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第 5 章 インタビュー 41

5.3 Eclipse 市場が理由

Eclipseの市場は巨大かつワールドワイドである。例えば、図 5.1は、Eclipse財団がレ ポートしたダウンロード数の推移であるが、最近ではおおよそ毎月100万ダウンロード

1http://www.eclipsecon.org/2009/

はある。また、図 5.2は、ダウンロード数を地域ごとに集計したものである。このグラフ より南米は相対的に利用が少ないものの、世界中でEclipseが利用されていることが分か る。特に、アジア地域での利用が活発である。

翻って、ベンチャー企業の立場になってみれば、Eclipseのインストールベースの数や ワールドワイドな広がりは非常に魅力的に映るのは至極当然である。

図 5.1: Eclipseダウンロード数の推移(Eclipse Foundation (2009)より引用)

Eclipseと同等のJava用オープンソース開発環境にNetBeansがある。これは、Sunが 中心となって推進しているが、Eclipseと比べると利用者数が少ない。ProteCode社に参 加理由をインタビューしたときに、はっきりと

NetBeansと比較して、単純にユーザベースの違いでEclipseに参加すること

にした と語っていた。

SOA(Service Oriented Architecture,サービス指向アーキテクチャ)関連のドイツのベン チャー企業 Sopera は、Eclipseに参加した理由を次のように語ってくれた。

ユーザコミュニティにアプローチする最も効率的な方法がEclipseへのコード の寄贈だった。寄贈したソースをベースにEclipseにコミュニティ(プロジェク

図 5.2: 地域ごとのダウンロード数の推移(Eclipse Foundation (2009)より引用)

ト)を立ち上げ、コミュニティの進む方向をリードする。ビジネスは、ソフト ウェアそのものではなく、その上位のサポートやコンサルティングなどのサー ビスで行う

SOAの市場にはIBMとOracleという巨大競合が既に存在する状況で、小さな、それも、

北米以外のベンチャー企業が参入するのは一般的な方法ではほぼ困難である。Eclipseに ソースコードを寄贈することによって、ユーザ市場に比較的容易に浸透することができ る。インタビューで直接語った上記の目論見意外に、次のような効果も期待しているので あろう。

Eclipseという高い知名度をもったブランド力を活用できること

知名度が低くてもEclipseのサイトやイベントでの社名とソースコードの露出度が 高まる。

無償のオープンソースとすることによって直接ユーザにリーチできること

競争のレイヤーをプロダクトからサービスにシフトできること

サービスを受ける側にとってみれば、オープンソース版SOAのソースコードを熟知 したベンダーの方が信頼できる。

Eclipseに積極的に参加して、成功した企業に Actuate社がある。EclipseCon 2009の セッションの中でActuate社がEclipseの市場開拓力についてレポートしていた。Actuate はBI(Business Intelligence)ツールのベンダーで、ビジネスデータの可視化ツールを開発 している。Eclipseへの参加にあたっては、可視化のエンジン部分をオープンソースとし て寄贈した。その結果、Actuateの知名度が向上するとともに、市場への浸透・新市場の 開拓に成功したという。

Actuateによれば、2008年のダウンロード数は650万ダウンロード以上で、そのうちの

1%が有償の顧客となってくれているという。1%というと小さいようだが、ダウンロード数

が大きいので、それでもビジネスとして成り立つ。また特に印象的だったのは、「Actuate がそれまでリーチできていなかった市場へも参入することができた」という発言である。

それまでActuateは金融市場がメインの市場であり、他の業種にはほとんど進出できてい

なかったという。ところが、Eclipseにソースコードを寄贈し、コミュニティ(プロジェク ト)をリードしたことによって、流通業、製造業、テレコム業などへも参入することがで きるようになった。Eclipseに参加しなければ恐らく参入することはまずなかった市場だ という。同様に地理的にもこれまでリーチできていなかった海外市場、例えばインドや中 国などのユーザを獲得することもできたという。

このような成功事例があれば、Eclipseが持つ市場のポテンシャルはますます魅力的に 映る。

また、ユーザ市場ではなく、Eclipse技術者の市場に惹かれて教育ベンダーがEclipseの メンバーになっていることも面白い発見であった。AvantSoftは、インド系の技術教育ベ ンチャー企業であり、主に技術者を対象としてEclipseやJavaに関する教育プログラムを 提供している。教育プログラム自体の開発はインドで行っているようであるが、主に北米 の技術者を対象としており、e-ラーニングや研修などさまざまな教育プログラムを用意し ている。

以上、インタビューより、無償のオープンソースが持つ市場開拓力や市場創出力が、参 加ベンダーには非常に魅力に映っているという事実が確認できた。