合理化することも不可能であるo従って、事務類型ごとに別個の関与根拠を見出すか、両 事務類型を包括する統一的な関与根拠を求めることが必要となる。
(3)その他の地方自治法上の関与関係規定 新地方自治法における関与の基本原則を 定める規定中には、自治事務を中心に、関与根拠を示唆しているとも受けとることのでき る文言がある。まず、法定受託事務も含め、 「協議」に関する原則を定めている第二百四 十五条の三第三項をあげることができる○それによると、 「協議」という関与類型は、国 の計画と自治体計画との調和を保つ必要がある場合など、国・自治体双方の施策間に「調 整が必要な場合」を除き設けないこととされている。ここでは、関与は、国・自治体間「調 整」の手段である。もちろん、さしあたり、 「協議」について述べられているにとどまる が、この調整説は、見方によっては、より一般的な意味をもち得る。すなわち、対等・協 力の関係における「関与」の実質は、 (上下関係を連想させる)真の意味での「関与」で はなく、 「調整」であるとする見解が説かれているからである。これによれば、関与法制 全体が、国・自治体「お互いの関係を調整していく仕組み」と捉えられることになろう(4
8)。
次に、同条第四項は、自治事務に係る「同意」について、国・自治体双方の施策の実施 に著しい支障が生じないよう、双方の施策の「整合性」を確保する必要がある場合を除い て設けないこととしている。これも、広い意味でr調整」の一環といえないことはないが、
同条第五項の許認可・第六項の指示に至ると、両者の「調整」という発想で捉えることは かなり困難となる。許認可等は、それ以外の方法では自治事務の処理の適正を確保するこ
とが困難な場合以外は設けないこととされ、指示は、自治事務の処理につき、国民の生命
・身体・財産を保護する緊急の必要がある場合を除いて設けないこととされているからで
ある。
許認可等の関与が認められる例としては、自治体による特別路上の法人設立があげられ ており、地方分権推進計画(一九九八年五月二九日)に列記されている、刑法等で一般に 禁止されている行為(いわゆる公営ギャンブル等)を自治体が行う場合や公用収用などの 場合と同様・自治事務の処理としての当該行為を自治体の「意思だけではおよそなしえな い性質のもの」について、その行為を可能にするため国が許認可等の主体として登場する こととなる(49)。いわば、法(技術)的構成上、不可欠の「関与」ということになろう か。もっとも、この理が法定受託事務にまで、当然に及ぶわけではない(50)。これに 対し、自治事務に係る指示については、国・自治体間「調整」の問題というより、むしろ、
国民の最終的な《守護者》とでもいうべきものとして国が位置付けられているように見え
る。
(4)個別法の関与関係規定
①地方分権一括法により、咽の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に 関する法律」 (昭和二二年法律第一九四号‑法務大臣権限法と略す)も改正された。これ は、従来、国の機関委任事務を処理する自治体の(執行)機関は、国の事務を国の機関と
して処理するものとされていたため、国の機関委任事務に係る訴訟を法務大臣が指揮し、
その所部の職員をして当該訴訟を行わせることは(国の直接執行事務と同様)当然のこと とされてきたが、第‑号法定受託事務は、自治体の(処理する)事務であるため、この理
1
‑105‑
が直ちには妥当しなくなったことを受けて行われたものである。新たに、第‑号法定受託 事務に関して定める第二粂第三項・第六条の二などが付加された。後者は、自治体の行政 庁を当事者・参加人とする第一号法定受託事務に関する訴訟ないし同事務の処理を争点と する訴訟について、法務大臣‑の報告、法務大臣による助言・勧告・資料提出要求および 指示、法務大臣ないし各大臣の所部の職員による訴訟担当という、各種の「関与」につい て定めている。
このことは、第‑号法定受託事務に係る訴訟も、基本的に、 「国の利害に関係のある訴 訟」として位置付けられていることを意味する。前記関与規定は、 「第‑号法定受託事務 に関する争訟の結果いかんが、当該事務の根拠法令の効力若しくはその解釈又は国の施策 等、国の利害に影響を及ぼすことが考えられ、また、右の争訟の処理に関する事務も、当 該第‑号法定受託事務の一環ないし延長と考えられることから」国においてその適正な処 理を確保する必要があるとして設けられた(51)のである。
②いわゆる並行権限の行使に係る規定も、当該権限の行使が、自治体の「権限行使を法 的に制約すると考えられる場合」には「関与」に当たると解すべき(52)、とされている。
これは、 「国の行政機関が自治事務と同一の事務を自らの権限に属する事務として処理す る場合」 (第二百五十条の六)であるから、関与として機能する際にも、あくまで国の事 務として行われていることになる。関係規定の中には、そのような複線的事務配分を静め
る実質的理由らしきものを示すものが見られ、その代表例として、 「国の利害に重大な関 係」があることを要件とする規定(都市計画法第二四条第‑項、建築基準法第‑七粂第‑
項・第八項)を挙げることができる。
③以上の例は、国が「関与」を行う(あるいは、自らの事務として処理する)のは、一 般的にいえば、国の利害に関わるからだ、という推測を与える。実際、先の法務大臣権限 法は、従前同様、自治事務(団体事務)に関する訴訟についても.自治体からの求めに応 じて法務大臣が所部の職員に当該訴訟を行わせることができる旨定めている(第七条)が、
それは法務大臣が「国の利害を考慮して必要があると認めるとき」でなければならない。
これは、いうまでもなく、自治事務についても、何らかの意味で国の利害に関わる場合が あることを前提にしたものである。
3 関与の実質的根拠論
以上、新地方自治法を中心とする関係規定を手がかりに、関与の(実質的)根拠を探っ てきた。ここではさらに、学説等において、必ずしも個別の明文規定に拘泥することなく、
国家関与の実質的根拠を示唆しているものと解することができる諸見解をとりあげ、検討 してみることにしよう。
(1) 法定受託事務に対する関与の根拠
①地方分権推進委員会「中間報告」の定義 地方分権推進委員会は、初期の段階におい ては、 「法定受託事務」を、 「専ら国の利害に関係のある事務であるが、国民の利便性又は 事務処理の効率性の観点から法律の規定により地方公共団体が受託して行うこととされる 事務」としていた(一九九六年三月二九日・中間報告)。そして、自治事務・法定受託事 務共に自治体が担うという意味では「地方公共団体の事務」だが、 「その性質・背景等か
らみて、国との調整のための関与の程度などに、差異を設ける必要がある」とも述べてい
‑JÒ‑
た。少なくとも、法定受託事務に係る関与については、 「国の利害」を守るため「調整」
的な意味で関与を行うという発想を、そこに読み取ることができるように思われる(さら に、 「専ら」という文言は、自治事務も、自治体自身の利害に加え、 「国の利害」に関係す ることがある、ということを前軽としているように思われる)。
同委員会による法定受託事務の定義は、はやくも同年一二月二〇日の第一次勧告におい て変更された。すなわち、同勧告は、 「法定受託事務(仮称)」を、 「事務の性質上、その実 施が国の義務に属し国の行政機関が直接執行すべきではあるが、国民の利便性又は事務処 理の効率性の観点から、法律又はこれに基づく政令の規定により地方公共団体が受託して 行うこととされる事務」としたのである(53)。中間報告にあった「専ら国の利害に関係の ある事務」という表現が回避されたのは、それを用いると、いわゆる国庫委託金について 定める地方財政法第‑○条の四に使用されている文言と同一なため、経費負担問題と直結
しかねないこと、および、自治体にも利害関係のある事務を法定受託事務とすることが困 難となることによる(54)。決して、関与の根拠論が念頭に置かれた上で変更を受けたわけ ではない。むしろ、関与の実質的根拠としてみる限り、国家利害関係説も、先に見たよう に(三・ 2(4))、なお理論的に成り立ち得る見解といえるように思われる。
②法定受託事務のメルクマール もっとも、 《国の利害に関係する》事務であるとして も、さらに、どのような意味でそう言えるのかという点になると、必ずしも明確ではない。
この点で参考となるのが、前記の地方分権推進計画で示された法定受託事務の「メルクマ ール」 (55)である。これは、八項目にわたるものであるが、暫定的な項目を除くと実質七 類型となる。すなわち、国家統治の基本に密接な関連を有する事務、根幹的部分を国が直 接執行している(一定の)事務、全国単一制度・一律基準による給付金支給等に関する(一 定の)事務、広域にわたる国民の健康被害を防止するための(一定の)事務、精神障害者 等の強制入院措置に関する事務、国が行う災害救助に関する事務、および国の直接執行事 務の前提となる手続の一部のみに係る事務でそれだけでは行政目的を達成し得ないもの、
である。ここから推し量ると、少なくとも法定受託事務の大半は、国家事項・事務との(磨 接な)関連ないし事務の全国的・広域的性格故に《国の利害に関係する》、と捉えること
もできないわけではなかろう。
③法定受託事務‑国家事務鋭 学説の中には、法定受託事務を、原理的に「国の事務の 本質を持つ」と解するものがある。すなわち、 「法定受託事務については、立法国家とし ての国の法律により強い国関与づきで自治体が執行を義務付けられるので、その原理的根 拠を十分に問う必要がある」とし、 「その本質的典型・本来的形態は、国政選挙の管理な ど国の事務の本質・本来的性質を持つものを国から自治体に執行委託したもの」 (「本来的 法定受託事務」)とするのが、それである。この見解によれば、本質的には国の事務であ るが故に、 「強い」関与が及ぶのもやむを得ないということになろう(56)。
もっとも、同説も、実際に法定受託事務として整理された事務の中には、このような原 理的理解になじまないもの(「本質的な国の事務性」は認められないが、 「法律構成上」法 定受託事務として「擬制」された「非本来的法定受託事務」)が多数存在することを認め ている。この場合には、 「擬制」にとどまる分「国関与の原理的根拠は薄弱」で、 「運用面 でも、受託自治体に自主的な地域執行裁量を認めるのが事務の実質に叶」うところであり、
また「今後の立法によって自治事務化‑の見直しが原理的に求められる」とされている(5
‑1()7‑
7)。従って、 「本来的法定受託事務」に属さない「非本来的法定受託事務」および自治事 務については、別に、関与の実質的根拠を論じなければならないこととなろう。
(2)自治事務に対する関与の根拠
①国の責任説 山下教授は、唱の関与の根拠を考えるならば、法定受託事務について は、機関委任事務がそうであったような事務の帰属とは別の次元での説明が求められよう」
とし、 「それは、結局のところ『その適正な処理を特に確保すること』についての国の責 任とでもいうべきもの」に帰着することになるのではないか、と論じている。そして、 「と すれば、法定受託事務と比べて相対的に低いとはいえ、自治事務についても『その適正な 処理を確保すること』についての国の責任を想定することもできよう」と述べている。こ れは、先の法定受託事務‑国家事務説と異なり、法定受託事務と自治事務について、その 帰属によってではなく、関与の強弱の違いとして、両者を「相対化」して理解する立場(5 8)からのものであるが、自治事務・法定受託事務を通じた《国の適正処理確保責任》なる ものに、関与の(統一的)根拠が求められていると解することができよう。もっとも、国 がなぜ「責任」を持つ必要があるのか、という点については詳らかにされていない。
②法治主義・国法秩序の番人説 直接には、新地方自治法第二百四十五条の玉が定める 自治事務に対する是正要求に対する批判、すなわち、 「自治事務の処理の違法等は当該地 方公共団体の自主的改善に期待しそれに委ねることで十分であるとの立場からの批判」を 意識して述べられた次のような見解が、右の「国の責任」のあり方を考える上でも、注目 に催しよう。すなわち、自治体の事務処理に誤りがある場合、速やかに是正されるべきで あることは誰しも認めるところであるが、 「国法秩序の維持、行政における法律の遵守と いう法治国家における重要な価値に照らしてみたとき、自主的な是正が期待できないよう な例外的な場合には、やはり第三者による最低限度の関与の道は準備されるべきであるし、
その責任を負うのは基本的に国であるべきであろう」という考え方(59)がそれである。こ れによれば、 ①の《国の適正処理確保責任》のあり方が、基本的に法治主義の観点から語
られ、国は国法秩序の(行政レベルにおける最終的な)守護者として関与の場面に登場す ることとなるのである。
③自治体‑国家統治機構の一部説 自治体が処理する事務一般‑の国家関与を、国家構 造全体における地方自治制度の位置付けという視座から根拠付けようとしているように見 える見解もある。塩野教授は、 「地域の行政を広くとればとるほど、そこには、国も関心 をもつものが入り込み、執行の段階でも国の意向を反映させたいと思われる事務が加わる ことになる」とした上で、次のように述べている。 「個別法律の執行権限を地方公共団体 と定め、その執行方法の監督を国家行政に留保するという法律ができたとしても、その義 務付けの範囲には一定の限度があると思われるが、直ちに達意の問題が生ずるわけではな い。そ,れは、地方公共団体は国家の創造物であり、広い意味での国家の統治機構の一部で あるということから、根拠付けられることになろう」 (60)と。これは、直接、新地方自治 法が定める関与法制に対して述べられたものではないが、原理的論拠だけに、自治事務・
法定受託事務を問わず、同法の下に置ける関与法制の(究極的)根拠としても援用可能な ものであるように思われる。もっとも、仮に、このような説明方法をとったとしても、さ しあたり、関与が一定限度において法的に許容されるということを論証しようとするにと どまり、さらに進んで、関与を積極的に要請・根拠付けることにはならないであろう。
‑lo曹‑