(1)自動運転の普及に向けた制度整備と社会受容性の向上
近年の自動運転に係る技術の進展に伴い、前章に記載した通り、2020年に向 けた市場化やサービス提供開始が視野に入りつつある。このような中、2020年 における各種高度自動運転ビジネスの市場化・サービス提供開始に向けて、制度 面での検討を進めるものとする。
その際、世界最先端を目指す観点から、最先端を取り組む事業者を念頭にスケ ジュール化を行う一方、制度面については、世界的に前例のない検討課題である ことから、国際的に連携しつつも、日本が世界をリードするというスタンスで取 組むものとする。また、具体的な制度面の設計にあたっては、自動運転は社会的 にメリットが大きいということを踏まえ、安全を確保しつつ、イノベーションを 促進するなどの基本的スタンスとして取り組むものとする。
【表11】高度自動運転システムの制度設計に係る基本スタンス(3原則)
① 自動運転がもたらす巨大な社会的利益を認識し、その導入を推進する観点から制度 整備を行う。
通常の人間で生じるミスを極力排除することにより、交通安全の抜本的向上が期 待されること
その他にも、交通の円滑化と省エネルギー、高齢者等の移動の円滑化とドライバ ーの負担軽減、産業競争力の向上と新たな産業の創出など、多くの社会的利益が 期待されること など
② 安全の確保を前提とし、自動運転の導入に伴うリスクが更に低減していくような制 度整備を行う。
現在の交通安全に係るリスク全体が低減する前提で、自動運転システムの導入を 推進する
安全を確保しつつ、走行実績等を踏まえ、安全性に係るイノベーションが進むよ うな制度体制
新たな技術的進展が、既存システムに反映されるような仕組み など
③ 自動運転に係る多様なイノベーションを推進するような制度整備を行う。
技術的中立性を保ちつつ、多様なイノベーションに係る取組を推進するような制 度設計
責任関係については、被害者救済など社会受容性を前提としつつ、保険制度も含 め製造事業者やシステム運用者のイノベーションが促進されるような制度設計 など
① 公道実証に係る制度整備とプロジェクトの推進
<自動運転の公道実証・実走行に係る制度環境(現状)>
40
日本における自動運転の公道実証・実走行環境は、自動運転と道路交通に関す る条約との整合性等に関する国際的議論を踏まえて整備されてきている。具体 的には、運転席にドライバーが乗車し、道路交通法を始めとする関係法令を遵守 して走行し、緊急時の対応が可能な形態であれば自動運転のどのレベル(レベル 1~レベル5)であっても、警察への事前の調整や許可を要することなく、公道 実証実験は可能であることに加え、道路交通に関する条約上の整合性が確認さ れた遠隔型自動運転システムの公道実証については、実施を可能とするための 制度整備を2017年6月に予定しており、世界各国の取組と比較して最先端の制 度整備の取組を進めている。
現在も、国連欧州経済委員会(UNECE)の道路交通安全グローバルフォーラ ム(WP1)では、同部会の非公式作業グループを中心に、道路交通に関する条約 と自動運転との整合性等について、積極的な議論が行われているところであり、
日本においても、これらの議論に積極的に参加しつつ、高度自動運転に係る制度 整備に向けた検討を進めていくものとする。
また、車両の安全基準についても、多様なイノベーションを推進することを念 頭に、ハンドルやアクセルペダル等のない車両を基準緩和の対象とすることを 可能とするため、2017年2月に道路運送車両法に基づく関係法令の改正を行い、
引き続き、公道での実証実験を推進している。
【表12】自動運転の公道実証・実走行に係る日本・海外の制度環境
公道実証 全ての自動運転レベル(無人型を含む)
車両内運転者有 国連:可
日本:可(許可も不要)54
海外:可(ただし、多くは許可制(米国では6~7州のみ可能)) 車両内運転者無
(遠隔運転者を 含む)
国連:遠隔運転者がいれば可(2016年3月)
日本:遠隔運転者がいれば可(2017年6月目途)
海外:不可(米国加州等各国で法制化を検討中)
実走行 SAEレベル2以下 高度自動運転(無人型を含む)
車両内運転者有 国連:条約上可
日本:現行法上可・実用化済み 海外:概ね現行法上可・実用化済み
国連:条約上の整合性につき議論中 日本:不可(交通関連法規の見直し
が必要)
海外:不可(米国加州で検討中)
車両内運転者無
(遠隔運転者を 含む)
国連:条約上の整合性につき議論中 日本:不可(今後の課題)
海外:不可(米国加州で検討中)
54 日本では、自動運転システムとしてL3~L5あるいは無人型を目指した技術を実証する ための実験についても、運転席にドライバーが乗車し、道路交通法を始めとする関係法令 を遵守して走行し、緊急時の対応が可能な形態であれば、自動運転のどのレベル(レベル 1~レベル5)であっても、警察への事前の調整や許可を要することなく、公道実証実験 は可能。
なお、警察庁は、公道実証の実施にあたって参照すべきガイドラインとして、「自動走 行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」を2016年5月に策定・公表し ている。
41
<公道実証に係る制度面の整備とプロジェクトの推進>
ロードマップ2016に記載された、限定地域での無人自動運転移動サービスの 実現に向けた公道実証に係る制度整備(2017年目途)については、前章に記述 の制度整備により、遠隔型やハンドル、アクセルペダルのない車両の自動運転に 係る公道実証を可能となる。また、ロードマップ2016に記載された模擬市街地 等のテストコースについても、2017年4月に開所されている55。さらに、前章 に記述のとおり、現在、国主導のプロジェクトを含めて多くの公道実証試験が予 定されているところであり、今後とも、これらの制度・施設を活用しつつ、国内 における積極的な公道実証試験の実施を推進する。
さらに、2017年3月には、国家戦略特別区域法等の改正法案が国会に提出さ れ、現在国会審議中である。同法案では、自動運転等の最先端の実証実験等を迅 速に行うため、「日本版レギュラトリー・サンドボックス」56として、安全性に 十分配慮しつつ、事前規制・手続を抜本的に見直すこととし、そのための具体的 方策を、法案成立後1年以内に検討・措置するとしている。また、民間事業者に 対し、関係法令上の手続に係る各種相談や情報提供等を行うとともに、必要に応 じ手続の代行等も行うことを旨とした、関係自治体や関係各府省から構成され る「近未来技術実証ワンストップセンター(仮称)」を、区域会議の下に設置す る。
<官民連携体制の整備と公道実証に係るデータの共有>
上述のとおり、政府主導の多数の公道実証プロジェクトの推進が見込まれる 中、今後、これらの実証成果を集約し、今後の制度改革に反映していくことが必 要である。このため、未来投資会議での総理発言57を踏まえ、様々な実証走行の 成果を集約し、新たな技術を踏まえた制度改革の可能性を集中的に検討するた め官民が対話・協力する連携体制を整備する。
その際、特に、公道実証によって得られたデータの一部は、社会受容性の確保 にとっても有用であるとともに、今後の研究開発や制度設計の検討にあたって
55 日本自動車研究所(JARI)は、2017年3月、自動運転車両の評価拠点となる
「Jtown」を茨城県つくば市内に開設し、報道公開を実施。
56 これに関連して、2017年2月、東京圏国家戦略特別区域会議の東京圏区域会議の下 に、「東京都自動走行サンドボックス分科会」を設置した。同分科会では、羽田空港周辺 地域等において最先端の自動走行システムを活用した様々な実証実験の企画・実施に取り 組むとともに、現行の制度や手続きの抜本的見直しと併せて事後チェックルールを徹底し た、いわゆる「サンドボックス」特区制度の構築を図るとしている。
57 平成29年2月16日第5回未来投資会議総理大臣発言:「様々な実証走行の成果を集約 し、新たな技術を踏まえた制度改革の可能性を集中的に検討するため、IT戦略本部の下 で官民が対話・協力する連携体制を作ります。」
42
も重要なものとなる。このため、公道実証に係るデータについては、可能な範囲 でそれらデータに係る共有化や成果の公表を図ることができるような仕組みを 検討していくことが必要である。
このため、今後、自動運転に係る事故データ、事故データ以外の安全関連デー タ(オーバーライドデータ、ヒヤリハットデータなど)、標準化等が必要な自動 運転に係る技術的データ、実証地域におけるニーズやビジネス・モデルに係る情 報等についての情報共有の在り方を検討していくこととする。その中で、事故デ ータを含む安全関連データの情報共有の在り方については、今後の自動運転に 係る実用化を含む全体の制度設計の検討の中で、事業者におけるデータの保存・
提出・公表の義務化の可能性、個人情報の取り扱い、自動運転車・システムの安 全性評価の検討体制の在り方も含めて検討していくこととなる。
② 高度自動運転システム実現に向けた制度面の課題(大綱策定)
<高度自動運転システム実現に向けた政府全体の制度整備大綱の必要性>
前章の今後の自動運転システムの実用化に向けたロードマップに記載したと おり、高速道路での自動パイロット(SAEレベル3)及び限定地域でのSAE レベル4の無人自動運転移動サービスの実現を含む高度自動運転システムの市 場化等期待時期が2020年目途であることから、その実現のために必要な交通 関連法規の見直しを含む制度整備の方向性を検討する必要がある。
このような高度自動運転システムの公道での実走行については、国連におい て、自動運転と道路交通に関する条約との整合性を図る必要があるとして、国 際的議論が進められているものの、一方で、世界主要各国の一部においては、
このような動きと並行して、各国国内での高度自動運転の実用化に向けた法制 度の在り方の検討が進められている58。
58 具体的には、例えば、以下のとおり、各国の事情を踏まえた検討の動きがある。
・ 米国カリフォルニア州:自地域のIT企業等の動向を踏まえ、SAEレベル3,4,5/無人自 動運転を含む包括的な自動運転の実用化に向けた規則を検討中。最新版は、2017年3 月に発表しており、許可に必要な多数の証明項目等を明示している。2017年中の施行 を目指す。
・ ドイツは、自地域の自動車企業の動向を踏まえ、当面、システムが要求した場合に運 転者が運転操縦を遅滞なく引き受ける自動運転自動車の実用化に向けた道路交通法
(運転者の義務のみならず、賠償責任、車両登録等についても規定している法律)の 改正を閣議決定、国会提出(2017年2月)。同法案は、概ね2019年までを目途とし た暫定的なもの。
・ 英国:自動運転に係る制度整備の政府方針に係るパブリックコメント結果を含め、当 面、保険制度の改正方針を打ち出し(2017年1月)。本年中に法案を策定する予定。