第11回連載 前回は、シニア世代でも、例えば
として資産を大きく増やせる可能性があるという話をしました。 が増える分、それに応じてリスクを取った資産運用ができ、結果
70
歳まで働くことで人的資本 ただ、資産運用で成果をあげるには、その前に投資について基本的な知識を身につける必要があります。そこで、今後数回にわたり投資に必要な基礎知識をご紹介していきます。金融知識に自信のないオヤジ世代
金融広報中央委員会が9月下旬に発表した「金融力調査」によると、老後の費用について
い」と考えており、そのうち
78
・3%の人が「年金のみで賄えな りました。結局、全体の約半分( ていない」と回答し、老後に不安を抱えている姿が浮き彫りにな62
・0%が他の資金で「準備ができ78
・3%×62
・0%=されたことで、むしろ私が興味をひかれたのは別の項目です。 た。確かに、これは厳しい現実を示していますが、ある程度予想 つまり「リタイアメント・プア」予備軍であることがわかりまし の人が年金だけでは足りないが、自分で手当てできていない状態、
48
・5%)この調査では他にも、金融の基礎(金利の計算、インフレ、リスクとリターンの関係)に関して出題し、そして金融に関する知識や判断力についての自己評価を質問しています。金融の基礎に 関する問題では、正解率は男女とも現役世代(
18
〜 取るほど上がりますが、64
歳)は年を 意外にも 一方、金融知識などの自己評価では、最も自信を持っているのは65
歳以上になるとガクっと下がります。65
歳以上でした。つまり、一方、オヤジ世代に相当する「男性 な結果となりました。 対的に低いものの、それに関する自己評価は一番高いという皮肉
65
歳以上の人は、金融力は相50
〜 あった「男性 見ると、金融知識等に自信がある人の割合は2割強と、3割弱で64
歳」のセグメントを65
歳以上」を下回っています。つまり、年金を形成するために必要な“知恵”についてお話しします。 は、長期投資を志すオヤジ世代に自信を持ってもらうため、自分 いった“知恵”を理解していれば十分なのです。そこで今回から 必要なのは短期投資の場合であり、実は長期投資では基本原則と のは容易ではありません。しかしながら、こうした知識や情報が んが、これはかなりの時間とエネルギーを要するため、実行する やマーケット等の情報を毎日追えば多少自信がつくかもしれませ では、どうすれば自信を持てるようになるのでしょうか。経済 金」を形成するうえで障害となっているかもしれません。 信が持てないという結果でした。もしかしたら、これが「自分年 は対照的に、オヤジ世代は正解率が高いのに、金融知識などに自
65
歳以上とKei
2012/11
月号30
※本記事中の発言は筆者の個人的な見解であり︑筆者が所属するアライアンス・バーンスタイン株式会社の見解ではありません︒ 今回の川柳
自信持ち 始めてみよう 長期投資
投資とは何か 最初に最も根本的なことである「投資とは何か」についてお話しします。投資とは、「お金を増やすことを目的に、お金をお金以外のものに変えること」です。株や債券、投信はもちろん、値上がりを狙った金の購入や、家賃収入を得るためのワンルーム・マンションの購入なども、投資に分類されます。逆に、同じ金や不動産でも、身につけるために買う金のアクセサリーや住むための家は増やすことが目的ではないので、投資とは言えません。 一方、投資をしても確実に利益を得られるわけではなく、価格が大きく変動する場合もあるため、ギャンブルと同列視する人もいるかもしれません。しかし投資とギャンブルは、主に次の二つの点でまったく異なるものなのです。 一つ目の違いは、ギャンブルは負けた人から勝った人にお金が移るだけです。つまり、全体では何も生み出しておらず、単に富の所有者を変えているだけ、これがギャンブルです。一方、株や債券などへの投資は、企業や国が経済的に成長するために必要な資金を提供する代わりに、その収益の一部を享受するものであり、長期的には多くの人が収益をあげられる可能性があります。 二つ目の違いは、ギャンブルは通常、運営者に手数料などの取り分を払う必要があることです。これが結構大きくて競馬で約25
%、宝くじでは3%程度です(信託報酬が別途毎年1%程度かかります)。 数料もネットであれば安いですし、投信も販売手数料は高くても はかかりますが、さほど大きくありません。株を購入する際の手 勝率が高くても、なかなかプラスになりません。投資にも手数料
55
%も運営者に取られます。これでは、たとえもはや投資は不可欠なものに
とはいえ、日本は家計の金融資産に占める現金・預金の比率が
56
%(「資金循環の日米欧比較」日本銀行2012年9月万円足りない場合、預金で準備しようとしたら、 年金や退職金を考慮しても退職後に必要な資金があと2000 活を送るうえで必要不可欠になっているのです。 持ちがお金をさらに増やすために実施するのではなく、普通の生 り投資がどうしても必要になります。もはや、投資は一部のお金 では、老後資金を蓄えるには「お金に働いてもらう」こと、つま えるどころか減る一方で、しかも預金金利がゼロに近い今の日本 らず強いのが現状です。しかし、長引く景気低迷で家計所得は増 と欧米と比較して非常に高く、投資に対するアレルギーが相変わ
26
日)ぐスタートしても
45
歳の人は今す65
歳までの(5× 少し現実的な月5万円に減らすと、準備できるのは1200万円 必要があり、一般世帯ではかなり厳しそうですね。貯蓄額をもう
20
年間に毎月83333円も貯める12
ヶ月× れば、 及びません。ところが、投資でお金を年率5%増やすことができ20
年=1200)と目標の2000万円には遠く できます。これこそが、まさに投資をした効果なのです。20
年間で2037万円貯まり、目標の2000万円を達成 以上のように、現実的に積み立て可能な金額で老後資金を準備するには、もはや投資は必要不可欠と言っても過言ではありません。そこで次回は、この必要不可欠な投資をする際の主な投資対象である株と債券の特徴について見ていきます。31 オヤジの幸福論
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第 回1942年生まれ︒滋賀大学学長︒専攻は計量経済学︑環境経済学︒著書に﹃市場主義の終焉﹄等︒
日 本 の 大 学 に 必 要 な「 大 相 撲 化 」
元日本学術会議会長である黒川清先生は、折に触れて「日本の大学を大相撲化すべきだ」とお説きになる。何のためにか。日本の大学の教育・研究の「質」を向上させるためにである。
大相撲の二〇一二年九月場所番付を見ると、幕内力士四二名中一五名が外国人、横綱一名中一名が、三役一〇名中六名が外国人である。二〇〇六年の春場所以来、三九場所連続して外国人力士が優勝している。この連続記録はさらに更新されそうな気配だ。まさしく大相撲は外国人力士の独擅場のありさまだ。こうした現状を望ましくないと考え る日本相撲協会は、二〇一〇年二月、「日本人力士の育成や伝統的な相撲文化の維持発展」を理由に、外国人力士の人数を一部屋一人に制限することとした。 日本のプロ野球もまた、外国人選手の活躍が目覚ましい。日本プロ野球協約もまた、一軍登録の外国人選手枠を四名に制限している。だが、こうした人数制限にもかかわらず、今後とも、大相撲もプロ野球も外国人が活躍し続けるだろう。 ひるがえって日本の大学を見てみると、一九八二年九月一日に制定・施行された「国立又は公立の大学における外国人教員の任用等に関する特別措置法」により、それまで公務員法により禁止されていた外国人教員の任用が「可」
131
大学 に 必要 な「大相撲化」 と 「脱大相撲化」
Kei
2012/11
月号32
とされた。だが、それにもかかわらず、国立大学法人の外国人教員比率は未だ三%に満たない状況だ。
この法案は議員立法され、衆参両院で審議・可決されたのだが、あわてふためいた文部省(当時)は、外国人教員に任期を設けるよう、あるいは学部長や研究所長にしないよう、そして学長選挙の選挙権を与えないよう、国立大学(当時)への行政指導に乗り出した。
国立大学を「管轄」するのが文部省高等教育局の役割である。公務員である大学教員には、年功序列賃金、終身雇用などの日本的雇用慣行が適用されてしかるべきである──これが、当時の文部官僚が共有する「通念」だった。アメリカ型の雇用慣行を当然視する外国人教員が、通念に逆らうことを恐れたのだろう。また、外国人教員が大勢いる大学を管轄することの難しさを懸念してのことだろう。
教員を国際的に公募し、研究業績の多寡を基準にして人選すれば、大相撲と同じく、大学教員の半数近くが外国人になってしまうことは請け合いだ。アメリカの大学の助教授(
a s s i s t a n t p r o f e s s o r )
が任期制であるのに対し、日本の准教授には終身雇用が保障されているため、アメリカの大学院で博士号を取得した若手研究者にとって、日本の大学教員ポストは魅力的なはずである。円高の折から、給与の水準もさほど見劣りしない。
外国人教員が英語で授業をするのは、日本の大学生の英語力を磨くうえで、歓迎すべきことのはずである。外国人 教員が増えて困るのは、日本の大学教員の大半が、英語を話す能力において劣るため、外国人教員の参加する教授会を英語で進行するのが難しいことぐらいだ。
ア メ リ カ の 大 学 の 強 さ の 源 泉
黒川先生は、もっと多くの外国人教員を採用しないかぎり、日本の大学の国際競争力は低下の一途をたどるだろう、との警鐘を打ち鳴らしておられる。実際、大学の世界ランキングで二〇〇位以内に入る日本の大学は、わずか五つというありさまだ。
アメリカの大学がランキングの上位を占める最たる理由は、世界中から優秀な研究者をヘッドハンティングしてくること、そして世界各国の優秀な留学生を大学院に受け入れ、優れた博士論文をものした大学院生を助教授に採用し、優れた業績を挙げ続ければ、若くして准教授(
a s s o c i a t e p r o f e s s o r )
、教授へと、とんとん拍子に昇任させるからだ。実際、アメリカの大学教員に占める外国人比率は大相撲の幕内並みである。
ついでに言えば、アメリカの大学には教授会などはなく、数名の委員から成る執行委員会が学科長を中心に意思決定をする。一般の教員は教育・研究以外の雑務からは完全に解放されている。
二〇〇四年度から日本の国立大学は法人化されたのだが、その目的の最たるものは、大学間の競争を促し、教育・研