第3章 赤色半導体レーザの長寿命化と高速変調特性の改善
3.7 GaInP 結晶の高品位化による寿命特性の改善 (1) 静特性
3.7 GaInP結晶の高品位化による寿命特性の改善
0.5 1 1.5 2 2.5
0.15 0.2 0.25 0.3
1 10 100 1000
PL Peak Intensity [arb. units] PL Peak Intensity [arb. units]
V/III Ratio for GaInP Laser structure GaInP layer
図3-7-1 PL強度のⅤ/Ⅲ比依存性
①Ⅴ/Ⅲ=10 ②Ⅴ/Ⅲ=35
③Ⅴ/Ⅲ=120 ④Ⅴ/Ⅲ=300
0.15 0.2 0.25 0.3
1 10 100 1000
PL Peak Intensity [arb.units]
V/III Ratio for GaInP GaInP layer
①
②
③
④
図3-7-2 異なるⅤ/Ⅲ比で成長したGaInP層の表面AFM像
図3-7-1の結果をもとに AlGaInP層の成長条件を高いⅤ/Ⅲ比で一定とし、GaInP 量子井戸層のⅤ/Ⅲ比を変化させたときの赤色半導体レーザの光学的、電気的特性 の評価を行った。まずレーザ構造におけるPLピーク強度のⅤ/Ⅲ比依存性を図3-7-4 に示す。Ⅴ/Ⅲ比を変えるにあたり、AlGaInP層のⅤ族ガス流量は400sccmで一定と
し、GaInP 量子井戸層のみⅤ族ガス流量を 5~300sccm と変化させた。また先ほど
● In ● Ga ○ P
● In ● Ga ○ P
無秩序化状態の結晶構造 秩序化状態の結晶構造
(自然超格子)
無秩序化状態の GaInP 結晶の表面モフォロジ
秩序化状態の GaInP 結晶の表面モフォロジ
(自然超格子)
図3-7-3 GaInP結晶の無秩序化状態と秩序化状態
と同様に波長が 0.66µm となるように量子井戸層厚みを調整した。比較のため図
3-7-4に GaInPバルク膜におけるPLピーク強度のⅤ/Ⅲ比依存性も示したが、両者
ともPL強度がⅤ/Ⅲ=35にて最大となり、傾向が一致することが分かった。
次に赤色半導体レーザにおける電流閾値と外部微分量子効率のⅤ/Ⅲ比依存性を 評価した結果を図3-7-5に示す。図3-7-4と同様にAlGaInP層の成長条件は高いⅤ/
Ⅲ比で一定とし、GaInP量子井戸層のⅤ/Ⅲ比のみ変えている。最小電流閾値と最大 外部微分量子効率がⅤ/Ⅲ=35にて得られ、図3-7-4の傾向と一致することが分かっ た。また 50µm ストライプ幅の素子を使った評価ではGaInP 量子井戸層のⅤ/Ⅲ比 を700から35へ減らすことによって内部ロスは変化しないものの、内部量子効率
が72.0%から89.7%へと向上することが分かった。これらの結果は、GaInP量子井
戸層の成長Ⅴ/Ⅲ比条件を最適化することで量子井戸層の結晶品質を改善でき、か つ赤色半導体レーザの動作電流密度を低減できることを示している。
0 1 2 3
0.15 0.2 0.25 0.3
1 10 100 1000
PL Peak Intensity [arb.units] PL Peak Intensity [arb. units]
V/III Ratio for GaInP AlGaInP : V/III=350
Laser structure
GaInP layer
図3-7-4 PL強度のⅤ/Ⅲ比依存性
(2) 寿命特性
GaInP量子井戸層の成長条件をⅤ/Ⅲ=35とした素子の寿命試験結果を図3-7-6に
示す。試験条件は環境温度 90℃、出力 5mW、APC 駆動である。比較のためⅤ/Ⅲ
=700とした素子の試験データも示した。Ⅴ/Ⅲ=700で成長した素子は高温動作時に おける特性のばらつきが大きく、また短時間で劣化する素子が見られた。一方、Ⅴ
/Ⅲ=35にて成長した素子は7000時間経過後も顕著な劣化を起こさず、安定した動
作を続けている。この時点での劣化率から算出した推定平均寿命は10万時間を超 えており、90℃という高温環境動作にもかかわらず高い寿命性能を示すことが分か った。
40 60 80 100 120
10 20 30 40 50
1 10 100 1000
Threshold Current [mA] External Differential Quantum Efficiency [%]
V/III Ratio for GaInP 10%/95% coated
25oC
図3-7-5 電流閾値と外部微分量子効率のⅤ/Ⅲ比依存性