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A.1 DEOS プロジェクトについて

A.1.1 DEOS プロジェクトの目的と経緯 193

「実用化を目指した組込みシステム用ディペンダブル・オペレーティングシステム」(DEOSプロジ ェクト)は、(独)科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業CRSETの研究領域のひとつとして、2006 年10月に開始された。今日の組込みシステムはネットワークを介してサーバ群と接続され、全体として サービスを提供する形をとっていることから、本プロジェクトの研究対象として、狭義の組込みシステ ム用オペレーティングシステムだけではなく、システムをディペンダブルに構築し運用するためのシス テムソフトウェア、これを構築するために必要なツール群、システム構築や運用のプロセスを含めて研 究対象としている。

近年の情報システムは、巨大で複雑、かつ変化しつづける目的や環境に対応しなければならず、閉鎖 型システム(Closed Systems)として捉えることは難しく、開放型システム(Open Systems)として捉 えることが適切である。本プロジェクトでは、オープンシステムに対するディペンダビリティは、反復 的なアプローチとして達成すべきものと考え、基本概念として「オープンシステムディペンダビリティ

(Open Systems Dependability)」を提案し、プロジェクトの目的を以下のように定義した。

オープンシステムディペンダビリティ(OSD)の概念やDEOSプロセスはディペンダブルなシステム ソフトウェアの構築に応用できるだけでなく、大規模かつ複雑で変化を許容しなければならない多くの システムをディペンダブルに構築するための方法論になる。すなわちDEOSプロセスは広範なオープン システムに適用できる。本報告書では「DEOS」を「オープンシステムのためのディペンダビリティ工 学(Dependability Engineering for Open Systems)」の略記としている。

A.1.2 DEOS プロジェクト研究開発体制

本研究領域は研究総括・副研究総括のもとに領域アドバイザーを置き、研究領域の方向性や内容に関 する助言及び研究チームの進捗評価を行っている。領域運営アドバイザーは実用化に向けての指針など を助言している。また、研究推進委員として企業の技術者等がプロジェクトに協力して、本研究成果を 実利用する立場から助言や実用化推進を行うなど研究チームとの交流を行っている。

本研究領域は2006年に採択された5研究チームによって開始され、2008年に新たに4研究チームが これに加わった。2006年度採択チームはバーチャルマシン、サーバ群の仮想化、プログラム検証、ベン チマーキング、フォルトシミュレーション、リアルタイム・低消費電力化など、主に要素技術からの研 究開発を行うとともに、対象とするべきシステムの検討やディペンダビリティの概念の議論を行った。

2008年採択チームは2006年度採択チームに加わって、DEOSプロセス、DEOSアーキテクチャを構築 し、また、要求分析手法、合意形成とその記述方法、セキュリティ、などの研究開発に加え、国際標準

変化しつづける目的や環境の中で、システムを適切に対応させ、ユーザが求めるサービスを継続的に提 供することができるディペンダブルなシステムソフトウェアの方法論ならびに構築法を開発すること。

この方法論はオープンシステムディペンダビリティ(OSD)を基本概念とし、ディペンダブルシステム の構築法は、反復的なプロセス(DEOSプロセス)、これを実現するためのアーキテクチャ(DEOS アーキテクチャ)、そしてアーキテクチャを構成する要素技術などからなる。

化活動を行っている。2006年度採択研究チームは2012年3月、2008年度採択チームは2014年3月ま で研究開発を継続する。

採択された研究チームの活動と並行 して、2008年より各研究チームからメ ンバーを集めてコアチームを形成し、研 究全体を俯瞰し、その方向ならびに具体 的な研究開発テーマを再定義するプロ ジェクト活動を行ってきた。そして 2010年度より具体的な研究テーマを担 当するサブコアチームを構成し、クロス チームでの研究開発を行って来た。サブ コアチームはDEOSプロセス及びアー キテクチャの主な構成要素の研究・開発 を担当し、これまでに、D-Case &

Metrics、D-Script & Monitor、VM &

Multi-OS、System Software

Verification、DS-Bench & Test-Envな どのサブコアチームが構成され、成果を 上げた(図A-1参照)。

2006年度採択チームは2011年度で研究活動を完了した。2012年4月からは2008年度採択チームが 主体となりプロセス・アーキテクチャ会議を発足させた。現在は以下の6つのエリアにフォーカスして 研究を推進している(図A-2参照)。

・D-Case

・D-Script

・D-ADD

・Security

・D-REおよびDEOS応用

・検証と標準化

プロジェクトおよび個々の研究チー ムの成果はディペンダブル組込みOS 研究開発センター(DEOS研究開発セ ンター)において、実用のための統合、

知的資産や保守を考慮した再構成、テス ト、実用のための評価やパッケージング などを行い、企業との共同の評価や実際 の製品での活用などにつなげている。現 在DEOSプロジェクトホームページ

(http://www.dependable-os.net/)で 研究成果を公開している。(A.1.5節参照)

A.1.3 DEOS プロジェクトロードマップ

以下のフェーズを主なマイルストーンとして全体の研究を進めている(図A-3参照)。

 フェーズ1(2006/10-2009/9): ディペンダビリティのコンセプトの確立、それを支える開発・

2006

システムアーキテクチャ

DEOS実行環境開発

ツール開発

開発環境整備

事例・デモシステム開発

研究成果物整備・保守

図A-2: 2012年度からのプロジェクト体制 図A-1: 2011年度までのプロジェクト体制

チームの要素技術をインテグレーションしたリファレンスシステムによるデモ。以上を2009年9 月に2006年度採択究チーム中間成果報告会として公開した。

 フェーズ2(2009/10-2011/9): システムアーキテクチャと2006年度採択研究チームの要素技 術を取り込んだ D-RE とツール類の実装。企業や研究機関などを含む実証団体募集活動の開始。

必要な事項の国際標準化活動。2008年度採択研究チームの要素技術をD-REとツール群にインテ グレーションしてデモ。以上を 2011年に 2006 年度採択研究チーム最終成果報告会および 2008 年度採択研究チーム中間成果報告会として公開した。

 フェーズ3(2011/10-2014/3):ソフトウェアなど成果物の公開、企業などユーザによる成果物等 の試用、その評価のフィードバック、実用化の推進。コンソーシアムの設立、DEOS コンセプト の業界標準化活動、および成果に基づく国際規格標準化活動の推進。

 フェーズ4(2014/4- ):国際規格団体、業界標準団体もしくはコンソーシアムによる成果の活用 と維持・発展の推進。

As of10/08/2013 会計年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度

西暦 2013

フェーズ フェーズ3

領域活動 領域評価 2006年度チーム活動 2006年度チーム評価 2008年度チーム活動 2008年度チーム評価

コアチーム活動 Core Team Process/Architecture Team サブコアチーム活動

コンソーシアム活動 企業による試用評価

開発項目

システムアーキテクチャ プラットホーム/ツール デモシステム 規格・標準・ガイドライン 要素技術

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2014

フェーズ1 フェーズ2 フェーズ4

2012

中間評価会 事後評価会

中間評価会 事後評価会

採択 採択

領域中間評価会 領域事後評価会

準備会 普及促進委員会OSDコンソーシアム準備会 D-Case実証評価研究会

ET ET ET ET ET ET

ESEC SODEC

DEOS協会

図A-3: ロードマップ

A.1.4 DEOS プロジェクト主要メンバー

研究総括

所 眞理雄 株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所 エグゼクティブアドバイザー・ファウンダー 副研究総括

村岡 洋一 早稲田大学 名誉教授 領域アドバイザー

岩野 和生 三菱商事株式会社 ビジネスサービス部門 顧問

落水 浩一郎 北陸先端科学技術大学院大学 副学長 高信頼組込みシステム教育研究センター特任教授 菊野 亨 大阪学院大学 情報学部 教授

妹尾 義樹 日本電気株式会社 情報・ナレッジ研究所 技術主幹

田中 英彦 情報セキュリティ大学院大学 情報セキュリティ研究科 学長・研究科長・教授 松田 晃一 (独)情報処理推進機構 顧問

安浦 寛人 九州大学 理事・副学長 大学院システム情報科学研究院 教授・システムLSI研究センター センター長

2006年度採択 研究代表者 研究テーマ 石川 裕 東京大学 情報基盤センター セン

ター長・教授

並列・分散型組込みシステムのためのディペンダブルシ ングルシステムイメージOS

佐藤 三久 筑波大学 計算科学研究センター センター長・教授

省電力でディペンダブルな組込み並列システム向け計算 プラットフォーム

徳田 英幸 慶應義塾大学 環境情報学部 教授 マイクロユビキタスノード用ディペンダブルOS 中島 達夫 早稲田大学 理工学術院 教授 高機能情報家電のためのディペンダブルOS 前田 俊行 東京大学 大学院情報理工学系研究

科 助教

ディペンダブルシステムソフトウェア構築技術に関する 研究

2008年度採択 研究代表者 研究テーマ 加賀美 聡 (独)産業技術総合研究所デジタル

ヒューマン工学研究センター 副 センター長

実時間並列ディペンダブルOSとその分散ネットワーク の研究

木下 佳樹 神奈川大学 理学部情報科学科

利用者指向ディペンダビリティの研究 倉光 君郎 横浜国立大学 大学院工学研究院

准教授

Security WeaverPスクリプトによる実行中の継続的

な安全確保に関する研究

河野 健二 慶應義塾大学 理工学部 准教授 耐攻撃性を強化した高度にセキュアなOSの創出 研究推進委員

浅井 信宏 日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア開発研究所 ディスティングイッシュト・エンジ ニア

大野 毅 横河電機株式会社 IAプラットフォーム事業本部 システム事業部PAシステム部 システム 基盤課 課長

神谷 慎吾 エヌ・ティ・ティ・データ先端技術株式会社 ソリューション事業部 フレームワークビジネ スユニット ソフト工学グループ グループ長

中川 雅通 パナソニック株式会社 R&D本部 グローバルソリューション推進室 グループマネジャー 森田 直

山浦 一郎 富士ゼロックス株式会社 コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム第2開発部 グループ長

領域運営アドバイザー

梶本 一夫 パナソニック株式会社 システムエンジニアリングセンター 所長 田中 譲 北海道大学 大学院情報科学研究科 教授

鶴保 征城 学校法人 専門学校HAL東京 校長 戸井 哲也 富士ゼロックス株式会社 執行役員 DEOS研究開発センター

屋代 眞 (独)科学技術振興機構 DEOS研究開発センター センター長

(各グループ内 氏名 あいうえお順、2006年度採択研究代表者所属は2012.3.31当時、他所属は2013.10.31現在)

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