る結果が得られた。また,pHの解析結果は,
人工バリア定置後 1,000 年の間,廃棄体の発熱量変化に対応した挙動を示した。これは,温 度変化に伴う鉱物の溶解度の変化,および間隙水中の可溶性塩の濃度・組成の変化に起因す る挙動と推察される。オーバーパックと緩衝材の境界(解析結果出力点)における温度とpH については,人工バリア定置後10~20年の時点で温度が90℃のピークに達し,人工バリア
定置後1,000年の間,pHは約0.8の幅で変動し,ニアフィールドの温度がほぼ定常となる人
工バリア定置後1,000年の時点で,pHも同様にほぼ定常となり,約8.9を示す結果となった。
本事例解析結果と,第2次取りまとめで行なった緩衝材中の最高温度,緩衝材の再冠水時間,
人工バリア定置後 1,000年の緩衝材間隙水のpH について比較した(表3.2-2)。その結果,
それぞれ概ね整合していることを確認した。
35.065
24.935
2.22 5.0
上面境界条件
熱移動: 規定境界(45℃)
水分移動:規定境界(全水頭50m)
物質移行:規定境界(初期溶液濃度)
下面境界条件
熱移動: 規定境界(45℃)
水分移動:規定境界(全水頭50m)
物質移行:規定境界(初期溶液濃度)
側面境界条件
熱移動: 閉境界(断熱)
水分移動:閉境界(流入出無し)
物質移行:閉境界(流入出無し)
初期条件 温度: 45℃
水理: 緩衝材 飽和度40%
水理:岩盤 全水頭50m
間隙水組成: 純水と構成鉱物の平衡溶液
単位:m
岩盤
オーバーパック
ガラス固化体 緩衝材 埋め戻し材
解析結果出力点 35.065
24.935
2.22 5.0 35.065
24.935
2.22 5.0
上面境界条件
熱移動: 規定境界(45℃)
水分移動:規定境界(全水頭50m)
物質移行:規定境界(初期溶液濃度)
下面境界条件
熱移動: 規定境界(45℃)
水分移動:規定境界(全水頭50m)
物質移行:規定境界(初期溶液濃度)
側面境界条件
熱移動: 閉境界(断熱)
水分移動:閉境界(流入出無し)
物質移行:閉境界(流入出無し)
初期条件 温度: 45℃
水理: 緩衝材 飽和度40%
水理:岩盤 全水頭50m
間隙水組成: 純水と構成鉱物の平衡溶液
単位:m
岩盤
オーバーパック
ガラス固化体 緩衝材 埋め戻し材
解析結果出力点 35.065
24.935
2.22 5.0
図3.2-11 処分孔竪置き方式における熱-水-化学連成挙動解析条件
温度分布
pH分布 温度分布
pH分布
1年 10年 50年 100年 1,000年 岩盤
オーバーパック 緩衝材 埋め戻し材
ガラス固化体 岩盤
オーバーパック 緩衝材 埋め戻し材
ガラス固化体
[ ℃ ]
[ - ]
図3.2-12 処分孔竪置き方式における熱-水-化学連成挙動解析結果
表3.2-2 第 2 次取りまとめと熱-水-化学連成挙動の事例解析結果の比較
第 2 次取りまとめ 事例解析結果*1 緩衝材の最高温度 82℃ (THM)*2
98℃ (T)*3 90℃ (THC) 緩衝材の再冠水時間 50 年以下 (THM)*2 20 年 (THC) 人工バリア定置後 1,000 年
の緩衝材間隙水の pH 8.4 (C)*4 8.9 (THC) T:温度,H:水理,M:力学,C:地球化学,を連成させた解析
*1:プロトタイプ熱-水-応力-化学連成挙動解析コード(本研究で開発),
*2:THAMES,*3:FINAS(動力炉・核燃料開発事業団,1992b),*4:PHREEQE
(Parkhurst et al.,1980)
(3) 結論
第2次取りまとめでは取り扱っていない,化学現象と熱-水-応力との連成挙動を組み込んだ 解析モデルを作成し,プロトタイプ・コードの構築と検証解析を行った。その結果,熱-水-応力から化学への基礎的な連成についてはほぼ考慮することができたことを確認したが,化 学から熱-水-応力への連成については,さらなるデータの収集・整理を行った上でより実際的 な連成挙動解析モデルの構築が必要と考えられる。
室内連成試験設備COUPLE(模擬岩体としてモルタルを使用)を用いて,熱-水-応力と化 学が連成する実験を実施した。熱-水-応力-化学連成挙動解析コードによる解析の結果によっ て,熱分布については,経時変化・空間分布共に実験結果を良好に再現できた。水分分布お よび応力については,計測に用いたセンサーの精度や適用条件等の問題により,実験結果と 解析結果で差異が生じた。化学現象については,pHの解析結果は実験結果と概ね傾向が一致 した。鉱物の溶解・沈殿で,C-S-H ゲルの生成については,今回の実験では確認されず,ま た解析でもほとんど生成しないという結果が得られた。今後,鉱物の溶解・沈殿の影響を評 価するためには,試験条件や分析方法等を検討することが必要と考えられる。また,熱-水 -応力についてもより確実に体積含水率等のデータを取得するためのセンサーの開発が必要と 考えられる。
熱-水-応力-化学連成挙動解析について,国際共同研究プロジェクト DECOVALEX を通じ て,各機関の解析モデル・コードとの比較・検証を進めている。また,プロジェクトを通じ て連成現象に関する情報の交換を行い,モデルのさらなる高度化を図っている。これまでの 開発により,鉱物の沈殿/溶解等化学的現象による間隙率変化等の解析が可能になった。こ のプロトタイプ・コードを用いてYMP-DSTについて解析した結果,他の機関の結果と良好 な一致が得られた。オーバーパックの腐食において問題となる塩の蓄積については,化学現 象に熱-水-応力を連成させた解析を実施することにより,より詳細に解析することができた。
その結果,塩の濃度はわずかに上昇する程度であり,塩の蓄積がオーバーパックの腐食にお いて問題となる可能性が小さいことが示された。第 2次取りまとめで行った処分孔竪置き方 式における熱-水-応力連成挙動解析と,プロトタイプ・コードによる熱-水-応力-化学連成挙動 解析の比較では,緩衝材の最高温度や再冠水までの時間,間隙水の pH について大きな差異 がないことが明らかになり,第 2 次取りまとめの結果が化学現象を考慮した場合でも妥当で あることが示された。
(4) 今後の課題
よりリアルな数値実験システムの構築するためには,化学現象から熱-水-応力現象への連成 について,さらにモデル化を進め,過渡期および長期的挙動解析の信頼性を向上させる。特 に化学現象から他の現象への連成については,さらなるデータの収集・整理を行った上で,
より実際的な連成挙動解析モデルの構築が必要と考えられる。また,熱-水-応力-化学連成試 験については,想定されるニアフィールドの環境に対応した熱・水・応力・化学の諸物性を 測定するセンサーを開発した上で,特に化学的な経時変化を把握することが重要と考えられ る。
オーバーパックや緩衝材にとって,より化学的に厳しい地質環境条件と考えられる海水系 および軟岩系(コンクリート支保工の影響による)の熱-水-応力-化学連成挙動解析のための モデルの構築,およびパラメータの設定を行う。さらに,実際の地質環境における熱-水-応力 -化学連成挙動解析の実施と,パラメータの整備,および適用事例の拡充を図る必要がある。