第 3 章 クレズマー音楽の旋律構造の分析
D- Ahava Rabboh
Section A
Section B
G-Mogen Ovos
G-Mi Sheberach
Section C
D-Ahava Rabboh
① ②
③ ④
⑤ ⑥
① ②
③ ④
① ② ③ ④
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Aセクションの最後には比較的短い山形の旋律線:⑤、⑥が反復されている。以上、Aセ クションは、①②、③④、⑤⑥と、すべての旋律線が2回ずつ繰り返されて全体が構成さ れている。
Bセクションは四つの旋律線を持つ。最初の旋律線:①は中心音(G4)から高い第5音
(D5)まで5度上がる上行形を作る。2番目の旋律線:②は第5音(D4)から始まり跳躍 上行した後、一オクターブ上の第5音(D5)から中心音(G4)に向けて下行し、その後第 2音(A4)に上がり終止する。後半の旋律線(③、④)は前半部の旋律線(①、②)を変 形反復したものである。3番目の旋律線:③は最初の旋律線:①の音高を2度上げ、すべ て順次進行で動く5度の上行形である。4番目の旋律線:④は②の冒頭の跳躍上行を省い た下行形を繰り返したものであり、それに続いて再び第5音(D5)から中心音(G4)への 下行形が現れる。この5度下行を2回連続することにより中心音(G4)へ落ち着く終止感 が強められていると思われる。以上、Bセクションは①②と③④によって作られる山形の 旋律線を変形を加えて繰り返す構成になっている。
C セクションは四つの旋律線(①~④)を持つ。旋律線:①は第5 音(A4)から始まり 中心音(D4)へ下行する。②の旋律線は中心音(D4)から波打ちながら高い中心音(D5)
へ上がる波形である。続く後半部では、最初の旋律線(①)の変形反復:③の後に、山形 の旋律線:④が組み合わさっている。④は低い第6音(B3)から始まり第4音(G4)まで 上行した後、中心音(D4)へ下行して落ち着く。
以上、シュワルツのマーズル・トーヴの旋律の動きをまとめると、
1)Aセクションには波形や山形の旋律線を持つ3組の反復が現れる。これらが組み合わさ ってセクション全体で大きな山形の旋律線を形成している。
2)Bセクションは前半部の山形の旋律線を後半部で変形反復し、それぞれ大きな山形の旋 律線を持つ。
3)Cセクションは下行形の旋律線を基本とし、その後に波形と下行形という形状の異なる 2 種の旋律線を組み合わせる構成を持つ。そしてセクション全体で大きな波形の旋律線を 作っている。
この曲(演奏)はセクションの反復により、波形に上下する性質を保ちながら作られた 大きな山形と波形の旋律線を繰り返す。そして最後は山形のAセクションへ戻って終わる。
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3-1-2-4 フン・デル・フペ エレンクリッグ
エレンクリッグのフン・デル・フペは三つのセクション(A、B、Cセクション)を持つ
(図 1-3-4)。セクションの構成は「AABBCCAABBCCAA’」である。この曲(演奏)の旋
法はAモゲン・オヴォス旋法とEアハヴァ・ラボ旋法であり、それらを交互に繰り返して いる。
Aセクションの旋法はAモゲン・オヴォス旋法で始まり、後半はEアハヴァ・ラボ旋法 へ転旋する。最初の旋律線:①は第5音(E4)から始まり第3音(C5)へ上昇する上行形 を作る。この旋律は2回連続して同音高で反復される:②。2回目の反復:③の後に、中 心音(A4)を囲むように上下する緩やかな下行形が続く。Aセクションの後半は、前半を 2度下げて反復する構造である。その後半部の最後で、旋法はAモゲン・オヴォス旋法か ら E アハヴァ・ラボ旋法へ変化する。ただし旋律:④、⑤、⑥の開始音は音高を下げず、
旋律の中心音(E4)を維持している。
Bセクションの旋法はAセクションの後半を引き継ぎEアハヴァ・ラボ旋法で始まる。
旋律線:①は中心音(E4)から順次上行を始め、高い第2音(F5)に至る。その後、第6 音(C5)へ向けて順次下行する。Bセクションの後半部はAモゲン・オヴォス旋法へ戻る。
後半の旋律線:②は、第2 音(B4)から始まり第7 音(G4)を経由して中心音(A4)へ 至る、谷形の終止形を作る。この旋律は直後に反復される:③。最後のフレーズで再びE アハヴァ・ラボ旋法へ転旋する。この部分の旋律線:④は第7音(D5)で始まる下行形で あり、中心音(E4)で終わる。
Cセクションの旋法はBセクションの最終部を引き継ぎEアハヴァ・ラボ旋法である。
旋律線:①は第3音(G4)から始まり第5音(B4)へ上昇した後、中心音(E4)へ下行し、
再び第3 音(G4)へ上昇する波形を作る。2 番目の旋律:②は中心音(E4)から上行し、
第5音(B4)を頂点とする山形を作る。この旋律線は中心音(E4)で終わる。3番目の旋 律線:③は、最初の旋律線:①の同音高反復である。その後に②とは形が異なる、下降の 旋律線:④が続く。この下行は第7音(B4)で始まり、中心音(E4)で終わる。
この曲(演奏)の旋律形はAセクションが上行形と山形、Bセクションが高音域で緩や かな下行形と急な下行形、Cセクションは波形というように、それぞれの旋律線の形状が 対照を作っている。
エレンクリッグのフンデルフペの旋律線の動きをまとめると、
1)Aセクションは、上行を連続反復し3回目の反復で拡張する構成を持つ。セクション後
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半部は前半部の反復であり、全体で二つの山形を作る。
2)Bセクションは全体で大きな山形の旋律線を形成する。セクション後半では谷形の旋律 線の反復により、音の動きに変化が生まれている。
3)Cセクションは同一の波形に続き、山形と下行形という異なる形状の旋律線を組み合わ せた構成になっている。
以上、この曲(演奏)は山形の旋律を基調にし、中間部の波形の旋律で躍動感を作り出 し、最後は山形の旋律線を持つAセクションに戻って終わる。
図3-1-5 エレンクリッグのフン・デル・フペの旋律線と旋法
3-1-2-5 フン・デル・フペ ホフマン
ホフマンのフン・デル・フペは三つのセクション(A、B、Cセクション)を持つ。この 曲(演奏)のセクション構成は、「AABBCCAABBCCAABBCC’」である。曲(演奏)の最 後はCセクションで終わる。主旋法はG#モゲン・オヴォス旋法であり、BセクションでB アドノイ・モロフ旋法へ転旋する。またC セクションの一部でG#ミ・シェべラフ旋法が 出現する。
Aセクションの旋律線:①は、第5音(D#4)から始まり3度上行(初めのみ4度上行)