また,Ttを第
t期の変形とすれば,n期間
の政策というのは変形関数の系列{T,
T
,T
, ,T
}である。
t
期のシステムの状態をS
とすれ ば,t+1期のシステムの状態S
は,S と そのときにとった行動T
(S)によっての み決まるという仮定(マルコフ性の仮定)か ら,S
=K S,T Sなる関係で表わされる。ここで
K
はt
期の 状態の変換を表わす関数で,とくにt
+1期の状態が
t期に関する要素だけから変換され
て求められることに注意しなければならない。
システムの状態
S
とそのときとった行動T
(S)から決まる
t
期の収益の現在価値をg
で,表わせば,多段階の最適決定問題は,N
期間の総収益(現在価値に割引いた)である,⑴
G S
:T,T
, ,T
=
Σg S
,T S
を最大化する行動{T,T
,・・・・・,T
}を求 める問題であるということができるであろう。この最適性の原理を用いると,⑴式で与え られる多段階の最適決定問題は,2つの期の 間の関係式―循環式一によって定式化するこ とができる。最適政策をとったときの期間の 総利益(価値額の総体)の最大値は,システ ムの初期状態
S
に関係するのでT S
と表 わしてみよう。すなわち,⑵
T S
=max G S:T,
T
,・・・・・,T
と す る。最 適 政 策(変 形)を{T ,T
,・・・・・,
T
)で表わせば,⑶
T S
=G S:T
,T
,・・・・・,T
=g S,
T S
+g S,T S2
+・・・・・+
g S
,T S
となる。第1期の決定後の残りのN−1期の 最大利益も同様な記号を用いて表わすと,
⑷
T S
=g S,T S2
+・・・・・+g S ,
T S
であるから⑶式は,⑸
T S
=g S,T S
+TS
となる。最適性の原理を用いれば2期以後の 変 形 行 動{T ,T
,・・・・・,T
)は,第 2期の初期状態
S
がどんな値になろうと,す なわち,第1期の行動が最適行動T S
で なく,どんな行動T S
をとろうともそれ から生じた第2期の状態S
に関して最適に なっている筈である。第1期の行動を任意のT S
としたときのN期間の総利益(価値総 額)は,⑹
g S
,T S
+TS
で表わされる。このことから逆に⑹式を最大 にする第1期の行動を求めれば,それはN期 間の総収益を最大にする決定なのであるから,
最適決定関数
T
に一致しなければならな い。したがって⑵式の問題,あるいは⑸式の 関係は,⑺
T S
=
max
{g S
,T
(S
)+T S
} なる循環式で,表現されることがわかるであ ろう。ここでS
は第1期の行動T
によっ て生じた第2期の状態である。一般に,最適性の原理を用いて,⑺式のよ うな循環式で,定式化された問題のことを動 的 計 画 法(Dynamic Programming:DP) の問題と呼ぶ。また,最適性の原理を応用し て問題を定式化し最適解を求める方法および それに関係する理論全般のことを動的計画法 という。
最適性の原理と表現⑺式とは本質的に同値 な関係であり,⑺式が成り立つことは,式の 上からも直接証明することができるが,ここ では省略する。
②DP のあてはめで理解されること
T
を第t期の変形とすれば,n期間の政
策というのは変形関数(すなわち行動)の系 列
{T,
T
,T
, ,T
}であるが,消費者に価値あるものと認められ
購買された商品を作りだした行動は
T
で ある。そのときの最適政策(最適行動系列)を{
T
,T
,・・・・・,T
)で 表 わ せ ば,そ れは製品製造過程(製造工程)と流通過程(卸,小売など)に分けられる。
この系列において,トヨタのかんばん方式 に例えると,
T
を前提にしつつ,製造過 程か流通過程のどこかでさらなる最適政策(コストを低減など)を考えることができる。
新素材による変更,新しい機械導入による 製造期間の短縮といったメリットを導入する こ と も 可 能 で あ る。そ の 結 果,
T
,T
,・・・・・,
T
のどこかを短縮するなどである。先にも指摘した,コスト面から検討するこ とで,この過程に新しい製造企業や流通企業 を生み出すことになるとする
R.H.
コース(Ronald H.Coase)理論もでてこよう 。 以上の内容については黒田(2010)で検討 されている 。
8‑2.キッコーマン株 式 会 社: 特 選 丸 大 豆 しょうゆ 開発と販売の経緯
経営学者の楠木 建氏が ストーリーとし ての競争戦略 ⎜ 優れた戦略の条件 ⎜ と いう本を出版している 。
こ の 中 で,楠 木 氏 は,M .ポーターの
〝Competitive Strategy"(訳 本, 競 争 の 戦 略 )を静態論として退けている。事業の意 思決定は,連続的なプロセス(ストーリー)
において決定されるもので,あれもある,こ れもある,ということではないというもので ある。
筆者としては,マーケティングの
P.コト
ラーの〝Marketing Management"(マーケ ティング管理論)についてもこれと同じこと だと考えている。流通システム論では,ともすれば,製造工 程との関係を忘れがちである。すなわち,ま ず,ある作品(製品)を受け取って,買い手 に提示する,引き渡すとき何をすれば良いか
(外装(カバー)をどうするか,また,どう 変形すればよいか(どのようなサービスを付 加すればよいか))だけが問題となりがちで ある。流通部門(卸・小売・運送)も製品づ くりから関与すべきなのかもしれない。
これはオルダーソンの トランスベクショ ン の考え方を受け入れることでもある。
キッコーマン社の新製品開発に見るように,
製造過程でいくらやり取りをしていても,市 場に出荷してもうまくいかない。やはり,販 売 手 段 の 一 工 夫 が 必 要 と い う こ と が 分 か る 。
つまり,徹底的に消費者と一体化して作っ た製造品でも,販売がうまくいかなかった場 合があるということである。リサーチを徹底 的に行い, 共創 の考え方を徹底的に実行 し,長い時間掛けて作り上げた作品でも,ま だ,それだけで買い手が購入するものなった かどうかは確かではないのである。販売・流 通部門がしっかりフォローしなけば成功しな い(多くの買い手が購入しない)場合がある ことを考えておかねばならないのである 。
8‑3.全農による農機具や飼料の 仕入 と 販売 のずれ
全農(全国農業協同組合連合会)における 仕入 と 販売 の機能分担の在り方は,
企業における 製―配―販 統合や ロジス ティックス 上の問題が見られ,そこに ト ランスベクション の観点の導入の必要性が 浮かび上がるということである 。
8‑4.ベネトン社の製造工程の変更による優 位性確保
消費者の意識や行動の変化(特に,製品を 出来る限り早く手に入れたいという欲求)に 応える手法として,従来の 先染め方式 か ら, 後染め方式 に変えるなど,製造工程
(
process
)を変更したことによる競争優位性 確保の政策を実行し成功している。これも,トランスベクションの観点から分析評価可能 な例である 。
9.お わ り に
マーケティングはマーケティング・リサー チであるということ
米国において 20世紀 の 初 頭 に 生 ま れ た
〝Marketing"(マーケティング)という言葉 の出自の背景には,販売競争激化があったと 考えられる。そこでは有効な販売方法とはど ういうものかが検討されていた。実際に,大 学でも営業部長などの成功例が講義されてい る。
しかし,それも大不況期に入ると,販売競 争もなくなり,それまでの営業成功例は用を なさなくなっている。人々がこれまでのビジ ネスに万策尽きたと思ったとき,大不況でも 消費者に受け入れられ成功している企業のあ ることが報告された。
そのことは,ものづくりするにあたって,
消費者に受け入れられるものは何なのか,消 費者の望むものはどのようなものか,を知る ことが第一ではないかと人々に考えさせる 切っ掛けとなるものであった。
米国における人々や企業においては,単に 自分たちがこれはいけそうだとか,自分本位 で作ったものを提供しきた感が深いが,そう でないものの重要性を考えせしめた最初のこ とであったといっても過言ではないであろう。
それがいわゆる〝
Marketing Research
"(マーケティング・リサーチ)の登場のきっ かけであった。
一方で,大不況期から新しいマーケティン グが始まったと考えると,その出自の背景と なった大不況の意味するものは,なにも米国 が最初ではない。Merchant(商人)が発生 した時代まで遡ることができると考えている。
マーケティングという言葉は,米国に生ま れたが,その生み出す元になった状況は,人
類が農耕生活をはじめたころ(紀元前 8000 年前)の,不作時にメソポタミヤ地方の人び とが物資を求めて彷徨い歩いた苦境時と何ら 変わることがないのである。
自己のビジネスを決定することはマーケ ティングである。自己のビジネスが天から 降ってくるわけではない。どうやって探すか。
そこでは予測の科学が必要となる。
これはマーケティング・リサーチが問題と するところである。
マーケティング=マーケティング・リサーチ
マーケティング学 は 企業学 でどうか ここまで述べてきて, マーケティング という言葉が日本語にならないことに若干の 拘りを持つのである。
マーケティングが米国に生まれ,育ってき たのであれば,その持つ意味は,現行の経営 管理の一環としての営業とか販売管理として の意味として捉えておいてよいのかもしれな い。
しかしながら,この本拙論考ではマーケ ティングを学問とするべく検討してきた。単 に マーケティング学 では,営業とか販売 の仕方・方法の考え方と捉えられかねない。
また, 商学 の延長線上という意味もある かもしれない。
大学における科目名としては,米国の大学
(経営学部)では, ビジネス 系科目として,
マーケティング,マネジメントなどが配置さ れている。そういう意味では, ビジネス学 という名称もあるかもしれない。
どちらにしても日本語科目名ではない。上 記に示された マーケティング学 は, 人 間が生きて行くためのビジネスの選択決定と その後の運営一切を体系的に言い表す学問 のこととしてきたことから, 企業学 とす るのが相応しいと考えている。
そうすると,経営学関係の科目一切(たと