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事例もあり、普及活動を通して適正なルールの厳守が必要とされる。
5-5)オジロワシの増加
北海道では 1990 年代にオジロワシの繁殖数が増加した(白木 2013)。北海道の本調査サイ トでは、渡島大島を除く全てのサイトでオジロワシが確認されており、天売島、知床半島、ユ ルリ島ではそれぞれ1~数番が営巣している。モユルリ島は、1990 年代後半に成鳥と若鳥を あわせて1~2羽程度であったが(山階鳥類研究所 1996、1999)、本調査開始以降は 12~15 羽に増加した。ユルリ・モユルリ島や大黒島では、オジロワシが、オオセグロカモメやウミネ コ、ウミウの繁殖地に飛来し撹乱する様子が頻繁に観察された。また、モユルリ島及び大黒島 のオオセグロカモメの巣密度は、本調査開始前後で 85.0%及び 76.1%減少しており、オジロ ワシの増加が関係していると考えられる(図4)。ユルリ・モユルリ島では、ウミネコの巣は 確認されるが、ほとんど空巣であった。したがって、これらのサイトでは、増加したオジロワ シの捕食や撹乱によって、オオセグロカモメやウミネコの繁殖が阻害されていることが示唆さ れる。
5-6)東北地方太平洋沖地震とそれにともなう津波
2011 年3月の東北地方太平洋沖地震及びそれに伴う津波の影響を受けた東北地方太平洋沿 岸地域の海鳥繁殖地のうち、蕪島(青森県八戸市)、日出島(岩手県宮古市)、三貫島(岩手県 釜石市)及び足島(宮城県女川町)の4ヶ所が、本事業の調査サイトにあたり、環境省の震災 影響把握のための海鳥調査とあわせて 2012 年以降、毎年調査を行っている((3)サイトごと の評価に詳細)。
蕪島は、津波によって一部が裸地化したが、翌年以降、植生は回復しウミネコの巣数は 23.0%
増加した(表3)。ただし、セイヨウナタネの分布が拡大しており、営巣環境の悪化による繁 殖への影響が懸念されるため、植生変化と併せて繁殖数モニタリングを継続する必要がある。
日出島においては、島の北西部で約 20m まで、東部は約 40m まで到達し、林床の土壌、腐葉 土層、地上の枯れ木、地表植生が消失し、震災以降も土壌流出が進行している。本調査で 2012 年以降、オオミズナギドリの巣穴数は減少し、ウミツバメ類の巣穴数が増加傾向にあった。
三貫島では、津波は、島の西側及び北側の岬で 15~20m まで上がった痕跡が確認され、一部 の林床土壌、腐葉土層、枯れ木などが消失し、植物への塩害が確認された。西端のウミツバメ 3種の営巣場所も津波と崖の崩落により営巣地の半分程度が埋まるなどの被害を受け、営巣環 境として必要とする岩の間隙は消失し、飛来数が減少した。
足島において、ウトウ及びオオミズナギドリの繁殖に対する津波の直接的な影響は確認され ていないが、島の一部で塩害とみられる樹木及び草本の枯損が認められており、今後も植生変 化と併せて繁殖数モニタリングを継続する必要がある。
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(6)調査継続のための課題整理
これまでの本調査の結果の一部が活用され、第2期中に、慶伊瀬島ナガンヌ島のアジサシ類 繁殖エリアが、「沖縄県指定鳥獣保護区チービシ特別保護地区」に指定され、全島が慶良間諸 島国立公園に含まれた。また、三陸沿岸の本調査サイトを含む一帯が、「三陸復興国立公園」
に再編された。
今後も本調査を継続し活用されるための課題について下記の通り整理した。
6-1)繁殖数の把握
第1期及び第2期の調査を通して、いくつかの海鳥類、特に巣穴営巣性の種では、繁殖地の 地形が険しいことや、滞在日数の制約によって広範囲な営巣範囲を把握することが困難なため、
繁殖地全体の巣(穴)数を把握できていないサイトがある(表2、3)。今後、長期的な繁殖 数の変動をサイト間及び種間で比較するため、さらに日本の海鳥の生息数を把握するためには、
各繁殖地における総繁殖数の推定は不可欠である。そのため、今後、調査方法や調査努力量の 配分の再検討が必要である。
なお、カンムリウミスズメは、大規模な集団営巣地を形成せず(幸島を除く)、岩の隙間で 繁殖するため、これまで巣数の確認は少数で繁殖数モニタリングとしては不十分であった。第 2期の 2012 年度からは調査方法を再検討し、成鳥、卵、雛のいずれかが確認された巣の全て に番号札でマーキングし、マーキングした巣の利用率を継続してモニタリングし、併せて踏査 によって新規巣を増やすこととした。
6-2)海鳥類の捕食の状況把握
本調査において、大型ネズミ類やノネコなどの移入種やオジロワシの増加が、海鳥類の繁殖 数の減少と関連している可能性がいくつかの種やサイトで考えられた。本調査の目標の一つと して、海鳥類の保全のための施策に資する基礎資料を提供することがある。本調査では、各サ イトの滞在は短期間であるため、捕食者の特定及びその被害を定量化することは困難な場合が 多い。しかし、調査中に確認される海鳥類の死体や卵殻片、それらの散乱状況や食痕の有無を 定量的に記載し、確実な捕食の証拠を積み上げていくは可能である。併せて潜在的な捕食者や その痕跡の有無を正確に記載することも必要である。
第1期及び第2期では、各サイトの繁殖状況の把握や繁殖数モニタリングの方法の確立を重 視してきたが、今後は繁殖数を短期間に変動させうる捕食者の状況や被害の状況に、これまで 以上に注視する必要がある。
6-3)調査マニュアルの作成
本調査においてモニタリングサイトとして選定された以外の海鳥繁殖地でも、地元研究者な どにより、定期的あるいは不定期に調査が実施されている島が存在する。種ごとの評価を考え た場合、これらの情報は重要であり、合わせて検討するためにも比較可能な調査マニュアルと して、「繁殖形態別の海鳥繁殖モニタリングマニュアル(ver.1、2012 年3月 16 日作成)」を 2011 年度に作成した。