木村 正雄
物質構造科学研究所放射光科学第二研究系
総合研究大学院大学高エネルギー加速器科学研究科物質構造科学専攻
表1 フォトンファクトリーにおける産業利用の形態
図1 産業利用の制度別延べ実験時間数
3-7. 産業利用促進グループ
木村 正雄 物質構造科学研究所放射光科学第二研究系 総合研究大学 院大学高エネルギー加速器科学研究科物質構造科学専攻
1.概要
PFは共同利用だけでなく,成果占有・非公開の利用形 態を含む産業利用も社会貢献の一助として積極的に取り組 んでいる。PFの利用制度を表1に示す。大学・公的機関 だけでなく,企業ユーザーも実はすべての利用制度を活用 できる。但し,共同利用についてのみ応募資格の制限が追 加される。試行利用制度や優先利用の応募資格の制限は,
大学・公的機関の利用に際しても共通的に適用される。な お試行利用制度は,9年間継続された文部科学省補助事業
10000 9000 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000
PFにおける産業利用の実験時間数
全数 共同
研究 施設利用 TU
によるトライアルユース(無償利用,成果公開)が2015 0 共同利用 年度末で終了したため,それに代わる産業利用振興の制度
としてPFが独自に策定し,2016 年度第4四半期から運用 開始となったものである。通常の半額の利用料金で成果占 有・非公開の利用が可能である点が特色である。
表 1 に示すように,企業ユーザーが活用できる利用制度 は 5種類あるが,中軸となって活用される制度は図 1に示 すように共同研究と施設利用になる。共同研究は企業と KEKが共同研究契約を締結し(原則年度単位),目的とす る研究を共同で実施する。原則として成果公開であり,年 度末には成果報告が必要となる。一方,施設利用は成果占 有・非公開が可能であり,成果非公開を重視する場合に好 適な制度である。実験の安全性やビームタイム配分に支障 が無ければその審査は軽微であり,スポット的な利用に向 いている。
2008 2010 2012 2014 2016 2018 図 1 産業利用の制度別延べ実験時間数
従来,これらの有償利用は施設を利用する料金という位 置付けで,実験の支援は基本的に含まれていなかった。し かし装置に不慣れなユーザーには実験や解析の支援が不可 欠であることから,一部の手法では代行測定,コンサルテ ィング,実験支援等を有償化し,サービスの向上に取り組 み始めた。詳細は担当者に問い合わせ頂きたい。
学術貢献を目的とし,成果公開が必須である共同利用は 大学・公的機関の利用が主であるが,民間企業でも科研費 に応募できる機関は課題応募が可能である。図 1から判る ように,2012年以降は毎年活用されている。利用料は無 償であるが課題審査で採択される必要があり,評点に応じ 表 1 フォトンファクトリーにおける産業利用の形態
制度 利用料 有効期間 募集/年 成果の取扱 備考・利用料等 施設利用 有償※1 ― 随時 成果占有
非公開可
通常ライン: 27,300 円/時 高性能ライン: 53,550 円/時 試行施設利用※2 有償 ― 随時 成果占有
非公開可
通常ライン: 12,600 円/時 高性能ライン: 25,200 円/時 共同研究 有償 半年~複数年 随時 公開
共同利用 無償 2 年(基本) 2 回 公開 応募資格に制限有り※3
優先利用 有償 年度内 随時 公開 応募資格に制限有り※4 標 準性能 BL: 12,600 円/時 高性能 BL: 25,200 円/時
※1:一部ではオプションとして、利用支援、代行測定・解析なども用意されています。
※2:試行施設利用は初めてのご利用を対象としたものです。
※3:科研費を申請できる機関で、学術目的の実験課題であること。
※4:国又は国が所管する機関のプロジェクトで採択された研究課題であること(科研費を含む)。
0 2000 4000 6000 8000 10000
200 9 20 10 2 01 1 20 12 2 01 3 20 14 2 015 201 6 20 17
利用時間/h
年度
産業利用の実験時間の推移
施設利用 共同研究
TU 共同利用
償であるが課題審査で採択される必要があり,評点に応じ てビームタイムが配分される。優先利用も要件を満たせば 企業も応募可能であるが,今までのところは企業の優先利 用の利用実績は無い。
これらの枠組みの中で,従来,産業利用促進グループの 主要メンバーはトライアルユースを主体にして活動を行っ てきた。しかしトライアルユースが2015年度末に終了し たことを契機に,2016年度からはPFにおける産業利用全 体に視野を拡大し,制度設計やセミナー開催等を通して産 業利用振興に取り組んでいる。表2に当グループの専任研 究者と対応分野を示す。このメンバーで対応が難しい分野 においては,各ビームライン担当者と研究グループのスタ ッフが中心となり,ケースに応じて当グループの研究員が 支援要員として参画することでユーザーへの支援を行う運 用とした。
主な担当分野 担当者
X線小角散乱 高木 秀彰 XAFS分光 君島 堅一 総括,全体運営 木村 正雄,伴 弘司
2.活動内容
過去 5 年間ほどを振り返ると,PFでは毎年 40 〜 50社
(重複を除いたユニークユーザー数)の民間企業が実験を 実施し,全ユーザータイムに占める産業利用の実験時間数,
すなわちビームタイム基準の産業利用率は概ね 6 〜 8%で 推移していた。しかし,施設の運転時間に大きく影響を受 けるのが実情であり,またトライアルユースが終了したこ とも相まって,図1に示すように産業利用の総実験時間 数は減少している。2017年度は施設利用:27社,共同研 究:10社の利用があり,ビームタイム基準の産業利用率は,
図2 実験時間数で評価した産業利用の分野別利用度(2017年度)
全ビームライン平均で4.5%である。但し,利用ニーズが 多いビームラインでは20%近く,産業利用の比率はビー ムラインによって大きく異なっている。
産業利用の分野別利用度を2017年度実績について分析 したところ図2のようになった。創薬などの放射光分析の 特長を活かせる分野で利用率が高いことが見て取れる。触 媒には一部に電池材料関連の課題も含むが,それ以外に工 業用触媒の課題がある。概ねこれらの分野では毎年一定量 の利用がある。2017年度の利用動向として目を引くのは 半導体関連の利用が少なくなった事である。一過性のもの かは判断がつかないが,日本の半導体産業の動向と深く関 連しているように想像される。
このような利用動向を踏まえて,産業利用促進グループ はスタッフ体制の整備や制度の検討,及びグループ運営を 行っている。具体的には,当グループでは産業利用の多い ビームライン(分野)の維持・発展をビームラインスタッ フと一緒に行うと共に,PFでの産業利用が円滑に進むよ うに,ユーザーの方々のニーズの把握,広報活動,複数の 分野横断の利用のアテンド,等の活動を進めている。また,
PFシンポジウムやTIAシンポジウムなどの機会を捉えて,
産業利用の活動をアピールしている。このような活動を進 めるために,グループ内の情報交換と各種議論のために1 回 /2 〜 4週間の頻度でミーティングを開催している。
3.今後の展開
イノベーション貢献,新研究分野のシーズ開拓,産業界 の若手研究者の人材育成,の3つの観点から,PFでの産 業利用の充実は重要と考えている。今年度は試行利用制度 をあらたに策定したが,これに留まらず,よりよいサービ スを実現するための制度設計や,産業利用を下支えするよ うなセミナーや講習会などの実施を行っていく考えであ る。産業利用の詳細については,PF の産業利用サイトを 参照頂きたい。http://www2.kek.jp/imss/pf/approach/industry/
表2 専任研究者と対応分野
創薬(PX) 38%
電池 6%
触媒 機能性材料 5%
2%
手法研究 22%
無機/構造材料 22%
半導体 4%
ヘルスケア/ライフ サイエンス1%
1. 概要
本グループは,共同利用・広報に関する幅広い情報交換,
意見交換,情報共有を行いながら,現在の PF 共同利用体 制の維持と必要に応じた変更への対応,ユーザーや一般者 への各種情報提供,広報に関する活動等を実施している。
グループ会議には,グループ構成員(物質構造科学研究 所放射光科学第二研究系:宇佐美徳子,大島寛子,光ビー ムプラットフォーム:伴 弘司,物質構造科学研究所:東 郷雄一)とともに,共同利用・広報担当主幹の足立伸一主 幹,共同利用に関わる主幹秘書(王),PF事務室職員(外山)
が参加している。放射光共同利用実験審査委員会(PF-PAC)
については,研究協力課共同利用支援室共同利用係ととも
にPF-PAC準備打ち合わせを実施して,PF-PAC委員長(足
立主幹), PF執行部との密接な連携のもとで,PF-PAC の 事務運営を共同利用係とともに実施している。
2.活動内容
2017年度には,13回のグループ会議,7回のPF-PAC準 備打ち合わせ(共同利用係参加)を実施した。必要に応じて,
共同利用・広報に関する個別打ち合わせ(KEK研究成果 管理システム改修,共同利用者支援システム(KRS)改修,
研究成果の統計情報整理,PFWEB更新,PF-PAC事務運 営についてなど)を実施している。また,共同利用,ユー ザーに関することは,必要に応じて先端基盤グループ,安 全グループ,産業利用促進グループ,物構研企画広報室,
PF 主幹秘書室, PF 事務室,物構研事務室等と連携をしな
がら対応をしている。以下,主な活動について記載する。
2-1. PF-PAC 関係
年二回(1月,7月)開催されるPF-PACに関する各種 事務局対応(実験課題公募関係,ステーション担当者への 対応,レフリー審査,イエローカード対応,PF-PAC分科 会審査,安全審査,PF-PAC全体会議(資料整理,議事進 行確認),各研究分野の実験課題申請に関する統計情報整 理,他放射光施設等との情報交換)。PF-PACへの提案事項,
PF-PACからの提案事項への事務局対応。PF実験課題申請
システム,PF 実験課題審査システムの改修について,PF-PACからの要望も含めて,具体的な検討を実施した。
2-2. 共同利用関係
共同利用に関する各種データの解析に関する対応。ユー ザーからの各種コメントや要望に関する対応(必要に応じ てKEK管理局との意見交換,対応依頼,ユーザーへの情
報提供など)。新規利用に関する問い合わせへの窓口とし ての対応。施設からのメールマガジンの発送(4回),実 験課題公募開始に関する施設からのメールマガジンの発送
(4回)。PF-UA との連携に関することへの対応。KEK 管 理局,他部署との共同利用者支援システム(KRS),KEK 研究成果管理システム等の改修に関する検討。PF関係員 等旅費支給に関する窓口対応と今後の旅費支給運用を検討 するための統計情報の整理。ユーザー用PF自転車整備,
宅配便に関する対応。ユーザー控室,仮眠室,トイレ等の 業 務委託業者による清掃業務に関する対応。
また,文部科学省資料等を参考にしながら,共同利用の あり方に関する情報共有,意見交換を実施してきた。
2-3. 広報関係
PFWEBページからの各種情報発信への対応。サイエン
スカフェ(チョコレート関係,水素関係),各種サイエン スキャンプ,講習会実施への対応。一般見学者,KEK一 般公開,メディア懇談会,サイエンスアゴラ,ナノテク 展,ビデオ撮影等への対応。放射光学会,ナノテク展,量 子ビームサイエンスフェスタなどの施設ポスターの制作。
放射光関連各種パンフレットの制作と増刷に関する対応,
産業利用ユーザーを含む新規ユーザー獲得のための利用 の手引き制作に関する対応(産業利用促進グループとの 連携)。KEK TIA推進室との連携で,BL-17A実験ハッチ,
実験装置(タンパク質X線結晶構造解析装置)の模型(縮
尺1/10)を製作して,ナノテク展での展示,PF一般見学
者への展示を実施している。
3.今後の展望
現在のPF共同利用・広報に必要な事項については,引 き続き,IMSS執行部,PF執行部,関連PF内グループ,
KEK内関連部署との密接な連携のもとで対応していく予 定である。2018年度には,申請実験課題の複数PF-PAC 分科会での審査が,実験課題審査システム上で可能となる 予定である。また,PF研究棟1階に宅配荷物専用室を整 備したので,その施行運用を開始する予定である。共同 利用に関する各種データの解析と整理,新規ユーザー獲得 のための工夫については,将来の放射光利用との関係から も各種対応が必要であると考えている。また,将来の共同 利用のあり方や戦略的広報などについて,引き続き,各種 情報を収集しながら情報交換,意見交換を,他放射光施設 等も含めて,重ねていく予定である。
3-9. 共同利用・広報グループ
兵藤 一行
物質構造科学研究所放射光科学第二研究系
総合研究大学院大学高エネルギー加速器科学研究科物質構造科学専攻