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CCT 導入促進計画と留意事項

4-1 CCT技術の概念整理とインドネシアへの適用 日本におけるCCT技術の分類を図4-1に示す。

広義の意味での CCT では、石炭資源開発技術、多目的石炭利用技術、高効率利用技術、CO2 対策技術、排煙処理・ガスクリーニング技術、石炭灰有効利用技術に分類することができる。第1 章で述べた調査の背景及び概要に留意し、このCCT技術範囲の中でも高効率利用技術の石炭火力 発電技術を中心に調査を進める。さらに第3章におけるインドネシアの急速な電力需要の伸び、

CO2排出量削減への努力及び資金調達を総合的に考慮すると、高効率かつ大容量の石炭火力発電 技術の導入が望ましいと考えられる。

日本の現状及び将来の高効率石炭火力発電技術については、Cool Earth 技術計画が参考となる。

探査 採掘 保安 選炭

粉砕 輸送 貯蔵

加工 改質 転換

利用 環境対策

石炭資源開発技術 多目的石炭利用技術 CO2対策技術

排煙処理 ガスクリーニング技術 石炭灰

有効利用技術 石炭火力発電技術

高効率利用技術

象期間

図4-1 CCT技術の概念図

今回の業務対象期間となる2010~2025年を考慮すると、下記の高効率石炭火力発電技術が主な 対象となる。対象技術については、PLN社及びMEMRと協議のうえ合意した。

① SC:超臨界圧石炭火力発電設備 (Super critical steam condition)

蒸気条件が、圧力 22.1MPa、温度 374.1℃を超えた蒸気条件(水の臨界点を超えた蒸 気条件)で設計されている石炭火力発電所。

② USC:超々臨界圧石炭火力発電設備 (Ultra super critical steam condition)

蒸気条件が、圧力24.1MPa以上、温度593℃を超えた蒸気条件(厳密な定義はない が、一般的に利用されている定義)で設計されている石炭火力発電所。

③ IGCC:石炭ガス化複合発電設備(Integrated coal gasification combined cycle)

石炭をガス化設備によりガス状の燃料に転換し、ガス燃料発電設備としては熱効率 が最も高いコンバインドサイクル発電設備を利用して発電する石炭火力発電所。

SCとUSCの違いは、その蒸気条件が高温・高圧になるにしたがって必要とされる材料を使用し ていることにある。IGCCは図4-3のとおり石炭ガス化設備とUSCボイラーの代わりにガスタ ービン+排熱回収ボイラーが設置されている。

図4-3 SC、USC、IGCCのしくみ

これら SC、USC、IGCCの発電設備において最も大きな相違点は、送電端熱効率の違いにある。

CCT火力発電設備導入の目標として、CO2排出量削減と石炭使用量削減があり、それらは送電端 熱効率の違いによって図4-4のように異なる。

<機器構成>

ボイラ+蒸気タービン

<機器構成>

ボイラ+蒸気タービン

<機器構成>

+ボイラ+蒸気タービン

<機器構成>

+ボイラ+蒸気タービン ガス化炉+ガスタービン

蒸気 タービン

蒸気 タービン

石炭 石炭

SC / USC 石炭火力電 石炭ガス化複合発電(IGCC)

排熱回収 ボイラ 排熱回収 ボイラ ボイラ

煙突 排ガス 煙突

排ガス

蒸気タービン ガス

タービン

ガス化炉

燃料ガス

蒸気 蒸気

蒸気タービン

図4-4 CCT火力発電技術と送電端熱効率の違い

上述の計算は概算に基づいており、実際には、使用する炭種や設備仕様(海水冷却か空冷塔か など)によっても送電端熱効率の絶対値は変わるが、亜臨界 SC USC IGCCとCCT火力発電 技術の向上に伴い送電端熱効率が向上し、CO2排出量及び石炭消費量が減少することが分かる。

4-1-1 SC/USC技術の現状とインドネシアへの適用

日本における SC/USC技術の開発は、図4-5に示すとおり。国内にエネルギー資源が非常 に少なく化石燃料の輸入依存性の高いわが国では、石油ショック以前から火力発電設備の高効 率化に向けた取り組みが積極的に行われてきた。超臨界圧火力発電設備(SC)については、1960 年代後半に日本で初めて石油火力発電所で導入された。石油ショック以降は、燃料多様化の時 代の流れのなかで、1980 年代初頭に初めて超臨界圧石炭火力発電設備が導入された。その後、

更なる技術革新が続けられ、1990年代初頭には超々臨界圧石炭火力発電所が導入された。その 後は、更に蒸気条件を改良し、継続的に熱効率の改善を続けている。

亜臨界 超臨界 ( SC )

超々臨界 ( USC )

IGCC

38% 41% 43%

50%

5%ポイントの違い - CO2 : 12%

-石炭: 12%

12%ポイントの違い - CO2 : 24%

-石炭: 24%

送電端熱効率 [ % LHVベース ]

図4-5 日本のSC/USC技術の変遷

インドネシアにおいては、2011 年運用開始予定の Cirebon (660MW) 火力発電所、 2012 年運用開始予定のPaiton 3-4 拡張(815MW) が超臨界圧(SC)石炭火力発電設備として建設 が進んでいる。現在までのところ、超々臨界圧石炭火力発電設備については、建設着工してい るプロジェクトはない。

4-1-2 IGCC技術の現状とインドネシアへの適用

IGCC技術については、図4-6のように1980年代初頭から商業化に向けた取り組みが進め られてきた。

図4-6 IGCC技術商業化への取り組み

戦後の電力 需要急増

時代背景 経済の高度成長

石油ショック

IEA石油火力新設

禁止決議 地球温暖化問題の顕在化と

電力自由化の進展 [水主火従時代] [石油火力時代] [燃料多様化時代] [原子力を中心とした電源

ベストミックスの時代]

1980 1990 2000

1960 1970 2010 ~

九州電力苅田火力 (7.5万kW) 10MPa, 538/538℃

東京電力横須賀火力(26.5万kW) 16.6MPa, 566/566℃

欧米から 最新技術の導入 (再熱サイクル採用)

電源開発松島火力(50万kW) 24.1MPa, 538/538℃

石炭火力初の 超臨界圧採用

超々臨界圧 の採用 中部電力碧南火力(70万kW) 24.1MPa, 538/593℃

さらなる

※石油火力では先行して超臨界圧を採用 高効率化 東京電力姉崎火力(60万kW) 24.1MPa, 538/566℃

38%

40%

42%

44%

46%

石炭ガス化複合発電システム(IGCC)

設計熱効率(LHV基準)

東京電力 常陸那珂(100万kW) 24.5MPa, 600/600℃

広野( 60万kW) 24.5MPa, 600/600℃

中国電力三隅火力(100万kW) 24.5MPa, 600/600℃

48% 電源開発磯子火力(60万kW)

25MPa, 600/620℃

2t/日 電中研 基礎試験装置

(1983-1995) 基礎試験

200t/日 勿来 パイロットプラント (1991-1996)

パイロットプラント試験

24t/日 MHIテストプラント (1998-2002)

実証試験

事前検証試験・設計研究 夕張

パイロットプラント (1981-1987)

1,700t/日 - 250MW 勿来実証プラント

(2007- ) ガス化基礎試験

*( )内は運転試験期間 出典:CCP R&D CO.,LTD

'86 '87 '88 '89 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11

勿来 パイロットプラント 石炭 200 t/日

出力 25MW 相当 MHI テストプラント 石炭 24 t/日

CCP実証試験プラント 石炭 1,700 t/日 出力 250 MW級 実証試験

パイロットプラント試験

FS 要素研究

事前検証試験 設計研究

設計 環境影響評価

建設 運転試験

図4-7 IGCC技術取り組みの歴史

これらの段階的及び長期的な基礎研究から、プラント検証試験を通じて、下記のクリーンコ ールパワー研究所のIGCC実証プラントの運転に至っている。

図4-8 IGCC実証プラント

このIGCC 実証プラントは、電力会社9社と電源開発により設立した㈱クリーンコールパワ ー研究所により勿来(福島県いわき市)にて実証試験を実施中。運転開始後3年間で、設備の 信頼性を確認する 2,000 時間連続運転試験及び累積 5,000 時間の耐久性確認試験に成功し、商 業化へのめどがついている。現在では炭種拡大試験を継続的に実施中。また、IGCC 実証プラ ントの石炭ガスから分離されたCO2(燃焼前回収)を沖合にある枯渇ガス田に貯留するCCSの フィージビリティー・スタディーが実施されている。

商用化段階では、既に商業化され安定的に運転を継続している 1,500℃級のガス焚きコンバイ ンドサイクル発電技術と組み合わせることにより送電端の熱効率48~50%を達成する見込み。そ の場合には、従来の石炭火力に比べてCO2排出原単位を石油火力並みにすることが可能である。

同様にして、酸素吹きIGCC技術についても多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)として 下記のように研究開発が進められている。

IGCCのしくみ>

【出典】クリーンコールパワー研究所

<実証機全景>

空気吹きドライフィード 二段噴流床 ガス化方式

1,200℃級 ガスタービン

42%(送電端)

目標熱効率

約1,700トン/日 石炭使用量

250 MW級 出力

空気吹きドライフィード 二段噴流床 ガス化方式

1,200℃級 ガスタービン

42%(送電端)

目標熱効率

約1,700トン/日 石炭使用量

250 MW級 出力

<実証機の主な仕様>

'86 '87 '88 '89 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 EAGLE パイロットプラント

HYCOL パイロットプラント 石炭 150 t/日

石炭 50 t/日 出力 8 MW級

パイロットプラント試験 パイロットプラント試験

FS

基本・

詳細設計 建設・試運転

運転試験 step-1 運転試験 step-2

図4-9 多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)の歴史

図4-10 多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)

この EAGLE パイロット試験プロジェクトは、独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機

構(NEDO)と電源開発の共同研究事業として実施されており、電源開発の若松研究所(福岡 県北九州市)構内で運転試験が続けられている。EAGLE技術は、IGCCへの適用に加えて、更 に次世代の技術である石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)への適用も視野に入れて試験が行 われている。また、IGFC に採用した場合、58%以上の送電端熱効率をめざすことも可能と考 えられている。

これらIGCC技術の特色のひとつとして、SC/USCで使用される炭種とIGCCで使用される炭 種の範囲が異なることが挙げられる。IGCCでは、石炭の灰溶融点の低い石炭の適合性が良く、

SC/USC では灰溶融点の高い石炭の適合性が高い。現在、市場から低品位と評価を受ける石炭

は一般的に灰溶融点の低い石炭が多く、IGCC を利用することによりインドネシアにおける使 用可能炭種の拡大に貢献することができ、また、IGCC が世界的に普及すればこれらを輸出す ることも可能となる。

4-1-3 CCS技術の現状とインドネシアへの適用

CCS 技術(Carbon Capture and Storage)とは、化石燃料を燃焼する火力発電所などから排出 されるCO2を、分離・回収し、それを輸送し、地中もしくは海洋の深くに貯留する技術。

【出典】NEDO20092010エネルギー・

環境技術分野」

【出典】経産省資源エネルギー庁「わが国の石炭政策の現状(20096月)」

<パイロット試験設備全景> <試験設備フロー>

<パイロット試験設備の主な仕様>

酸素吹1室2段旋回型噴流床式 ガス化方式

150トン/日 石炭使用量

8 MW級 GT出力

酸素吹1室2段旋回型噴流床式 ガス化方式

150トン/日 石炭使用量

8 MW級 GT出力

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