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5-3.  運動量分解能

コンプトン散乱時における散乱ベクトルに沿った運動量成分

p

zは次の式で与えられる。

mc E

E E E

mc E E E

E p

z

12 0

2 2 0

2 0 0

cos 2

cos 1

      (5-9)

  ここでE0,Eはそれぞれ入射と散乱後のX線のエネルギーであり,散乱角をθとしてい る。また,mc=137.036 [a.u.]である。この(5-9)式より,有限値を持つ運動量分解能

p

zは 以下の3つが要因となり生じている。

1) モノクロメーターの分解能により生じるE0の不確かさ

32 0

2 2 0

2 0 0

0

2 cos

cos cos 1

E E E E

mc

E

E

E E

E

5-4.  軌道磁気モーメントの算出

  磁気コンプトン散乱実験によって、試料の観測方位に依存した軌道磁気モーメントの値 を算出する方法を以下に述べる。

  磁気コンプトンプロファイルからスピン磁気モーメントの算出が可能であるので、VSM

やSQUID等で得られた磁化測定の結果(全磁気モーメント=スピン磁気モーメント+軌道

磁気モーメント)を用いることによって間接的に軌道磁気モーメントの値を得ることが可 能である。

  実際の算出過程では、Feの標準試料の測定を行ない、X線の円偏光度Pcを求め、試料の 磁気効果(magnetic effect)Meからスピン磁気モーメントを算出する。そして、VSM や

SQUID などによる試料の磁化測定の結果からスピン磁気モーメントを差し引くことによ

って軌道磁気モーメントを得る。試料の磁気モーメントに異方性が考えられる場合は、測 定方位を統一することが重要である。

第3章で詳しく述べたが、MCPの測定においては,以下の式(5-14)のように、試料の磁 化を散乱ベクトルと平行にして 2のエネルギースペクトル

I

2 を測定し,次に磁化の方 向を反転させて同様に

I

2 を測定した後,両者の差を求めることにより全体の散乱スペ クトルから

J

mag 2 を取り出す(磁場反転法)。 1は入射 X 線のエネルギー、 2は散乱 X 線のエネルギーである。

2 2

2 I 2PcCmagJmag

I (5-14) I 2 CnorJnor 2 PcCmagJmag 2 B.G. (5-15)

I 2 CnorJnor 2 PcCmagJmag 2 B.G.   (5-16)    

P

c:X線の円偏光度を表すストークスパラメーター ここで、磁気効果Meにおいて、

nor mag

c

n

n P mc

I I

I

Me I

12

2 2

2 2

2       (5-17)

という関係が成り立つ。mは電子の質量(9.1093826×10-31kg)、cは真空中における光速 度(299792458m/s)、nnor, nmagはそれぞれ試料の単位体積あたりの全電子数と磁性電子数 を表す。しかし、実験では(5-15)式と(5-16)式にあるようにB.G.が含まれるため、試料本来

①  Fe標準試料による円偏光度Pcの決定

  鉄1原子の全電子数26、磁性電子数2.12である。また、mは電子の質量(9.1093826×

10-31kg)、cは真空中における光速度(299792458m/s)より電子の静止エネルギーは、

J

mc

2

9 . 1093826 10

31

2 . 99792458 10

8 2

8 . 1871 10

14     (5-18) ここで、

1 J 0 . 624 10

16

keV

より、

keV

mc

2

511

      (5-19) よって、(5-17)式から、

26 12 . 2 511

1 2

2

2 2

2

P

c

I I

I

Me I

      (5-20) となる。実験によって

Me

2 1は決まるので、円偏光度

P

cが求まる。しかし、

Me

2

を求める際に、鉄の標準試料を測定したデータから、試料無しで測定した場合のバックグ ラウンドデータを差し引いて求めることが必要である。

② スピン磁気モーメントの算出

  式(5-17)と①で求めた円偏光度

P

cから測定試料のスピン磁気モーメントを算出すること ができる。

  基板無しの試料の場合、

Me

2 を求める際、試料を測定したデータから、試料無しで測 定したデータを差し引いて、バックグラウンドを除いた、試料のみの磁気効果を用いるデ ータ処理が必要である。

  基板有りの試料の場合は、試料を測定したデータから、基板のみを測定したデータを差 し引くことが必要になる。本実験では、PET基板(4µm厚)上に磁性薄膜(1µm)を堆積 した試料であったが、PET 基板の寄与をうまく差し引くことが困難であった。より形状が 安定した基板、より薄い基板(例えばメンブレン(SiN、0.1µm厚)等)を用いれば、基板 つき薄膜試料のスピン磁気モーメントを正確に測定することが可能であると考えられる。

③ 軌道磁気モーメントの算出

  磁化測定(SQUIDやVSMなどによる)の結果から、試料の飽和磁化が得られるので、

試料の磁気モーメントが測定可能である。この場合、スピン磁気モーメント+軌道磁気モー メントの値であるので、②で求めたスピン磁気モーメントを差し引くことによって試料の 軌道磁気モーメントを求めることができる。

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