⑤人材の育成
中小企業、行政、医療、教育などさまざまな分野で、IT 人材の不足が IT 化を進め る上でのネックとなっている。IT と本来の業務の双方に通じた人材を育成するととも に、そうした人材が能力を発揮する環境を整え、業務に合った IT の導入を戦略的に進 められるようにする必要がある。小・中学校、高校における IT の基礎教育をはじめ、
大学、大学院等での高度な IT 教育の充実、社会人向けの IT 教育機会の充実などに注 力する必要がある。
⑥インターネット利用者の拡大とデジタル・デバイドの解消
利用者が増えるほどインターネットの魅力は高まり、各分野での IT の利活用も進む。
現在、インターネットの普及率は 6 割を超えるまでになっているが、残る 4 割の利用 を促進する必要がある。年齢別のインターネット利用率の格差も縮小しつつあるが、
引き続き、デジタル・デバイド(インターネット等を利用する能力や環境の有無によ る情報等の格差)の解消に努めつつ、普及を促していく必要がある。
①医療
電子カルテによる医療機関の連携や効率的で質の高い医療サービスの供給、電子レ セプトによる診療報酬請求業務の効率化、遠隔医療等に取り組む必要がある。
電子カルテについては、カルテ情報のネットワーク転送や外部保存の容認に関する 要件等詳細の決定や、電子カルテに載せる医療情報の標準化、認証基盤の整備と個人 情報保護・セキュリティの確立等に取り組む必要がある。医療と IT の双方に精通した 人材の確保も必要である。医療の IT 化の効果や意義について、医療機関や国民の理解 を深めることも重要である。
②教育
小中学校では、全ての教室においてインターネットに接続できる環境を早急に整備 することが必要である。ただし、単に接続するだけでは十分ではない。教員の IT の指 導力向上や、インターネット上の有害な情報に対する十分な対策が必要である。
大学においては、インターネットを通じた授業等において IT の活用が期待される。
現在インターネット授業の単位認定を行っている大学は 4.3%にとどまっており、そ の拡大を図る必要がある。
3.医療分野や就労・労働など戦略的分野での IT 利用を具体的に推進
③就労・労働
2004 年 3 月に労働関係法令の適用関係等をテレワークに対応して整理し直したガイ ドラインが出され、2004 年度中にはセキュリティの高いテレワーク環境の導入を支援 するガイドラインが整備される予定である。民間でも、勤務時間の管理やテレワーカ ーの評価方法など、テレワーク導入の課題解消に取り組むことが期待される。
④コンテンツ
コンテンツの制作力の強化や円滑な流通等を図る必要がある。
コンテンツ制作力については、人材の育成のほか、制作事業者が大手の流通事業者
(テレビ局、映画配給会社等)の下請化することなく、適正な利益が確保されるよう にする必要がある。公正な取引関係の確立や、多様な方法で資金調達を図るための制 度の構築等が必要である。
流通については、既存の映像コンテンツ等をインターネットで流通させる際に必要 となる複雑・多様な著作権利関係の処理の円滑化等が必要である。
⑤企業
IT が効果を十分発揮するには、組織や業務の改革、人材・雇用面での対応を併せ行 う必要がある。従って、企業が組織改革や人材・雇用面での対応を円滑に行えるよう な制度等の整備が、IT 化の効果を相乗的に高めるためにも重要である。
ユーザー企業側の IT 理解の不足も、無駄な IT 投資を生んでいる。業務と IT の双方 に通じ、システムの設計や戦略立案に携われる人材の育成と活用も必要である。
また、日本企業は IT を主に業務効率化の手段と捉えており、新たな価値を生み出す 手段としての活用が弱い。企業が意識を変えることで、これまでと違う面での活用と 効果が拓かれると期待される。
上記のような課題に上手く対応し、IT 化の効果を最大限引き出すことに成功した事 例の紹介等も有効と考えられる。
⑥行政
国の扱う申請・届出手続のほとんどがオンライン化されるなど、電子政府の取組み も進んでいるが、利用者が実際に利便性を感じるには至っていない。利用者の視点に 立ったもう一段の取組みが必要である。例えば、手続のわかりにくさや使いにくさが 利用を妨げている場合があり、簡易な操作で各種の手続が行える使いやすいワンスト ップ・サービスを進める必要がある。また、電子申請でも一部の書類は書面での提出 が求められる結果、利用者の手間を省くことになっていない例なども見られるが、こ れらも利用者の視点から見直しが必要である
また、単に IT を導入しただけでは効果が十分に現れず、業務改革が必要なことは行
政の場合も企業と同様である。行政の IT 化に伴い行政内部の業務の見直しも併せて行 う必要がある。
参考資料
(IT による利便性向上や生産性向上の事例)
IT による利便性向上や生産性向上の事例
ここでは、IT は生活の利便性向上や、需要の拡大、生産性向上などをもたらしてい る具体的な事例を取り上げる。
民間における取組み事例
① 東京 MK タクシーの「プライベート・ショファー・サービス」(p.57)
タクシーの位置をGPSで把握して、顧客が自分に最も近い車の位置を携帯電話や パソコンで検索し、直接ドライバーを呼び出すことができるサービスである。これに より、利用者の利便性を高めると同時に、コールセンターの負担軽減等の業務効率化 が図られている。
② セーレンの「ビスコテックスシステム」(p.60)
独自のデジタルプロダクツシステムを核として、繊維製品の企画、設計から生産、
販売まで全てを情報通信ネットワークで結びデジタル化した、事業化に成功している 世界でも唯一のシステムである。老舗の繊維企業だったが、情報企業に転換、急回復 を実現した。顧客にもニーズに対応した商品を短期間で入手できるメリットがある。
行政における取組み事例
③ 横須賀市の電子入札等への取組み(p.63)
横須賀市では電子入札等への先駆的な取組みを行っており、世界の電子自治体トッ プ7にも選ばれている。電子入札は、公正な競争環境の整備や公共事業のコストの削 減等の効果を上げている。
④ 福岡県の「電子自治体共通化技術標準」(p.66)
これまで業務ごとに独立して開発していた情報システムの共通部分を標準化する ことによって、①迅速かつ安価なシステム開発と容易な保守・運用を実現し、②シス テム間、さらには自治体間での互換性を生む新しい方式。全国の自治体に、この標準 モデルの採用を呼びかけ無料で提供している。
⑤ 札幌市の「ウェブシティさっぽろ」(p.69)
上記2つの自治体の例は、ITにより行政の業務効率化を実現している例であるが、
一方、IT による住民サービスにより住民の利便性を向上させている事例として、札 幌市の「ウェブシティさっぽろ」の取組みがある。これはNPOとの協働により行政 だけでは提供できない地域情報、行政情報の紹介を効果的に提供するものである。
医療分野における取組み事例
⑥ 国立病院機構京都医療センターの電子カルテ等の取組み(p.71)
京都医療センターは、NPO と連携しつつ、いつでもどこでも誰でも電子カルテを 利用できる環境などへの取組みを行っている。こうした取り組みによって、かかりつ け医と高度医療機関の間での連携が効率化し、医療情報の蓄積は適切な診療の実現に 寄与することが可能となる。
(1)企業における取り組み事例
東京エムケイ
1.IT 活用の取組の概要
<プライベート・ショファー・サービス>
「Japan Shop System Awards 2004」 最優秀賞受賞
(1)サービスの概要
・従来コールセンター経由で呼び出していたタクシー配車について、 GPS(Global Positioning System)1と携帯電話やパソコンのインターネットを活用することによ り、利用者が自分の位置から最も近い空車のタクシーと距離を検索し、ドライバー の携帯電話に直接配車依頼する「仮想専属運転手」(=プライベート・ショファー)
サービス。
・提供者側センターでは、すべてのタクシーの位置、稼動状況(実車、空車、方向等)
を GIS(Geographic Information System;地理情報システム)上でリアルタイムに 把握することが可能となっている。
プライベート・ショファー・サービスの概要
(備考)東京エムケイ㈱ホームページ
1 全地球測位システム。米国が打ち上げた24個の人工衛星からの電波を利用して正確な軌道と時刻情報を 取得することにより、現在位置の緯経度や高度を測定するシステム。