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Brugada 症候群の心臓電気生理学的特徴

ドキュメント内 098青沼班GL念校0507.indd (ページ 34-38)

現時点で知られている

Brugada

症候群の心臓電気生理 学的特徴を以下に列挙する.なお,

Brugada

症候群の心電 図は欧州および米国

Heart Rhythm

学会によるタイプ

1

タイプ

2

,タイプ

3

に分類し74)

Brugada

症候群のうち,

症状(心停止,多形性心室頻拍・心室細動あるいは原因不 明の失神)を伴う例は有症候性

Brugada

症候群,症状のな

5. 

臨床心臓電気生理学的検査 

い例は無症候性

Brugada

症候群として取り扱う.

①心室プログラム刺激試験により,高率に心室細動が誘発 されるが,誘発率は無症候例より,有症候例で高率であ る62,375)

②刺激部位によって誘発性が異なり,右室心尖部よりも右 室流出路でより誘発されやすい376)

③期外刺激法により,右室流出路における伝導遅延の所見 がみられることがある91,103,377)

④自律神経系作動薬が誘発性に影響する352)

⑤心室細動の誘発を抑制する薬剤として,一過性外向き

K

+電流(

I

to)

を抑制するキニジン95,96) が有効とする報 告がある.

⑥無症候性

Brugada

症候群のリスク層別化には心室プロ グラム刺激試験の評価は定まっていない.

Brugada

60) は,心室プログラム刺激試験により心室細動を誘発さ れる患者は心事故を起こしやすいとして心室プログラ ム刺激試験の有用性を述べているが,他の報告61,62,378)

では,同様の所見は得られていない.これは,

Brugada

らの報告を除くと,これまでに行われた数年の経過観察 期間ではいずれも良好な経過を示しているからである.

⑦洞不全症候群や心房停止を合併した症例の報告もある.

His-Purkinje

系の伝導時間を反映する

HV

時間が延長(≧

55 msec

している例が認められる69).無症候例より有 症候例で,および心室プログラム刺激試験による心室細 動非誘発例より心室細動誘発例で

HV

時間の延長例が 多い.また

SCN5A

の遺伝子異常が認められる例に

HV

時間の延長例が多いことも報告されている.しかし,無 症候例で

HV

時間の延長がハイリスクであるというエ ビデンスは得られていない.

⑨心室プログラム刺激試験により,心房細動が誘発されや すく,心房の受攻性が高まっていることが報告379) され ている.そのほか,房室結節リエントリー性頻拍,心房 頻拍,単形性心室頻拍,副伝導路症候群の合併がみられ る380)

5.2 

臨床心臓電気生理学的検査の適応

Brugada

症候群に対する臨床心臓電気生理学的検査は,

①心室プログラム刺激試験による発作の誘発,②発生機序 を検討する,③他の電気的な異常の有無を検討する,を目 的で行われる.しかし,実際は,ほとんど①の目的で施行 されている.表14に臨床心臓電気生理学的検査の適応の クラス別を示す.

6. 

遺伝子診断 

Brugada

症候群は,右側胸部誘導の

ST

上昇を特徴とす る特発性心室細動の一群である.本症候群における

ST

昇の機序は,右室の心外膜に多く発現する一過性外向き

K

+電流(

I

to)の相対的な増加によって,活動電位第

2

相の 貫壁性電位勾配が増加することであると考えられている

381)

1998

年,心筋

Na

+チャネル α サブユニット遺伝子

SCN5A

変異が同定されて以来,これまでに

300

種近く の変異が報告され(

BrS1

),そのほかにも

6

種類の原因遺 伝子(

BrS2

7

が知られている(表15)2,382).変異

Na

チャネルを培養細胞などに発現させてその電流を測定す ると,そのほとんどはゲート機構の異常,またはチャネル 蛋白の細胞膜への輸送(

membrane trafficking

によって

Na

+電流量が減少または消失している(

loss-of-function

).

この異常は活動電位

0

相の急速な立ち上がりを担う内向

6. 

遺伝子診断 

表14  Brugada症候群における臨床心臓電気生理学的検 査の適応

クラスI ・coved 型Brugada 心電図(薬剤負荷後を含む)を 呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動は確認 されていないが,失神,  めまい,  動悸などの不整 脈を示唆する症状を有する.

・coved 型 Brugada 心電図(薬剤負荷後を含む)を 呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動は確認 されておらず,また失神,  めまい,  動悸などの不 整脈を示唆する症状はないが,若年〜中年者の突 然死の家族歴がある.

クラスIIa ・saddlebackBrugada心電図を呈する患者で,

多形性心室頻拍・心室細動は確認されていないが,

失神,  めまい,  動悸などの不整脈を示唆する症状 を有する.

・saddlebackBrugada心電図を呈する患者で,

多形性心室頻拍・心室細動は確認されておらず,

また失神,  めまい,  動悸などの不整脈を示唆する 症状はないが,若年〜中年者の突然死の家族歴が ある.

 Brugada 心電図(coved 型およびsaddleback 型)

を呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動が確 認されているが,植込み型除細動器の植え込みが 困難な症例における心臓電気生理学的薬効評価(レ ベルB).

クラスIIb ・Brugada 心電図(coved 型およびsaddleback 型)

を呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動の記録,

不整脈を示唆する症状,若年〜中年者の突然死の 家族歴,のいずれも認めない場合.

・Brugada 心電図(coved 型およびsaddleback 型)

を呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動が確 認されている.

Na

+電流を抑制し,さらにそれに引き続く

1

相の

I

toを 相対的に増加させる.

SCN5A

Brugada

症候群患者の最多の原因遺伝子

BrS1

だが,変異の検出率は約

20

%にすぎない382).また,

SCN5A

陽性の家系内でも,遺伝子型と表現型が完全に一 致しているわけではなく,心電図異常のないキャリアや,

典型的な

Brugada

心電図を有する非キャリアの存在する

例も知られている383).したがって,

Brugada

症候群の病因 として,

SCN5A

以外の遺伝子や未知の修飾遺伝子を含む 遺伝的背景 や環境要因の関与を考慮する必要がある.

SCN5A

変異キャリアと非キャリアを比較すると,体表 心電図

PQ

時間と心内心電図

HV

時間が長く,

Na

チャネ ル遮断薬投与時の

PQ

時間,

QRS

時間の延長幅が大きい という特徴がある384).また,

Brugada

症候群に合併の多い 心房細動については,

SCN5A

キャリアでは心房伝導時間 が長く心房細動誘発性が高いが,心房細動の自然発生や臨 床的重症度とは関連のないことが判明している77).また本 症の突然死のリスク評価には,失神などの症状,突然死の 家族歴,心臓電気生理学的心室細動誘発試験,心房細動の 有無,加算平均心電図,

V1

誘導の

S

波の幅など,さまざま な要因が考慮されるが,

SCN5A

変異の有無は心室細動や 心房細動の予後予測因子にはならない61,74)

Brugada

症候 群の遺伝子解析の診断的意義は大きいが,リスク層別化を 含む臨床的意義については,少なくとも現時点では限定的 であるといわざるをえない

.

一方,日本人全体の

0.1

0.2

%に認められる無症候性

Brugada

症候群(または

Brugada

型心電図)は,有症候性 群に比較して一般に予後は良好であるが,そのなかからハ イリスク症例を選別し突然死を予防することは重要であ る.しかし,無症候性

Brugada

症候群の

SCN5A

変異頻度

やその長期予後に関する十分なデータはなく,今後の研究 が期待される.

SCN5A

変異は,

gain-of-function

を示す変異が

3

型先 天性

QT

延長症候群(

LQT3

に同定されているほか,進 行 性 心 臓 伝 導 障 害(

progressive cardiac conduction defects

PCCD

),洞不全症候群,先天性房室ブロック,乳 幼児突然死症候群,拡張型心筋症などにも報告されてい る.これらは

SCN5A

を共通の原因遺伝子とするアレル疾 患 心筋

Na

チャネル病 と総称される.

SCN5A

のプロモータ領域に

6

個の一塩基多型(

SNP

があり,連鎖不均衡によって遺伝子型(ハプロタイプ)は ほぼ

2

種類(

HapA

HapB

に限定される385)

HapB

は日 本人の約

25

%にみられるが白人や黒人にないハプロタイ プで,

SCN5A

の転写活性が低下する.したがって,東ア ジアで罹患率が高い

Brugada

症候群の病因に

HapB

が関 与している可能性がある.

Brugada

症候群には

SCN5A

を含めこれまでに

7

つの 原因遺伝子(

BrS1

7

が報告されている(表15).第

2

の原因遺伝子

BrS2

glycerol-3 phosphate dehydrogenase like

GPD1L

386),変異は

Na

+チャネルのトラフィッ キングを阻害する387).続いて,

QT

短縮を合併した

Brugada

症候群家系に

Ca

2+チャネル α

1

サブユニット

CACNA1C

),β

2

サブユニット(

CACNB2b

の変異

が報告された388).その後,少数例ではあるが,

BrS5

SCN1B

389)

BrS6

KCNE3

390)

BrS7

SCN3B

391)が報

告されている.また,

Ca

2+チャネル α

2

δ サブユニット

CACNA2D1

392),ペースメーカチャネル

HCN4

393)

Brugada

感受性遺伝子

MOG1

394)後述する早期再分極症

候群の原因遺伝子でもある

K

ATPチャネル

Kir6.1

サブユ ニット(

KCNJ8

395) にも変異が同定され,関連遺伝子の リストはさらに拡大すると予想される.

Brugada

症候群の類似心電図として

QRS-ST

接合部の 上昇,すなわち早期再分極パターンがある.これは低体温 の際にみられる

Osborn

波としてもよく知られているが,

表15  Brugada症候群の原因遺伝子

サブタイプ 遺伝子 蛋白 遺伝子座 障害される電流 電流の効果 頻度 OMIM

BrS1 SCN5A Nav1.5 3p21 Na(INa 約 20% 601144

BrS2 GPD1L GPD1L 3p22.3 Na(INa 611777

BrS3 CACNA1C Cav1.2 α1C 12p13.3 LCa(ICa-L 611875

BrS4 CACNB2b Cav1.2 β2b 10p12 LCa(ICa-L 611876

BrS5 SCN1B Navβ1 19q13.12  Na(INa 600235

BrS6 KCNE3 MiRP2 11q13.4  一過性外向きK(Ito 613119

BrS7 SCN3B Navβ3 11q24.1 Na(INa 613120

:Online Mendelian Inheritance in Man(www.ncbi.nlm.nih.gov/omim)登録番号.

ドキュメント内 098青沼班GL念校0507.indd (ページ 34-38)

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