コラム⑬
CKD 患者の骨粗鬆症の評価と治療
CKD患者の骨粗鬆症は,骨量だけではなく骨質 の変化を伴っており,骨密度測定の結果の解釈は 腎機能正常者とは異なる.
また,骨粗鬆症治療薬の用量調節が必要な場合 や,治療により腎機能を増悪させるリスクがある ので,十分な注意が必要である.
1)ステロイド薬使用時(CKDステージG1,G2)
原病に対してステロイド薬投与が3カ月以上続 くときには,ビスホスホネートを投与する.ビス ホスホネートが投与できない場合(消化器症状な どの副作用か,妊娠予定の患者)には,活性型ビ タミンDあるいはビタミンKを投与する(日本骨 代謝学会.ステロイド誘発性骨粗鬆症の管理と治 療ガイドライン).
2)骨密度の測定と骨粗鬆症の治療
骨密度検査の実施は,CKDステージG1〜G2の 患者,および検査値異常を有さないCKDステー ジG3の患者では,非CKD患者と同様に適応を考 慮し,骨折リスクを評価する.これらの患者では,
治療方針も非CKD患者と同様と考えてよい.
ただし,骨粗鬆症に対して,Caと活性型ビタミ ンDを安易に投与すると,高Ca血症により腎機能 が急激に低下する場合がある.血清Caと血清P を測定するなどして用量の調節を行い,特に高齢 者では脱水に注意しなければならない.
3)生化学異常を伴うCKDステージG3の患 者,およびステージG4〜G5の患者での骨量減少 に対する治療法とその安全性,透析導入後の骨へ の影響については確立していないので,ビスホス ホネート等の投与に当たっては注意する.
腎機能低下に伴って尿酸排泄が低下するため,
腎機能障害のあるCKD患者では高尿酸血症の 頻度が高まるが,痛風関節炎の発症頻度は低い.
過食,高プリン・高脂肪・高たんぱく質食嗜好,
常習飲酒,運動不足などの生活習慣は,高尿酸 血症の原因となるばかりでなく,肥満,高血圧,
糖・脂質代謝異常やメタボリックシンドローム 合併ともかかわるため,その是正は重要である.
わが国の成績では,女性で血清尿酸値>6.0 mg⊘dLで末期腎不全のリスクが有意に高まる ことが知られている(図 38).
CKD治療においてしばしば用いられる利尿薬
(サイアザイド系・ループ系)は血清尿酸値を上 昇させるため,高尿酸血症出現時には注意深く 使用し,場合によっては減量・休薬も考慮する.
CKD ステージ 4~5において生活習慣改善に もかかわらず血清尿酸値が9.0 mg⊘dLを超え る無症候性高尿酸血症では,エビデンスはない ものの薬物治療が考慮される場合が多い.
海外の成績では,アロプリノールによる尿酸降 下療法の結果,2年後のeGFRはコントロール 群で3.3 mL⊘分⊘1.73 m2低下したのに対し,
アロプリノール群では1.3 mL⊘分⊘1.73 m2上
昇した(図 39).
腎不全例では,アロプリノールの重篤な副作用 の頻度が高いことが報告されており,その原因 としてアロプリノールの活性代謝物である血中 オキシプリノール濃度の上昇が考えられる.血 中オキシプリノール濃度を安全域とされる20 μg⊘mL以下にするためには,腎機能の程度に 応じてアロプリノールの使用量を減じる必要が ある(表 30).
新たな尿酸生成抑制薬フェブキソスタット
(フェブリク®)は,中等度までの腎機能低下例 では腎機能に応じた減量は不要であるが,CKD におけるエビデンスは不十分である.
腎機能低下例では,尿酸生成抑制薬と尿酸排泄 促進薬(ベンズブロマロン:ユリノーム®)の少 量併用も有効である.
尿酸排泄促進薬を処方する場合には,尿酸結石 を防ぐために,尿酸の尿中濃度は可能であれば 50 mg⊘dL以下に,また尿pHは6.0以上,で きれば6.4以上が望ましい.尿量を1.5 L程度 とすることで,尿中尿酸濃度は概ね50 mg⊘dL 以下となる.
尿アルカリ化剤としては,重曹もしくはクエン
18 CKD における尿酸管理
血清尿酸値 7.0 mg/dL を超えるものを高尿酸血症と定義する.
腎機能低下に伴って尿酸排泄低下により高尿酸血症の頻度は高まるが,痛風関節炎の発症頻度は 低い.
血清尿酸値を下げるために生活習慣の改善を指導する.
腎障害合併例,尿路結石保有例では,尿酸生成抑制薬を使用する.
アロプリノールは腎機能に応じた減量が必要である.
尿酸排泄促進薬の使用時には尿路結石の発現に注意し,尿アルカリ化薬を併用する.
痛風関節炎を繰り返したり痛風結石を認める症例は,薬物治療の対象となり血清尿酸値を 6.0 mg/dL 以下に維持することが望ましい.
痛風発作時の治療として行われる NSAIDs 短期間大量投与は,CKD 症例では腎機能悪化のリス クが高いため,避けることが望ましい.
1 2
4 3
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図 38 腎疾患を引き起こす危険因子としての高 尿酸血症の重要性
対象:1993 年度の集団健診受診者で血清尿酸値が判 明した 48,117 人.
方法:2000 年末の透析移行率を,高尿酸血症群(男性 7 mg/dL 以上,女性 6 mg/dL 以上)と非高尿酸血症群 で比較した後ろ向きコホートスタディ.
結果:103 人(男性 53 人,女性 50 人)が透析へ移行.
透析移行率は,高尿酸血症の男性:4.64/1,000 人(非 高尿酸血症では 1.22),女性:9.03/1,000 人(非高 尿酸血症では 0.87).ハザード比は男性で 2.004
(95%CI 0.904~4.444) に 対 し て, 女 性 で 5.770
(95%CI 2.309~14.421)で,女性において高尿酸血 症は透析移行のリスクであることがわかった.
(Iseki K, et al. Am J Kidney Dis 2004;44(4):642‒650. よ り引用)
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
ESKDの累積頻度
受診者健診 ESKD患者数
ベースラインの血清尿酸値によるESKDの累積頻度
血清尿酸値
(mg/dL)
(受診者1,000人当たり) (受診者1,000人当たり)
<7.0 15,617
19
≧7.0 7,332 34
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
<6.0 21,795
19
≧6.0 3,433 31
男性 女性
図 39 CKD 進展に対する尿酸生成抑制薬 の効果:eGFR および血清尿酸値の
対象:eGFR 60 mL/分/1.73 m変化
2未満 113 人.方法:患者は,アロプリノール 100 mg/日投与 群 57 人,コントロール群 56 人に無作為に割 り 付 け ら れ, 試 験 終 了(24 カ 月 経 過 )時 の eGFR と血清尿酸値の変化量を検討.
結果:eGFR は,コントロール群では 3.3 mL/
分/1.73 m2低下したのに対し,アロプリノー ル群では 1.3 mL/分/1.73 m2上昇し,両群間に 有意差が認められた.血清尿酸値は,コント ロール群では0.2 mg/dL上昇したのに対し,ア ロプリノール群では 1.8 mg/dL 低下した.
(Goicoechea M, et al. Clin J Am Soc Nephrol 2010;
5(8):1388‒1393. より引用)
3 2 1 0
−1
−2
−3
−4
−5
の変化量
(mL/分/1.73m2) (mg/dL)
アロプリノール群 コントロール群
試験終了時eGFRおよび血清尿酸値の変化量
血清尿酸値の変化量
=0.018 0.8 0.4 0
−0.4
−0.8
−1.2
−1.6
−2
=0.000
eGFR
酸カリウム+クエン酸ナトリウム(ウラリッ ト®)が用いられる.後者は長時間作用型であ
り,より適切である.重曹の使用時にはNa負 荷に,ウラリット®使用時にはK負荷に留意す る.
痛風発作時の対応においては,腎機能正常時に 実施されるNSAIDs短期間大量投与法(NSAIDs パルス)は腎機能低下時には腎機能増悪の可能 性が高いため,避けることが望ましい.
痛風発作時の治療法として,副腎皮質ステロイ ド薬(プレドニゾロンで15~30 mg)を経口 投与して関節炎を沈静化させ,1週間ごとに1⊘ 3量ずつ減量し,3週間で中止する方法がある.
表 30 腎機能に応じたアロプリノールの使用量
腎機能 アロプリノール投与量
Ccr>50 mL/分 100~300 mg/日 30 mL/分<Ccr≦
50 mL/分 100 mg/日 Ccr≦30 mL/分 50 mg/日
血液透析施行例 透析終了時に100 mg 腹膜透析施行例 50 mg/日
Ccr:クレアチニンクリアランス
(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第 2 版,p92 よ り引用)
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