6.3 相転移の動的観察
6.3.1 Alc18 の結晶構造変化
DSC-XRD同時測定により得られた冷却過程におけるAlc18薄膜のXRDプロファイ
ルの温度変化をFig.6-3に示す。下から上に温度は低温になる。aが等方性液体状態で、
冷却に伴いb の範囲でα 晶が結晶化し、c の範囲でα晶から晶へと固相転移し、構造 変化を観察することができた。Fig.6-4に示したDSC曲線から固相転移の発熱ピークが ダブルピークになったが、ピークの谷間の部分で回折パターンの顕著な差はないため、
試料のかたよりによる影響であると考えられる。冷却に伴う各結晶ピークの強度変化を
Fig.6-5 に示す。57℃付近で α 晶が結晶化し温度低下とともにピーク強度は減少した。
固相転移温度付近でα 晶のピーク強度が減少すると同時に晶のピークが立ち上がり、
数℃の範囲ではα晶と晶が共存していた。そしてα晶のピーク強度減少に伴い晶のピ ーク強度が増加し、最終的にα晶のピークは消失した。
Intensity(cps
2Theta(deg
a b
c
Fig.6-3 XRD profile change on cooling
Heat Flow(mW)
Time(min)
Fig.6-4 DSC curve on cooling
0 100000 200000 300000 400000 500000 600000
46 48 50 52 54 56 58
I / cps
T / ℃
αd(003) γd(003)
Fig.6-5 Temperature dependence of peak intensity on cooling
69
昇温過程における Alc18 薄膜の XRD プロファイルの温度変化を Fig.6-6 に示す。
晶からα晶への固相転移と、α晶の融解が確認できた。aからbの変化でα晶のピーク が立ち上がり、cの融液状態では結晶ピークは完全に消失した。Fig.6-7に示したDSC 曲線を見ると、固相転移と融解は連続的に起きているが、固相転移と融解における構造 変化を確認することができた。Fig.6-8に示した各結晶ピークの強度変化からα晶から
晶への固相転移後、0.5℃以内と狭い温度範囲内でα晶はすぐに融解した。
Intensity(cps)
2Theta(deg)
a b c
Fig.6-6 XRD profile change on heating
Heat Flow(mW)
Time(min)
Fig.6-7 DSC curve on heating
0 50000 100000 150000 200000 250000 300000
55 56 57 58 59 60 61
I / cps
T / ℃
αd(003) γd(003)
Fig.6-8 Temperature dependence of peak intensity on heating
70 6-3-2. Alc17の結晶構造変化
冷却過程におけるAlc17薄膜のXRDプロファイルの温度変化とDSC曲線をそれぞ
れFig.6-9、Fig.6-10に示す。53℃付近でα晶が結晶化し、46℃付近でα晶から固相転
移すると、β晶のピークと同時にα晶にもβ晶にも帰属できない新規のピークが現れた。
Fig.6-11に示した各結晶ピークの強度変化を見ると、初めβ晶と新規の2つのピーク強
度はほぼ同じであったが、温度降下に伴いβ晶のピーク強度が増加するのに対し、新規 のピークは徐々に弱くなりβ晶のピーク強度が一定になったところで消失した。
この結果より、α晶からβ晶に固相転移する際にβ晶とは異なる新規の結晶相が存在 することが示唆された。またこの新規結晶相はサイズが小さい微結晶で、高次ピークま で見えていることからある程度積層した構造であると考えられる。
0 50000 100000 150000 200000 250000 300000 350000 400000
38 40 42 44 46 48 50 52 54
I / cps
T / ℃
Fig.6-11 Temperature dependence of peak intensity on cooling
Heat Flow(mW)
Time(min)
Fig.6-10 DSC curve on cooling Intensity(cps )
2Theta(deg)
Fig.6-9 XRD profile change on cooling
71
昇温過程におけるAlc17薄膜のXRDプロファイルの温度変化をFig.6-12に示す。β 晶から α 晶への固相転移と α 晶の融解に伴う結晶構造変化が観察された。DSC 曲線
(Fig.6-13)ではAlc18薄膜とは異なり2つのピークが分離し、固相転移と融解の2つの
吸熱ピークが明瞭に観察された。またFig.6-14に示した各結晶ピークの強度変化からα 晶の強度減少に伴うβ晶の強度の増加を確認し、数℃の狭い範囲で固相転移・融解とも に進行していることがわかった。
0 50000 100000 150000 200000 250000 300000 350000
48 50 52 54 56 58
I / cps
T / ℃
αd(003) βd(003)
Intensity(cps)
2Theta(deg)
a b
c
Fig.6-12 XRD profile change on heating
Heat Flow(mW)
Time(min)
Fig.6-13 DSC curve on heating
Fig.6-14 Temperature dependence of peak intensity on heating
72
冷却過程における Alc17 バルク試料のXRD プロファイルの温度変化、DSC 曲線を
それぞれFig.6-15、Fig.6-16に示す。薄膜試料と同様に固相転移や結晶化に伴う結晶構
造変化を観察し、またα晶にもβ晶にも帰属できない新規のピークの存在を確認した。
つまり、薄膜試料・固体試料に関わらず新規結晶相が存在することがわかった。各結晶 ピークの強度変化(Fig.6-17)からは、薄膜試料と同様に新規結晶相が β 晶のピークと同 時に立ち上がり、β晶のピーク強度が一定になったところで消失することを確認した。
Heat Flow(mW)
Time(min)
Fig.6-16 DSC curve on cooling
0 200000 400000 600000 800000 1000000 1200000 1400000
40 42 44 46 48 50 52 54
I / cps
T / ℃
Fig.6-17 Temperature dependence of peak intensity on cooling
Intensity(cps
2Theta(deg
Fig.6-15 XRD profile change on cooling )
73 6-3-3. Alc16の結晶構造変化
冷却過程におけるAlc16バルク試料のXRDプロファイルの温度変化、DSC曲線をそ
れぞれFig.6-18、Fig.6-19に示す。α 晶の結晶化とα晶から晶への固相転移をそれぞ
れ観察した。またFig.6-20に示すようにAlc16ではすべてのα晶が晶へは固相転移せ ず、2つの結晶形が共存していることがわかった。α晶のピーク強度が減少し始めたと 同時に晶のピークが立ち上がり、そのまま温度を下げ続けても α 晶のピークは消失す ることなく一定の強度を保った。
Intensity(cps )
2Theta(deg)
Fig.6-18 XRD profile change on cooling
Heat Flow(mW)
Time(min)
Fig.6-19 DSC curve on cooling
0 50000 100000 150000 200000 250000 300000 350000 400000
40 42 44 46 48 50 52
I / cps
T / ℃
αd(003) γd(003)
Fig.6-20 Temperature dependence of peak intensity on cooling
74 6-3-4. Alc19の結晶構造変化
冷却過程におけるAlc19バルク試料のXRDプロファイルの温度変化をFig.6-21に示
す。Alc17と同様に、冷却に伴いα晶から固相転移する際にβ晶と同時に新規のピーク
が現れた。Fig.6-23に示した各結晶ピークの強度変化からもわかるように、β晶と新規 結晶相ピークは同時に立ち上がり、温度降下に伴いβ晶のピーク強度が増加するのに対 して、新規結晶相ピークは徐々に減少し消失した。またDSC曲線(Fig.6-22)からも固相 転移のピークがダブレットになっており2つ以上の現象を含むことが示唆された。この 新規結晶相のピークは、偶数アルコールでは観察されず奇数アルコールのみで観察され たため、奇数試料に特有の結晶相であることが明らかとなった。
Intensity(cps)
2Theta(deg)
Fig.6-21 XRD profile change on cooling
Heat Flow(mW)
Time(min)
Fig.6-22 DSC curve on cooling
0 50000 100000 150000 200000 250000 300000
46 48 50 52 54 56 58 60 62 64
I / cps
T / ℃
Fig.6-23 Temperature dependence of peak intensity on cooling