第 3 章 研究方法
3.1.3 Bi-2223 単結晶の熱処理
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3.2 理論計算によるフィッティング
理論計算によるフィッティングは、2つのステップによって行った。ま ずはじめに、ゼロ磁場のab面内抵抗率ρabの、超伝導ゆらぎの影響が大き
い Tconset 近 傍 の 領 域 に お け る 実 験 デ ー タ を 二 次 元 系 の
Aslamazov-Larkin(AL)項[45]を導入し、再現できるかを調べた。超伝導ゆら ぎの影響を除いた抵抗率ρnを、
𝜌𝑛(𝑇) = 𝑎𝑇 + 𝑏 𝑎, 𝑏は定数 (3.1)
と仮定すると、ゆらぎの効果を除いた伝導度は、逆数をとって、
σn = ρ𝑛−1 (3.2) となる。2次元の AL項は、
σ2𝐷−𝐴𝐿 = 𝑒2
16ℏ𝑑𝜖−1 (3.3) で与えられる[45]。ここで、
𝜖−1 = ln ( 𝑇
𝑇𝑐0) ≈ 𝑇 − 𝑇𝑐0
𝑇𝑐0 (3.4)
であり、(3.3)式は T → Tc で∞に発散する。Tc0は平均場転移温度である。
また、d は CuO2面間の間隔として、XRD 実験から見積もることができ、
Bi-2212の場合は15.4 Å、Bi-2223の場合は18.5 Åという値を適用した。
2次元のAL項σ2D-ALを考慮したゼロ磁場のρabの理論値は、
ρ𝑎𝑏,𝑇ℎ−0𝑇 = ρ 1
𝑛−1+σ2𝐷−𝐴𝐿 (3.5)
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として求めることができる。各試料毎のゼロ磁場の実験値に対して、この 式を用いてフィッティングを行い、平均場転移温度 Tc0と、超伝導ゆらぎ の効果を除いた常伝導の「裸の抵抗率ρn」を見積もった。これらのパラメ ータは、磁場中抵抗の実験データに対するフィッティングでも使用する。
2つ目のステップでは、Ikedaらが導いた理論式[38]を用いて、磁場中ab 面内抵抗率転移における Tconset近傍の実験データを再現するような超伝導 パラメータ(面内コヒーレンス長 ξabと比熱の飛び ΔC)を調べた。その他の 2つのパラメータについて、理論中の C-factor は、現実の結晶において不 純物等の影響で実験値がずれる(大きくなる)場合に、伝導度の値を割り算 する(実験値/C)形で用いるパラメータ[46]であるが、本論文中では全て 1 という値でフィッティングできた。これはすなわち、本研究で用いた単結 晶が、不純物の影響のない極めて高品質なものだったためと考えられる。
また、面間コヒーレンス長ξc ( << d )は、全て0.1 Å という値にした。これ は実験的に見積もられるオーダー[47]に近く、また、多少変化させてもフ ィッティング結果に影響しなかった。以下に使用した式を記述した。
CuO2面に対して垂直に磁場を印加したときのゆらぎ伝導度は、
𝜎𝑓𝑙 = 𝜎0𝑓𝑙 + 𝛿𝜎𝑓𝑙 (3.6)
で与えられる。本研究で扱う磁場中抵抗率転移(Tc付近)の温度域では、非 Gaussian 項と呼ばれる(3.6)式の第二項(δσfl)の、ゆらぎ伝導度全体(σfl) への相対的な寄与は薄弱であることが分かっており[38]、計算する際には 無視した。また、
𝜎0𝑓𝑙 = 𝑒2
2ℏ𝜁𝑐ℎ2∑ 𝑛 + 1
(𝜇𝑛+1𝑅 − 𝜇𝑛𝑅)2(𝑓𝑛 + 𝑓𝑛+1− 2𝑓𝑛+1
2) (3.7)
∞
𝑛=0
𝑓𝑛 = 1
√𝜇𝑛𝑅(1 + 𝑑2 4𝜉𝑐2𝜇𝑛𝑅)
(3.8)
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𝑓𝑛+1
2 = 1
√12(𝜇𝑛𝑅+ 𝜇𝑛+1𝑅) (1 + 𝑑4𝜉2𝑐21
2 (𝜇𝑛𝑅+ 𝜇𝑛+1𝑅))
(3.9)
である。ここで、hは、電子対のCuO2面内における広がり(面内コヒーレ ンス長)ξabと、電子対のサイクロトロン半径r0 (3.10式)
𝑟0 = √ 𝜙0
2𝜋𝐵 (3.10)
との関係から、
h = (𝜉𝑎𝑏2 𝑟0 )
2
(3.11)
と与えられる。また、μnRは、n 番目の Landau 準位におけるくりこみ質量 である。これは、より下のLandau 準位のくりこみ質量μ0Rを用いると、近 似的に記述することができる。
𝜇𝑛𝑅 ≈ 𝜇0𝑅+ 2nh (3.12)
𝜇0𝑅 = 𝜇0+ 𝑔3
√𝜆(𝛽02− 1)+𝜆√𝛽02− 1 8𝛽0
× [ln𝛾+
𝛼++ 𝛼 − 𝛽0
√𝛽02− 1
× ln (𝛽0𝛾 + √(𝛽02− 1)(𝛾2− 1) − 1
𝛽0𝛼 + √(𝛽02− 1)(𝛼2− 1) − 1)] (3.13)
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ここで、μ0は、(3.4)式を用いて、
𝜇0 = ϵ + h (3.14)
であり、α、γ、α+、γ+、β0、λ、g3はそれぞれ、
α = 2𝛽02− 1 (3.15)
γ = α + 8𝑔3𝛽0
√𝜆3(𝛽02− 1) (3.16)
𝛼+ = α + √𝛼2− 1 (3.17)
𝛾+ = γ + √𝛾2− 1 (3.18)
𝛽0 = 1 +2
𝜆𝜇0𝑅 (3.19)
λ = (2𝜉𝑐 𝑑 )
2
(3.20)
𝑔3 = 𝑘𝐵
∆𝐶 𝐵
𝜙0𝜉𝑐 (3.21)
である。以上により、磁場中におけるρabの理論値を、
ρ𝑎𝑏,𝑇ℎ−𝐻⊥𝑎𝑏 = 1
ρ𝑛−1+ 𝜎𝑓𝑙 (3.22) として求めることができる。
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フィッティングをする際、特にΔCの値がどうなるかが重要であること が分かった。比熱の飛び ΔC はフェルミエネルギーEF 近傍の状態数 N(0) と密接に関係しており、超伝導転移に伴い増大する伝導度の全体的な大き さを決めるパラメータである。よって、ΔCの大小はTconset近傍の実験値に 大きく影響する。フィッティングでは、まずΔCの大体の傾向を見積もっ た。そして、実験値を良く再現するような ξabの様々な値の場合を計算す ることで、これらのパラメータの組み合わせ調べた。以上のプロセスを経
て、Bi-2212と Bi-2223において広くホール濃度を変化させた時の、ΔCと
ξabの変化を系統的に評価した。これらの超伝導パラメータのホール濃度p 依存性、CuO2面数nとの関係、Tcとの関係を議論する。
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