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CO 3 を用いた光合成産物の定量

ドキュメント内 博 士 論 文 (ページ 33-83)

ここでは光合成により14

C

標識したクロレラ光合成産物の量の測定について述べる. 以降 の実験で, 炭酸固定量・放出量の測定にはこの方法を用いた.

50 mM MES-K

緩衝液 (pH 5.0) で洗浄した後, 同じ緩衝液に懸濁して細胞数が

1.0 ×10

8

cells mL

-1になるように調整した.

F36-ZK

懸濁液を

1.5 mL

チューブに移し, 50 mg mL-1

NaH

14

CO

3 溶液 (1.85 MBq

mL

-1

; American Radiolabeled Chemicals, Inc., St. Louis, MO, USA)

5 μL

加え (最終濃 度

37.0 kBq mL

-1

),

白色光下で

2

時間インキュベートした (25°C, 100 μmol m-2

s

-1

).

フィル ター付きチューブ (Ultra-free MC; pore size 0.45 μm; Millipore, Bedford, MA, USA) を用 いて遠心にて細胞と上清に分けた (10,000

g , 1 min, 25°C).

上清を

200 μL

とり, 100 μL 1

M HCl

加えて

90°C

10

分間置くことで, 未固定の

NaH

14

CO

3を除去した. それぞれのサン

33

プルに

5 mL

シンチレーションカクテル (Clear-sol I; Nacalai, Kyoto, Japan) を加え, 液体 シンチレーションカウンター (LS-6500; Beckman Instruments Inc., CA, USA) を用いて放 射線量を測定した. また, 藻体は

100 μL

蒸留水を加えて二度洗浄し, 100 μL 蒸留水に懸濁 した後, 同様に

5 mL

シンチレーションカクテルを加え, 液体シンチレーションカウンター で放射線量を測定した.

光とpH のマルトース放出に与える影響

マルトース放出の

pH

依存性を調べるために, F36-ZKを 50 mM MES-Na 緩衝液 (pH

5.0, 6.0

または

7.0)

で洗浄し, それぞれの緩衝液に懸濁した.

マルトース放出の光依存性を調べるために, 光源として蛍光灯 (30 μmol m−2

s

−1

;

FL205-D; Panasonic, Osaka, Japan)

と基礎生物学研究所・大型スペクトログラフ

(Watanabe et al. 1982)

を用いて, 白色と単色の光を照射した.

光合成阻害剤による炭酸固定とマルトース放出への効果

DCMU

ストック溶液 (1 × 10−2

M in 100%

メタノール; Nacalai, Kyoto, Japan) を作り, 冷暗所 (4°C) に保存した. DBMIBストック溶液 (1 × 10−2

M in 100%

メタノール;

Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)

は-20°Cに保存した. これらのストック溶液を

50 mM

MES-K

緩衝液 (pH 5.0) に添加し最終濃度

1 × 10

−6

, 1 × 10

−5

, 1 × 10

−4

M (DCMU)

と 5 ×

10

−6

, 1 × 10

−5

, 5 × 10

−5

M (DBMIB)

になるように調整した. F36-ZK を

50 mM MES-K

緩 衝液 (pH 5.0) に懸濁し, DCMUと

DBMIB

をそれぞれ加えて

35 mm

ペトリディッシュ中

25°C

で 10分間暗所でプレインキュベートした後, 2 時間白色光下 (100 μmol m−2

s

−1

)

でイ ンキュベートした. 放出されたマルトース量と14

C

の固定量を上記の方法で測定した.

34 デンプン量測定

F36-ZK

3 mL

100 mM HEPES-Na

緩衝液 (pH 7.0) に 1.0 × 108

mL

-1になるよう 懸濁し, 20 MHz超音波で

30

分間破砕した (Ultrasonic Liquid Processor XL 2000; Misonix,

Farmingdale, NY, USA).

こうして得た破砕液

100 μL

2 units β-アミラーゼ (50 μL) (Sigma-Aldrich)

と 100 mM HEPES-Na 緩衝液 (pH 7.0) (100 μL) をそれぞれ加え, 37°C で

12

時間インキュベートした後, 1 分間煮沸し, 酵素を失活させた. 遠心分離によって細胞 を除去し (10,000

g , 1 min, 25°C),

上清中のマルトース量を, PMP誘導体法を用いて定量し た. 可溶性デンプンを (soluble starch; Nacalai, Kyoto, Japan), β-アミラーゼで同様に反応 させ, 作成した検量線からクロレラの細胞内のデンプン量を求めた.

クロロフィル定量

遠心にて集藻した

F36-ZK

100 μL

の蒸留水に再懸濁し, 900 μLジメチルホルムアミド を加えた. この混合液を暗所

4°C

で 1日間インキュベートした後, 遠心にて細胞の破片を除 去し, 上清の吸光度を吸光光度計 (U-1100; HITACHI, Ibaraki, Japan) で測定し, 以下の式 によりクロロフィル量を求めた (Porra et al. 1989).

Chl a (μg Chl/mL) = 12.00×A

663.8 -3.11 ×A646.8

系統樹の作成

SSU rDNA

ITS2

の塩基配列をもとに

MEGA7

を用いて最尤法による系統樹を作成した

(Hoshina et al. 2010). F36-ZK

SSU rDNA

ITS2

の配列は (Hoshina et al. 2004) にお いて報告されているものを用いた (ACCESSION AB162914). 各ノードにおいて, リサンプ リング数を

1000

回とした場合のブートストラップ値を示した.

35

結果

使用した共生クロレラの系統樹

F36-ZK

の系統関係を整理して示すために新たに系統樹を作成した (Fig. 7). F36-ZKは

NC64A

SAG 211-6

とともに

C. variabilis

のグループに含まれた.

Figure 7. The taxonomic position of Chlorella variabilis F36-ZK.

A maximum-likelihood phylogenetic tree was generated using SSU rDNA and ITS2 sequences (Hoshina et al. 2010). The SSU rDNA and ITS2 sequences of C. variabilis F36-ZK were reported by Hoshina et al. (2010) (GenBank accession number AB162914). The numbers at the nodes represent bootstrap values resampled 1000 times.

36 各

pH

における光合成産物の放出量の比較

共生クロレラと自由生活型クロレラにおける光合成産物放出量の違いを調べるため, 様々 な

pH

条件下で14

C

を用い炭酸固定量と放出された光合成産物の量を調べた. 共生クロレラ

3

株 (

C. variabilis NC64A

F36-ZK, M. reisseri Pbi)

と自由生活型クロレラの

C. vulgaris

NIES-227

を比較した. 共生藻である

F36-ZK

NC64A

は酸性条件下で光合成産物を放出し

た (Fig. 8). NC64Aの光合成産物放出量は

F36-ZK

と比較して少なかった. 他の報告されて いる共生藻株と比較して

NC64A

は光合成産物放出量が少ないことがこれまでにも報告され ており, これに一致した. また

Pbi

においても光合成活性と放出量の関係は他の共生藻

2

株と 同様の挙動を示し, 酸性条件で放出量が増加し中性条件で放出が停止するのが観察された.

一方, 自由生活型クロレラである

NIES-227

は, どの

pH

条件においても光合成産物を放出し なかった.

37

F36-ZK NC64A

NIES-227 Pbi

Figure 8. The effect of pH on the rate of released carbon in symbiotic and free-living Chlorella strains.

Cells of symbiotic C. variabilis F36-ZK, C. variabilis NC64A, M. reisseri Pbi, and free-living C. vulgaris NIES-227 were incubated with NaH14CO3 for 2 h under light (100 μmol m-2s-1) and were then measured for fixed carbon by liquid scintillation counting. Vertical axes show the amount of 14C-labeled product. White bars show the amount of total 14C-labeled product. Black bars show the amount of 14C-labeled product outside the cells. Values are expressed as the average of three experiments (±SD).

38 放出されるマルトースの定量

放出されるマルトースの絶対量を測定するために, 従来の14

C-トレーサー法に加えて PMP

誘導体化法を用いて

F36-ZK

から放出されるマルトースを定量し, マルトース放出の

pH

依存性を調べた. pH 7.0の条件下で

F36-ZK

はマルトースを

2

時間で

0.59 ± 0.12 mg mg

-1

chl a

放出した (Fig. 9A). pH 5.0にすることで放出されるマルトースの量は

pH 7.0

2.4

に増加した (Fig. 9A). これは既に知られているマルトース放出は酸性条件で誘導されると

いう14

C-トレーサー法を用いた定性的な報告とよく一致した (Kamako and Imamura 2006).

この光照射下,酸性という条件では,新規に固定した光合成産物だけを測定する14

C

トレー サー法と,放出された糖の絶対量を測定する

PMP

誘導体化法による測定で良い相関が得ら れた. 従って, PMP誘導体化法は共生クロレラの放出するマルトースの量を定量するのに適 しており, この方法を用いて暗条件や光合成阻害剤存在下など, 非光合成条件でも放出され る糖の量を測定することができると考えた.

マルトース放出への光の影響

マルトース放出に対する光の影響を調べるために, 明暗条件下で

F36-ZK

によって放出さ れるマルトースの量を

PMP

誘導体化法で測定した. 光条件下と暗条件下で放出されたマル トースを比較すると, 光条件下ではマルトースは暗条件下の

3.8

倍に増加した (Fig. 9B). 次 に, 光条件下かつ酸性条件 (pH 5.0) でマルトース放出の時間変化を調べた. 暗所で

F36-ZK

はマルトースを徐々に放出したが (-120 to 0 min in Fig. 9C), 放出速度は徐々に低下した(0

to 240 min in Fig. 10C).

一方, 光条件下 (30 μmol m−2

s

−1

)

では, 光照射直後から (0 min in

Fig. 9C),

放出されるマルトース量は直線状に増加した (0 to 210 min; Fig. 9C). しかし, 210 分から

240

分の間ではマルトースの放出速度は低下した (Fig. 9C).

光刺激を加えてからより早い時期 (Fig. 9C, 0-20 min) のマルトース放出の反応を観察す るために, 細胞内の光合成産物の貯蔵量における変化, および細胞外に放出される光合成産

物を14

C-トレーサー法を用いて時間を追って測定した (Fig. 9D).

これまでに, F36-ZKの放

39

出する光合成産物のほとんどがマルトースであることがわかっている (Kamako and

Imamura 2006).

この実験条件において, H14

CO

3-は光を当て始めてから

5

分ほどで全て

F36-ZK

に取り込まれた (Fig. 9D). 細胞内に取り込まれた同位体炭素量は光を照射直後か

ら取り込みが始まり, 4分間直線的に増加し, その後減少した. 一方放出量は, 最初は緩やか に放出が始まったが, 光照射

1

分後から急激にマルトースの放出量が増加した (Fig. 9D). 共 生藻細胞内に取り込まれた14

C

のうち一部が固定され, 代謝されてマルトースになり放出さ れるまでに

4-5

分かかると考えられた.

40

Figure 9. Measurement of maltose released by symbiotic C. variabilis F36-ZK.

(A) Acid stimulation of maltose release. White bars show the amounts of maltose released at each pH (5.0, 6.0, and 7.0) over 2 h at 25°C under light (30 μmol m-2 s-1). The amount of released maltose was quantified by HPLC using the PMP derivative method. The values are expressed as the average of three experiments (±SD). (B) Light stimulation of maltose release. White bars show the amount of maltose released at pH 5.0 over 2 h at 25°C in the absence or presence of light (30 μmol m-2 s-1). (C) Time course of maltose release induced by light irradiation. F36-ZK cells were kept in dark (closed squares) or irradiated with light (open squares, 30 μmol m-2 s-1) after being kept in dark in a buffer at pH 5.0 for 120 min prior to the initiation of irradiation (0 min). (D) The initial time course of carbon fixation and maltose release. F36-ZK cells were suspended in a buffer at pH 5.0 and exposed to light (100 μmol m-2 s-1) for the indicated times before sampling. The line charts show the incorporated 14C levels inside (closed circles) and outside (open squares) the cells and the levels of total fixed carbon (closed triangles) (n = 3).

41 マルトース放出の光波長依存性

マルトース放出には光が必要であることが明らかになったため, 光受容体または光合成が 関与していると予想した. そこでマルトース放出の光波長依存性を求めることで, 光刺激の 受容機構を調べた. Fig. 10に示すように, 全ての波長においてマルトースの放出が見られた が, 特に青色光 (450 nm) と赤色光 (660 nm) で顕著に増加がみられた. また, 全ての波長 において光の強さが増すにつれてマルトースの放出量が増加した. 遠赤色光 (720 nm) で最 も放出量が少なくなった. これらの結果から, マルトース放出における光波長依存性は光合 成の作用スペクトルとよく一致することがわかった.

Figure 10. The effect of light on maltose release by C. variabilis F36-ZK.

F36-ZK cells were exposed to monochromatic light at wavelengths 370, 450, 520, 580, 630, 660, and 720 nm. The fluence rates were 1 (open circles), 3 (closed triangles), and 30 μmol m-2 s-1 (open triangles). The values are expressed as the average of three experiments (±SD) (n = 3).

Asterisks indicate statistically significant differences compared with the quantity of maltose generated by light at 720 nm, according to one-way ANOVA followed by Tukey’s test (P < 0.05).

42 光合成阻害剤の影響

マルトース放出への光合成の作用を調べるために, 光合成阻害剤存在下での放出量を測定 した. 光合成電子伝達阻害剤である

DCMU

と DBMIBを用いてその効果を比較した.

DCMU

PSII

に結合することがわかっており

PSII

での電子伝達を阻害する. DBMIBはシ トクロム

b

6

f

複合体に結合しプラストキノンからの電子伝達を阻害する. DCMUの濃度

1 × 10

-6 から 1 × 10-4

M

において, マルトースの放出は徐々に減少するが暗条件に比べてかなり 高いレベルで推移した

(Fig. 11B).

このとき, 炭素固定量は

1 × 10

-6

M DCMU

50%

まで 低下するのに対し (Fig. 11A), マルトース放出の阻害は効果が小さいことがわかった (Fig.

11B).

さらに, 1 × 10-5

M DCMU

の条件においては, 炭素の固定はより強く阻害され, 暗条件

と同じレベルまで低下したが (Fig. 11A), マルトースの放出量は暗条件に比べてかなり高い レベルを保った (Fig. 11B). さらに高い濃度の

DCMU

を用いて完全に炭素の固定を停止さ せてもマルトースの放出能は失われなかった (1 × 10-4

M; Fig. 11B).

また

DBMIB

の濃度依存性を調査したところ, 濃度を上げることに伴って14

C

の固定量は

低下し, 5 × 10-5

M

の濃度で完全に炭素固定は停止した (Fig. 11C). この時, 放出されるマル トースの量は暗所でのマルトース放出量よりも低い値になり, 顕著にマルトースの放出が阻 害された (Fig. 11D). これらの結果から, DCMUと

DBMIB

はマルトース放出において異な る効果を示し, PSIの電子伝達は

PSII

の活性に比べて重要度が高いと考えられた. 炭素の固 定量は必ずしもマルトースの放出量と相関を示さなかった.

43 マルトース生成に使われる炭素

F36-ZK

が放出するマルトースがどのような経路を用いて生成されているのかを調べるた

め, F36-ZKの懸濁液に

H

14

CO

3-を様々な時点で添加した. 光でマルトース放出の誘導をかけ Figure 11. The effect of photosynthetic inhibitors on maltose release by C. variabilis F36-ZK.

(A and B) Gross carbon fixation and released maltose levels, respectively, in the presence or absence of DCMU under dark or light conditions. (C and D) Gross carbon fixation and released maltose levels, respectively, in the presence or absence of DBMIB under dark or light

conditions. F36-ZK cells were incubated at pH 5.0 for 2 h. White light (100 μmol m-2 s-1) was used for irradiation. Mean values ± SDs are shown (n = 3).

44

る直前に

H

14

CO

3-を添加した場合は14

C

でラベルされた光合成産物のほとんど (86%) が放出 された (Fig. 12A, L*L), 一方で光誘導をかける

1

時間前から

H

14

CO

3-を取り込ませておいた ものでは, 14

C

ラベルされた光合成産物のうち

30%しか細胞外に放出されなかった (Fig. 12A,

*LL).

これらの結果から, 放出されるマルトースは, すでに蓄積している光合成産物でなく,

新たに固定された光合成産物を優先的に用いて生成されていることがわかった. また, 暗所 においても僅かながらマルトースを放出したので (Figs. 7B and 9), マルトースは新規に固 定される炭素からだけではなく, 蓄積していた炭素を用いても, 生成され放出されたと考え られる.

さらに, 蓄積している炭素源からのマルトース放出が光に依存するかどうか調べたところ, 蓄積している炭素から生成され放出されるマルトース量は光条件下でも暗所でも変化しなか った (Fig. 12B, *LL and *LD).

ドキュメント内 博 士 論 文 (ページ 33-83)

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