解・安心でき、混乱のない日々を積み重ねていくうえで構 造化は大変重要で、そのことを私達支援員はしっかり理 解することが大切ではないかと思います。
しかし、構造化が大切ということが理解でき、それに基づい て支援を継続していても、ゆうやさんに限らず、支援を受 けている大半の人たちは、一朝一夕にすぐ改善が図られ ることは少ないと思われます。支援の成功曲線は、自分 が頑張った分、成果がきれいに右肩上がりにはなりません。
これは支援だけではなくて、ビジネスでも同じことが言えるそ うです。ホリエモンこと堀江貴文さんが、「1+1をずっと積 み重ねていくような地道な作業をあきらめず続けていくと、
途中からかけ算に変わる。かけ算に変わったときに、もう自 分でも止められないぐらいに成功が加速していく。」と表現 されていました。
私たちが行っている支援も同じなのではないかと思います。
結果が出るまでは不安と葛藤の中、1+1を足し続けて いくような感覚で、地道にそれを積み重ねた末に、それが 徐々に実になり、あるポイントか跳ね上がるような、これが 支援の成功曲線ではないのかと思います。うまくいかない のは「すぐに結果が出ないから」と途中で止めてしまったり、
やり方を変えてしまうからではないかと思います。
せっかく正しい取り組みをしていても、途中で止めてしまっ たら、「上手くいかなかった方法」として結論が出てしまい、
次にこの方法を選択しなくなってしまいます。ただ、結果が 見えないうちは、みんな不安を抱えてやっています。だから、
客観的に評価してくれる存在が必要になるわけです。
ゆうやさんは幸いなことに、おしまコロニーの元園長の寺尾 孝士先生に2度もコンサルに入ってくれて、支援方法をし っかりと評価してくれたのですが、寺尾先生は日本全国ど こへも来てくれるわけではありません。ただ、各地域において、
自閉スペクトラム症、発達障害の支援に力を入れて取り 組んでいる施設や事業所、相談センターがあると思います。
そういったところから力を借りて、我が施設において今行っ ている支援がどう映るのか。このまま続けていっていいのか。
それとも、修正が必要なのか、ということをしっかりと評価し てくれる人や機関とコラボレーションする、そういう協力体制
を作ることがすごく大切だと思います。
最後に、支援の基本は、職員間の統一と継続ということ で、チームの重要性についてです。やはり行動障害の支援 というのは、1人ではできません。チームでやらないと結果 には結びつかないです。支援ひとつをとってみても、なぜこの 取り組みをしているのかという理解を支援員全体で共有 していく必要があるのです。「明日から、これやります。」「と りあえずやってください。」ということではなくて、なぜこれをす るのか。その根拠をしっかりと現場の人たちに伝えて、皆が こういう状況で、何のために支援しているのかをしっかりと落 とし込んだうえでやっていくことが大切です。
そしてこれにプラスして「期待されるゴールをイメージするこ と」が物凄く大切だと思います。エピソードですが、3 年目、
このゆうやさんの事例の前半部分、いづみ寮の取り組み 状況を、平成 25 年の強度行動障害支援者研修の中 央研修で発表しました。ちょうどそのときに、今のゆうやさん の担当者の方がたまたま受講者で来ていたのです。終わっ て、私のところに来て、「川西さん、ゆうやさんって笑うんで すね。僕、笑ったのを見たことありません」と言われました。
その担当者の方は、実際に映像を見て、ゆうやさんは笑 顔になるというリアルなイメージができたのです。
これは後から聞いた話ですが、担当の方は当時、ゆうやさ んの支援について、根拠に基づいて行っていても、なかなか 結果が伴わず、いつも不安な気持ちだったとのことでした。
しかし、これをきっかけに、「必ず笑顔が出る」と信じる気持 ちに変わっていき、この担当の方の中で、「必ず笑顔にして やろう」という目標ができたそうです。それがあきらめない原 動力になったとのことでした。
このように、「この支援を行うと、こういった良い状態が期待 される」というゴールが具体的にイメージできると、人は、そ れが希望に変わって、少々の困難ではあきらめなくなり、
頑張り続けられるエネルギーになります。よって、支援のや り方を伝えるのと同時に、明確で具体的なゴールを一緒 に現場の人たちと共有するということが、チーム自体をさら に強固なものにしていくのではないかと思います。
ご清聴どうもありがとうございました。
シンポジウム「強度行動障害支援の今後に向けて」
志賀:
先ずシンポジストの3人より自己紹介して頂き、その後で 4つの実践報告について感想をお願いしたいと思います。
中野さんからよろしくお願いします。
中野:
皆さん、長い1日の研修ご苦労様です。ただ今ご紹介 いただきました、星が丘寮の中野と申します。
私の経歴は、他の皆さんのように立派なものはなく、平成 5年くらいから支援員として強度行動障害者支援に関 わってきました。星が丘寮は、当初関わっていた児童の 方々が大人になり、成人期の暮らしを支える場所が必 要だろうということから、自閉症に特化した入所型の施設 として創られました。私も 20 年ほど、星が丘寮で知的障 害がある重度の自閉症の方々と関わってきました。今日 はその実践から、強度行動障害をテーマにお話しをして、
情報を共有できればと思っています。よろしくお願いいたし ます。少し長丁場になりますので、座りながらお話しさせて いただきます。4つの実践報告を聞いての感想ということ がありましたので、私なりにキーワードを考えてみました。
1つは「自閉症」。もう1つは「構造化」がキーワードにな るかと思います。自閉症における支援のスタンダードを考 えたとき、「構造化」は切っても切り離せないものだと思い ます。ただし、それだけではなかなか解決できないこともあ るということについては、それぞれの発表の中で、皆さんが 感じていることだと思います。構造化すれば 100%強度 行動障害がなくなるということではなく、解決できない問 題もあるということを、4つの事例の中でもおっしゃっていた かと思います。それぞれの発表では、強度行動障害をな くすことを目的にしてはいなくて、自閉症支援をしっかりと 取り組み、その結果、行動上の課題が軽減できたという 結果についてお話がありました。そして、そのことは、継続 して一貫した取り組みをおこなっていくことが大事なのだろ うと思います。さらに報告を聞いていて、問題行動が軽減 して、そこがゴールではないということも共通した事だったと 思います。そこをスタートとして、暮らしを包括的に捉え、
実行できる仕組みを持ちあわせたということが、豊かな暮
らしにつながっていくということが、今日の報告の中で大き なテーマになっていたのだと思います。さらに、川西さんの 報告の中でもあったように、30 代で亡くなられているといっ たケースも時々聞くことがあります。7月に、当法人の福 祉セミナーを行いました。その際に、イギリスから講師の方 をお招きし、イギリスの知的障害に特化した看護という分 野があるという話をお聞きする機会がありました。その中で、
イギリスの統計調査なので日本での結果ではありません が、知的障害のある人が 50 歳までに亡くなる確率という のが、一般の人の 58 倍ということをおっしゃっていました。
また知的障害のある人が、避けられるはずの原因で亡く なる人数は1日に3人にのぼる、というお話しもされてい ました。ここで、なぜそういうことになるのかというと、医療を 受ける権利というものが、なかなか保障されていない状況 があることです。知的障害がある方の状況として、こういう ことがイギリスで言われているということは、日本における 強度行動障害の人たちの医療の保障ということも、これ からの課題として考えていかなければならないことだろうと 思いました。このあとの時間が許されるなら、もう少し皆さ んとその辺りについても議論を進めていければ良いと思っ ています。
志賀:
精神科医療だけではなく、医療の保障の話もしていただ きました。それでは午後の一番に発表をされた弘済学園 のほうから、高橋さん、お願いいたします。
高橋:
皆様、今日は大変お疲れ様でございました。公益財団 法人鉄道弘済会弘済学園園長の高橋と申します。
当法人は、できるだけいろいろな福祉事業を展開してお りますが、知的障害の方たちの施設は当園だけでありま して、私も学校を出てからずっとここだけにいて、35 年に なります。長期実践、自分自身が一番の長期になってし まっていますけれども。ただ、数少ない取り柄と言えば、今 日のレポートにありましたように、1人の方が思春期を乗 り越え、青年期を迎え、そして壮年期に向かってという、
長いヒストリーを側で定点観測するということが、かろうじ てできたかなというふうに思っています。ただ、残念ながら、
児童福祉法の改正をもって、これからは児童施設に長く