化粧品に関連する最も重要な法律は薬事法です。
薬事法は医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器について、その品質、有効性及び安 全性の確保を主な目的として、製品そのもの、それを製造(輸入販売を含む)する場所お よび製品の表示事項などについて規制しています。
1-1.化粧品と医薬部外品
薬事法での化粧品の定義は「人の身体を清潔にし、美化し魅力を増し、容貌を変え又は 皮膚もしくは毛髪をすこやかに保つために身体に塗擦、散布その他これらに類する方法で 使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」となっていま す。従って、これまで述べてきた大部分の化粧品が含まれます。
しかし、薬事法では、化粧品及び 医薬品とは区別して、さらに医薬部外品という範疇 があります。医薬部外品の定義は「次の各号に掲げることが目的とされており、かつ人体 に対する作用が緩和の物であって器具機械でないもの及びこれらに準ずる物で厚生労働大 臣の指定する物」となっています。
医薬部外品のうち、今回のテーマに関連するもののみを掲げると次のようになります。
<医薬部外品>
・吐き気その他不快感または口臭若しくは体臭の防止(口中清涼剤、デオドラント製品)
・あせも、ただれ等の防止(てんか粉、ベビーパウダー)
・脱毛の防止、育毛又は除毛(育毛、養毛剤、除毛剤)
・衛生上の用に供することが目的とされている綿類(生理処理用品その他紙綿類)
・染毛剤
・パーマネントウェーブ剤
・浴用剤
・肌荒れ防止、ニキビ防止、美白、紫外線防止、皮膚の殺菌など、薬事法で医薬部外品と
して認められる効能・効果を持ち、かつ、化粧品と同様の使用目的・使用方法を持つ製 品(薬用化粧品)化粧品に関連する法規制等 49
1-2.平成13年の化粧品に関する規制の改正
平成13年4月に薬事法に基づく化粧品の制度について大幅な改正が行われました。(た だし、薬用化粧品などの医薬部外品は本改正の対象になっていません。)
この改正は、近年化粧品の品質安全性が著しく向上したこと、企業の製造物責任につい て重要視されることになったこと、そして化粧品の国際的な流通促進を考えた上での化粧 品規制の国際的ハーモナイゼーションなどの理由により実施されました。
(1)化粧品種別許可基準の廃止と化粧品基準の制定
これまでの「化粧品種別許可基準」では配合できる原料(約2700成分)がポジティブ リスト的に規定されており、「化粧品原料基準」及び「化粧品種別配合成分規格」でその 規格を規定した方式でした。
平成13年の改正により「化粧品種別許可基準」は廃止され、新たに制定された「化粧 品基準」により、下記の3点がリストアップされました。
① 配合できない成分のリスト………ネガティブリスト
② 配合できるタール色素および制限つきで配合できる紫外線吸収剤、防腐剤 ………ポジティブリスト
③ 配合に制限のある原料 ………リストリクテッドリスト 上記のリストを図にすると下記のようになります。
化粧品に関連する法規制等 50
化粧品に関連する法規制等 51
(2)化粧品の承認制度の改正
改正前は 化粧品は内容成分により市販前に厚生労働省による承認が必要なものと届け 出だけが必要なものとに分けられていましたが、改正後は、全ての化粧品が届出だけで製 造、販売が可能になりました。
(3)表示しなければならない化粧品成分の改正
改正前は表示指定成分(注記参照)のみの表示が義務づけられていました。改正後は、配 合されているすべての成分の名称を記載しなければならなくなりました(全成分表示)。
配合量の多い順に記載(ただし1%以下は順不同)し、色素などは最後にまとめて表示 してもよいことになっています。
これにともない表示指定成分について特別に表示する必要はなくなりました。
注記:「表示指定成分」とはアレルギーなどの皮膚トラブルを起こすおそれがある 物質について、そうした製品の使用を消費者がみずから避けることができるよう に、昭和55年の厚生省告示で指定されていて、102種類の成分に香料を加えて103 種類が対象でした。
このように、化粧品に関する規制は大幅に緩和されましたが、一方で製造する企業の責 任がますます求められるようになりました。
なお、平成13年の改正には医薬部外品は含まれず、医薬部外品については従来の法律 で運用されており、承認制度が存続しています。
すなわち、医薬部外品は個々の 製品ごとに有効成分およびその他 の成分、使用方法、効能・効果な どについて審査され、承認される ことが必要です。種類によって規 制された範囲で効果・効能を表示 できます。成分の表示については
「表示指定成分」(注記参照)の表 示が義務づけられており、一方、
全成分表示をする義務はありませ んが、業界による自主基準として 医薬部外品についても全成分表示 をする動きが始まっています。
薬用クリーム ○○
医薬部外品
有効成分:塩酸トコフェロール、トコフェロール、BHT 容量:60g
株式会社 ○○○
東京都渋谷区西原 03-0000-0000
ハンドクリーム △△
全成分:水、ミナラルオイル、ワセリン、グリセリン、水添ポ リイソブテン、シクロメチコン、マイクロクリスタリンワック ス、ラノリンアルコール、パラフィン、スクワラン、ホホバ油、
オレイン酸デシル、オクチルドデカノール、ジステアリン酸Al、
ステアリン酸Mg、硫酸Mg、クエン酸、安息香酸Na、香料 標準重量:85g
株式会社 △△△ 東京都渋谷区東原 03-0000-0000
Column‥紫外線とその防止指数(SPF及びPA)について 52
Column 3
紫外線防止効果の目安として、SPFとPA分類があります。
SPF(Sun‥protection‥factor):
紫外線防止用化粧品に表示されている紫外線のカット効果を示す指標です。
S P Fの数値は、太陽光中のU V - B(中波長域紫外線、290~320 nm)によって皮膚に紅斑ができ るまでの時間を何倍にのばせるかを示したものです。現在、S P Fの表示には上限が設けられて おり、SPF測定結果が統計的に5 0を越えるU Vケア化粧品についてはSPF 50+と表示されます。
ただし、これらはあくまで実験室内の一定条件下で測定したものであり、一方実際の使用場面で は種々の影響を受けますので、SPFはあくまで目安です。
PA(Protection‥grade‥of‥UVA):
紫外線防御能の中で、UV-A(長波長域紫外線、320~400 nm)防止効果の程度を示す目安です。
SPFのように数値でその効果を表すのではなくて、三つの分類 PA+(UVA防止効果がある)、
PA++(UVA防止効果がかなりある)、
PA+++(UVA防止効果が非常にある)で表示されます。
紫外線とその防止指数(SPF及びPA)について
紫外線は波長が190~400 nmの範囲の電磁波で、太陽光線に含まれています。地表 に到達する電磁波の中で一番波長が短く高いエネルギーを持っており、多量の紫外線 を皮膚に浴びると種々の障害が発生します。
紫外線はその波長により、さらに下記の3つに分けられますが、それぞれの生物学的 作用が異なっています。
UV-A(320~400 nm、長波長紫外線)
UV-B(290~320 nm、中波長紫外線)
UV-C(190~290 nm、短波長紫外線)
■ UV-Aは紫外線の中では波長が長いために皮膚の深部まで到達します。またUV-Aは
UV-Bと異なり、大部分がガラスを透過し、空全体が雲で覆われている場合でもか なりの部分が地表に到達します。長時間UV-Aを浴びると、皮膚の老化(はりや弾 力の低下)を促進し、また表皮にある淡色メラニン色素を濃色メラニン色素に変 化させて、皮膚を黒化させます。また皮膚に障害を与える活性酸素を発生させます。■ UV-Bは皮膚に暴露されると、即時的な皮膚反応として、短時間で紅斑や浮腫のよ
うな炎症(サンバーン)反応を引き起こし、そのあと数日後に皮膚に色素沈着が 起きます。また、UV-Bは皮膚の免疫機能を低下させ、長時間浴びると皮膚がんの 原因になります。■ UV-Cは細胞内のDNAの損傷を引き起こす可能性がありますが、成層圏に存在する
オゾン層によって吸収され、地上に到達することはありません。出典
1.日本化粧品技術者会編「化粧品事典」
2.日本化粧品工業連合会編「コスメチックQ&A事典」
3.日本化粧品工業連合会編「紫外線防止用化粧品と紫外線防止効果―SPFとPA表示―」
(2000.1)
4.日本化粧品工業連合会ホームページ「成分表示名称リスト」
(http://www.jcia.org/)
5.日本ヘアカラー工業会・染毛剤懇話会編「ヘアカラーリングABC」
6.皆川基、藤井富美子、大矢勝編「洗剤・洗浄百科事典」
Column‥日本化粧品連合会の目安 53
■ 日本化粧品連合会の目安
記載を確認し使用目的によって、製品を選択することが重要です。
図:生活シーンに合わせた紫外線防止化粧品の選び方
日常生活
(散歩、買い物等)
屋外での軽い スポーツ、レジャー等
炎天下でのレジャー リゾート地でのマリン スポーツ等
非常に紫外線の 強い場所や紫外線に 過敏な人等
10 20 30 40 50 (50+)
+ ++
+++
PA
SPF