4. 試料の特性評価と考察
4.2 Gd123 Bulk 体試料
4.2.2 Gd123+Hf Bulk 体
HfO2の添加により生成されるBaHfO3は3次元のピンニングセンターでRE123系超伝 導材料の中でも有効な人工ピンニングセンターとして知られているため,Gd123にHfを添 加することでも同じく作用するのではないかとBulk体を用いて研究を行った. その結果を 解析してまとめることで,FF-MOD法によるHf添加Gd123薄膜の考えの基礎とした.
4.2.2.1 光学顕微鏡とSEMによる表面観察
固相反応法でHfO2をHfが1,3,5 mol%になるように添加した試料を作製した. それぞれ 作製した試料の光学顕微鏡で見た写真を図に示す. non-doped試料と同じく表面が黒一色で あり,一様に混合はされているものと考えられる.
図 4-4 各試料の光学顕微鏡による表面観察 (a) Hf 1 mol% (b) Hf 3 mol% (c) Hf 5 mol%
(a) (b)
(c)
4. 試料の特性評価と考察
53
図には改めてnon-doped試料を加えて各試料のSEMによる表面画像が比較できるよ うに示している. SEM画像より,無添加の試料にvoidがあるのに対してHfを添加した
1 mol%と3 mol%にはvoidが少なくなっていることから結晶成長が密になるように行われ
ていることがわかる. 5 mol%ではまたvoidがあらわれ結晶粒子も細かくなっている. この ことから不純物量の多さが劣化を起こしたと考えられる.
図 4-5 各試料のSEMによる表面観察
(a) non-dope (b) Hf 1 mol% (c) Hf 3 mol% (d) Hf 5 mol%
(a) (b)
(c) (d)
4. 試料の特性評価と考察
54 4.2.2.2 EDX測定
表4-1と表4-2に無添加と特性が高かったHf を3 mol%添加した試料の測定結果を示し た.EDXの測定では複数点の点分析を行い平均により算出した.
EDXの原子数濃度より,Gd123の組成比は近い値で検出された.また,Hfを 3 mol%添加 した試料では仕込み値より低い値になっていたが,Hfを検出することができた.
表 4-1 non-dopeのEDXの測定結果 元素 質量濃度 [%] 原子数濃度 [%]
炭素 17.1057 45.3212
酸素 17.1596 34.4298
銅 19.7115 9.9851
バリウム 29.648 6.922 ガドリニウム 16.3754 3.3418
図 4-6 non-dopeのSEM写真
表 4-2 Hf 3 mol%添加のEDXの測定結果 元素 質量濃度 [%] 原子数濃度 [%]
炭素 9.5417 30.6804
酸素 17.8386 42.4868
銅 22.1175 13.2045
バリウム 31.7668 9.0066 ガドリニウム 18.2186 4.5113 ハフニウム 0.5168 0.1105 図 4-7 Hf 5 mol%添加のSEM写真
4. 試料の特性評価と考察
55 4.2.2.3 X線回折測定
図に各試料のXRDの解析結果を示す.回折ピークよりGd123が形成されていることが確 認された. さらにBaHfO3の (1 1 0)ピークがHfを添加するほど大きくなっていることがわ かる.
図 4-8 各試料のXRD測定結果
0 1 2 3 4
10 20 30 40 50 60 70 80
non-dope Hf 1 mol%
Hf 3 mol%
Hf 5 mol%
Inten si ty [a rb .un it ]
2 [deg.]
003 110 005 113 200 (BaHfO3) 123 220110 (BaHfO3) 200 211
4. 試料の特性評価と考察
56
表4-3はBaHfO3の回折ピークをまとめた表であり,ピークが大きく現れる三点の角度
において拡大した結果を図4-6に示し,各試料との比較を行った.
図 4-9 各試料との回折ピーク比較 (拡大図)
0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08
29.5 30 30.5 31
Hf 3 mol%
non-dope
Intensity [arb.unit]
2 [deg.]
0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08
42.5 43 43.5 44
Hf 3 mol%
non-dope
Intensity [arb.unit]
2 [deg.]
0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08
53 53.5 54 54.5 55
Hf 3 mol%
non-dope
Intensity [arb.unit]
2 [deg.]
表 4-3 BaHfO3の回折ピークまとめ
2theta intensity
21.332 1 0 0 4
30.352 1 1 0 99
37.403 1 1 1 0
43.463 2 0 0 26
48.909 2 1 0 2
53.936 2 1 1 34
63.156 2 2 0 14
67.481 3 0 0 1
67.481 2 2 1 1
71.674 3 1 0 12
79.789 2 2 2 4
4. 試料の特性評価と考察
57 4.2.2.4 磁化の温度依存性
Hfを添加するとBaHfO3のピークが現れ,さらに添加量を増やすほどピークが大きくな っている. このことからBulk体に添加したHfO2はBaHfO3として形成された可能性が高 い. 無添加の試料よりHf 3mol%添加した試料は大きな磁化を示した.また,Hf 1 mol%と3 mol%添加した試料は二段階転移を観測した.
図4-7には磁化の温度依存性を示し,表4-4には各試料の臨界温度を示した.
表 4-4 各試料の臨界温度
試料 TC1 [K] TC2 [K]
Hf 5 mol% なし 94.5 Hf 3 mol% 83 94.6 Hf 1 mol% 62.3 93.3 non-dope なし 94.9
図 4-10 各試料の磁化の温度依存性
この二段階転移が固有の物性であるか確認するためにBulk体を粉末化して,磁化の温 度依存性を図に示した.
図から,Bulk体の時にみられた二段階転移が消失していた. このことから,Hf添加した 試料に観られた二段階転移は,固有の物性では無いことが確認された.
図 4-11 HfO2添加粉末の磁化の温度依存性 -0.05
-0.04 -0.03 -0.02 -0.01 0 0.01
20 40 60 80 100
1mol%
3mol%
Mo m e n t [emu /g ]
temperture [K]
-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5
0 20 40 60 80 100
Hf 5mol Hf 3mol%
Hf 1mol pure
Mo me n t (em u /cm
3)
temperature (K)
4. 試料の特性評価と考察
58
4.2.2.5 粒間・粒内電流密度の温度依存性
磁化の温度依存性でもっとも特性の高かったHf 3mol%を添加した試料の残留磁化測定を 行った. 図4-9に12 Kにおける残留磁化測定の結果を示した.
図 4-12 Hf添加試料の残留磁化測定 (12K)
図4-9から粒間電流と粒内電流のピークが現れていることが確認できる. 粒間電流の ピーク磁場と粒内電流のピーク磁場からBp1,Bp2を求めた. 一方,SEMによる写真から結晶 粒の直径を求め,結晶粒の直径は9.8 μmであった. 以上の結果から粒間・粒内の臨界電流 密度を求めた.
0 2x10-6 4x10-6 6x10-6 8x10-6 1x10-5 1.2x10-5 1.4x10-5 1.6x10-5
0 500 1000 1500 2000
dm R/dB m
Bm (Gauss)
12K
4. 試料の特性評価と考察
59
図4-10にはHf 3mol%を添加した試料と無添加の試料との粒間電流JCglobalと粒内電流
JClocalの温度依存性の比較を示す.
図 4-13 Hf添加による粒間・粒内電流密度の温度依存性
図4-10における無添加の試料とHf 3mol%添加した試料のJCglobalの値を比較すると,双
方には4.2 K~10 Kの低温領域において107 A/m2のオーダーを示した. 特に4.2 KではHf
3mol%添加した試料の粒間臨界電流密度は 3.8×107 [A/m2]を示した. これは無添加の試料
の 3.3 倍の値である. また無添加の試料の JCglobalが残留磁化法での測定限界値よりも低か ったため,測定できなかったのに対しHf 3mol%添加した試料は25 Kまで測定値を出すこ とが出来た.
またJClocalの値を見てみると,低温領域では無添加の試料とHf 3mol%添加した試料の双
方にあまり違いは見られなかった. しかし,20K以上の温度領域ではHf 3mol%添加した試 料が無添加の試料を上回った. 特に 70K においては無添加の試料の約 5 倍の大きさである
4.0×109[A/m2]を示した. SEMの結果も踏まえると適量の添加による結晶表面の改善が粒間電
流密度向上させたと考えられる.
1x106 1x107 1x108 1x109 1x1010 1x1011
0 20 40 60 80
Jc local (non-doped) Jc global (non-doped) Jc local (Hf 3mol%) Jc global (Hf 3mol%)
J
c[ A/ cm
2]
Temperature [K]
4. 試料の特性評価と考察
60