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● インフリキシマブは結核感染(再活性化を含む)の機会を増加させる: B(海外Ⅳa;8)

● インフリキシマブ投与患者にリンパ腫を含む悪性腫瘍の発症が報告されている: B(海外Ⅳa;8)

● アダリムマブ投与患者における全般的発癌率は一般人口と差がないようである: C1 (海外Ⅴ;8)

【解説】

 CDの治療に,メトロニダゾー ルやシプロフロキサシンなどの抗菌薬を用いる場合がある.活動期CDに対す る抗菌薬の有効性について複数のランダム化比較試験が行われ,臨床症状の改善に有効であることが示され

ている27-30).病変部位別の比較では,小腸病変より大腸病変に対して有効性が高いとされる30).さらに術後再

発の防止における抗菌薬投与の有効性を示す報告もある31).しかしCDに対する抗菌薬療法の適応や具体的 な治療法は確立していないのが現状である.

 なお抗菌薬を長期間使用する場合は副作用に対する注意が必要で,特にメトロニダゾー ルは末梢神経障害 をきたすことがある.

【解説】

 インフリキシマブに関するメタ分析によれば,重症感染症の発症率はインフリキシマブとプラセボで有意差 がない15).6000人を超えるTREAT登録前向き調査の多変量解析から, 重症感染症を増加させる要因はイン フリキシマブの使用ではなく,ステロイド,麻薬性鎮痛薬の使用とCDの重症度であるとされている20).また,

複数の免疫調節薬の併用と高齢が日和見感染のリスクを増加させることが示されている21)

 しかしインフリキシマブは結核感染の再活性化あるいは発症を増加させることが知られている.さらに肺外 病変や播種性結核が多いことも知られている22).投与開始前に結核感染のスクリーニングを行い,必要に応じ て抗結核薬の予防投与を行うべきである.

 同じくTREAT登録調査によれば,インフリキシマブ投与を受けた患者に腸管狭窄の悪化が多くみられたが,

多変量解析により危険因子と判断されたのは,罹病期間,重症度,小腸病変,新規ステロイド治療のみであっ た23).インフリキシマブ投与と狭窄の発生には肯定的な論文は少ないが,臨床的には治療開始後に狭窄の悪 化や閉塞が起こる危険はあることを患者に説明し,外科との連携を図っておくことが肝要である.

 さらにTREAT登録調査から,リンパ腫を含む悪性腫瘍の発症率は,インフリキシマブ投与群と非投与群で 差がなかった24).またイタリアで行われた多施設matched pair比較試験でも同様の結果が得られた25).しかし いずれも観察期間がまだ十分に長くないため,インフリキシマブ治療開始前にこのリスクに関して患者と十分 に話し合うべきである.

 関節リウマチ,CDなどの免疫6疾患に関する36の臨床試験においてアダリムマブが投与された約2万人の対象 患者における10年間の有害事象発生率が報告されている26).CD患者では腹腔内あるいは消化管関連の膿瘍や日 和見感染の発生が認められたが,全般に大きな感染リスクは生じていない.また発癌率は一般人口と同等であった.

 ただしこれらの有害性はインフリキシマブとアダリムマブで違いがあるというのではなく,抗TNF製剤に共通し た有害性ととらえるべきである.

Ⅳ-7. 経腸栄養療法

CQ8 . 経腸栄養療法にはどのような有益性・有害性があり,

適応をどう考えるのか?

32-39)

CQ9 . 消化態栄養剤と半消化態栄養剤の治療効果に差はあるのか?

32, 33, 40, 41)

CQ10. 経鼻チューブを用いた経腸栄養剤の投与はどのようなときに必要なのか?

● 活動期CDに対する経腸栄養療法の寛解導入効果は,副腎皮質ステロイド剤と同等かやや劣 る: A(日本Ⅲ・海外Ⅰ;8)

● 成分栄養療法はCDの寛解維持に有効である: A(日本Ⅱ;8)

● 経腸栄養療法は安全面で優れているが,受容性の維持が難しい場合が多い: C1(日本Ⅵ;8)

● 活動期CDに対する寛解導入効果は,消化態栄養剤と半消化態栄養剤で差を認めない: A(日 本Ⅲ・海外Ⅰ;7)

● 経腸栄養剤を一定速度で投与したい場合,経口摂取が難しい場合,在宅で夜間睡眠中に経 腸栄養剤を投与したい場合などに必要になる: C1(日本Ⅵ・海外Ⅵ;8)

【解説】

 活動期CDに対する経腸栄養療法の寛解導入効果は, 副腎皮質ステロイド剤とほぼ同等かやや劣ることが 複数のランダム化比較試験で示されている32-36).なお日本の報告では,成分栄養剤による経腸栄養療法のほ うが寛解導入率は高く,特に腸管病変の改善に優れている36).また副腎皮質ステロイド剤より経腸栄養療法 のほうが安全性は高い.

 経腸栄養療法にはCDの寛解維持効果もあり, 総摂取カロリーの半分を成分栄養剤で摂取すれば寛解維持 に有効であることが示されている37).さらに1日30kcal/kg以上の成分栄養療法の継続が再発防止に有効であ ることも報告されている38, 39).しかし長期にわたり経腸栄養療法を継続することは,患者の受容性が低下し困 難な場合が少なくない.

【解説】

 消化態栄養剤はアミノ酸やオリゴペプチドを窒素源とし脂肪の含有量が少ない経腸栄養剤であるため,腸 管での消化吸収が容易である.消化態栄養剤のなかで成分栄養剤は,窒素源がアミノ酸で脂肪をほとんど含 まない.半消化態栄養剤は蛋白質を窒素源とし,脂肪もある程度含有する経腸栄養剤である.半消化態栄養 剤のほうが,各種栄養素がバランスよく配合され,経口摂取も容易である.活動期CDに対する各種経腸栄養 剤の治療効果の差異については多くのランダム化比較試験がなされ,消化態栄養剤と半消化態栄養剤の寛解 導入効果に明らかな差を認めないことが示されている32, 33, 40, 41).わが国では,半消化態栄養剤より消化態栄養 剤が臨床的に優れるとの意見もある.

【解説】

 CDに対する経腸栄養剤の投与は,経口的に摂取する方法と,経鼻チュ ー ブを胃または十二指腸へ挿入し て行う経管法とがある.味がよくない消化態栄養剤は経口摂取が難しいため,経管法で投与する場合が多い.

また,経腸栄養ポンプを用い経鼻チュ ー ブから一定速度で経腸栄養剤を投与したほうが,下痢や腹痛などの 副作用が少ない.なお在宅で経腸栄養療法を行う際に,夜間睡眠中に経鼻チューブを介して経腸栄養剤を投 与することができる.

Ⅳ-8. 経静脈栄養療法

Ⅳ-9. 血球成分除去療法

CQ11. 経静脈栄養療法にはどのような有益性・有害性があり,

適応をどう考えるのか?

1, 41-44)

CQ12. 血球成分除去療法にはどのような有益性・有害性があり,

適応をどう考えるのか?

45)

● 活動期CDで,著しい栄養低下,頻回の下痢,広範な小腸病変の病勢が重篤な場合,腸管の 高度狭窄,瘻孔,膿瘍形成,大量出血,高度の肛門部病変などを有する場合は,絶食のうえ 完全静脈栄養療法を行う: C1(日本Ⅵ・海外Ⅵ;8)

● 活動期CDの寛解導入に完全静脈栄養療法は有効であり, 経腸栄養療法と同等の治療効果 を有する: B(日本Ⅲ・海外Ⅲ;8)

● 完全静脈栄養療法を行う際には,敗血症や肝機能障害などに注意が必要である: C1 (海外Ⅴ;8)

● 薬物療法や栄養療法が無効あるいは適用できない大腸病変のある活動期のCDにおいて,顆粒 球単球除去療法(GMA)の併用は,寛解導入を促進できる可能性がある: C1(日本Ⅴ;7)

【解説】

 CDに対する中心静脈からの完全静脈栄養療法(total parenteral nutrition:TPN)の適応については,厚生労 働省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班のクローン病治療指針改訂案に記載されている1).しかし,実 際には個々の患者の病状に応じて栄養法を選択する必要がある.経静脈栄養療法の中でもTPNは,活動期CD に対して成分栄養剤などを用いた経腸栄養療法と同等の寛解導入効果を有することが,複数のランダム化比 較試験により明らかにされている41, 42).またTPNを行うことで腸管病変の改善も得られる41, 43).TPNにより病 状が安定すれば,経腸栄養療法などに移行する.

 なお中心静脈からTPNを行う際には,カテーテル感染に伴う敗血症や肝機能障害などを合併する場合があ る.特に在宅中心静脈栄養療法を継続している患者では,ポート部に感染すると敗血症へ進行する危険性が 高く注意が必要である44)

【解説】

 血球成分除去療法は,すでに国内ではUCの有用な治療法の一つとして定着している.CDに対しては既存 の薬物療法や栄養療法不応21例において顆粒球単球除去療法(GMA)の併用効果が検討され,27.8 %で寛解

(CDAI値150未満)が得られ,16.7%で改善(CDAI値50以上の減少)が認められた45).2010年に大腸病変のあ るCDに対する適応追加が国内承認された.有害事象として頭痛,めまい,動悸などの自覚症状や,非特異的 な軽度の検査値異常が報告されているが,概して安全な治療法と考えられている.

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