第 7 章 整形増幅器の時定数の変更 63
7.2 CsI(Tl)+PIN PD によるより正確な測定
7.2.1 測定
前節の結果を踏まえて時定数を2、6、10µsに設定し、用いるγ線源を増やして測定した。整形増幅器の
±
6、10µsのときは21.5±1℃であった。
7.2.2 結果
エネルギー分解能は以下の表7.1のようになった。やはり10µsのときに分解能が良くなることがわかる。
最も分解能が良くなった10µsの場合のスペクトルを図7.4に示す。また、エネルギー較正の様子と時定
数が2、10µsの場合のエネルギーとエネルギー分解能の関係を図7.3に示す。
表7.1: CsI(Tl)+PINで測定したときのエネルギー分解能 γ線源 エネルギー エネルギー分解能(% FWHM)
(keV) 時定数= 2µs 時定数= 6µs 時定数= 10µs
241Am 59.5 41.1 (0.71) 32.1 (0.37) 31.2 (0.37)
133Ba 81.0 31.2 (0.44) 23.1 (0.29) 24.0 (0.41)
109Cd 88.0 30.0 (0.35) 22.0 (0.31) 22.6 (0.46)
57Co 122 27.2 (0.24) 18.8 (0.28) 18.6 (0.33)
133Ba 356 11.0 (0.26) 8.8 (0.13) 7.6 (0.26)
22Na 511 8.8 (0.02) 7.1 (0.02) 6.8 (0.03)
137Cs 662 7.5 (0.03) 6.3 (0.03) 5.9 (0.04)
60Co 1173 5.1 (0.05) 4.2 (0.04) 4.0 (0.04)
22Na 1275 5.3 (0.02) 4.4 (0.03) 4.1 (0.05)
60Co 1333 5.1 (0.03) 4.3 (0.03) 4.1 (0.03)
括弧内の数値はフィッティングエラー、気温は2µsのとき22.0±0.5℃で、6、10µsのとき21.5±0.5℃
Energy [keV]
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
Peak Channel
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
µs Energy-Channel, Shaping time = 10
fit using 122-1333keV
Energy [keV]
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
Residual [%]
-2 0 2 4 6 8 10 12 14
µs Energy-Residual, Shaping time = 10
Energy [keV]
102 103
Energy resolution(FWHM) [%]
4 10 20 30 40
µs Shaping time = 2
µs Shaping time = 10 Energy resolution, CsI(Tl)+PIN
図 7.3: CsI(Tl)+PINを用いてγ線を測定したときのエネルギー較正の様子(左、時定数は10µs)と、エ ネルギー分解能(右、時定数は2、10µs)
Channel
0 50 100 150 200 250 300
Number of events
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 am241_59.5keV
59.5keV
Channel
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450
Number of events
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 cd109_88.0keV
88.0keV
Channel
0 100 200 300 400 500 600
Number of events
0 200 400 600 800 1000 1200 co57_122keV
122keV
Channel
0 200 400 600 800 1000 1200
Number of events
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000
ba133_81.0, 356keV
81.0keV
356keV
Channel
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 2200
Number of events
0 500 1000 1500 2000 2500 cs137_662keV
662keV
Channel
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
Number of events
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000
na22_511, 1275keV
511keV
1275keV
Channel
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
Number of events
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000
co60_1173, 1333keV
1173keV 1333keV
図7.4: 整形増幅器の時定数を10µsに設定し、CsI(Tl)+PINで測定した各γ線のスペクトル図
7.2.3 考察
エネルギー較正
他の検出器とCsI(Tl)の組み合わせで測定したときと同様、122keV以上ではエネルギーと光量の線型性 が成り立っているが、それ以下では入射エネルギーに対する光量の割合が次第に小さくなっていくことがわ かる(図7.3左)。
エネルギー分解能
図7.3右の直線は整形増幅器の時定数が2µsのときと10µsのときにエネルギーとエネルギー分解能の関 係をフィットしたもので、662keVにおけるエネルギー分解能に注目すると、それぞれ
エネルギー分解能(% FWHM) =
7.5×
( E 662keV
)−0.65±0.003
(時定数=2µs)
5.9× ( E
662keV
)−0.65±0.004
(時定数=10µs)
(7.1)
となった。フォトダイオードからの信号は微弱なので、回路ノイズの影響が大きくなりE−0.5から外れた と考えられる。
時定数を変えたことによるエネルギー分解能の変化
CsI(Tl)+PINでγ線の測定をしたところ、整形増幅器の時定数が10µsのとき最もエネルギー分解能が
良くなったが、これは、CsI(Tl)の蛍光減衰時間が約1000nsと長いことに起因すると思われる。
プリアンプを通した後のパルスをオシロスコープ(テクトロニクス、TDS 2024)で取り込んだところ、
下図7.5のようになる。このパルスの立ち上がり時間はシンチレータの蛍光減衰時間に比例して長くなる が、図によればそれは約10µsである。整形増幅器の時定数はパルスの立ち上がり時間をカバーしているこ とが望ましい。従って、時定数が10µsの場合が最も安定した波形整形が出来て、分解能がよくなったと考 えられる。
time [s]
-0.00005 0 0.00005 0.0001 0.00015 0.0002
Voltage [V]
-0.02 -0.01 0 0.01 0.02 0.03 0.04
oscilloscope, CsI(Tl)+PIN
10 s
µ
図7.5: CsI(Tl)+PINで662keVのγ線を測定したときの、プリアンプを通した後の波形。