使用する ADS ライセンス:
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リニア・シミュレーション
はじめに:この章では、ADSのさまざまなウィンドウについて説明します。さらに、基本的なSパラメータ・シミュレ ーションを実行し、ローパス・フィルタ回路サンプルのリアルタイム・チューニングを行って、回路応答を調整する ためのADSの使用モデルについて解説します。
ADS入門:
ADS を開始すると、次のウィンドウが表示されます。これは ADS メイン・ウィンドウまたはプロジェ クト・ウィンドウと呼ばれます。ADS ではすべての情報がプロジェクト・ファイルに収められていて、
デザインの作成はすべて特定のプロジェクト内で行う必要があります。プロジェクトはいつでも開いて アクセスできます。
プロジェクトの作成
a. スケマティックまたはレイアウトの作成 b. 適切なシミュレーションのセットアップ
c. シミュレーションの実行(シミュレーション結果は、デフォルトでスケマティックと同 じ名前を持つデータセット・ファイルに記録されます)
d. データ・ディスプレイ・ウィンドウでのグラフのプロット
ADSを開始すると、ADSメイン・ウィンドウに図1に示す開始ダイアログが表示されます。
図1. ADSメイン・ウィンドウと開始ダイアログ
プロジェクトは、上図のように“Create a new project”オプションをクリックすることにより作成でき ます。クリックすると、次のウィンドウが表示され、プロジェクトの固有の名前と、レイアウトの作図 単位を指定できます。すべてのセットアップが正しく行われるように、レイアウト単位は必ずプロジェ クトの開始時に選択することをお勧めします。ただし、単位はレイアウトの作成後にも変更できます。
図2. ADSでの新規プロジェクトの作成
プロジェクトが正常に作成されると、スケマティック、レイアウト、データ・ディスプレイのアイコン が、下の図3のようにメイン・ウィンドウで強調表示されます。
図3. 新規プロジェクト・ビューを表示したウィンドウ
ADSファイル・ビュー:
デフォルトでは、すべてのプロジェクトの下に 5 つのフォルダが存在します。各フォルダの役割を次に 示します。
a. data:このフォルダは、すべてのデータセット・ファイル(シミュレーションの実行後
に作成されるファイル)を保存するために使用されます。
サンプル検索 スケマティック レイアウト データ・ディスプレイ
c. networks:このフォルダは、特定のプロジェクトの下で作成されるすべてのスケマティ ックおよびレイアウト・デザインを保存するために使用されます。
d. synthesis:このフォルダは、デジタル・フィルタ・シンセシスで用いられます。
e. verification:このフォルダは、DRC(デザイン・ルール・チェッカ)を実行した場合に、
検証結果を保持するために使用されます。
デザインを開始するには、図 3 に示すように、スケマティック・アイコンまたはレイアウト・アイコン をクリックします。スケマティックをクリックした場合は図 4、レイアウトをクリックした場合は図 5 のウィンドウが表示されます。
図4. デフォルトのSchematicウィンドウ ライブラリ・
パレット・
コンポーネント ファイル・
オプション
移動/コピー/
削除/アンドゥ
ズーム・
オプション
回転/
鏡映反転
ライブラリ ワイヤ シミュレート
図5. デフォルトのLayoutウィンドウ
注記:ADS の独自の機能として、スケマティックでデザインを開始し、デザイン同期を使用してレイア ウトを作成できます。また逆に、レイアウトから開始してスケマティックを作成することもできます。
例:ローパス・フィルタ回路のデザイン:
ADSで回路デザインを開始するには、図6のようにコンポーネント・ライブラリ・パレットからコンポ ーネントを配置します。
図6. ライブラリ・パレットからのコンポーネントの選択
コンポーネントを配置するには、目的のコンポーネントを選択してクリックします(配置するためにコ ンポーネントをクリックしてドラッグする必要はありません)。カーソルをコンポーネント配置領域に 持っていくと、十字線とコンポーネントのゴースト・イメージが下の図のように表示されます。
作図ユーティリティ
図7. 配置モードでのコンポーネント
ADS ではコンポーネントの複数配置が可能なので、1 回の選択で必要な場所を複数回クリックすること により、1 種類のコンポーネントを複数の場所に配置できます。終わったら、”Esc”を押して配置コマン ドを終了します。この練習では、3 個のインダクタを水平方向に配置し、1 個のキャパシタを選択して、
Ctrl+Rを押すことにより90°回転します。
図8. インダクタとキャパシタの配置
下の図のようにローパス・フィルタ回路を完成します。
図9. インダクタとキャパシタを使用したLPF回路デザイン
図10. コンポーネントを接続するためのワイヤ・アイコン
回路が完成し、コンポーネント同士が接続されたら、目的の回路応答をプロットするために、ADS で適 切なシミュレーションを実行するためのセットアップを行う必要があります。周波数ドメインで回路応 答を評価する最善の方法は、S パラメータを使用することです。ADS でこれを実現するには、S パラメ ータ・シミュレーションを実行します。
ADSでSパラメータ・シミュレーションを実行するには、次の2つの操作が最低限必要です。
a. スケマティック上に S パラメータ・コントローラを配置し、開始/終了周波数と掃引ポ イント数を指定します。
b. 必要な数の終端コンポーネントを接続します。
上記2つのステップは、下の図11に示すように、ADSライブラリのSimulation- S_Paramパレットを 使用して実行できます。
図11. ADSのパレット・ライブラリ・リスト
Simulation- S_Paramを選択すると、次のコンポーネントが表示されます。
図12. Sパラメータ・シミュレーション・コントローラ
図 12 に示す S パラメータ・コントローラをスケマティック上に配置し、それをダブルクリックしてパ ラメータ入力ダイアログ・ボックスを開き、下に示すようにパラメータを入力します。
図13. 掃引周波数範囲のセットアップ
図14. Sパラメータ・シミュレーション用の終端コンポーネント
上の図14に示すように、Termコンポーネントを使用して終端コンポーネントを入力と出力に配置しま す。完成したLPF回路は次の図のようになります。
図15. シミュレーション・コントローラと終端を配置して完成したLPF回路
ここで、下の図 16 に示すシミュレーション・ギア・アイコンをクリックするか、キーボードの“F7”を 押すことにより、回路シミュレーションを開始できます。
図16. シミュレーション開始アイコン
回路シミュレーションが終了すると、次のウィンドウが表示され、警告/エラー・メッセージとシミュ レーション終了情報を示します。エラーや警告は、ウィンドウの上半分に表示されます。
図17. シミュレーション・ステータス・ウィンドウ
シミュレーションが正常に終了すると、下の図 18 に示すように、データ・ディスプレイ・ウィンドウ が自動的に開きます。
図18. デフォルトのデータ・ディスプレイ・ウィンドウ
データ・ディスプレイ・ウィンドウには、さまざまな種類のグラフ、表などを使用して、必要な形式で 結果をプロットできます。この練習では、次に示すように、直交座標グラフを使用してフィルタの伝達 特性をプロットします。
図20. グラフ・ウィンドウのデフォルト・サイズの表示
マウスをクリックすると、下の図21のように、プロット可能な測定のリストが表示されます。
図21. プロットする結果の選択
この例では、下の図22および図23のように、S(2,1)を選択し、>>Add>>をクリックして、このLPFの 伝送応答をプロットします。さらに、単位としてdBを選択します。
図22. S(2,1)を選択 図23. 単位としてdBを選択
下のグラフは、このフィルタに関して得られたdB(S(2,1))応答です。
図24. LPFのdB(S(2,1))応答
ここでは、ライブラリ・パレットからコンポーネントを選択してスケマティック上に配置することでス ケマティックを作成し、単純な S パラメータ・シミュレーションを ADS で実行する方法を説明しまし た。これで、ADSの基本的なインタフェースと使用モデルがおわかりいただけたと思います。
上図からわかるように、結果はこのフィルタで期待される代表的なLPF応答と一致しないので、目的の 応答が得られるように回路をチューニングします。ADS にはリアルタイムのチューニング機能があり、
コンポーネントの値を変更して、応答をほぼリアルタイムで確認できます。このための手順を次に示し ます。
リアルタイム・チューニング:
下の図のように、ADSスケマティックでチューナ・アイコンをクリックします。