4-4 主要国の通信政策・市場などの動向
4-4-1 米国
4-4-1-1 米国電気通信産業概要
* ことわり書きが無い時は 2013 年 12 月 31 日現在
*1 2013 年 12 月31 日現在 ILEC と非 ILEC の双方の形式で事業を運営していると FCC に報告した会社も少なくなく、FCC はそ の場合どちらにも 1 社として割り振りダブルカウントしているため、ILEC と非 ILEC の合計数は一致してない。
*2 ここでいう高速回線とは、少なくとも片方向で 200kbps 以上の回線、FCC は 2015 年 1 月、下り 25Mbps、上り3Mbps と再定 義している。
出所:FCC, “Trends in Telephone Service”, September 2010
FCC, “Internet Access Service Status as of June30, 2012”, May 2013 FCC, “Universal Service Monitoring Report 2014”, December 2014
根拠法/規制法 1934年通信法(Communications Act of 1934)
1962年通信衛星法(Communications Satellite Act of 1962)
1996年電気通信法(Telecommunications Act of 1996)
監督機関:
主管庁/規制機関
連邦通信委員会(Federal Communications Commission : FCC ) 各州の公益事業委員会(Public Utilities Commission : PUC)
商務省国家電気通信情報庁(NTIA)(National Telecommunications and Information Administration : NTIA)
司法省(DOJ)
自由化及び既存事業者 (ナショナル・キャリアからの民営化というプロセスはとっていない。)
主要通信事業者
固定通信事業者*1
既存区域内通信事業者(ILEC):754社
競争通信事業者(CLEC)及び競争アクセス事業者(CAP)、
その他の地域内通信事業者 969社(地域通信事業者合計:1500社)
VoIPサービス提供事業者 668社
主な固定通信事業者 AT&T、センチュリーリンク、コムキャスト、ベライゾンコミュニケーションズ、
ブライトハウスネットワクス、ケーブルビジョン、チャーターコミュニケーションズ、
シンシナチベル
移動通信事業者
セルラー 加入者数上位8社
べライゾン ・ ワイヤレス、AT&T、スプリント、T-モバイル、(以上上位4社までが 全国的キャリア)、USセルラー、C スパイヤー ワイヤレス、nテロス、セルコム 主なMVNO トラックフォン、バージンモビルUSA、ブーストモビル、クゥエストワイヤレス
主なVoIP
事業者 コールセントリック、バイパーネットワクス、エフォニカ、コールオンザネット、
ゴーツーコール、ギャラクシー
市場規模
収入ベース
総収入 地域サービス 無線サービス 中継サービス
ユニバーサルサービス賦課金
2,430億 8,800万ドル 931億 500万ドル 981億 6,000万ドル 428億 3,700万ドル 89億 8,600万ドル
加入者ベース
固定電話加入世帯数 (普及率)
移動電話加入数 (普及率)
高速回線数*2合計 ADSL SDSL
その他固定回線 ケーブルファイバー 衛星無線固定無線 移動無線
1億 3,514万 加入 (42.2%)
3億 574万 加入 (95.5%)
2億 9,339万 6,000加入 3,069万 0,000加入 10万 8,000加入 77万 2,000加入 5,400万 9,000加入 774万 5,000加入 184万 9,000加入 85万 8,000加入 1億 9,736万 5,000加入
4-4-1-2 米国電気通信政策・事業者動向(1)
〈ネット中立性を巡る動き〉
・連邦控訴裁、FCC のネット中立性規則の一部を無効とし、ベライゾンに勝訴の判決
米連邦控訴裁は1月14日、FCCにはネットワーク中立性のルールをISP事業者に課す権限がないとし、ベライ ゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications:以下、ベライゾン)の主張を認める判決を下した。他方で、
FCCが権限を踏み越えてブロードバンドアクセスを規制したというVerizonの主張を却下した。ブロードバンド や無線サービスのプロバイダーに対して、ブロードバンドアクセスを規制する権限がFCCにあることを支持した。
しかし、プロバイダーが提供するサービスは従来の電気通信サービスとは別に分類されているため、それらは FCCがその規制政策を作る上で指針としている同じ法律には従わないとの見解を示した。
・FCC、ネット中立性に関する規則制定案を発出
FCCは、5月15日、ネット中立性に関する規則制定提案(NPRM:Notice of Proposed Rulemaking)を告示した。
新規則案では、FCCが2010年に採用した、コンテンツやアプリケーションの不当な差別や遮断をブロードバン ドプロバイダーに禁じる規定「Open Internet Rules」の方針を維持しつつ、インターネット接続事業者(ISP)が契 約を結んだコンテンツ・プロバイダーなどを優先的に扱うことを認める内容が盛り込まれている。
・オバマ大統領、厳格なネット中立性規則施行を要請
オバマ大統領は、11月10日、インターネットサービスを水道や電話、電力などといった生活に不可欠な公益 事業として扱い、ISPの規制分類を公益事業者にするようFCCに呼びかける声明を発表した。オバマ大統領は、
ISPがすべてのインターネットトラフィックを同等に扱うことがネット中立性の原則だとし、合法的なWebサイ トやサービス、コンテンツが遮断もしくは意図的な減速をされるべきではなく、いかなるサービスも料金の支払 いによる優先的措置を受けることがあってはならないと強調した。料金に応じてインターネットの速度で差別す るいわゆるファストレーン(追い越し車線)について料金に応じた差別化を明確に禁じるよう要請した。また、
FCCがISPは通信法Title IIの下に分類変更することを明確に支持する姿勢も打ち出した他、ネット中立性規則を
携帯電話会社にも適用するよう求めている。
〈運輸省、車両間(V2V)通信システムを認可〉
アンソニー・フォックス運輸長官は、2月3日、車々間通信(V2V)システムを認可するための手続きを開始す ることを発表した。 この車々通信(V2V)通信システムは自動車事故の防止に役立つと期待されている。運輸省は 2012年8月からテストを行っていた。国家道路交通安全局(NHTSA)のデビッド・フリードマン局長代行は、この テストで車々間通信が運転の安全性を大幅に向上することが証明されたという。
〈FCC、AWS-3 オークション開始〉
FCCは、11月13日、AWS-3(1,695~1,710MHz、1,755~1,780MHz、2,155~2,180MHz)オークションを開始 した。「AWS-3バンド」は米国土安全保障省(Department of Homeland Security)など複数の政府機関が保有していた 周波数帯域で、割り当て後には携帯通信事業者と政府機関が共有して利用する初の周波数帯になる。今回のオーク ションでは、合計1,614件の免許が対象となっており、帯域幅合計は65MHzである。ブロードバンド・ネットワー
クFirstNet構築や高度911緊急通報システム、研究開発、赤字削減等の資金を賄うために法律により実施が義務付
けられた3つのオークションのうち2つめとなる。3つめのオークションは、2016年に予定されているインセンティ ブ・オークションとなる。
4-4 主要国の通信政策・市場などの動向
〈FCC、600MHz 帯の周波数オークションの枠組みを決める規則制定案を告示〉
FCCは、5月15日、600MHz帯の周波数インセンティブ・オークション規則制定案を採択した。リバース・オー クションと称されるテレビ放送局からの帯域取得と、携帯通信事業者などへの帯域割当に関わるオークションとい うふたつの部分に分かれる。FCCは通信事業者への割当部分について、10MHz(上下5MHzずつ)を1つの単位とし、
米国内の地域ごとに周波数帯のライセンスを分割して、オークションにかけることになる。最大700MHz帯のおよ
そ70%をAT&Tとベライゾンが保有することを踏まえて、入札競争がとくに激しい市場では、30MHzの周波数帯
を小規模な携帯通信事業者に割り当てるとする項目も盛り込まれた。入札を小規模事業者のみに限定する「小規模 事業者専用の周波数割当枠」を設定すると見られていたが、その量は当初予想されていた1地区の周波数総量のお よそ半分から、約3分の1へと縮小された。また、いわゆる「ホワイトスペース(利用免許は与えられているが、
混信を防ぐために未使用にしている周波数領域)」をつかってWi-Fiなどにライセンスなしで利用できる周波数帯に ついては、各地域で最低20MHz、ところによっては最大34MHzが割り当てられることになる。
アメリカでは1994年以来、20年にわたりオークションが行われてきたが、これまでと異なるのは “ 放送局が使 用する周波数帯域を自主的に返上してもらい、オークションで通信事業者に配分し、その収入の一部を放送局に還 元する ” という点にある。背景には、アメリカ国内でスマートフォンやタブレットの利用が急速に増え、モバイル・
ブロードバンド用の周波数帯域が足りなくなるという懸念がある。また、オークションを行うFCC(連邦通信委員会)
には、限られた電波(周波数)を効率的に使いたいという意向がある。入札が予定されているのは600メガヘルツ 帯である。テレビ放送事業者に割り当てられている周波数帯の一部を携帯通信用に再分配するもので、屋内での伝 搬性能に優れ、電波が遠くまで届きやすい。米国では、1ギガヘルツより低域の、有用性の高い周波数帯の大半は AT&Tとベライゾンが保有している。
〈FCC、競争入札規則を改正するための規則制定案を告示〉
FCCは、10月10日、2016年に予定されている周波数インセンティブ・オークションに先立ち、現行の競争入札 規則を改定する規則制定案(NPRM)を告示した。この告示では、暫定的ではあるが、ベライゾンやAT&T、スプ リント、T-モバイルの移動通信大手4社による共同入札を禁止した。これら4社以外の非全国規模事業者による共 同入札は継続して許可される。小規模事業者はインセンティブ・オークションや将来の周波数オークションに参加 しやすくなる。この改定は11月に実施予定のAWS-3オークションには適用されない。
〈IP ベースの電話通信網への全面移行に向けた本格的取り組みの動き〉
FCCは2012年、米AT&Tと米National Telecommunications Cooperative Association(NTCA)から、完全IP移行の 促進に向けて、実証実験と規定見直しに着手するよう要請を受け、「Technology Transitions Policy」タスクフォース を立ち上げ、2013年11月19日、電話通信網の改革について本格的な取り組みを開始すると宣言した。翌年2014 年1月30日に、IPベースの次世代電話通信網への移行を目的とし試験プログラムの実施を承認し、IP網への全面 移行に伴い911などの緊急通話や競争がどのように維持されるべきか、新規電話番号割り当て方法、都市部以外で の高速データ通信の利用状況などについて検討材料の収集に着手した。この承認を受けA&Tは、2月28日、アラ バマ州とフロリダ州2つの都市で従来方の回線交換による電話サービスの加入受付を試行として停止した。FCCは、
11月21日、TDMからIPベースでの通信網へ全面移行を促進する一環として、停電時の緊急番号(911)へのアク セスの確保や利用者の保護、競争の維持を目的として現行規則を改定した規則制定案(NPRM)を発表した。
〈携帯電話のテキストメッセージから緊急番号への通話サービス〉
FCCは、8月8日、全ての携帯通信会社とテキストメッセージ通信事業者社に対し、携帯電話のテキストメッセー ジから911番への通報を可能にするサービスの導入を遅くとも2015年6月までに実施するよう求める命令を発出し た。ベライゾン(Verizon Wireless)、AT&T、スプリント(Sprint)、T-モバイル(T-Mobile USA)の4社は2012年に、
このサービスを2014年5月15日までに導入することに同意していた。しかし、導入は義務づけされなかったため、
実際にはまだ一部の地域でしかサービスが提供されていない。