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HAND と暫定診断された 4 名について、認知機能 の 領域別 には、情 報処 理速 度、 言語流暢性 、遂 行

D. 長期療養

5) HAND と暫定診断された 4 名について、認知機能 の 領域別 には、情 報処 理速 度、 言語流暢性 、遂 行

機能の領域において、2 名以上で障害がみられた

1)。

表 1 患者群 7 名の暫定診断

6) 社会認知機能の検査の一つである Eyes Test に 関しても 7 名中 4 名に障害がみられたが、障害 された者はHANDと暫定診断されなかった3名の 中にもみられ、また HAND の重症度とは一致しな い所見であった(表2)。

表 2 患者群 7 名についての Eyes Test の結果

考察

欧 米の研究ではHANDの有病率

をHIV陽性患者の約

50%とする大規模研究の報告があり、本研究でも検査

を終

了した7名中4名がHANDと暫定診断されたこと

は、先行研究と一致する

適切な結果が得られつつあ

ると考える。

本研究の画像・統計解析では、肉眼的なレベルで はな

く、1〜2mm のボ クセ ルというよ

り軽微なレベル での脳の変化を検

出することを目的としている。7

名という

少ない症例数での結果ではあるが、これま

でに肉眼的にも脳萎縮が確認でき、かつ

れが神経 認知障害の程度とある程度の相関を有すると予想さ れる

ような内 容であったことは、今後、症例を集積

し、

ボクセ ルレベル

の解析を行った際に、統計学的 に有意な結果が得られることを期待させる結果であ ると考える。

社会認知機能の検査の一つである Eyes Test に関 しても 7 名中 4 名に障害がみられたが、HAND の重症 度とは一致しない結果であった。Eyes Test につい ては、現在の診断基準には含まれない項目であり、

診断

基準では検 出で きていない認知機能の異常

をみ ている可能

性もあり、症例を集積する中で検 討を 深

めたい。

また、本邦ではこれまで、臨床現場で

時間をかけ ずに迅速に診断を行うことに重点を置いた HAND

診断が開発・検

討・ 実施

されてきている。一方、国

際的診断基準が本来要求

する、除外診断のための精 神医学的診察も含んだ、構造化・包括化された検査 が充分には行われてこなかった経緯がある。本研究 の実施を通じ、研究目的としても機能しうる構造 化・包括化された本邦での HAND 診断・検査の流れの 一つを確立したと考える。

結論

本研究を何らかの

形で 継続していくことが有益

と 考えられる中間結果が得られており、HAND の神経基

盤の解明のために、今後も本研究を 継続し、症例数

を増やし、画像・統計解析まで行っていきたいと考 えている。

健康危険情報

MRI による撮影はペー

スメーカ

ー、脳内クリッ

などが埋め込まれるなどの

禁忌

がなければ、危険

はないと思

われる。MRI 撮影に 際して、これらの内 容を、同意を得る時 点で 文書お よび 口頭

で十分に説 明する。

知的財産権の出願・取得状況

該当

なし

研究発表

該当

なし

抗HIV療法のガイドラインに関する研究

研究分担者:鯉渕 智彦(東京大学医科学研究所付属病院 感染免疫内科)

研究協力者:今村 顕史(がん・感染症センター都立駒込病院 感染症科)

潟永 博之(国立国際医療研究センター 戸山病院エイズ治療開発センター)

吉野 宗宏(国立姫路医療センター 薬剤科)

桒原 健(国立循環器病研究センター 薬剤科)

古西 満(奈良県立医科大学健康管理センター)

杉浦 亙(国立名古屋医療センター 感染免疫研究部)

立川 夏夫(横浜市立市民病院 感染症内科)

外川 正生(大阪市立総合医療センター 小児救急科)

永井 英明(国立東京病院 呼吸器科)

藤井 毅(東京医科大学八王子医療センター)

山元 泰之(東京医科大学臨床検査医学講座)

村松 崇(東京医科大学臨床検査医学講座)

四柳 宏(東京大学 医学部 感染症内科)

研究要旨

最新のエビデンスに基づいて「抗 HIV 治療ガイドライン」を見直し、平成 24 年度から 26 年度まで 1 年ごと に計 3 回の改訂版を発行した。科学的に最も適切で、かつ日本の現状に即した治療指針を提示することを目的 として研究を施行した。HIV 感染者の診療経験が豊富な国内の先生方に改訂委員に参画して頂き、海外のガイ ドラインやエビデンスを基本としながら、国内の事情をも考慮して合理的な考え方を提示するガイドラインと して充実を図った。また、推奨処方のエビデンスとなる臨床試験のサマリーを掲載したウェブサイトに関して も有意義な情報提供源となるよう継続的な改訂を行った。

研究目的

「抗 HIV 治療ガイドライン」は毎年、最新のエビデ ンスに基づいて、科学的に適切な治療指針を提示する ことを目的として作成されてきた。平成 10 年度に初め て発行された後、厚生労働科学研究の一環として年1 回の改訂が行われてきたが、平成 21 年度からは「HIV 感染症及びその合併症の課題を克服する研究」班のな かでガイドライン作成を行うこととなった。同研究班 が別に作成する「HIV診療における外来チーム医療マ ニュアル」が現場の実際的な手順を解説・提唱するの と相互に補完し合って、国内の HIV 診療に役立てても らえるよう意図している。国内の HIV 感染者数・AIDS 患者はなお増加傾向にあり、HIV診療を行う医師およ び医療機関の不足も懸念されている。診療経験の少な い医師でも本ガイドラインを熟読することで、治療方 針の意思決定が出来るようにすることを念頭に置いた。

初期の抗 HIV 治療ガイドラインの作成は米国DHHS

(Department of Health and Human Services)などの 海外のガイドラインを日本語訳する作業が主であった。

しかし、薬剤の代謝や副作用の発現には人種差があり、

また、薬剤の供給体制も日本と諸外国では必ずしも同 じではない。したがって、わが国の状況に沿った「抗 HIV 治療ガイドライン」を作成することは、重要で意 義のあることと考えられる。

研究方法

① 上記の目的を達成するために、改訂委員には、国 内の施設で HIV 診療を担っている中堅の先生方に参 画していただく方針とした。平成 24 年度から平成 26年度まで、毎年13人の委員で改訂作業を行った。

HIV 感染症の治療や病態に関する新たな知見を、主 要英文誌や内外の学会から収集した。

5

② 初回治療の推奨処方のエビデンスとなる臨床試験 のウェブサイトに関し、継続的に改訂を行った。視 覚的に見やすくすること、重要な知見の発表後にな るべく早期に提示すること、を念頭においた。

③ 公表された情報のみを研究材料とするため、倫理 面への特別な配慮は必要ない。

研究結果

① 前年のガイドラインを見直し、平成 24 年度から 26 年度まで、1 年ごとに計 3 回「抗 HIV 治療ガイド ライン」を発行した。

② ガイドラインの中核をなす「治療開始基準」と「初 回治療推奨薬」には、最新の知見を反映させた。

平成 23 年度 治療開始時期の目安

平成 24 年度からは、CD4数350~500/μLと500/μL より多い場合について、より積極的に治療開始するよ う、以下のように改訂した。

この改訂の根拠は 2011 年に発表された早期治療が 他者への感染(二次感染)を防ぐことを明確に示した HPTN052 試験による。CD4数が 350/μl~500/μLの患

者では「積極的な治療開始が勧められる(A/B-II)」と 記載し、治療開始の必要性をより強調した。CD4 数が 500/μL 以上の患者に対しては「結論は出ていないが、

二次感染を防ぐ観点から治療を開始してもよい (B-III)」と記した。しかし、この段階での治療開始に ついては、患者本人に明確な利益が存在するかは未だ 不明確であること、医療費減免措置を受けられない可 能性もあること、などの注意を促す文章も記載した。

平成 24 年以降は開始基準に影響を及ぼす新たな知 見の発表は少なく、この基準を平成 26 年度まで継続し た。

一方、治療開始推奨薬は年度ごとに以下のように改 訂した。

平成 24 年度

新しい非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)であるリ ルピビリン(RPV)を代替薬に加えた。RPV の使用時に はウイルス量が10万コピー/mlを越える症例では効果 が劣る可能性が示唆されているため、注意が必要であ る旨の脚注も加えた。

平成 25年度

日本初の 1 日 1 回 1 錠内服でよい薬剤(EVG/cobi /TDF/FTC)を新たに推奨レジメンに加えた。しかし、

日本人での有害事象にはまだ不明な点が残るため、推 奨レベルは「BI」とした。また、これまでAIレベルの 推奨薬であった「ATV+rtv」は、黄疸や尿路結石など の副作用を勘案して推奨レベルをBI に下げた。

平成 26 年度

日本では 2 剤目の 1 日 1 回 1錠内服で良い薬剤が新 たに承認されたことなどを受け、キードラックとバッ クボーンとに分ける記載法をやめ、推奨される組み合 わせを示すこととした。治療効果や副作用に関する新 たな重要な報告もあり、以下の改訂を行った。 1)中 枢神経系への副作用を考慮してEFV を含むレジメンを AからB へ格下げ。2)RPV を含む合剤を推奨薬に入れ、

ただし推奨はB レベルに。3)DRV rtv + ABC/3TCとRAL + ABC/3TCはBIII からBIIへ。4) EVG/cobi/TDF/FTC および DTG レジメンは、日本人の長期成績が蓄積され つつあることからBからA へ格上げした。

③ その他の主な改訂点は、HIV/HCV共感染者に対す る治療の進歩(新しいプロテアーゼ阻害薬:

simeprevirの承認)、暴露後予防の第一推奨薬が TDF/FTC+RALとなった点などである。

⑥ 推奨処方のエビデンスを参照できるwebサイトに 関しては、重要な知見が発表されるたびに改訂を行 った。

(http://www.haart-support.jp/evidence/index.htm)。

2013 年 6月には、早期の治療開始が 2次感染予防 になることを調べたHPTN052 試験を追加した。

HPTN052試験のデザイン (ランダム化比較試験)

一方がHIV陽性の17639カ国、13都市。対象者の54%がアフリカ地域。

感染者の50%が男性。

N=886組

N=877組 CD4数が2回連続して250/µL以下、

またはAIDS指標疾患の発症まで 治療を遅らせる。

CD4数 350-550/µL のHIV感染者

HIV陰性 パートナーへ

のHIV感染 早期治療群

治療待機群

ランダマイズ後、すぐに治療開始

(97%が異性間のカップル)

次いで 2014 年 3月にはEVG/cobi/TDF/FTCに関する比 較試験であるGS102 試験とGS103 試験を追加した。

さらに2014年6月にはDTGに関する臨床試験である SPRING-2 試験、SINGLE試験を追加した。これまでと同 様にグラフや表を用い、閲覧者が視覚的に理解しやす いよう配慮した。これらの改訂により平成 27年3月時 点で閲覧できる臨床試験総数は 17に増加した。

今後も診療の参考となる情報を適切に提供できるよ う、随時アップデートを図っていく予定である。

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