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2 効力を裏付ける試験

3.2 In vitro 細胞毒性

ヒト初代末梢血単核球( PBMC )及び骨格筋細胞( SkMC )に対する細胞毒 3.2.1

(試験番号PC-120-2009、添付資料番号4.2.1.2.1、評価資料)

(試験番号P4331-00037、添付資料番号4.2.1.2.16、評価資料)

分裂期及び静止期のヒトPBMCをTAF、そのジアステレオマーであるGS-7339(図2.6.2- 7)、 TDF 及び TFV と 5 日間連続インキュベートしたときの CC50値を評価した(試験番号 PC-120-2009)。単剤反復投与試験である第 I相試験で観察された Cmax,Tmax,及び t1/2からTAFが循環血 中で有意な濃度で存在するのは 2 時間未満であることが明らかであったため(2.7.2.2.3.1.1 項)

[11]、本試験で用いた TAF の濃度は治療域の濃度及び持続時間を上回っていた。分裂期及び静

止期の PBMCにおける TAFの CC50値はそれぞれ6.8及び 25.1 µmol/Lであった(表 2.6.2-13)。

TAFよりも GS-7339の CC50値が高かったことから、GS-7339の細胞毒性はより低いことが示唆

された。このことは GS-7339 から TFV-DP への変換が限定的であることからも裏付けられる

[18]。全体として、分裂期及び静止期のPBMCにおけるTAFの毒性プロファイルは良好であっ た。

図2.6.2- 7 TAF及びそのジアステレオマーGS-7339の構造式

Source: Report PC-120-2009

表2.6.2-13 分裂期及び静止期ヒトPBMCに対する TAF、GS-7339、TDF及びTFVのin vitro細胞毒性

Class Drug

Cytotoxicity CC50 (μmol/L)a

Resting PBMCs Dividing PBMCs

NtRTI

TAF 25.1 ± 11.5 6.8 ± 1.8

GS-7339 > 124.6 > 186.2

TDF 69.7 ± 22.1 19.6 ± 5.2

TFV > 2652 2150 ± 532

CC50 = drug concentration that results in a 50% reduction in cell viability; NtRTI = nucleotide reverse transcriptase inhibitor;

PBMC = peripheral blood mononuclear cell; TAF = tenofovir alafenamide; TDF = tenofovir disoproxil fumarate;

TFV = tenofovir

a Mean ± SD values from PBMCs isolated from up to 9 donors.

Source: Report PC-120-2009

筋ミオパチーや乳酸アシドーシスなど、NRTIの使用に伴う有害事象は主に骨格筋組織に対す る薬物の影響により生じるため、ヒト骨格筋細胞(SkMC)に対するTFVのin vitro細胞毒性を確 認し、既存のNRTIと直接比較した(試験番号P4331-00037)[41]。薬物存在下で細胞を6日間培 養した時、TFVは弱い細胞傷害作用を示し、そのCC50値は870 μmol/Lであった。ddI及び3TCも TFVと同程度の弱い細胞傷害作用を示した(CC50値はそれぞれ846及び1230 μmol/L)。一方、

ZDV、ddC、d4T及びアバカビル(ABC)は、SkMCに対してより低いCC50値(66~497 μmol/L) を示した。

肝細胞株及び T リンパ芽球様細胞株における細胞毒性 3.2.2

(試験番号PC-120-2007、添付資料番号4.2.1.2.2、評価資料)

(試験番号PC-120-2021、添付資料番号4.2.1.2.3、評価資料)

NRTIの使用に伴う脂肪肝などの有害症状は、主に肝組織に対する薬物の影響により生じる。

そこで、肝細胞株(HepG2)に対するTAF、TDF及びTFVのCC50値を確認し、既存のレトロウ イルス阻害剤と直接比較した(試験番号PC-120-2007)。薬物存在下で細胞を5日間培養した時、

TAF は最高濃度(44.4 µmol/L)まで HepG2細胞に対して細胞毒性を示さなかった(表 2.6.2-14)。

TAFのHepG2細胞に対する細胞毒性プロファイルは、既存のレトロウイルス阻害剤と同様であ

った。

MT-2細胞及びMT-4細胞を用いて、5日間培養後のTAF、TDF及びTFV及び一連の既存レト ロウイルス阻害剤のCC50値も評価した(試験番号PC-120-2007)。TAFはMT-2細胞に対して最

高濃度(53 µmol/L)まで細胞毒性を示さなかった。MT-4細胞及びMT-2細胞に対するTAFの

CC50値はそれぞれ23.2及び>53.0 μmol/Lであった(表 2.6.2-14)。概して TAFの細胞毒性は弱く、

T細胞に対する細胞毒性プロファイルはその他既存のレトロウイルス阻害剤と同様であった。

表2.6.2-14 肝細胞株及びTリンパ芽球様細胞株に対する TAF及び既存のHIV阻害剤のin vitro細胞毒性

Class Drug

Cytotoxicity CC50, μmol/L (MSD)a

Hepatic T Lymphoblastoid

HepG2 MT-2 MT-4

NtRTI

TAF >44.4 (1) >53.0 (1) 23.2 (1.13)

TDF >44.4 (1) 37.1 (1.02) 22.9 (1.04)

TFV >44.4 (1) 7605 (1.06) 6264 (1.13)

NRTI

FTC >44.4 (1) >53.0 (1) >53.0 (1)

3TC >44.4 (1) >53.0 (1) >53.0 (1)

ABC >44.4 (1) 40.7 (1.02) >53.0 (1)

ZDV >44.4 (1) >53.0 (1) >53.0 (1)

ddI >44.4 (1) >53.0 (1) >53.0 (1)

ddC >44.4 (1) >53.0 (1) >53.0 (1)

NNRTI EFV 10.1 (1.05) 25.4 (1.03) 26.4 (1.04)

INSTI RAL >44.4 (1) >53.0 (1) >53.0 (1)

PI ATV >44.4 (1) >53.0 (1) >53.0 (1)

Control PURb 1.0 (1.12) 0.4 (1.05) 0.2 (1.06)

3TC = lamivudine; ABC = abacavir; ATV = atazanavir; CC50 = drug concentration that results in a 50% reduction in cell viability; ddC = zalcitabine; ddI = didanosine; EFV = efavirenz; FTC = emtricitabine; INSTI = integrase strand transfer inhibitor; NNRTI = nonnucleoside reverse transcriptase inhibitor; NRTI = nucleoside reverse transcriptase inhibitor; NtRTI = nucleotide reverse transcriptase inhibitor; PI = protease inhibitor; RAL = raltegravir; TAF = tenofovir alafenamide; TDF = tenofovir disoproxil fumarate; TFV = tenofovir; ZDV = zidovudine; HIV = human immunodeficiency virus

a All cells were treated for 5 days. Cytotoxicity CC50 values represent geometric of independent experiments (n=3) generated using 384-well assays. Multiplicative standard deviations (MSD) are shown in parenthesis.

b Puromycin (PUR) was used as a positive control in cytotoxicity assays.

Source: Report PC-120-2007

5日間培養後のMT-2細胞及びMT-4細胞を用いて、TAF代謝物であるM18(GS-645552)及び

M28(GS-652829)の細胞毒性及び抗ウイルス活性を評価した(試験番号PC-120-2021)。これら

の代謝物は分解物でもあるため、同評価は製造作業の安全性をサポートするものであった。TAF の両代謝物は、最高濃度(57 μmol/L)まで細胞毒性を示さなかった。

ヒト骨髄前駆細胞及び赤血球前駆細胞における造血毒性 3.2.3

(試験番号PC-120-2016、添付資料番号4.2.1.2.4、評価資料)

3例のドナーから採取した骨髄を用いて、TAFのヒト赤血球前駆細胞及び骨髄前駆細胞に対す る細胞傷害作用を評価した(試験番号PC-120-2016)。TAFの曝露条件は、14日間連続インキュ ベーション又は12時間パルスインキュベーションとした。連続インキュベーションは対照とし て評価したが、ウォッシュアウトを含む12時間パルスインキュベーションは、臨床試験

GS-US-120-0104で認められた定常状態でのTAFの血漿中Cmax平均値0.469 μmol/Lを大幅に上回る濃度

で、in vivoにおける限定的なTAFの血漿曝露(Tmax = 0.38~0.50時間、t1/2 =0.34~0.43時間)を より正確に再現するために評価した(2.7.2.2.3.1.1項)。

連続インキュベーションでは、ロット番号BM07B21195の骨髄から得た赤血球前駆細胞及び骨 髄前駆細胞の増殖に対するTAFのIC50値はそれぞれ>3 µmol/L及び3.3 µmol/L(外挿)であった

(表2.6.2-15)。他の2ロットでも同様の結果が得られた。12時間のパルスインキュベーション

では、赤血球前駆細胞及び骨髄前駆細胞の増殖に対するTAFのIC50はいずれも>3 µmol/Lであっ た。

概して連続インキュベーション又はパルスインキュベーション条件下におけるTAFのIC50値 は、臨床でのCmaxの7倍以上であり、骨髄前駆細胞及び赤血球前駆細胞に対して良好な安全性プ ロファイルを有することが示唆された。

表2.6.2-15 TAF及び5-フルオロウラシルのin vitro造血毒性比較

Bone Marrow Lot

Continuous Incubation 12-Hour Pulse Incubation Erythroid IC50

(µmol/L) Myeloid IC50

(µmol/L) Erythroid IC50

(µmol/L) Myeloid IC50

(µmol/L)

TAF 5-FU TAF 5-FU TAF 5-FU TAF 5-FU

BM07B21195 > 3 3.20 3.30ex 3.97 > 3 20.34 > 3 51.41 BM10A33225 > 3 3.89 3.92ex 2.49 > 3 118.80ex > 3 91.15 BM10AOF3062 > 3 4.09 >3 1.06 > 3 69.43 > 3 67.05 TAF = tenofovir alafenamide; 5-FU = 5-fluorouracil; ex = extrapolated value; IC50 = 50% inhibitory concentration

Source: Report PC-120-2016

腎トランスポーター依存的細胞毒性 3.2.4

3.2.4.1 TAF(及びTFV)の腎トランスポーター依存的細胞毒性

(試験番号PC-120-2018、添付資料番号4.2.1.2.5、評価資料)

有機アニオントランスポーター1(OAT1)及び3(OAT3)は、腎近位尿細管細胞(PTC)の基 底外側に選択的に発現し[42]、TFVのPTCへの能動的取込みを仲介する[43]。その結果、腎近 位尿細管のTFVへの曝露量が増大し、TDFを投与した患者で腎臓の有害作用が発現する可能性が ある。本試験では、OAT1及びOAT3を一過性に発現したヒトHEK293T細胞にTAF及びTFVを4日 間曝露させ、OAT依存的細胞毒性を示す可能性を評価した(試験番号PC-120-2018)[44]。

TFVはトランスポーターのない対照細胞と比較して、OAT1及びOAT3発現細胞でより高い細 胞毒性を示した(CC50値の変化がそれぞれ>21倍及び>3.6倍)が、TAFのOAT1及びOAT3発現 細胞に対する細胞毒性は、対照細胞と比較してほとんど変化がなかった(CC50値の変化がそれぞ

れ0.5倍及び 3.5倍)(表2.6.2-16)。対照細胞に対するTAFの細胞毒性はTFVよりも高かったが、

これはTAFのより高い受動的細胞透過性に起因すると考えられる。TAFはTFVの負電荷をマス クする親油基を有しているため、細胞透過性がより高い[5]。OAT3発現細胞でTAFのCC50値 が対照細胞と比較してわずかに上昇したことは、TAFの細胞内濃度増加とは関連がなく、OAT3

による輸送を受けないその他の薬剤(ピューロマイシン及びゲムシタビン)の細胞毒性の変化と 類似していた。

このように、TFVとは異なり、TAFは腎トランスポーターOAT1又はOAT3と相互作用せず、

これらのトランスポーターを一過性に発現したヒト腎上皮細胞でOAT依存的細胞毒性を示さな い。TAFがOATを介して腎近位尿細管に能動的に蓄積する可能性は低い。TAFを投与した患者 ではTDFと比較して循環血中TFV濃度が低く、TAFの腎臓に対する安全性プロファイルはTDF よりも改善している可能性が示唆される(2.7.4.2.1.5項)。

表2.6.2-16 OAT1及びOAT3存在/非存在下でのHEK293T細胞に対する TAF及びTFVのin vitro細胞毒性

Compound

CC50 (µmol/L)a (Fold Change)b

Control Cells OAT1-Expressing Cells OAT3-Expressing Cells

TFV > 2000 (1.0) 94 ± 71 (> 21.3) 553 ± 174 (> 3.6)

TAF 163 ± 42 (1.0) 319 ± 56 (0.5) 47 ± 17 (3.5)

CC50 = drug concentration that results in a 50% reduction in cell viability; OAT = organic anion transporter; TAF = tenofovir alafenamide; TFV = tenofovir

a Data represent mean ± SD from 5 independent experiments performed in triplicate.

b Control CC50/OAT CC50

Source: Table modified from [44]: Report PC-120-2018

3.2.4.2 TFVの腎近位尿細管毒性

(試験番号P4331-00037、添付資料番号4.2.1.2.16、評価資料)

In vivoでの腎毒性をより詳細に検討するため、ヒト初代RPTECを用いてTFVの細胞毒作用を評

価し、ヌクレオチド誘導体(cidofovir及びADV)と比較した(試験番号P4331-00037)[41]。TFV が細胞増殖に及ぼす影響は無視できる程度であり、CC50値は>2000 μmol/Lであった(表2.6.2-17)。 さらに25日後、TFVによる静止期RPTECの長期生存率に対する影響は認められなかった。この

結果は、300 μmol/L以下の濃度のTFVに22日間曝露してもRPTECの生存率に影響がみられなかっ

た別の報告[45]と一致している。一方、cidofovir及びADVの存在下での静止期RPTECの半減期 は、それぞれ約10及び21日間であった。

近位尿細管上皮は血液と尿の間の選択的バリアを維持するために不可欠である。10日間イン キュベーション後、経上皮抵抗測定により分化した近位尿細管上皮機能への作用を評価した結果、

高濃度(3 mmol/L)のTFVでも有意な影響を与えなかった(表2.6.2-17)[43]。一方、cidofovir 及びADVは、それぞれ100~120 μmol/L及び1.0~1.2 mmol/Lで尿細管上皮細胞の機能を50%低 下させた。

Cidofovir及びADVに関連した腎毒性の原因として、腎近位尿細管上皮の側底膜に局在するタン

パク質であるヒト腎OAT1との関連が指摘されている[46]。また、OAT1はTFVの腎細胞内蓄積 を増加させることにより、TFVの細胞毒性を誘導することが示されている。しかし、TFVと異な りTAFはOAT1との相互作用はなく、OAT1の基質ではない(試験番号PC-120-2018)[44]。

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