第 5 章 しきい値と Eye Width に関する検討
5.1 Binary 信号伝送波形と PAM-4 信号伝送波形の考察
PAM-4信号は(0,1,2,3)の4レベルであるため1レベルを表す振幅の値はBinary信号
の1/3となる(図5-1)。しかしBinary信号の2ビットを1つのシンボルとして表現する ため、Binary信号の1ビットが1UI(UI: Unit Interval)であるのに対し、PAM-4信号 の1シンボルは2UIとなる。そのため高速信号伝送に適しているが、アイの時間方向の開
きであるEye Widthについて考えるとUIがBinary信号の2倍になるのに対して、Eye
Widthは2倍にはならない。
例として、20dB/dec、時定数0.6 ∗ 10−9のRC回路でモデル化した伝送路に信号振幅 3[V]・ビットレート1[Gbps]のBinary信号と、そのBinary信号を4値化したPAM-4信 号を入力した場合のそれぞれのEye Widthの値を、論理レベルの遷移式から関係式を導出 し、確認する。図5-2がBinary信号のRC回路通過後のアイパターンであり、図5-3は
PAM-4信号のRC通過後のアイパターンである。
図5-1 Binary信号とPAM-4信号
1
1 3 1 3 1 3
Binary PAM-4
0 1
0 3
1
2
33
図5-2 Binary信号のアイパターンとEye Width
図5-2より、Binary信号のEye Widthは式5-1で表される。
𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = (𝑈𝐼 + 𝑇2) − 𝑇1…(5-1)
𝑇1は論理レベル0から論理レベル1への遷移と論理レベル1から論理レベル0への遷移 の交点であり、伝送線路の時定数をRCとすると式5-2、式5-3より式5-4のように表す ことができる。
論理レベル0→論理レベル1・・・𝑉(𝑡)= 3 (1 − 𝑒−𝑅𝐶𝑡)…(5-2)
論理レベル1→論理レベル0・・・𝑉(𝑡)= 3𝑒−𝑅𝐶𝑡…(5-3)
𝑇1= −𝑅𝐶 ∗ 𝑙𝑛12…(5-4)
定常状態においては、𝑇2も𝑇1と同様に導出でき、その値は𝑇1と等しくなる。よって、
Binary信号のEye Widthは式5-5となる。
𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = (𝑈𝐼 + 𝑇2) − 𝑇1 𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = (𝑈𝐼 − 𝑅𝐶 ∗ 𝑙𝑛1
2) + 𝑅𝐶 ∗ 𝑙𝑛1 2 𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = 𝑈𝐼…(5-5)
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図5-3 PAM-4信号のアイパターンとEye Width
図5-3より、PAM-4信号のEye Widthは式5-1で表される。
𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = (𝑈𝐼 + 𝑇2) − 𝑇1…(5-1)
𝑇1は論理レベル0から論理レベル2への遷移と論理レベル3から論理レベル1への遷移 の交点であり、式5-6、式5-7より式5-8のように表すことができる。
論理レベル0→論理レベル2・・・𝑉(𝑡)= 2 (1 − 𝑒−𝑅𝐶𝑡)…(5-6)
論理レベル3→論理レベル1・・・𝑉(𝑡)= 1 + 2𝑒−𝑅𝐶𝑡…(5-7)
𝑇1= −𝑅𝐶 ∗ 𝑙𝑛34…(5-8)
𝑇2に対しても同様に、論理レベル1から論理レベル3への遷移と論理レベル2から論理 レベル0への遷移の交点であり、式5-9、式5-10より式5-11のように表すことができ る。
論理レベル1→論理レベル3・・・𝑉(𝑡)= 2 (1 − 𝑒−𝑅𝐶𝑡) + 1…(5-9)
論理レベル2→論理レベル0・・・𝑉(𝑡)= 2𝑒−𝑅𝐶𝑡…(5-10)
𝑇2= −𝑅𝐶 ∗ 𝑙𝑛14…(5-11)
求めた𝑇1、𝑇2より、PAM-4信号のEye Widthは式(5-12)となる。
𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = (𝑈𝐼 + 𝑇2) − 𝑇1
35 𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = (𝑈𝐼 − 𝑅𝐶 ∗ 𝑙𝑛1
4) + 𝑅𝐶 ∗ 𝑙𝑛3 4 𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = 𝑈𝐼 − 𝑅𝐶 ∗ 𝑙𝑛3…(5-12)
以上より、それぞれのEye Widthは
式(5-5)・・・𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = 𝑈𝐼
Binary信号のEye width・・・𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = 1[𝑛𝑠𝑒𝑐]
式(5-12)・・・𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = 𝑈𝐼 − 𝑅𝐶 ∗ 𝑙𝑛3 𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = 2 − 0.6 ∗ 10−9∗ 𝑙𝑛3
PAM − 4信号のEye width・・・𝐸𝑦𝑒 𝑊𝑖𝑑𝑡ℎ = 1.34[𝑛𝑠𝑒𝑐]
式5-5、式5-12から分かるように、定常状態におけるBinary信号のEye Widthは時定
数RCによらない。一方PAM-4信号のEye Widthは定常状態においても時定数RCの影 響を受ける。これによりBinary信号のEye Widthが1[nsec]であるのに対して、PAM-4信
号のEye Widthは2倍の2[nsec]にはならずに1.34[nsec]になる。これをふまえて、本研究
ではPAM-4信号の時間方向のマージンを最大限に活かせる信号判別方法について検討する
ことで、高速信号通信においてPAM-4信号をより効率よく伝送できないか考えた。
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