傾き 1.011 0.951 1.089 0.928
切片 -1.001 4.501 -6.363 4.531
x:傾きは危険率 1%で 1 と認められない。切片は危険率 1%で 0 と認められない。
w:傾きは危険率 5%で 1 と認められない。切片は危険率 5%で 0 と認められない。
次に、表 5 に示す(4)式を(2),(3)式と比較すると、Ⅰ~Ⅲの全試料に対しては、相関係数 は(4)式の方が大きく、RMSD は(4)式の方が小さくなった。試料Ⅰについては(2),(3)式と(4)
65 70 75 80 85 90 95
65 70 75 80 85 90 95
実測水分[%w.b.]
推測水分[%w.b.]
(4)式
試料Ⅰ 試料Ⅱ 試料Ⅲ
式について相関係数と RMSD に差は認められなかったが、試料Ⅱ,Ⅲについては(4)式の方が 相関係数は大きく RMSD は小さかった。さらに、図 28 に示した全試料と試料Ⅰ~Ⅲの 4 つの 場合について、推測水分と実測水分の回帰係数について検定した結果を示した表 6 より、(4) 式はすべての試料について Y=X とみなすことができた。
今回使用した試料は表 3 に示したように栽培時期が異なった試料間の平均茎径に差がみら れたため、推定式の説明変数に茎径を加えることが適合しやすくなった原因の一つと考えら れる。
(4)摘要
以上のことから、複数の試料を用いて⊿Pmaxを説明変数として推定式を作成することで、汎 用的な推定式を作成することができた。さらに、説明変数として⊿Pmaxと平均茎径を用いて重 回帰分析により推定式を作ることで、より汎用的な水分推定式を作成することができた。
3.まとめ
バラ切り花の非破壊水分推定式を作成することを目指し、試料として茎を切り出して曲げ 荷重を測定することでバラ切り花の茎の水分推定式を作成した。
その結果、説明変数として⊿Pmaxを用い、3 種類の異なる栽培時期の試料で推定式を作成する ことで、単一栽培時期の試料による推定式と比べて汎用性のある推定式を作成することがで きた。
さらに、説明変数に平均茎径を加えて重回帰分析により推定式を作ることで⊿Pmaxだけを用 いたときより汎用的な水分推定式を作成することができた。
Ⅲ 非破壊水分推定式の検討 1.非破壊推定式の検討 (1)はじめに
Ⅱ章で述べたように切り花の茎の力学的特性に着目して簡易的かつ定量的にしおれを数値 化することで客観的な品質評価方法の確立を目指し、力学特性値として茎の曲げ特性と水分 の関係について実験を行った。切り取った茎を用いて破壊測定による曲げ試験を行い、茎の 力学特性値による水分推定が可能であることが分かった。
そこで、本研究では水管理が重要となるバラ切り花を用いて非破壊品質評価法を確立する ため、茎の曲げ荷重を非破壊で測定することにより非破壊水分測定を可能にし、同一試料で の水分の経時変化を簡易的な方法で推定することを目的として実験を行った。
(2) 実験材料及び方法 a.実験材料
静岡県三島市で 2012 年 9 月と 10 月に収穫したスイートアバランチェ+‘Sweet Avalanche’
を供試材料とし、85 本を東京都中央卸売市場世田谷市場を経由して入手した。
実験期間中の試料は水分を徐々に減少させるため室温で保蔵した。
b.実験方法
試料の測定は破壊測定を行ったⅡ章と同様に、図 29 に示す手順で茎径の測定を行い、スパ ン 40mm で試料の中央部分を載荷点とし、縦横兼用電動スタンド(MODEL-2257:アイコーエン ジニアリング(株)製)にデジタルプッシュプルゲージ(RX-1:アイコーエンジニアリング(株) 製)を用いてテストスピードを 10mm/min で曲げ荷重を加え、たわみ約 0.016mm 毎に曲げ荷重 を記録した。
測定の様子を図 30 に示す。図 31 に示す花首の下を曲げ荷重測定部位とし、同一箇所を 3 回繰り返し測定した。茎径の測定は、試料の載荷点をノギスにより 4 方向から測定して、そ の平均値を求めた。推定式作成用試料は、曲げ荷重測定後ただちに新鮮質量の測定を行い炉 乾法により湿量基準[%w.b.]で水分を測定した。
図 29 実験手順
材料受取り
水揚げ・試料調整
茎径測定
曲げ荷重測定
乾燥質量測定 新鮮質量測定
茎の切断
3 回繰返し
48 時間乾燥
(a)測定の様子
(b)測定の概要図
図 30 曲げ荷重測定の様子と測定の概略図 10mm/min.
40mm
茎径の測定
図 31 曲げ荷重測定部位
c.茎の曲げ荷重特徴量の解析方法
Ⅱ章と同様に力学特性曲線の特徴量として、たわみdに対する曲げ荷重の変化率⊿P[N/mm]
を考えた。図 13 に示した曲げ荷重曲線(a)に対して⊿P は曲線(b)のように最大値⊿Pmaxを持 つ変化を示した。このため、⊿Pmaxに対する曲げ荷重を Pdmとしてそれぞれ曲げ荷重特性の 1 つの特徴量として解析に用いた。
(3) 結果及び考察
a.非破壊水分推定式の作成
試料の茎の曲げ荷重を測定し 50 本の試料から測定ミスを除いた 107 個のデータを用いて水 分推定式を検討した。使用した試料の水分は、78.7~88.3%w.b.であった。
図 32 にPdmおよび⊿Pmaxと水分の関係を示す。Pdmおよび⊿Pmaxが減少すると水分も低くなる 傾向がみられ、Pdmと水分の関係は相関係数 0.563、⊿Pmaxと水分の関係は相関係数 0.681 とな りそれぞれ正の相関がみられた。
図 32 力学特性値と水分の関係
M = 3.075 lnPdm + 88.022 r = 0.563
78 80 82 84 86 88 90
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
水分M [%w.b.]
曲げ荷重Pdm[N]
(a)曲げ荷重と水分の関係
M = 5.886 ln⊿Pmax + 78.049 r = 0.681
78 80 82 84 86 88 90
0 1 2 3 4 5 6
水分M [%w.b.]
変化率⊿Pmax [N/mm]
(b)変化率と水分の関係
Ⅱ章および過去の実験(川上他,2003,2009ab,2010,2013)で有意性が得られた推定式の作成 方法を参考にPdm、⊿Pmaxおよび各試料の平均茎径を用いて(5)~(8)の水分推定式を作成した。
𝑀 = 3.075 ln𝑃
𝑑𝑚+ 88.022
(5)𝑀 = 5.886ln∆𝑃
𝑚𝑎𝑥+ 78.049
(6)𝑀 = 1.449ln𝑃
𝑑𝑚+ 2.867∅ + 74.888
(7)𝑀 = 3.785ln∆𝑃
𝑚𝑎𝑥+ 1.635∅ + 73.897
(8) ただし、M:水分推定値[%w.b.]Pdm:⊿Pmaxに対する曲げ荷重[N]
⊿Pmax:たわみに対する曲げ荷重の変化率最大値[N/mm]
φ:平均茎径[mm]
式(5)~(8)とも分散分析表より 1%で有意性が認められた。Pdmを用いた式(5)は水分実測 値と推定値の相関係数は 0.563、実測値と推定値の RMSD は 2.184%w.b.、⊿Pmaxを用いた式 (6)は水分実測値と推定値の相関係数は 0.681、RMSD が 1.933%w.b.、Pdmと平均茎径を用い た式(7)は水分実測値と推定値の相関係数は 0.692、RMSD が 1.906%w.b. ⊿Pmaxと平均茎径 を用いた式(8)は水分実測値と推定値の相関係数は 0.698、RMSD が 1.919%w.b.となり平均 茎径を説明変数に加えることで推定式の精度を上げることができた。式(5)~(8)で用いた 説明変数は 5%で有意性が認められた。
茎の曲げ荷重を非破壊で測定しても、荷重測定誤差を減らすため茎を切り取って曲げ荷 重を測定したⅡ章の結果と同様に相関係数に有意性が認められ RMSD は 2%w.b.前後の値が 得られた。茎に花や葉が付いた状態で曲げ荷重測定を行っても水分の推定式の説明変数と して用いることができ、非破壊による水分推定のための推定式を作ることができた。
b.非破壊水分推定式の評価
式(5)、(6)と比べて推定式作成時の相関係数が大きく RMSD の小さかった式(7)、(8)につ いて、推定式作成時とは別の 35 本から測定した 43 個のデータを用いて、推定式の評価を
した。評価項目として、非破壊測定法の推定式の評価に一般的に用いられる相関係数およ び RMSD と推定式の偏りを評価する回帰係数の検定について取り上げた(岩元他,1994)。
式(7)、(8)から求めた水分推定値と水分実測値の関係を図 33 に示す。説明変数に Pdm と 平均茎径を用いた式(7)の推定値と実測値の相関係数は 0.455、RMSD は 2.301%w.b.、説明 変数に⊿Pmaxと平均茎径を用いた式(8)の相関係数は 0.597、RMSD は 1.951%w.b.となり、推 定式作成時と比べるとどちらも相関係数は低くなったが、検定の結果有意水準 5%でいずれ も相関は認められた。RMSD は(7)、(8)式とも増加したが(8)式の方が小さく抑えることが できた。
また、式(7)は回帰式の係数の検定(岩元他,1994)より、有意水準 5%で傾き 1、切片 0 と みなすことができなかった。図 33(a)より式(7)では傾きが 1 とみなせないため水分が高い 場合は水分推定値を実際よりも高く、水分が低い場合は低く示す傾向があり推定値に偏り を生じさせることが予想され推定式として好ましいとは言えない。また、切片が 0 とみな せず、水分実測値と推定値の差の合計より推定値の方が大きくなる傾向が認められた。
図 33(b)に示す式(8)については、それらは認められず、RMSD も式(7)より小さく推定精 度が高い推定式となった。
図 33 水分推定式の評価
y = 0.503x +41.224 r = 0.455 76
78 80 82 84 86 88 90
76 78 80 82 84 86 88 90
水分実測値[%w.b.]
水分推定値[%w.b.]
(a) 式(7)による水分推定値と実測値
y = 0.756x +19.831 r = 0.597
76 78 80 82 84 86 88 90
76 78 80 82 84 86 88 90
水分実測値[%w.b.]
水分推定値[%w.b.]
(b) 式(8)による水分推定値と実測値
(4)摘要
以上の結果より、⊿Pmaxと平均茎径を説明変数として回帰式を作り非破壊測定による水分 推定が可能となると判断した。このような方法で、さらに試料を増やして推定式を作成す ることで汎用的な推定式が得られると考える。
2.推定式による水分の経時変化 (1)はじめに
バラ切り花の茎の曲げ荷重を測定することで、非破壊で茎の水分を推定できることが確認 できたため、観賞期間中のバラ切り花の水分の経時変化を測定する実験を行った。
従来は、同一試料の水分を直接測定することは困難で過去の事例はほとんどない。同一試 料の水分の経時変化の測定が可能になれば、定量的に流通過程における萎れの評価をするこ とができ、輸送形態の評価や花持ち試験の評価につながると期待できる。
(2) 実験材料及び方法 a.実験材料
静岡県三島市で 2012 年 10 月に収穫したスイートアバランチェ+‘Sweet Avalanche’を供 試材料とし、東京都中央卸売市場世田谷市場を経由して入手した。
b.実験方法
試料を 1 本ずつトールビーカーに入れ約 400ml の水道水に活け、室内で保蔵した。温度、
湿度は成り行きとした。
図 34 に示す測定の概要に従って、1 日に 1 回、試料の花首の下の曲げ荷重載荷点の茎径を 4 方向から測定し、その後、曲げ荷重を測定した。これを 11 日間繰り返して、測定結果を推 定式(8)に代入して水分の推定を行った。
図 34 非破壊水分測定の概要
(3)実験結果および考察 a.外観の変化
3 本の試料ⅰ~ⅲについて、外観の様子を図 35 に示す。
試料ⅰは実験開始後 4 日から葉の萎れが目立ち始め 5 日には明らかに葉が萎れていること が確認できた。また、花弁も日数の経過とともに開き始め、実験開始後 5 日には花弁の外側 が垂れ下がり始めたのが確認できた。ベントネックは見られなかった。
試料ⅱについては、実験開始後 3 日から花弁の外側が垂れ下がり始め、5 日から花弁に変 色が見え始めた。7 日には変色部分も大きくはっきりとなり、8 日には外側の花弁が垂れ下が り、実験開始後 9 日にベントネックが確認でき花首が折れ曲がった。
試料ⅲは、実験開始後 11 日まで葉の萎れ、花弁の萎れはほとんど確認できず、試料ⅰ,ⅱ と比べると花持ちはよかった。
図 35 各試料の外観変化の様子 0
0
0
1
6 7
2
8
3
9
4
10
5
11
1
1
2
2 3
3 4
4 5
5 6
6
7
7 8
8
9
9
10 11
試料ⅰ
試料ⅲ 試料ⅱ
表 7 にこれらの外観の変化を切り花の日持ち評価レファレンステストマニュアル Ver.6(日 本花普及センター,2010)の項目に従って判定した結果を示した。試料毎に判定基準に従い A
~D の判定を行った結果、試料ⅰについては実験開始後 6 日に C が 2 つ、試料ⅱについては 実験開始後 4 日に C が 2 つ付いたため日持ち期間終了と判定した。
表 7 切り花日持ち評価レファレンステストマニュアルによる外観評価結果 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
試料ⅰ
花弁の萎れ A A A A B C C C C C C C 花首の萎れ A A A A A A A A A A A A 開花 A A A A A A A A A A A A 灰色カビ病 A A A A A A A A A A A A ブルーイング A A A A A A A A A A A A 花弁の乾燥・変色 A A A A A A A A A A A A がく片・葉の黄変 A A A A A A A A A A A A その他 A A A A B B C C C C C C
試料ⅱ
花弁の萎れ A A A B C C C C C C 花首の萎れ A A A A A A A B B D
開花 A A A A A A A A A A 灰色カビ病 A A A A A A A A A A ブルーイング A A A A A A A A A A 花弁の乾燥・変色 A A A A A C C D D D がく片・葉の黄変 A A A A A A A A A A
その他 A A A B C C C C C C
試料ⅲ
花弁の萎れ A A A A A A A A A A A A 花首の萎れ A A A A A A A A A A A A 開花 A A A A A A A A A A A A 灰色カビ病 A A A A A A A A A A A A ブルーイング A A A A A A A A A A A A 花弁の乾燥・変色 A A A A A A A A A A A A がく片・葉の黄変 A A A A A A A A A A A A その他 A A A A A A A A B B B B
b.水分の経時変化
説明変数として⊿Pmaxと茎径を用いた式(4)を用いて室温で保蔵した 3 本の試料ⅰ~ⅲの水 分の経時変化を推定した結果を図 36 に示す。
試料ⅰは実験開始後5日までは水分はほぼ初期の値を保ち大きな変化はなかったが、6日