• 検索結果がありません。

IL-1β による PGE 2 放出と COX-2 mRNA 発現における NF- NF-κB の関与

ドキュメント内 イヌの皮膚由来線維芽細胞における (ページ 33-67)

30

4.1 緒言

Nuclear factor-κB(NF-κB)は炎症,細胞分化・増殖,アポトーシスなど種々の

細胞機能制御に関わる転写因子の一つとして知られている(Lawrence, 2009;

Hayden and Ghosh, 2012)。NF-κBはRelA(p65),RelB,cRel,p50およびp52と いった Rel ファミリータンパク質がホモあるいはヘテロの二量体で構成されて いる(Hayden and Ghosh, 2012)。NF-κBの活性は主にIκBのような阻害タンパク 質との相互作用によって調節されており,阻害タンパク質と複合体を形成して いるときは不活性型の NF-κB として細胞質に存在する。IκB がリン酸化され,

NF-κB二量体がIκBから遊離することNF-κBが活性化する。遊離したNF-κB二

量体は核に移行し,プロモーター領域に結合することにより様々な免疫や炎症 に関連する遺伝子発現に関与すると考えられている(Hayden and Ghosh, 2012)。

IL-1β のような炎症性サイトカインに応答する細胞においては,不活性状態で

p50とp65 の二量体にIκBα が結合した複合体が存在し,IL-1β 刺激により IκBα のプロテアソームでの分解と p65 のリン酸化が惹起され,遊離した二量体 NF-κBが核に移行する経路が考えられている(Bird et al., 1997; Vermeulen et al., 2002;

Viatour et al., 2005; Lawrence, 2009; Hayden and Ghosh. 2012)。

そこで,第4章では,イヌ皮膚由来線維芽細胞におけるIL-1βによるPGE2

出とCOX-2 mRNA 発現におけるNF-κBの関与について検討した。

31

4.2 材料および方法

4.2.1 材料

リン酸化p65(p-p65)およびtotal IκBα(t-lκ Bα)に対するrabbit monoclonal 抗体はCell Signaling Technology Japan株式会社(東京,日本)から購入した。 NF-κB阻害薬であるBAY 11-7082は和光純薬工業株式会社(大阪,日本)から購入 した。その他は第1章および第2章と同様に,TRIzolはLife Technologies株式会 社(Carlsbad,CA)から,PrimeScript RT Master Mix,SYBRPremix Ex Taq II,Thermal Cycler Dice Real Time System IIおよびTP900 Dice Real v 4.02BはTakara-Bio株式 会社(滋賀,日本)から,HRP-conjugated anti-rabbit IgG抗体,ECL Westan Biotting System 分析システムおよび ImageQuant LAS4000 mini は GE Healthcares 社

(Piscataway,NJ)から購入した。Mini-PROTEAN TGX gelおよびPVDF膜は Bio-Rad社(Hercules,CA)から,Complete mini EDTA-free protease inhibitor complex は Roche社 (Mannheim,Germany)から,Block AceはDS Pharma Biomedical

(大阪,日本)から購入した。PGE2酵素免疫測定(ELISA)kitはCayman chemical 社(ANN Arbor,MI)から購入した。StatMate IVはATMS(東京,日本)から購 入した。

4.2.2細胞培養

第2章および第3章で示したように,イヌ皮膚由来線維芽細胞は,Bratka-Robia ら(2002)の方法を基にして調整し,10% 牛胎児血清(FCS)を含むα-MEM培 地を使用し,5% CO2 インキュベーター中で,37°C の温度下で静的培養した。

培地交換は週に一度行った。細胞が約 90%コンフルエンスに達した後に 0.25%

trypsin-EDTA を用いて回収した。回収した細胞を,75 cm2 の培養フラスコに

32

1×106細胞の密度で播種し実験に使用した。

4.2.3 Real-time RT-PCR

第2 章および第 3 章と同様に,TRIzol試薬を用いてイヌ皮膚由来線維芽細胞 からTotal RNAを抽出した。PrimeScript® RT Master Mixを用いて,500 ngのtotal RNAからcDNAを合成した。Real-time RT-PCRは2 μlのcDNA,SYBR® Premix Ex Taq™ II,イヌCOX-2およびTATAボックス結合タンパク質(TBP)に特異的 なプライマーを用いて,第1章と同様に行った(表2-1)。2 μlのRNaseおよび DNase free waterをno template controlとして用い,2 lのRNAサンプルを no-reverse transcription controlとして用いた。PCR反応は,Thermal Cycler Dice® Real

Time System IIを用いて,次の条件で行った。すなわち,初期変性を95°C,30分

×1回,次いで変性を95°C,5秒,アニーリングと伸長を60°C,30秒×40回。プ ライマーの特異性は融解解離曲線分析とPCR産物のダイレクトシークエンスを 行なって確認した。データの解析はTP900 DiceRealTime v4.02Bを用いて,second derivative methodとcomparative cycle threshold(ΔΔCt)法を適用した。較正標準 として使用したcDNAの同じ量のTBPの増幅は,内在性コントロール,および イヌの皮膚線維芽細胞(time:0)からのcDNAの増幅を用いた。

4.2.4 Western blotting

1 mM PMSF および complete mini EDTA-free protease inhibitor cocktail を含む

100 mM HEPES バッファー(pH 7.4)用いてタンパク質を回収した。タンパク

質濃度をBradford法(Bradford, 1976)にて定量し,DTT添加SDSバッファーで 95°C,5 分間インキュベートした。サンプルを 10 μg ずつ 12% Mini-PROTEAN

TGX gelに添加し電気泳動を行った。分画したタンパク質はPVDF 膜へ転写し,

33

Block Aceにて50分間,室温でブロッキングを行った。その後,一次抗体[t-lκBα

(1: 1000),p-p65(1: 1000)]と室温で 120分間反応させた。洗浄後,PVDF 膜 を,HRP-conjugated anti-rabbit IgG(1: 10000)を,室温で90分間反応させた。免 疫反応は,分析システムをECL Western blotting Analysis Systemを用いて検出し た。膜の化学発光シグナルはImageQuant LAS 4000 miniを用いて測定した。

4.2.5 PGE2 測定

イヌ皮膚由来線維芽細胞は,6-well培養プレートに3.0×10⁵cells/wellの密度で 播種した。細胞を24時間1% FCSを含むα-MEM培地で培養後,IL-Iβで処理し,

培養上清を回収した。培養上清中のPGE2の濃度を,市販のELISA kitを用いて 測定した。

4.2.6 統計学的分析

実験データは平均±標準誤差として算出した。統計分析は StatMate IV を用い て実施した。データを,双方向の分散分析を用いて分析し,他の実験からのデー タは,一元配置分散分析を用いて分析した。

34

4.3 結果

NF-κB阻害剤である BAY11-7082(10 M)はIκBキナーゼを阻害し,NF-κB の活性化を阻害する。そこでIL-1βにより誘導されるCOX-2 mRNA発現に対す

るBAY11-7082の効果を検討した。イヌ皮膚由来線維芽細胞を100 pM IL-1β で

3 時間刺激を行うと COX-2 mRNA 発現の増強がリアルタイム PCR にて認めら れたが,BAY11-7082(10 M)で1時間前処理をした細胞においては,IL-1βに

よるCOX-2 mRNA発現は有意に阻害された(図4-1)。

次にIL-1β刺激によるPGE2放出に対するNF-κB阻害剤の効果を検討した。イ

ヌ皮膚由来線維芽細胞を100 pM IL-1βにより12時間刺激を行うと,培養液中へ のPGE2放出は促進されたが,NF-κB阻害剤BAY11-7082(10 M)で1時間前処 理をした細胞においては,IL-1β 刺激による PGE2放出は有意に阻害された(図 4-2)。これらのことから,IL-1βによるCOX-2 mRNA 発現とPGE2放出には NF-κBの活性化が関わることが考えられた。

そこで,NF-κB活性時に認められるIκBαの分解とp65サブユニットのリン酸

化を指標に,イヌ皮膚由来線維芽細胞における IL-1β による NF-κB の活性化を 検討した。イヌ皮膚由来線維芽細胞を100 pM IL-1β で0~360分間刺激を行うと,

刺激後15~60分で時間依存的にIκBα は消失し,その後180分で非刺激時の発現

レベルに戻った(図4-3)。また,同時に,p65のリン酸化の促進が認められ,そ の後非刺激時の状態に戻った(図4-3)。NF-κB阻害剤BAY11-7082(10 M)で 1 時間前処理をしたイヌ皮膚由来線維芽細胞をにおいては,100 pM IL-1β の 15 分間刺激によるp65のリン酸化は完全に阻害された(図4-4)。

35

4.4 考察

IL-1β 刺激されたイヌ皮膚由来線維芽細胞において,時間依存性の IκBα の分

解が認められ,さらに同時にp65のリン酸化が促進された。不活性状態のNF-κB に結合した抑制タンパク質IκBαがユビキチン化され,プロテアソームにて分解 されてNF-κBは活性化されることが知られている(Bird et al., 1997; Vermeulen et al., 2002; Viatour et al., 2005; Lawrence, 2009; Hayden and Ghosh. 2012)ことから,

イヌ皮膚由来線維芽細胞においても同様な NF-κB活性化機序が存在することを 示唆している。IκBα の分解にはIκBキナーゼによるリン酸化の過程が必要であ る(Bird et al., 1997; Vermeulen et al., 2002; Viatour et al., 2005; Lawrence, 2009;

Hayden and Ghosh. 2012)。BAY11-7082はIκBαをリン酸化するIκBキナーゼ阻害 剤であることから,BAY11-7082によるIL-1β誘導性のp65のリン酸化阻害は,

IκBαのリン酸化が阻害された結果,NF-κBの活性化が抑制されたと考えられる。

NF-κBは炎症を含む種々の細胞機能制御に関わるタンパク質の発現において,

転写因子として機能することが知られている(Lawrence, 2009; Hayden and Ghosh,

2012)。また,COX-2 の発現にも関与することが報告されている(Nakao et al.,

2000; Yang et al., 2002; Jung et al., 2003; Jiang et al., 2004)。本研究においては,イ ヌ皮膚由来線維芽細胞の IL-1β誘導性の COX-2 mRNA発現と PGE2放出が NF-κB 阻害剤である BAY11-7082により阻害されたことから,PGE2産生 に関わる

COX-2発現にNF-κBの活性化が深く関与することが示唆された。

36

図4-1. イヌ皮膚由来線維芽細胞におけるIL-1β誘導性COX-2 mRNA発現に対

する IκB キナーゼ阻害剤の効果。イヌ皮膚由来線維芽細胞を IκB キナーゼ阻害 剤BAY11-7082 (10 M)で1時間前処理をした後,100 pM IL-1β存在下または 非存在下で3時間インキュベートし,COX-2 mRNA発現の変化をリアルタイム PCRにて検討した。値は3例の平均値±標準誤差を示す。*P < 0.05

37

図4-2. イヌ皮膚由来線維芽細胞における IL-1β誘導性PGE2放出に対するに対

する IκB キナーゼ阻害剤の効果。イヌ皮膚由来線維芽細胞を IκB キナーゼ阻害 剤BAY11-7082 (10 M)で1時間前処理をした後,100 pM IL-1β存在下または 非存在下で12時間インキュベートし,メジウム中に放出された PGE2を ELISA にて測定した。値は3例の平均値±標準誤差を示す。*P < 0.05

38

図 4-3. イヌ皮膚由来線維芽細胞における IL-1βによる IκBα の発現の変化 p65 のリン酸化。イヌ皮膚由来線維芽細胞を100 pM IL-1βで0~360分間刺激をした

後,総IκBα(t-IκBα)の発現および p65のリン酸化(p-p65)を,特異的抗体を

用いたウエスタンブロット法により検出した。

39

図 4-4. イヌ皮膚由来線維芽細胞における IL-1β 誘導性 p65 リン酸化に対する IκB キナーゼ阻害剤の効果。イヌ皮膚由来線維芽細胞を IκB キナーゼ阻害剤 BAY11-7082(10 M)で1時間前処理をした後,100 pM IL-1β存在下または非存 在下で15分間インキュベートし,p65のリン酸化(p-p65)を,特異的抗体を用 いたウエスタンブロット法により検出した。

40

5

NF-κB 活性化による MAP キナーゼの活性化

41

5.1 緒言

IL-1βのような炎症性サイトカイン刺激によるERKを含むMAPキナーゼの活

性化が,NF-κB の活性化を介して,COX-2 のような炎症に関与するタンパク質 発現に関わることが報告されている(Tak and Firestein, 2001; Yang et al., 2002;

Kishore et al., 2003; Jiang et al., 2004; Fan et al., 2006; Arai et al., 2011)。MAPキナー ゼの活性化がIκBの分解を惹起し,遊離されたNF-κBが核内に移行し,タンパ ク質発現に関わると考えられている(Bird et al., 1997; Vermeulen et al., 2002;

Viatour et al., 2005; Lawrence, 2009; Hayden and Gjosh, 2012)。第2章および第3章 では,イヌ皮膚由来線維芽細胞においてIL-1β 刺激によるCOX-2 発現を介した PGE2発現に MAP キナーゼ経路の一つである MEK/ERK経路が関わること,ま た,NF-κBの活性化が関わることを示した。そこで,第5章では,IL-1β刺激に よるイヌ皮膚由来線維芽細胞における MAP キナーゼと NF-κB の活性化の相互 作用について検討を行った。

ドキュメント内 イヌの皮膚由来線維芽細胞における (ページ 33-67)

関連したドキュメント