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FMR と BS の評価事例

本章では現状のSVMによるFMRとBSの予測モデルの応用事例を紹介する。

6 . 1   連続歌唱音声の評価

前章でBSはFMR程の予測精度が得られない結果となったが、現状のFMRとBSの学習モ デルで、実際の連続歌唱音声を評価した場合、どのような出力が得られるのかを具体的な事例をあ げて確かめてみる。

6.1.1 評 価 事 例1

図6.1に2名の歌唱者による楽曲25の官頭部(通常裏声で歌うフレーズ)の歌唱音声の評価結果 を示す。左側は息漏れの少ない歌唱者、右側は息漏れの多い歌唱者をそれぞれ評価したものであ る。表示したグラフは上から順に音高(MIDI番号)、 FMR、BSの時間的変化を表している。左 側の歌唱者は9ms付近までそれぞれのグラフにデータがプロットされているのに対し、右側の歌 唱者は6.5msまでしかプロットされておらず、息が最後まで続いていないことが分かる。両者の グラフを見比べると、音高やFMRのグラフは同様の波形を表示し違いが分からない(音高もほ ぼ正しく裏声で歌えている)が、 BSのグラフを見ると両者にはっきりと違いが表れている。この ことからBSによる評価を加えたことで左側の歌唱者の裏声が息漏れ(BSが大きい)傾向にあり 発声に改善の余地のあることがわかるなど、新たな歌唱音声の評価が可能となったと考えられる。

6.1.2 評 価 事 例2

YUBA

メソッドの歌唱トレーニング

CD

6

t r a c k3

の歌唱音声の評価結果を同様に図

6 . 2

に示 す。この歌唱は

YUBA

メソッド

s t a g e1

で行う表声と裏声の短い発声を交互に出し分ける歌唱で あり、音高を表す図から MIDI番号の低い部分で表声、高い部分で裏声の歌唱をしていることが 分かる。図6.1と同様息漏れの多い歌唱者と少ない歌唱者を比べたものであり、表声発声時では

第6章 FMRとBSの評価事例

│ 

息漏れの少ない歌唱

4例 制 f:;~.,,_.,..

Y υh 

~ 6S 

s

i : :  

0.2

0.

0.8 F

~ 0.6 

...*~

0.4ドー…

6一一一一一‑.

息漏れの多い歌唱

'"'

ム~ f.三雪~.fI.・ f一一一

'

11  Uh守 ー

80 一一,‑一

TIme[s) 

図6.1:連続歌唱音声の評価結果1

36 

FMRとBS共に大きな違いが表れている。これは左側の歌唱者がしっかりとした表声を発声し ているのに対し、右側の歌唱者の表声が息漏れ傾向にあることを示している。一方、裏声発声時 ではFMRでは違いは見られないが BSにもわずかな違いが認められる。右側の歌唱者の発声 の方が若干息漏れ傾向にあると判断されている。このようにFMRとBSを同時に評価すること により、より説得力のある声質評価が可能となることが期待される。

6.1.3  評価事例3

最後に2章で述べた換声点ショックの大きい歌唱と換声点ショックの小さい歌唱の評価結果を図 6.3に示す。YUBAメソッドのstage4は換声点ショックを目立たなくするためのトレーニングで

あるため、換声点ショックの大小を評価することも研究課題の 1つとなっている。図6.3は裏声か ら表声へ母音「あ」で下降音階を歌唱したものであり、両者を比べると換声点ショックの小さい歌 唱(右側)では、音高、 FMR、BSのグラフが全て滑らかな右下がりのグラフとなっている。

方、換声点ショックの大きい歌唱(右側)では換声点付近でFMRに大きな開きが生じ、 BSに関 しても聞きが生じていることが見て取れる(図中の矢印部)。これについても音声2の結果と同様、

FMRとBSを同時に評価することでより説得力のある評価が可能となることが期待される。

FMRとBSの評価事例 37  第6章

│ 

息漏れの多い歌唱

w 喜善 三 認 さ き 言

│息漏れの少ない歌唱│

tJ  ~'? ~ ~~言~ ~

70  65 

60

品 目 .r; 

50

45  40  0.8 

2 5 D i 'r  i  1   '

; ; 吋....~...リヤ~

i j 七何日‑じ

70  60  50 

30  40 

TIme[s]  10  20 

70 

30  40 

Time[s]  20 

10 

図 6.2:連続歌唱音声の評価結果2

換声点ショックが小さい音声(4c)

│換声点ショックが大きい音声(伯)

換声点

nU

 

2 1 8 6 4 2 0 2 4 6  

n u n u n u n U

UUUU

公園官

ωH

EK

右腕凶

Time[s]  12 

10 

Time[s] 

図 6.3:連続歌唱音声の評価結果3

評価結果のまとめ 6 . 2  

BSに関しては評価事例2 の結果ではあまり違いが現れなかったものの、全ての事例で評価値に差が表れていることから歌

前節により 3つの評価事例の結果を示し、 2名の歌唱者を見比べた。

第6章 FMRとBSの評価事例 38  唱音声の新たな評価が可能になったと考えられる。

FMRに関しては評価事例2では表声・裏声の違いがはっきりと表れ、評価事例3では、換声点 付近で、はっきりとグラフに特徴が表れていることからかなりの精度で評価できていることを確認

した。

BSに関しては評価事例1で、はっきりと違いが表れていることから、 YUBAメソッド初期段階の 音域を拡げるトレーニングには活用できそうである。

また評価事例2、3ではFMRとBSのグラフが同様の傾向を示していることからFMRとBS を同時に評価することにより、より説得力のある声質の評価が可能になるととが期待される。

6 . 3   FMR と BS の活用

FMRとBSの活用法については将来的にはカラオケの採点項目への追加が考えられる。曲表 現として裏声や息漏れが必要/不要な部分について加点/減点を行うことでより多方面からの採点 が可能になる。また一曲歌い終わった後に表声/裏声の割合を表示させたり、息の使い方に対する アドバイスを表示させるなどの用途が考えられる。

また歌唱トレーニングを行うことができるトレーニングアプリケーションへの声質評価のため の指標として取り入れることにより、より正確にトレーニングの習熟度を測ることが可能になる ことが期待される。具体的には音域を拡げるトレーニングでの「息漏れ度合Jの評価、表声と裏 声を出し分けるトレーニングでの裏声判別、換声点ショックを目立たなくするトレーニングでの換 声点ショックの大小の判別などへの用途が考えられる。

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