第四章 考察
2 本研究の限界と今後の課題
本研究は中国東北地方の高齢者施設入所者の生活と主観的幸福感に論じたが、以下の 4 つ の課題が残されている。
第一に、本研究は中国東北地方の二つの高齢者施設の入所高齢者 7 人と対象数が少ない。
また、応答可能な入所者を施設職員に紹介してもらう方法をとったことから、選定の過程で 選別が生じた可能性は否定できない。その意味で本研究の結果の一般化には慎重であるべ きであり、今後、対象者の拡大や調査方法の多元化が求められる。
第二に、今回の対象者 7 人とも心身が自立した高齢者である。施設で自立できない高齢者 がどのような生活を送り、主観的幸福感を抱いているかは明らかにしていない。中国の上海 市、北京市と言った特別行政区に該当する都市の事例では介護職の研修や資格制度も整い つつあるが、その他の地方都市やさらに農村地方において未だに高齢者介護に関する人々 の意識も低いことが推測される。(石田、2013)これから、要介護・要支援の高齢者人口が 増加している中国に対して、要介護施設入所高齢者の生活と主観的幸福感に関する研究が 必要である。
第三に、中国では、現在 210 校の大学が社会福祉を教育しており、2008 年から、国家資 格として「社会工作員」という名称でソーシャルワーカーの養成を始めている。ソーシャル ワークは、中国では新興の学問である。このため、中国のソーシャルワーク事業はまだ専門 人材の不足、普及率が低いなど多くの課題を抱えている。大都市以外の地方都市、農村地方 ではソーシャルワーカーと会えないし、ソーシャルワークという言葉も聞いたことがない かもしれない。これから、中国においてソーシャルワークを展開し、ソーシャルワーカーが どうやって高齢者を支援していくのか検討することは今後の課題である。
最後に、今回の調査対象者の年齢が比較的若かったため、日中戦争など日本に関すること は彼らの記憶が不鮮明であまり聞けなかった。日本と密接な関係がある中国東北地域の高 齢者は、一体日本に対してどのような感情を持っているか、また過去の日本統治が現在の生 活にどのような影響を与えているのかを明らかにすることは、両国にとって重要な課題と いえるだろう。
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1933 年 5 月、日中間で停戦協定(塘沽協定)が結ばれた。1934 年には満州国は帝 制に移行し、満州帝国となった。
1937 年 1937 年には、盧溝橋事件、第二次上海事変や中華民国軍による通州事件などにより 中華民国と全面戦争に入った(日中戦争、当時の日本側呼称:支那事変)。 1945 年 8 月、日本政府のポツダム宣言の受諾とともに日本軍が降伏することで対日戦争は
終結した(日本の降伏)。 1945 年~
1949 年
中華民国・南京国民政府と内戦(国共内戦)を繰り広げてきた中国共産党は、第二 次世界大戦終結後に再燃した内戦で相次いで国民政府軍に勝利をおさめ、1949 年 4 月には共産党軍が南京国民政府の首都・南京を制圧した。
同年 10 月に毛沢東が中華人民共和国の建国を宣言した。
1950 年 土地改革法が成立して全国で土地の再配分が行われた。法の内容自体は穏健的なも のであったが、地主に対して積年の恨みを抱いていた貧農などによって運動は急進 化し、短期間で土地改革は完了した。